スクエニ安藤ブログ“スマゲ★革命 シーズン2” 第九回 「2013年上半期スマゲニュースBEST5」

2013-07-23 15:30 投稿

●第九回 「2013年上半期スマゲニュースBEST5」

2013年もあっという間に半分が終わりましたので、今回は極私的なスマゲ的ニュースをランキング形式で発表したいと思います。エンタメっぽくランキングにしていますが順位に特に大きな意味はありませんのであしからず。なおスクエニ&特モバイル二部関連のニュースは、今後ここで書くことも多いと思いますので省きました。また、『パズドラ』に関しては完全に社会現象の領域となり殿堂入り。・・・と、本当にわざわざ書くまでもなくなりましたね。これからもさらに僕を驚かせてくれるような超絶展開を楽しみにしています。パズドラが社会現象になっても、なる前からも山本さんはいつ会ってもいい意味で全くかわりませんから、今後もおもしろいものが出てくることは間違いない。まずは3DSの『パズドラZ』が100万本売れる世界が近いうちにやってくる。これによってコンシューマーゲームとスマゲの垣根は更になくなり、ゲーム業界全体が盛り上がるはずです。

それでは早速まいりましょう!

 

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※【まとめ】スクエニプロデューサー安藤武博氏のブログ“スマゲ★革命”

 

 

■第五位 良いゲームを出し続けるコロプラはスマゲ界の飛車角だ。

上半期には『クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ』をリリースして、クイズゲームの新境地を開いたコロプラ。いままであまり取り上げることがありませんでしたが、スマゲ黎明期から一貫して安定した良質なアプリをリリースし続けています。いろいろなジャンルのゲームを毎回見事に基本無料にデザインして、かつ運営もしっかりしている。

“たくさん全力で創る”というのは特モバイル二部が標榜するヒットの条件のひとつでもあり、それを企業として実践している部分をとても尊敬しています。あまりにも毎度あっさりとやってのけてしまう(実際は現場の苦労はどこも同じくあると思いますが、そのように見えるほどエレガントである)ために、見逃しがちですがスマゲの絶対的エースが『パズドラ』だとしたら、これに続くポストエースの一角は間違いなくコロプラだと思います。

とくに、前述した『ウィズ』のすごいところは一発でそそる世界観や物語性をもっていること。またそれをクイズゲームに持ち込んだこと。ゼロスタートのオリジナルタイトルでこの雰囲気を出すには、物語をきちんとつくったことのある方がきちんと世界設定をやらなければならない。おそらくゲームには出てこない、文字やスケッチだけの設定がたくさんあるはずですし、確実にそれをやっている。今後のスマゲにはこの物語性や厚みが必要になっていきます。一方で『一瞬のスキマ!』のような一発芸的なこともやってしまう。ゲームデザインとビジネスの折合いが難しい位置ゲーの分野でも存在感がある。こうやって改めてコロプラのことを書いてみるとすごい会社だなー。ちなみに僕は『弾幕バラッド!』が一番好き。ゲーム業界からこういうチャレンジングなゲームをなくしてはいけないと思っています。

 

【クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ】

▲本格的なクイズゲームに重厚なストーリーとRPGの要素が融合した新感覚のクイズRPG。冒頭のOPやバトルシーン、ゲームに深みを与えるストーリーに至るまで、ゲーム全体を通じてリッチなつくりになっており、コアゲーマーからも高い評価を得ている。

 

 

【一瞬のスキマ!】

▲移動する障害物のあいだにできる”一瞬のスキマ”を狙い、レーザー銃から直線状に放たれるレーザーによってセキュリティーを破壊するポイントシューティングゲーム。カジュアルなつくりながら、中毒性の高いゲーム性に夢中になるユーザーが続出した。

 

 

【弾幕バラッド!】

▲プレイ回数の制限や機体のカスタマイズなどの要素を盛り込むことで、完成度の高い弾幕シューティングゲームをフリー・トゥ・プレイのビジネスモデルへ丁寧に落とし込んだ作品。ゲーム内に出てくるポエムにも注目!

