【特別インタビュー】Glu Mobileが狙うスマートフォン向けリッチコンテンツ市場

2013-10-19 17:06 投稿

北米のトップランナーが見据えるアジア向け戦略とは

毎年のようにトレンドが変化する、日本のゲーム業界。そんな中、世界屈指のスマートフォン向けゲームメーカーであるGlu Mobile(グルー・モバイル)が、日本市場に本格参入することを表明した。ここでは、日本市場における3人のキーパーソンに、同社の現在や今後の展開について話を聞いた(週刊ファミ通2013年10月31日号のインタビュー記事の再録となります)。

(左)
Chris Akhavan(クリス・アカヴァン)氏
プレジデント・オブ・パブリッシング
(中)
森 信介氏
ジャパンカントリーマネージャー
(右)
Greg Chang(グレッグ・チャン)氏
VP アジア&サードパーティ パブリッシング

1億ダウンロード作品を連発する北米市場のトップランナーとして

――最初に、Glu Mobileとはどのような会社なのか、ご説明いただけますか?

クリス・アカヴァン氏(以下、アカヴァン) 創業は2001年、サンフランシスコで行いました。最初のころは、『ギターヒーロー』など家庭用の人気ゲームのライセンスを取得して、それらをフィーチャーフォン向けにプレミアム(売り切り)ゲームとして販売していました。

――スマートフォン向けのゲームを手掛けるようになったのはいつごろからですか?

アカヴァン 2010年に現在の社長が就任してからですね。スマートフォン自体の性能が上がってきたこともあり、それまでの方向性を大きく変更して、スマートフォン向けにオリジナルタイトルを作るようになりました。

――そこから、どのような代表作が?

アカヴァン 代表的なシリーズとしては、FPS(一人称視点シューティング)の『フロントラインコマンド』や『コントラクトキラー』、『ディア・ハンター』、さらにアクションRPGの『エターニティーウォーリアー』といった作品が挙げられます。いずれも、北米を中心に、それぞれシリーズ累計で1億前後のダウンロードを記録しているタイトルですね。それも、比較的早い段階で達成しているんですよ。

――それぞれ1億! 4つのシリーズで、そんなに多くのユーザーに遊ばれているのですか?

グレッグ・チャン氏(以下、チャン) ほかにも、タワーディフェンスやレースといったジャンルで、代表作と呼べるものを生み出してきました。もちろん、シリーズにこだわらず、オリジナルの新作も続々とリリースする予定です。いま、誰でも気軽に短時間で遊べるような、カジュアルなゲームにも挑戦しているんですよ。

アカヴァン 開発にあたっては、家庭用ゲームのようにハイクオリティーで、かつ奥深く、長く遊べるタイトルをつねに目指しています。そのため、さまざまなジャンルでヒット作が生み出せているのではないでしょうか。

――2010年からの短期間で、これほどのヒット作を生み出した秘訣は何なのでしょうか?

アカヴァン 短期間で質の高い作品を作るために、私たちは開発エンジンを共有して使い続けています。ゲームを開発するたびにミドルウェアを作るのではなく、ノウハウを蓄積しながら使い続けてきたおかげで、開発期間はかなり短くなっています。

チャン また、私たちはモスクワ、北京、トロント、シアトルと、世界に4つの開発拠点を持っています。モスクワならシューティング、トロントならカジュアル系と、各スタジオが得意なジャンルに集中できる仕組みになっていることも、プラスに働いているのかもしれませんね。

――世界を股にかけた開発ラインというのも、御社の強みということですね。その体制下で、だいたいどのくらいのペースで作品をリリースしてきているのでしょうか?

森 信介氏(以下、森) これまで、1ヵ月に1本くらいのペースでリリースを続けています。全タイトル、基本的に世界同時リリースで、もちろん日本語にも対応しています。

――それくらいのスピード感を実現するために、世界でどのくらいのスタッフが開発に従事しているのでしょうか?

チャン 現時点(2013年9月末)で、約570人ですね。ソウルの拠点も本格的に始動し、東京でも活動を開始したので、これから人数はさらに増えていくはずです。

ローカライズにとどまらないオリジナルタイトルの開発も

――企業として急成長を遂げる中で、日本への本格進出を決めたのはどんな理由が?

 日本に限らず、アジア全体の市場としての魅力は、年々増してきています。現時点でも、Glu Mobileの売上の約30%は、アジアから生み出されているものです。ただ、それとは別にゲームという文化において、日本という国は世界でも特別な存在なんですよ。

――と、言いますと?

