『ケリ姫クエスト』の続編話も飛び出した! 開発者を直撃インタビュー
2012-03-28 12:40 投稿
●次回作はオンライン要素や新職業など、大幅パワーアップ!
ガンホー・オンライン・エンターテイメントから配信中のiPhone、Android向けアクションパズルゲーム『ケリ姫クエスト』。2011年11月に配信されるやいなや、瞬く間に数千件のレビューが付き、いまやその数は50000件を超える。『ケリ姫クエスト』(以下、『ケリ姫』)は、兵士を蹴り飛ばしてモンスターを撃破し、集めた装備で兵士を強化するという、パズルとRPG要素を併せ持つアプリ。App Storeでの評価も★4.5と好評で、いまも月1回のペースでステージの増加やアイテム追加といったアップデートが実施されている。そんな人気作の現状と次回作についてプロデューサーの西村大介氏とプランナーの浅田一輝氏に話を伺った。
▲プロデューサーの西村大介氏(左)とプランナーの浅田一輝氏(右)。
――まず、ぶっちゃけ『ケリ姫』のダウンロード数ってどれくらいなんですか?
西村 いまは160万くらいですね。
――スゴ! 大人気じゃないですか!
西村 おかげさまで(笑)。いまもダウンロード数が右肩上がりで伸びてます。
――iPhoneのほうが数は多いんですか?
西村 Androidのほうがダウンロード数も売上も多いですね。端末の母数が多いので、気づいたらiPhoneを抜いちゃってました。
――意外ですね。Androidは課金されにくいという話をよく聞きますけど。
西村 Googleさんのマーケットで広告を出していただいて伸びたのもあるんですが、ゲームのシステムとして、エヌビディアさんと組んでTegra版の展開があったのがひとつ。もうひとつはiPhoneのツイートを見たAndroid端末のユーザーに、Android版もあることをうまく認知させることができたのが大きいと思います。あと、細かな点なんですが、ゲームからのツイートや、ケリ姫の公式サイトからのツイートに乗せてあるURLは、PCで見たらPC用のサイトへ、iPhoneだったらApp Storeのケリ姫のページ、AndroidだったらGoogle Playのケリ姫のページに飛ぶようにしていますね。
――App Storeでレビューが付くのもすごく早かったですよね。
西村 じつは、最初に話題になったのはAndroidの海外だったんですよ。それからユーザーの口コミでiPhoneのほうに火がついて、さらにiPhoneの国内のほうのダウンロードが伸びていった形ですね。
――なぜ海外で?
西村 オリジナル版のリリースと同時にエヌビディアと組んで開発したTegra版もリリースしたんですけど、そっちのプレスリリースが強くて、海外での評判が先行した感じです。
――どうしてTegra版を出そうと思ったんですか?
西村 もともとは、うちのほかのタイトルに話があったんですが、ちょうどタイミングが合ったので、そっちじゃなくてこっちでやりましょうと(笑)。日本ではTegra対応の第1号でした。『ケリ姫』自体が非常にチャレンジングなゲームだったので、やれることは全部やろうと思っていました。
――「これは売れたな」と実感したのはいつごろですか?
浅田 やっぱりランキング1位とった瞬間ですかね。
西村 プロモーションのやり方をいろいろ考えたんですけど、どうしようか悩んでいたんですよ。ひとつ決めていたのが、ユーザーさんが来てくれたときにゲームが完全じゃなかったら離れていってしまうので、最初のプレスリリースは絶対にバグがない状態で出そうと思っていました。それで、ユーザーさんの声を聞いて、これなら大丈夫だと確信したら、大きなプロモーションを打とうと思っていたんです。でも、出した瞬間にユーザーさんが口コミで集まってくれたので、そのときにこれはいけるのかなと。
――もともとの開発の経緯は何だったんですか?
西村 うちは、各プランナーが自分のアイデアを出しておもしろかったら作っていいという流れがあって、『ケリ姫』はその中のひとつでした。
浅田 『ケリ姫』の開発チームはもともとオンラインゲームを作っていたスタッフなんですが、スマートフォンはほかのデバイスとはインターフェースも操作性もまったく違っていて、まずユーザーに好まれる操作性はどんなものかを考えたのが、いちばん最初のステップですね。当時は引いて飛ばすというのが流行っていましたし、スマートフォンとの相性がかなりいいと思いました。
――姫が蹴るというアイデアはどこから?
浅田 兵士を蹴って戦わせるという部分に行き着くまでは早かったですね。電車の通勤中に考えたくらい(笑)。姫が蹴るという世界観は、みんなで形にしていきました。
西村 『ケリ姫』は、ある程度自由に開発していたので、ケリ姫チームのスタッフ以外も興味もって自分からいろいろやってくれました。うちのスタッフはこれまで開発に携わってきたタイトルでは、、バックグランドがしっかりしたゲームを作ってきたので、世界観にこだわる人が多いんですよ。
――ストーリーをマンガ風にするのは初めから構想にあったんですか?