 

 

■第四位 エイチーム『ダービーインパクト』のインパクト。

誤解を恐れずにいってしまえば、このゲームが今後10年の競馬ゲームのスタンダードになると思っています。パッケージゲームの時代に『ダービースタリオン』や『ウイニングポスト』が構築したすばらしいゲームシステム。そのおもしろさを損なうことなく、更に進化させて見事にフリーミアムの作品に再構築してしまった。まさに“最新の”ゲームデザインスキルに脱帽。

『ダークサマナー』以来、エイチームはWebサービスのノウハウを持ったスタッフと、家庭用ゲーム製作のノウハウを持ったスタッフの融合が非常に高いレベルで成立していると思います。個人的に『ダビパク』にはすごくハマっておりまして、真剣に向き合うと短期間ですごくお金をつかってしまっている自分がいます。その理由は明確で、大人のエンタメとして気持ちよいところがあるからです。一方でこれは大人向けの刺激的な調整だともいえるので、ここのバランスをソフトに見直せば、さらに沢山のひとに末永く愛される潜在能力が、ものすごくあります。じつは名古屋という土地柄にも秘密があるのではないのかと思っているのですが、それはまたいつかの機会に。

 

【ダービーインパクト】

▲競走馬育成シミュレーションゲームの王道を踏襲しつつも、スマートフォンに最適なデザインやゲームシステムなどを組み込むことによって、”最新”の競走馬育成シミュレーションゲームとして確立された作品。

 

 

■第三位 『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル』登場。いいぞKLab!

このゲームの登場には驚きました。「人の真似ばっかりしていては飽きられるから、新しいものを作ってほしい。」と、とくに私が警鐘を鳴らしていた、いわゆるSAP(ソーシャルゲームプロバイダー)の一角であるKLabからリリースされた新しい形のエンターテインメント。ありそうでなかった音ゲーとソーシャルゲームの融合。なによりも滲み出る『ラブライブ!』への愛。実は我々も突き詰めれば似たようなコンセプトの作品を制作していました。特モバイル二部はまさに“出し抜かれた”形となり、計画をいちから全面的に見直すことになりました。真似はできませんからね。やられた! そう、あたらしさで出し抜いてこそなのです。それが沢山のお客様に受け入れられる結果となっている。ゲーム作りはこうでなくちゃ!

下半期に入ってエイリムから『ブレイブフロンティア』がリリースされ、この作品にもありそうでなかった新しさとおもしろさを感じています。(特にUIデザインがすばらしい。)こういった形で優秀なSAPの方々がゲーム作りに覚醒して“第二ステージ”に進み、本格的かつ最新のゲーム作りに突入している状況がとてもうれしいのでした。

 

【ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル】


▲テレビアニメも大ヒットを記録した『ラブライブ!』からブシロードの「ブシモ」に登場したリズムアクションゲーム。フルボイスのオリジナルストーリーなども収録されており、以前からのはもちろん、それまで『ラブライブ!』に触れたことのなかった多くのゲームファンからも高い支持を集めている。

 

【ブレイブフロンティア】

▲数々のモバイルゲームを手掛けてきたスタッフが集結して誕生した新会社”エイリム”が制作した本格ファンタジーRPG。”本格”の名にふさわしい重厚でドラマティックなシナリオを有しながらも、シンプルな操作性でサクサク進行していくゲームシステムによって、着実にファンを増やしている。

 

 

■第二位 打率10割。すごいぞアソビズム。狙ったボールは逃がさない。

そのゲームが、プレイヤーをどれほど熱狂させているかどうかは、プロである編集者やライターの方が書く記事の熱量からもうかがい知ることが出来ます。たとえば大塚角満さんの『パズドラ』の記事はもちろんのこと、女尻笠井さんの『ドラゴンリーグX』の記事がそれ。創り手の思想がハッキリしているからこそ、書き手もしっかりと受け止めているのでしょう。そんなえこひいきは大歓迎だ。

現在、アソビズムの森山尋さんほどスマゲ界で強烈に個性を放出しているクリエイターは、なかなかいない。『ドラゴンリーグX』も『ドラゴンポーカー』も遊ぶと、いや、遊ぶ前から”アソビズム森山尋謹製”とはっきり刻印されているのが僕には見えます。「俺のゲームだ。俺の率いるアソビズムのゲームだ。」というメッセージをヒシヒシと感じるのです。それはさながら、艶も毒も吐くロックミュージシャンや、メッセージ性の強いリアルなラッパーのような感じさえする。この強烈な個性が予告ホームランをして、毎回バットの芯に当てていく様子はスマゲの大きな魅力のひとつ。だが、決してアーティストとは呼ばない。なぜならゲームは、ここまでの強烈なメッセージを出すまでに、誰もが七転八倒、創作にまつわる壮絶なもがき苦しみがある。エレガントではなく限りなく泥臭いものなのだ。しかし、だからこそカッコいいのだ。これからもあたらしいおもしろさでかき回してくれアソビズム!