 世界にとって、日本は、現在にいたるビデオゲームのムーブメントを作り出した国だと認識されています。家庭用ゲームだけでなく、近年ではソーシャルゲームにおいても、世界中の誰も思いつかなかったユニークなシステムを作り出しました。昔も、そしていまでも、世界中が日本からゲームというものを学んできたと言っても過言ではありません。そんな国で挑戦するというのは、とてもワクワクすることです。

――そういった思いを抱かれている日本市場を、どのように攻略していく予定ですか?

アカヴァン 日本では、これまでカードゲームが非常に人気だったようですね。ただ、スマートデバイス自体の性能も上がってきてい
ますし、まずは私たちの強みを活かしたリッチなコンテンツを提供していくつもりです。

 9月には、『ディア・ハンター 2014』という、弊社を代表するシリーズの最新作もリリースしています。本作は無料で日本語版をダウンロードできるので、日本のゲームユーザーの皆さんには、第一歩として「世界にはこういうゲームを作っている会社がある」ということを知っていただきたいですね。

――日本で開発した、オリジナル作品をリリースする予定はあるのでしょうか?

 もちろん、ローカライズにとどまらず、日本の皆様にも楽しんでいただける作品をリリースしていきたいと考えています。そういった作品の制作に向けて、まずは日本の開発会社とパートナーシップを組んでいきたいと考えています。そのうえで、グループ間で情報を共有しながら、迅速に体制を整えていきたいですね。

チャン 日本市場に向けて、年内には5作品をリリースする予定です。とくに、11月に配信予定の『エターニティーウォーリアー
3』では、リアルタイムに同期するマルチプレイを実装しているので、オンラインRPGが好きな方は期待していてください。ほかにも、同じく11月には『モトクロス・メルトダウン』というレースゲームの配信を予定しています。こちらはPvP(プレイヤー・バーサス・プレイヤー。プレイヤーどうしの対戦要素のこと)を実装しており、バイクのカスタマイズと対戦という、ふたつの要素を楽しめるようになっています。

――ちなみに、各ゲームの課金要素はどのように設定されているのでしょうか。

アカヴァン ほとんどのゲームでは、武器の強化や新規購入など、アップグレードにともなってアイテム課金していく仕組みにしています。チャン もちろん、日本では一般的となっている、待ち時間を短縮するアイテムなどもあるのですが、私たちとしてはメインには考えていません。基本的には、ほとんどの人に無料で遊んでもらえるように作っています。

――今後の目標を教えていただけますか?

 明確な数値については、9月に投入した作品などの反応を見ながら決めていくつもりですが、まずは弊社の配信したタイトルが、近いうちに日本のApp StoreやGoogle Playのランキングに入ることを目標にしています。

――日本進出への意気込みをお聞かせください。

アカヴァン 日本の皆さんにも、私たちの作ったゲームを遊んでいただきたいと願っています。ハイクオリティーな作品をたくさん作っていきますので、楽しみにしていてください。

 先に、「日本のゲームファンの皆さんには、世界のさまざまなゲームを知ってもらいたい」と言いましたが、逆に「日本にもこんなにおもしろいゲームがある」ということを世界に広めることも、私たちの目標のひとつになっているんです。ですから、もし、日本のデベロッパーに海外進出の希望があれば、そのお手伝いもしていきたいと考えています。

チャン 弊社としても、アジアには本腰を入れて臨んでいくつもりです。今後も継続してサービスを提供していきますので、ぜひ一度Glu Mobileのゲームを遊んでみてください。

日本市場に投入されるGlu Mobileの代表作たち

Glu Mobileの手掛けるゲームタイトルが、この秋から日本のゲームファンに向けて本格投入される。右の2タイトルを始めとした世界的なヒット作品に加え、『ギャングロード』というカードゲームも登場する。日本でもなじみのあるジャンルも用意されているようだ。なお、最新のラインアップは、本誌付録の特別冊子で詳しく解説している。

『ディア・ハンター 2014』

▲サバンナや森の中など、世界中の実在する景勝を巡り、鹿や熊などさまざまな動物を狩るハンティングアクション。

『エターニティーウォーリアー3』

▲さまざまな武器やスキルを活用して、恐ろしい悪魔たちと戦うアクションRPG。美麗なビジュアルと協力プレイが魅力。

※Gluの公式サイトはこちら

 

(C)2013 Glu Mobile Inc. All rights reserved.

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