スクエニ安藤ブログ“スマゲ★革命 シーズン2”特別編「安藤武博氏が訊く 『ウィズ』成功への道(前編)」
2013-12-16 14:00 投稿
『ウィズ』が成功した理由とは?
ファミ通Appのムック本に定期掲載されている、おなじみスクウェア・エニックス安藤武博氏による対談連載“スマゲ★革命 出張版”。
現在発売中のファ ミ通App NO.011 Androidの当連載には、メディア初出演となる『クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ(以下、ウィズ)』のプロデューサー・浅井氏が登場!
より多くの読者の方に、この対談を読んでもらいたいという想いから、今回は特別に本対談の模様を3回に分けて“全文掲載”という形でお届け! 今回の”前編”では、コロプラという会社の持つ意外な社風や、ゲームデザインにフォーカスしたお話が展開されているぞ!
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※スクエニ安藤ブログ“スマゲ★革命 シーズン2”特別編「安藤武博氏が訊く 『ウィズ』成功への道(後編)」
スピード重視は新人育成にも効果大
安藤武博(以下、安藤) 最初に浅井さんへというか、これはコロプラさんへの質問になるのですが……。コロプラさんの会社名は、英字表記で“colopl”ですよね? 僕がこれを読むと”コロプル”に読めてしまうのですが、なぜ末尾に“A”がないんですか!?
浅井 僕も自分のメールアドレスを書くときに、頭のなかで”コロプル”って言っていますからね(笑)。社長の馬場が2003年から個人サイトとして運営してきた位置ゲー、”コロニーな生活” を法人化する際に、初心を忘れることがないように会社設立当時のサイト名、”コロニーな生活☆PLUS”の愛称である“コロプラ”を社名としました。英字表記に“A”がないのは、”Plus”の短縮だからです(笑)。
安藤 なるほど! では、謎が解けたところで、早速本題に(笑)。コロプラさんのゲームブランド“Kuma the Bear”(※1)では、たくさんのカジュアルゲームを作っていらっしゃいますよね?
こんなにもたくさんのゲームを作り続けていると、スタッフのみなさんの技術力やゲームを仕上げる力が、かなり向上したのではないですか?
(※1)Kuma the Bear:コロプラが提供するカジュアルゲームブランド。『the射的!』、『リズムコイン!』、『一瞬のスキマ!』など、数多くの大ヒットゲームを世に送り出している。
浅井 ゲームをたくさん作ることで、スタッフの技術力は格段に上がりましたね。僕がカジュアルゲームの開発に携わっていた頃は、1ヵ月に1本のペースでリリースすることを課していたので、開発におけるスピード感もそこでかなり鍛えられました。
そのほかに、お客様の声に耳を傾けるということも積極的に行っていたので、それによって技術だけでなく、チーム全体が“ゲームを作る”ということに関して熟成してきたという実感もありますね。
そういったことをベースにした結果、生まれたものが『ウィズ』です。しっかりと確実に成長のステップを踏んできた甲斐があり、いい作りかたができたタイトルになりました。
安藤 1ヵ月に1本ペースというのはかなり早いですよね。僕たちスクウェア・エニックス(以下、スクエニ)のスマゲは、コンシューマーゲームのように、かなりの時間をかけて制作しがちです。
時間をかけている間にもトレンドが変わってしまうので、短い期間で早く作らなければならないというのは、分かってはいるのです。でも、なかなか出せない……(苦笑)。
浅井 確かに、トレンドの移り変わりは思っている以上に早いですよね。半年前にリリースされたゲームを遊んだだけでも、違いをハッキリと感じとれます。
だから「半年後に自分たちがリリースするゲームは、そのときのトレンドに合ったものなのだろうか」ということを考えると怖くて怖くて。だからこそ、僕たちはスピードを大事にしているところもあります。
安藤 早くゲームを出そうとすると、企画のペースもかなりの速度になりますよね? どのような形で企画を立案し、プロジェクトを進めているのでしょうか?