西村 企画段階からありました。最初は企画書でこのゲームの世界観を伝えたいから、キャラクターがいて、蹴って、当たるという4コマ漫画を作ってくださいというお願いをデザイナーにしました。イラスト単体で書くというよりも、ストーリーの絵を描いてもらって、シチュエーションの中から必要なシーンを切り取ってゲーム性を表現するという作り方です。
浅田 多元語対応することが最初から想定にあったので、できるだけ文字で語ることはしたくなかったんです。そう考えると方策として絵に頼るしかなくて。文字もなく音もないという状態のなかで、いちばん伝わると思ったのがマンガ調だったんです。ユーザーさんからは、ストーリーの続きを見たいという声もあって、ひと安心って感じですね。
――ゲームエンジンにUnityを採用していますが、Unityだから実現できたところは?
浅田 『ケリ姫』に関していえば、ステージですとか、キャラクターのステータスですとか、そういうレベルデザインは、すべてやらせていただいたんです。自分はプランナーなので、コードを書いたりはできないんですが、Unityはインターフェースが非常に優秀で、とくにプログラムの知識がなくても、そういった部分をカスタマイズするのは、わりと簡単にできちゃうんですよ。プログラマーさんが横で作っている最中に、となりでレベルデザインしたりとか、平行作業で進めることができたのはよかったですね。
――逆に苦労したことってあったんですか?
浅田 自分自身がパズルゲームをがっつり作った経験がなかったので、ある意味、開き直って好きなように作ったあとに、自分で改めてプレイして手直ししました。社内の方にも相当遊んでもらって、微調整はしたものの、ここはやばかったというのはなかったですね。
西村 浅田自身がかなりのゲーマーなので、システムだったりバランス調整だったりが好きなんですよ。そのバックグランドがあったから、本人はあまり苦労していないように見えているんですよね。
浅田 最初の段階からゲームバランスの部分は数値化してエクセルでテーブルを全部作っていたので、難易度をちょっと変えたいというときも、特定のステージだけを簡単にするのではなくて、全体の波で調整するようにしていました。
西村 だめだから直すのではなはくて、もう少し初心者に優しいほうがいいとか、難しいほうがいいとかをちょっとずつくり返して作った感じですね。かなり開発寄りの話になるですけど、MMOとかPC型のゲームだと、1個テーブルを変えた後の確認作業で、またexeを叩いてプログラムを立ち上げなおす必要があるですが、Unityにはそれが全然ないんです。数値を打った瞬間にすぐに反映されてプレビューできるので、PCだと10分かかっていたことが1分でできるので、それがすばらしいですね。
――すごくスムーズに進んだんですね。苦労話が聞きたかった(笑)
浅田 苦労話ですか(笑)。最初の構想段階では武器のパラメーターに属性要素があったり、精錬システムとかもあったんですけど、発売直前にぜんぶつぶしました。自分のなかでユーザーさんにわかってもらえるか不安な部分があったので、上司を全員呼んで、「これどうですか」って聞いたら、全員が「ノー」で(笑)。スマホのユーザーさん向けにシンプルにする力加減が難しかったですね。インターフェースの玉割って経験値が入るという部分は、最後の1ヵ月で8回ぐらい変更しているんですよ。
西村 あそこは、このゲームの肝だからね。ゲーム内のコインを使って経験値を得るというわかりづらいシステムのうえ、さらにわかりづらい精錬システムが載ってて(笑)。これをどうするのかというのに、最後の1ヶ月を費やしました。
浅田 プレイしていた社員が、最後までルールを理解していなかったことが発売直前に発覚しまして(笑)。システムはかえずに見てくれだけを変えることにひたすら試行錯誤していましたね。
▲苦労したインターフェースというのがこちら。経験値玉の種類によって武器やアクセサリーなど、経験値が入るアイテムが異なる。
――武器の経験値が貯まると主人公が強くなる仕組みも珍しいですよね。
浅田 自分がまえに担当していたオンラインゲームで苦労したのが、ステータスを武器に持たせちゃうと、どんどんインフレしてしまうんですよ。強い武器を用意するんだったら、強いモンスターを作らなくちゃいけなくなって、アップデートがだんだん苦しくなってしまう。『ケリ姫』ではその部分をなんとか改修したくて、武器とか防具の個数が増えるだけで、ユーザーさんが喜ぶ環境を作れないかと思ったのが、きっかけです。
――浅田さんは相当なゲーマーとのことですが、もともとコンシューマー畑の人なんですか?
