【大塚角満の熱血パズドラ部！】第279回『“元カレ”ホルスに会いたくて』

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“元カレ”ホルスに会いたくて

ちょっと時計の針を巻き戻し、昨年末に遭遇した話を書きたい。

もうすぐ2013年が終わりを告げる……って段階の12月の最終週、俺は毎度おなじみパズドラのプロデューサー、山本さんとふたりで都内の繁華街を彷徨っていた。

｢2013年最後の飲み会をしましょう！！｣

ってんで、仕事納めの日にいろいろなしがらみを振り払って合流し、すっかり馴染みになった飲み屋街を｢さみいさみい｣と言いながら歩いていたのだ。

師走の繁華街は、じつに賑やかに華やいでいた。

煌めくネオン、馬鹿笑いをする酔客軍団、お土産を抱えたサラリーマン、イチャつくカップル……。もうすぐやってくる新たな年の夜明けを前に多くの人が高揚し、ザワつく心模様そのままに子どものような表情をしている－－。ゴールデンウィークやお盆休みの前とはどこか違う、年末年始のこの時期だけが内包する独特な雰囲気に当てられて、俺はちょっとフワフワした気分だった。

……って、この随筆っぽい書き出し、本題とはまるで関係ないのでスルーしてくれていいです（じゃあ書くな）。腹を空かせていた俺と山本さんはテキトーに選んだ居酒屋に入り、｢まずは……｣と言って生ビールとレモンサワーを注文した。そして、｢今年1年、ありがとうございました～！｣と言い合い、ガシャンとグラスをぶつけて乾杯。飲み会はやはり、この瞬間がたまらない。

しばらく、遊びのこと9割、仕事のこと1割という、いつもの割合で話をしていると、お店の女性店員さんが注文を取りにやってきた。そこで、｢えーっと、フライドポテト、マルゲリータ、生ハム盛り合わせ、チーズ盛り合わせ、鶏のから揚げ……｣と、目につくツマミを片っ端から注文する（腹ペコだったのです）。そしてひと呼吸おいたのち、俺は居酒屋に入ると必ず店員さんに発する“あるひと言”を口にした。

｢あと……パズドラって知ってます？？｣

なにが“あと”なのかよくわからんが、これを聞かねば居酒屋に入った意味がない。

この“居酒屋マーケティング”、なかなかバカにできない伝播力があるので（店員さんのあいだで広まったり、お客さんに勧めてくれたりするので）、若い店員さんにはたいがい、この質問をすることにしている（もちろん、お店が暇そうなときにね）。このとき、俺が話しかけた店員さんは最初こそ｢え？｣という顔をしたものの、すぐに相好を崩してこんな風に反してきた。

｢やってましたよ！　ホルスがすごく好きで、ずっと彼をリーダーにして遊んでいました！｣

俺と山本さん、｢お！ｗ｣と喜んで顔を見合わせるも、彼女の発言にちょっとだけ引っかかるところもあった。俺、生ビールをグビリとあおって口を湿らせてから、気になったところを指摘した。

｢“遊んでいました”ってことは、もういまはやっていないってこと……？｣

店員さん、コクンとうなずく。｢スマホを機種変したときに、データを引っ越すのを忘れてしまって、それ以来やっていないんです｣。ああ、なるほど。そういうわけか。

となれば、復帰してくれる目はありそうだ。年末のわりに店がガラガラだったので、俺はその店員さんにさらに言葉をかけた。

｢じゃあ、またイチからやるってのもアリだね！｣

ところがここで、店員さんの表情が曇る。な、なんだなんだ。どーしたんだ……？　と思ってドキドキしていると、彼女はふいにこんなことを言ったのだ。

｢私、 前のデータで遊んでいるとき、めちゃくちゃ運がよかったんです！　ホルスが好きになったの、最初のガチャで出てきたのが彼だったからだし、その後もレアガチャを回すたびにオーディン、天ルシ、イシス、クシナダ、麒麟とかとか、人気のあるモンスターがバンバン出てきて……。新たに始めても、とても前回のようなガチャ運には恵まれないだろうし、だったらやめておこうかなー……って｣

