【注目アプリレビュー】真冬のペンションはスリル、ショック、サスペンス!! 『かまいたちの夜 Smart Sound Novel』
2013-05-01 19:00 投稿
●あの恐怖はどう再現される?
吹雪に包まれたペンションを舞台にくり広げられる殺人事件を描く、あの名作サウンドノベル『かまいたちの夜』が、iOS用のアプリとして登場。シリーズ累計200万ダウンロードを記録した人気の源泉は?(注意:以下、ちょいネタばれあり)
●マルチストーリー・マルチエンディングのミステリ系アドベンチャー
チュンソフト(現スパイク・チュンソフト)のサウンドノベルシリーズ第2弾として、1994年にスーパーファミコンで登場した『かまいたちの夜』。当時は、1980年代後半から続くミステリ小説ブームの真っただ中(※1)で、ミステリ色の強いアドベンチャーゲームが多数発売されていた。そんな中、本作は、ブームの担い手のひとりでもあった気鋭の小説家・我孫子武丸をシナリオ担当に起用し、実写の背景や悲鳴・物音といった音声的な演出をふんだんに取り入れて作られた意欲作だ。
▲ミステリ界を代表する人気作家のひとりだった我孫子氏による文章は、ユニークな内容も多く読みやすい。 |
タッチやスワイプによるページ進行は、気になるところはあるものの、やはりスマホで手軽に遊べるのはうれしい。何より本作の魅力は、何といっても“多彩に分岐するストーリー”である。ストーリーは、文章を読み進めていくと出現する選択肢によって展開が分岐する。選択肢は特定の展開にたどり着いたり、エンディングを見ることで増えることも。そうして分岐するストーリーは、メインである(バッド含めいちばんエンディングの数が多い)殺人事件を始め、某国のスパイが登場したり、心霊ものになったり、全編ギャグテイストになったりするなど、かなりのバリエーションが楽しめる(※2)。なお、ちょっとHな展開が楽しめるピンクのしおり編ももちろん登場。今回は特定の条件を満たさずともそちらに分岐する選択肢が現れるようだ。
▲選択肢によって、その後のセリフ回しが変化したり、ストーリーが分岐。とくに序盤での選択は、展開を大きく左右する。 |
また、ストーリーの途中で犯人を当てるシーンでは、自分で犯人だと思う人物の名前を入力する仕組みになっているのもおもしろい。のちのシリーズ作品では定番となる要素だが、本作では事件解決への重要なポイントとなっている。ちなみに、筆者は19年前に初めてプレイしたとき、適当に入れた名前が大正解で“完”(※3)を迎えてしまい、とても複雑な思いをしたことがある。長く楽しむためにも、犯人の存在に確信が持てるようになるまでは素直に「わかりません太郎」とか入れておくのが吉だ。
▲犯人の名前をタッチ入力。ちなみに、一度読み進めてしまえば、何度もストーリーを読み直さなくても犯人は簡単にわかるようになっている。攻略サイトに頼るのはもったいないぞ。 |
●目から耳から、流れ込む恐怖
個人的にも当時ちびりまくっていたのが、音源的な演出である。今回のアプリ版になるに際し、サウンドも再収録されているとのことで、そのこだわりぶりもみてとれる。
ストーリーが進んでいき、うまく事件を解決できないでいると、どんどん人が殺されていく。もちろん、自分も殺される。しかも、完全に死亡フラグが立っていて、殺されるのがわかっていても怖い。恐怖を煽りに煽って、グサリとやってくるのである。とくに、恋人の“真理(名前変更可能)”に殺されるバッドエンディングは、いまでもトラウマになっている。スキーのストックで、「ザクッ」という効果音とともに串刺しにされてしまっては、「痛いの怖いの」と半ベソをかいてしまうのもやむなしだ。
▲恐怖の瞬間。ここまで進んでしまっては、もう逃げられない。あとは観念するのみである……のだが、怖いものは怖い!! |
ちなみに本作は、TOP画面の“設定”から、残酷表現の強さを変えることができる。スーパーファミコン版やプレイステーション版をプレイしたことがあるような“オトナ”なユーザーは、“強”にしておくことをオススメしたい。
▲アプリを立ち上げっぱなしにしておくと見落としがちだが、TOP画面から設定を変えることができるのだ。文字設定やページのめくりかたも変更可能。
本作の恐ろしいのは、ストーリーが長引けば長引くほどより凄惨な出来事が起こるようになっているところである。最初のほうはすでに殺された死体しか出てこないのだが、中盤以降はリアルタイムで殺人が行われていくので、よりフレッシュな(!?)死体、もしくは現場が待っているのだ。文章自体は、全力で画面をスライドさせれば目に入れずに読み飛ばすことも可能だが、ぜひきちんと読んでいって、恐怖を記憶に留めておいてほしい。慣れれば、この刺激が快感に変わっていくはずだから……。
(※1)1980年代後半~1990年代前半で、新本格推理ブームと呼ばれていた。綾辻行人や法月綸太郎、有栖川有栖ら、現在も活躍する作家がこの時期に多数デビューした。ちなみに、筆者がオススメするのが東野圭吾著『名探偵の掟』。『かまいたちの夜』同様に、怖い展開が多い本格推理小説の仕組みをギャグ満載で説明してくれるので、安心して“ミステリ知ったか”に必要な知識を学べるのだ。
(※2)大まかなシナリオの分岐だけでも5つ以上ある。
(※3)本作では、グッドエンディング(内容的には悲しいものもあるが)を迎えると“完”、バッドエンディングを迎えると“終”の文字が最後に表示される。
かまいたちの夜 Smart Sound Novel
- メーカー
- スパイク・チュンソフト
- 配信日
- 配信中
- 価格
- 1000円[税込]
- 対応機種
- iPhone4以降 / iPad(第1世代以降) iOS 5.0.1以上
- コピーライト
- (C)Spike Chunsoft Co., Ltd. All Rights Reserved. 「サウンドノベル」は、株式会社スパイク・チュンソフトの登録商標です。
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