浅田 もともとはゲーマー代表みたいな感じです。じつはアルカディアで記事を書いてたこともありますよ(笑)。学校帰りにゲーセンに寄って、家に帰ったらPC付けてみたいな。『ゼルダの伝説』の初期からやってました。3歳でイカダが作れず泣いた(笑)。
西村 浅田を知っている人だと、「何でこんなカジュアルなゲームを作ったの?」と不思議がってますよ(笑)。
――ちなみに、好きなゲームを3つ挙げるとしたら?
浅田 ギャップが凄いですよ(笑)。『ディアブロ2』、『スタークラフト2』、もうひとつ挙げるなら『エルダースクロール』系ですね。
――渋い(笑)。そういう、コンシューマーよりというか、ゴリゴリのゲーマーの方から見て、スマホのゲームってどう見えてるんですか?
浅田 『ケリ姫』を企画したときに西村さんと話したことがあったんですが、ファミコンだったり、スーファミだったり、プレイステーションだったり、ハードってどんどん進化していったじゃないですか。『ドラクエ』だったら最初は主人公ひとりでモンスターもひとり、『II』になったら仲間が増えて、登場するモンスターも増えてっていう進化の過程があって、スマホはそれをなぞっている印象ですね。コンシューマーで10年、20年かかっていたところをスマホは凄い勢いで追いかけていると、個人的には思います。
――スマホのゲームで影響を受けたタイトルってありますか?
浅田 『インフィニティ・ブレード』ですね。モバイルの部署に最初に移ったときは、ガラケーのイメージがとても強くて、操作系としても自由がきかないというか、リアルタイム性がないので、アクションゲームよりもコマンド選択式のほうが相性がいいという印象がとても強かったんですよ。でも『インフィニティ・ブレード』を見たときに、グラフィックもコンシューマーのゲームに負けないレベルになっていましたし、操作系としてもアクションゲームチックなノリでリアルタイムでゴリゴリ動くゲームになっていて。ゲーマーが納得するというか、すごくしっかりと作り込まれたシステムを積んでいて、かなり刺激を受けました。
――『インフィニティ・ブレード』と同じ、アンリアルエンジンを使うという選択肢はなかったんですか?
浅田 当時はUnityを使っていたというのもありますし、個人的には、Unityがアンリアルエンジンに何か劣ってかと言われるとそういうわけではなく、UnityにはUnityの、アンリアルにはアンリアルのよさがあって、きちんと住み分けができていると思っています。ある意味、数ヶ月単位で作るゲームに関しては、むしろUnityのほうが作りやすいかもしれませんね。
――次回作の構想ってあるんですか?
浅田 じつは作ってます。『ケリ姫』も自分の中では、『ドラクエI』や『II』の段階だと思っていて、プランナー的にも進化させるための遊びはいっぱい用意しています。『ケリ姫』をやっているユーザーさんがどういう形だったら納得するのかを考えて、盛り込んでいきたいですね。
西村 世界観から始まっているゲームなので、絵もはちゃんとやろうというのがあって。システムなどは、こちらでやりたいところとユーザーさんが望んでいる部分もあるのでまだまだ形になっていないんですが、世界観は伸ばしていこうと思って、絵は先行して作っています。
――今回はiPhoneもAndroidで?
浅田 そうですね。
――『2』も同じ開発チームなんですか?
浅田 同じチームで作っています。いまはプランナーひとりとプログラマーがふたり。デザイナーさんがひとり。モンスターだったり、エフェクトだったり、量産しなくちゃいけない部分は、一時的にほかのデザイナーさんに協力いただいてますが、コアになるのはこの4人ですね。
――どんな内容になるのか、ちょっとだけ教えてください!
浅田 『ケリ姫』のパズルゲームとRPGが融合しているところは、うまくできてるなと自分的にも思うので、そこの骨支だけは変えずに『2』も作っています。あのゲーム性とあのおもしろさはそのままに、モンスターが増えるととか職業が増えるとか、いろいろユーザーができることを増やしたうえで、より長く遊んでもらえるコンテンツになることは間違いないので、次回作も楽しみにしていてください。
西村 オンライン対応にして、長く遊んでいただけるところをメインとしてきっちり作りたいですね。。成長要素も増やしますし、主人公以外も強化したいという声もあるので、その部分は最優先事項として、実現したいと思っています。
▲『ケリ姫クエスト2』のイラストを大公開! 姫と兵士のほかにネコとハチの姿が。モンスターなのか、それとも新しい仲間なのか? 気になりすぎる!
ケリ姫クエスト
- メーカー
- ガンホー・オンライン・エンターテイメント
- 配信日
- 配信中
- 価格
- 無料(アプリ内課金あり)
- 対応機種
- iOS 4.1 以降のiPhone/iPod touch、Android 2.1 以上
- コピーライト
- (C)2011 GungHo Online Entertainment, Inc. All Rights Reserved.
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