浅井 よくある紙の企画書というのは、ほぼありません。僕が企画書を作ったのは、入社して最初の時だけですね(笑)。いまでは、誰かが「こんなのを作りたい」と言ったら、その場で即ミーティングになります。
そして、会話の中で出てきたイメージをもとに、デザイナーさんがレイアウト案を起こし、それがそのまま企画として走り出すといった具合で進んでいます。
安藤 “Kuma the Bear”のカジュアルゲームからも分かるように、短期間でたくさんのゲームを作るというのも素晴らしい取り組みだと思います。僕自身最近思うところがありまして、今のスマートフォンでのゲーム作りと昔の専用機のゲーム作りを比べると、今のほうが格段に難しいものになっているように感じます。
かつては、”終わりがある”パッケージゲームが主流で、そこにも難しさはあったのですが、スマゲ特有の運営系ゲームには、”終わりがない”からこその難しさがある。
これからのゲーム業界を担う若い子たちに、カジュアルゲームという”終わりのある”ゲームが作れる場を用意してあげて、スピード感とゲーム作りの感性を養っているコロプラさんは、トレンドを意識したゲーム制作や新人さんの成長のみならず、未来のゲーム作りを意識されているのだと実感させられました。
浅井 お陰さまで、新人たちは確実に育ってきています。個人的には、自分の仕事の経験を積むだけではなく、みんなにUnity(※2)を使ってもらい、ゼロからのゲーム作りも経験してもらいたいとは思いますね。
Unityを使えば、エンジニアでなくてもゲームが作れますから。若いうちから、エンジニアリングをしない人間が、自らの手でゲームを作り上げていくことで、”ゲーム作り”をより深く理解してもらいたいですね。
(※2)Unity:ユニティ・テクノロジーズが開発したゲームエンジン。昨今ではスマートフォンゲームの開発にも多く使用されており、簡単なプログラミング言語でゲームを作ることができる点が特徴。また、他のゲームエンジンと比較すると、多くのプラットフォーム向けに開発ができるため、年々愛用するゲームメーカーが急増している。
安藤 ちなみに、浅井さんは、新人さんをあえて放っておくことで育成するタイプですか? それとも構っていくタイプですか?
浅井 僕はガンガン介入していきますね。1 ヵ月に1本のペースで作っているときは、僕自身まだ新人ということもありましたが、自分もプログラミングの現場に加わって、みんなといっしょにバグの除去作業などをしていましたから。ただ、これは育成が目的ではなく、現場の最前線が好きで、ずっとそこにいたいという気持ちがあってのことかもしれませんけれど(笑)。
カード要素は外せない
安藤 先ほど、トレンドの流れが早すぎて次が分からないから、新作は早く出していきたいと仰っていましたが、あえて質問をします! 次はどのようなトレンドがくると思いますか? スピード感をつねに持ち続けてきた浅井さんの、次へのビジョンというものに、ものすごい興味があるので、ぜひお聞かせください。
浅井 そうですね……。これはみんなが考えていることだと思うのですが、ある程度のゲーム性は追及していかなくてはならないかなと思います。また、スマートフォンゲームをたくさんやっている人たちは、おそらくコンシューマーのゲームをあまり遊んでいない人たちです。
過去のコンシューマーゲームにあったおもしろさを、スマートフォン向けにうまく変換してリリースできれば、スマートフォンゲーマーにとっては新鮮な体験をお届けできるのではないかと考えています。ただ、カードゲームのような収集する要素、コツコツ遊べるという要素を外してしまうと、日本での成功は難しいと思います。
安藤 なるほど。僕も、『拡散性ミリオンアーサー(以下、ミリオンアーサー)』のプレイステーション Vita版をリリースしたときにコンシューマーゲームをよく遊んでくれる層と、スマートフォンゲームをよく遊んでくれる層は、大きく異なっていることを実感しました。
コンシューマーゲーム機を持っている人たちのほとんどがスマートフォンを持っているはずなのに、Vita版ではじめてプレイしてくださる方も多くいらっしゃいました。ハードやデバイスによって生じる壁は、意外にも厚いものでしたね。
浅井 スマートフォンゲームとコンシューマーゲームの両方を遊ぶ層というのも絶対にいると思います。でも、重複している層よりもどちらか一方という層のほうが多数を占めていると感じます。『ウィズ』は、クイズという誰でも遊べるジャンルなので、プレイヤーの中にはいろいろな人がいます。
属性情報を取っていないので正確にはわからないのですが、女性プレイヤーが圧倒的に多いです。層のすみ分けというのは、我々が想像している以上にハッキリしていると感じます。
安藤 ところで、さきほど「日本に関してはカード要素を外してはいけない」ということも仰っていましたが、これも興味深い話ですね。具体的にはどういう意味なのでしょうか?
