【企画】ゲームの強さは県民性で決まる……のか?
2013-05-07 18:00 投稿
●都道府県バトル2作の累計ランキングを発表!
47都道府県バトルが特徴の、Amebaのカードゲーム『天下統一クロニクル』と『不良魂 ~全国制覇~』。プレイヤーは、全47都道府県の中から愛着のある県を選び、その土地にゆかりのあるカードを集めながら他県のプレイヤーと戦うことになる。……ということは、都道府県により強さの違いが出るのではないか? そう疑問に思ったファミ通App編集部がサイバーエージェントさんに問い合わせてみたところ、2タイトルの平均ランキングを提供してもらうことができた。以下がその順位となる(ランキングは2013年2月末時点のもの)。
『天下統一クロニクル』 |
1位 山口
2位 石川
3位 山形
4位 福島
5位 兵庫
6位 香川
7位 岩手
8位 鳥取
9位 沖縄
10位 京都
『不良魂 ~全国制覇~』 |
1位 山口
2位 沖縄
3位 鹿児島
4位 青森
5位 石川
6位 鳥取
7位 奈良
8位 岩手
9位 岡山
10位 熊本
非常に興味深いデータである。おもしろいことに、山口県が2冠を達成。そして、その山口県を筆頭に、石川県、岩手県、鳥取県、沖縄県が両タイトルでランクインを果たしているのだ。開発の方によると、県ごとに参加人数が異なるため、少ない県が不利にならないように若干調整しているとのこと。そのため、参加人数が少ない県のほうが上位になりがち、という傾向はあるそうだ。とはいえ、5つもの県が両タイトルでランクインしているのは、そのほかにも何かヒミツがあるに違いない! というわけで、『新・出身県でわかる人の性格』(草思社文庫)などの著書で知られ、県民性にくわしい岩中祥史先生にお話を伺ってみた。
※ファミ通App iPhone&Android NO.006で掲載した記事の完全版となります。
▲『天下統一クロニクル』は、47都道府県からお気に入りの県を選び、他県のプレイヤーと戦って所属国の順位を押し上げるカードバトル。日本各地の名産品や名物が多数登場する。 | |
▲『不良魂 ~全国制覇~』では、選りすぐりのワルたちを率いて戦う。お気に入りの県に所属して、同じ県の“ダチ”と他県に抗争を仕掛けて、日本最強の座を目指せ。 |
●県民性は、地理と歴史から構築される
――まずお伺いしたいのですが、県民性とはどのような要因で決まるのでしょうか。
岩中祥史氏(以下、岩中) 簡単に言えば、地理と歴史のかけ算ですね。地理の要素が3分の2ぐらい、歴史が3分の1ぐらい。
――先生の著書によると、山があるかどうかだけでも、そこに住む人の気質が変わってくるのだとか。
岩中 そうです。山とひと口に言っても、高いか低いかだけでも気温や雨の降りかたが変わってきます。たとえ同じ川でも、河口に近くて海と間違えるくらい幅の広いところと、流れが急な上流とでは、受ける印象や吸う空気も違うでしょう。そういうことが何十世代と受け継がれれば、それぞれ暮らす人たちの気質に何かしらの影響はあると思います。数値化できないので、どういう影響かはわかりませんが。
――環境の違いが、気質として表れると。
岩中 産まれたときから、目の前に雄大な太平洋がどーんと開けていれば、「どんとこい! 俺には怖いものなんてないんだ」、という気持ちになれそうじゃないですか。朝起きてもどこから日が出ているのかわからないような、暗い山間部で育つのでは、目に見える世界の広さや奥行きも変わりますし、スケールも違ってきます。そういうところで差が出てくるんだと思いますよ。
――なるほど。では、両タイトルのランキングから読み取れる県民性について教えてください。おもしろいことに、両タイトルで山口県が一位となっています。
岩中 そうですね、私はこのゲームについては詳しくありませんが、お話を聞いた限りでは、県の名誉を賭けて戦うという気持ちの強さが出ているかもしれません。気持ちだけでは勝てないかもしれないけれど(笑)。
――ああ、それはあるかもしれません。
岩中 一位の山口県というのは、ご存じの通り、明治維新を推進した県です。ですので、山口県民は“いまの日本を作ったのは自分たち”という思いがものすごく強いんです。江戸幕府という二百何十年もの歴史を持っていた権力をひっくり返し、自分たちがリーダーシップをとって近代の日本を作った。そういう自覚と誇りは本当にすごいんですよ。しかも政治家とか財界のレベルの話ではなく、ごく一般の人もそうなんです。
――それは、意識が浸透しているんですね。
岩中 じつは、私の母親も偶然山口県生まれなのですが、一般人でありながら、どこか誇り高いんです(笑)。そういう意識があるのは、おそらく教育によるものではないかと。山口県という場所に産まれたのは、決して偶然ではない。大げさに言えば日本を動かすという使命を担って立っている、そういうことを、おそらく子どものころから教えられてきたわけですよ。それが何世代も続き、一種にの思い込みができあがってきたのだと思います。