おいおい、マジかよ……。そんな人が存在したのか……！！　だ、だから俺に運が回ってこねえんだな！！？

……と、関係ないところで逆恨みしそうになったが、確かにそんな成功体験をしてしまったら、イチから始めることに抵抗が出るのもわかる。俺は言った。

｢そっかー。残念！｣

しかしその店員さん、どこか名残惜しそうで、俺らが頼んだツマミを持ってきながらこんなことを言うのである。

｢でも……もしもまたホルス君に会えたら、最初からやってもいいなって思っているんです！｣

どうやらホルスに、未練たらたらのようだ。

しかしホルスなんて、そうそう簡単に手に入るものでもない。俺なんてホルスが導入されたときから｢いつか出てほしい！＞＜｣と心の中で思い続けているのに、いまだにレアガチャの腹から出てきたところを見たことがないんだから……。

｢ですよねえ……。以前が運良すぎだったんです……｣

うなだれる店員さん。でもそこで、俺はあることを思い出した。

なんとちょうどこのとき、レアガチャでは火属性のモンスターが出やすいキャンペーンをやっていて、ホルスも対象のひとつだったのだ。それを指摘すると山本さんも｢あっ！！｣と言い、｢ホルス、ワンチャンあるかも！！｣と笑顔を見せる。これに勇気を得たのか店員さんも破顔し、｢ホントですか！？　じゃあいまからやってみます！！！｣ってことになった。

さあさあ、おもしろいことになってきたぞ。店員さんはすぐさまパズドラをダウンロードし、序盤のチュートリアルをこなしていく。さすが、｢以前はランク200くらいまで育ててました｣というだけあり、手慣れたものだ。気が付けばほかの店員さんも｢これは注目だな……｣と言って、ことの成り行きを見守っている（店がガラガラでホントによかった）。

でも正直、俺はこの勝負“女性店員さんの負け”で終わると確信していた。そうそう簡単にドラフト1位の本命モンスターが出てしまったら、大塚角満の立場はどうなるのだっ！！！

間違いなく、ホルスは出ない。でもその代りに、アレスとかレイランとか、はたまた後に役立つナーガとかを出して、｢ですよねぇ～～～ｗｗｗ｣の大合唱で収められればいいと俺は思っていた。

そんなことを考えているとまもなく、そのときがやってきた。

｢魔法石、5個になりました！！　最初のガチャが回せます！！｣

元気に宣言する店員さん。

｢注目！！ｗ｣と、俺と山本さんの声がハモった。

さあ、何が出る……？　魔剣士かライダーか、それともゴーレムか！？

｢お願いっ！！！　ホルス、帰ってきて！！！＞＜｣

悲痛とも言える叫びとともに、レアガチャのレバーが下りる……。そして、出てきたのは……！！！

その場にいた全員で、驚嘆ボイスの大合唱。

｢うわあああああああああ！！！！！！　ホ、ホントにホルスが出たぁぁあああああああああああ！！！！！！！｣

もう、オバケを見たかのようなお祭り騒ぎである。

｢すげええええええ！！！　まさかのホルス！！！　どんだけ強運を持ってるのあなた！！！ｗｗ｣と山本さん。

｢信じられない！！＞＜　やっぱり私とホルスは、運命の糸で結ばれているんですね！！＞＜　またパズドラ始めます！！！｣と店員さん。

｢ありえねえ！！！　どうなってんだこりゃ！！！！　ホルスがタマゴから出てきたところ初めて見たぞ！！！！（怒）｣と俺。まさかの“本命引き”に、いつまで経ってもパールヴァティーもクシナダヒメも玄武も引けない俺は、納得がいかないのであった（苦笑）。

つぎのゴッドフェスは、この居酒屋に行って店員さんに回してもらおうかなぁ……ｗ

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