浅井 現在のトップセールスランキングには、キャラクターのカードを集めるという要素を含んだゲームがたくさん並んでいます。なので、カード要素というのは、この市場においてまずハズれない要素ということです。
ただ、カードを集めるという要素をいかにゲームとして料理するかについては、いろいろなやりかたがあると思うので、単純に要素を組み込むのではなく、そこはしっかりと突き詰めていくべきでしょうね。
無駄を削ぎ落とす難しさ
安藤 僕はスマートフォンゲームを遊んでいて「これやられたなー」と思うことが結構あるのですが、浅井さんはいかがでしょうか? 最近、気になっているゲームはありますか?
浅井 『チェインクロニクル』(※3)には「やられた!」と思いましたね。ちゃんとしたストーリーがあって、カードひとつをゲットすることに対しても、ちゃんとしたバリューを用意してくれているじゃないですか? だからこそ、レアリティが低いカードでも、ゲットしたら嬉しくなる。純粋にカードをゲットするだけで嬉しくなれるゲームというのは、なかなかありませんよ。
(※3)『チェインクロニクル』:セガから配信中のiPhone、Android向けRPG。豪華なイラスト、戦略性の高いディフェンスバトル、そして各キャラクターごとに用意された膨大なストーリーなど、これまでのスマートフォン向けゲームでは考えられないほどのリッチな作りが話題を呼び、2013年配信タイトルの中でも5本の指に入るほどの大ヒットを記録した。
安藤 カードをゲットすることで物語が動き始めるから、嬉しくなるんですよね。それにしても、あんなにたくさんのキャラを出して、よくストーリーをキレイにまとめられましたよね。そこもスゴイ。
浅井 せっかくなので、ずっと「誰かに聞いてみたい!」と思っていたことを安藤さんにお伺いします。『チェインクロニクル』が、現在のような”カードのキャラクターが3Dモデルになって登場する”デザインではなく、”3Dモデルのユニットがそのままの姿で手に入る”ゲームだったとしたら、お客様はお金を払ってくださると思いますか?
安藤 いや、思わないでしょうね。やはり、あのゲームはカードイラストが並んでいる、出撃パーティ選択画面のUI(※4)が秀逸ですから、その根幹を担うカードがなかったら、お金を払おうという人はいないでしょう。
(※4)UI:user interfaceの略。主にユーザーが触れる、ゲームやホームページなどのデザインに関して使用される言葉。
浅井 たしかに、あの画面は”そそる”要素が多分に含まれていますよね。
安藤 僕の所属する特モバイル二部のメンバーにも、各々が作ったゲームのスクリーンショットと『チェインクロニクル』のスクリーンショットを見比べさせることがあります。そうして比較してみると、『チェインクロニクル』のデザインがいかに無駄を削り落としているかが垣間見えるんです。
凝縮された情報で、カードが持つ物語性をプレイヤーの脳内に刷り込んだ結果の3Dモデルですから、カードというひとつの大きな要素を削いでしまったら、おもしろさそのものが消えてなくなってしまうでしょう。カードの見せ方というものも、『チェインクロニクル』がヒットした勝因のひとつのように感じますね。
浅井 すべてのカードが3Dモデル化するというだけでも驚きでしたが、突き詰めて考えると、カードじゃなければあのゲームシステムは成立しないんですよね。カードだからこそ、”そそる”見せ方ができるんだと思います。
安藤 “そそる画像”という点では、『ウィズ』や『パズドラ』のサムネイル(=アプリのアイコン画像)なんかもそうですよね。あれほど小さい画像なのにそそるじゃないですか? 『パズドラ』の山本さん(※5)は、「サムネイルのデザインは命」と仰っていて、忙しくなっていろいろな仕事を人に任せるようになっても、サムネイルの切り出しだけは、絶対に自分の手でやられているそうです。
スマートフォンの小さい画面に何を入れ込み、何を削ぎ落とし、どのようにゲームの魅力を表現するかというのは、それくらい難しく、重要なことなんですよね。
(※5)山本大介氏:言わずと知れた大ヒットタイトル『パズル&ドラゴンズ』の生みの親。
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クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ
- ジャンル
- RPG
- メーカー
- コロプラ
- 配信日
- 配信中
- 価格
- 無料(アプリ内課金あり)
- 対応機種
- iPhone、iPod touch および iPad 互換 iOS 4.3 以降。※iPhone 4S 以上推奨 iPhone 5 用に最適化済み、Android2.3以降
- コピーライト
- (C) COLOPL, Inc.
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