――幕末からいまに至るまでの流れがあるということですね。
岩中 はい。いわゆる薩長土肥、山口県、鹿児島県、佐賀県、高知県という4つの県は、幕末から明治維新にかけて強烈な存在感があったのですが、最後に政治で権力を握るのは山口県なんですよ。明治12~3年からあとは、ほとんど山口県の天下です。昭和になってからも、山口県出身の総理大臣はとても多い。佐藤栄作、岸信介とか……。いまの安倍晋三総理もそうで、歴代最多の総理大臣を輩出しているのが山口県です。首都ではないけれど、日本を代表する県という意識があるので、必要以上に負荷を背負っている部分は多分にありますね。
――歴代最多の総理大臣というのは意外ですね。
岩中 あと、山口県民は負かされることをすごく嫌う傾向もあります。たとえば論争をして言い負かされると、自分のプライドを傷つけられると同時に、「山口県の存在も貶められた」と感じてしまうね(笑)。本当はぜんぜんそうじゃはないんですけれどね(笑)。だから、こういった県対抗のゲームだと、すごく燃えると思います。今回のランキングデータには数字が書かれていませんが、個人的には2位をぶっちぎってトップを取っているのではないか……と予想できます。
――先生の著書では、山口県は自己顕示欲が強くプライドが高いと書かれています。そういう部分も要因となっているのでしょうか。
岩中 あると思いますよ。日本の近代を作ったという誇りをほかの県に忘れてほしくない。誰も頼んでいないのに、使命感と責任感がすごく強い。そういったことが、政治家を志すときのパワーにつながっていくのだと思います。
――福島県と山口県は仲がよくないと本には書かれていますが、『天下統一クロニクル』では、福島県が4位に入っています。そうした対抗意識も、両方の県を押し上げる要因になっています?
岩中 それはあるかもしれませんね。いまはそんなに濃厚ではないけれど、お互い腹に一物思うところはありますから(笑)。自分たちより順位が上だと、気になって仕方がない相手ではありますね。福島県も場所によって大きく違いますが、代表の会津だと頑固で絶対に筋を通すというのはあります。江戸時代から明治維新にかけて、長州藩にやられたって思いは、年配の人には強いように思います。
●郷土愛の強さが勝負の決め手
――では、ほかの県について教えてください。石川県は『天下統一クロニクル』では2位、『不良魂 ~全国制覇~』では5位と両作で上位にランクインしています。先生は著書で、石川県はIT先進国で文化的気質があり、見栄っ張りと述べられていますが、そのことの影響が?
岩中 そういう傾向はありますね。でも、それとゲームが結びつくのかなあ。それよりも、郷土愛の強さではないでしょうか。両方のランキングで上位に入っている県は、全部郷土愛が強いんですよ。とくに沖縄県は全国で一番強いです。ただ、郷土愛が2番目に強い北海道はランクインしていないんですよね。
――先生の著書を参考に、ランクインした県を分類してみますと、自己顕示欲が強い県、見栄っ張りな県、努力家な県が上位に来ている気がします。
岩中 うーん、どうでしょうね。たとえば努力家というと、岩手県や鳥取県なんですが、簡単に決めてしまうのはどうかとも思います。今回のランキングのもとになっているのはゲーム、いわゆる遊びですよね。仕事や勉学に対して努力するのと、遊びにエネルギーやお金を費やすのは、だいぶ違いますからねえ。
――地道にプレイするというソーシャルゲームの一面が、今回のランキングでは色濃く反映されているのかもしれません。
岩中 そういう意味では、岩手県や鳥取県はフィーリングが合っていますね。石川県なんかは文化に対する興味が強いですから。いまの若い人たちにとっては、陶器や茶器よりも、ツイッターやフェイスブック、ゲームなんかが文化ですからね。そういうものに対して感性が鋭い人であれば、ハマりやすいと思います。逆に、遊び好きの県はあまりランクインしていませんね。福岡県とか……。
――それは、興味深いですね。やっぱり県民性と今回のランキングはけっこうな相関関係があるようですね。本日は、ありがとうございました!
岩中祥史先生 編集者、出版プロデューサーにしてエディットハウス代表取締役。県民性に詳しい。おもな著書に『新・出身県でわかる人の性格』(草思社文庫)、『広島学』(新潮社)、『日本を変える「名古屋脳」』(三五館)、『札幌学』(新潮社)など多数。 |
【天下統一クロニクル】
プラットフォーム:Ameba
メーカー:サイバーエージェント
価格:無料(アイテム課金あり)
【不良魂 ~全国制覇~】
プラットフォーム:Ameba
メーカー:サイバーエージェント
価格:無料(アイテム課金あり)
※ゲームへのアクセスはこちらから(ブラウザ対応)
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