 

【ドラゴンリーグX】

▲リアルタイムバトルRPGというジャンルで確固たる地位を確立したアソビズムの代表的作品。フィーチャーフォン全盛期に配信され、いまなおサービスが継続している『ドラゴンリーグ』時代からの根強いファンも多く、iPhone向けに配信された『ドラゴンリーグX』では、App Storeのトップセールスランキングにおいて、つねに上位をキープしつづけている。

 

 

【ドラゴンポーカー】

▲ファンタジーRPGとポーカーが融合したまったく新しいカードゲーム。”リアルタイムで5人のユーザーが1枚ずつカードを出して、ポーカーの役を揃える”という、森山氏ならではの発想から生み出された作品。

 

■第一位 南場智子さんの著書「不格好経営」はDeNAの底力そのもの。

スクエニの安藤は、この本を読んでいる264ページの間だけチームDeNAだった。こういった体験ができるから本って素晴らしい。そもそも人様に対して立場を明確にして“本を書く”という行為や、その時間をつくること自体がすごいこと。そう考えると、このタイミングしかない時期に書かれた(おそらく彼女がリタイアするまで、もうないのではないだろうか)、至極の失敗談集にして、大人の青春小説。実はこのトピックを第一位にする予定はなかった。GREEにもMobageにもゲームを出し続けてきた特モバイル二部としては、プラットフォーマーとはなるべくフェアにおつきあいがしたい。1位にすると変な意味を持ちそうで嫌だったのだ。ところが最近DeNAの若手プロデューサーたちと食事をしたときに、今回の記事企画の話になったところ、一斉に「なにがなんでも1位にしてくれ!」と強烈なコミットメントを求められたのである。「かならず1位にします。」・・・証拠動画まで撮られた。不肖安藤のこんなブログにまで1位を求める。彼らのこういった姿勢こそが短期間でゲーム業界に革命をもたらしたのだろう。現場の最前線から南場さんの本に感じたDeNAイズムが強烈に伝わってきたので、その底力に敬意を表して今回は1位。

この本は「エスタブリッシュメントになるな、つねに挑戦し革命者であれ。」というメッセージの集合体ですが、自分が直接言われているような気がして非常にテンションがあがりました。急速に大きな成功を手にした場合、それ自体が失敗の原因になるのは間違いのないことです。いろいろな意見があるが、この5年は間違いなくグリーもDeNAも挑戦者としてゲーム業界に新しい風を吹き込み、大きな成果をあげたところが良かった。これからは、どこの会社のだれであろうが、いつまでその気持ちを忘れずに、しつこくおもしろいものを創り続けていくか。成功体験をぶっこわして新しいことにチャレンジするか。それだけのシンプルに勝負になる。

 

▲ソーシャルエンターテインメントプラットフォーム”Mobage”を運営するDeNAの創業者・南場智子氏による自叙伝(日本経済新聞出版社出版)。DeNAが歩んできた道程における”奮闘の舞台裏”が、創業者である南場氏自身によって明らかにされている。ビジネス書としてはもちろん、読み物としても十二分に楽しめる名著。

 

ますますエキサイティングになりつつある2013年下半期。いよいよ我々特モバイルも新作を複数用意しています。2013年7月18日からサービスがはじまった拡散性ミリオンアーサー中国版『扩散性百万亚瑟王』も初日の売り上げランキングが2位(iOS)と韓国台湾に続きおかげさまで好調にスタートを切りました! 日本もバタバタですが全力でがんばっております。まもなく『唯一性ミリオンアーサー』もスタートしますのでこちらもご期待ください。

またこの夏スクエニからは『ドラゴンクエスト』シリーズのプロデューサーを務めた市村龍太郎が手がけるオリジナル新作『BLOOD MASQUE』がiOSでリリースされます。家庭用ゲーム機の王道で主役をはったクリエイターがスマゲの世界に参戦する。というのは以前この連載で書きましたが、いよいよ作品となって皆様にお届けされるタイミングとなりました。この流れはますます加速します。作り手としても1ゲームファンとしてもとても楽しみです。

下半期もよりスマゲ業界が盛り上がるよう、どんどん仕掛けていきたいと思います。次回はグリーで僕がずっと話したいと思っていた人と、グリーでは無い形での対談をします。どういうことでしょう?お楽しみに。それではまた!

次回につづく

 

■著者紹介

安藤武博(あんどう たけひろ)
スクウェア・エニックス 特モバイル二部 ジェネラル・マネージャー兼プロデューサー。ゲームプロデューサーにして、同社のスマートフォンアプリ制作の中核を担う人物。早くからスマートフォン事業に携わってきたことから、アプリに対してはすでに確固たる理論を構築している。それでいて、つねに新たなステージへのチャレンジを忘れないスマートフォン業界の革命児。

 

 

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※【E3】スクエニ本気RPG『BLOODMASQUE(ブラッドマスク)』特別インタビュー

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