思いがけず告白された主人公の恋の行方は？　『メモリーズオフ6 ～T-wave～』

●かけがえのない想い……すぐそばに

家庭用ゲーム機オリジナルの恋愛アドベンチャーゲームとして息の長い人気を誇る『メモリーズオフ』シリーズ。本作はそのiPhone/iPod touchへの移植作です。テキストや画像はもちろん、美麗なムービーや声優による音声もしっかり再現されています。

シリーズの第1弾『メモリーズオフ』が発売されたのが1999年の秋でしたから、もう10年以上続いてるんですよね。つい先日、最新作である『ゆびきりの記憶』のPSP版が発売されたばかりですが、本作は、そのひとつ前、ナンバリングタイトルの第6作目（ファンディスク的タイトルも含めると10作以上発売されているのですが）にあたります。

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もともと、初代『メモリーズオフ』 自体、”明るく楽しい学園恋愛物”が全盛だった当時、同じく高校生を主人公としながら、“人の生死”、“心の傷”などをメインテーマに据えた、シリアスな ドラマが好評を博した作品でした。2作目以降では、さらに“三角関係とそれに伴う修羅場”や“鬱な過去”なども加味し、よりシリアスなシチュエーションを 描くことで、他の恋愛ゲームとは異なる「好きになった人とつき合うって、楽しいことばかりじゃないんだよ」という、いわば“恋愛の影の部分”にも、キッチ リと焦点を当てていることが特徴となっていました。（『メモオフ』くらいですよ、｢つぎの新作では誰が死ぬのか？｣なんてファンのあいだで事前予想が飛び交う恋愛ゲームって！）

ただ、そのシリアスさ、重さから、人によっては手に取りにくくなっていた面も否めません。本作『メモリーズオフ6』では“原点回帰”を合言葉に、1作目に近い学園生活(くしくも同じ“澄空学園”が舞台です)をベースにした初々しい恋模様を描いています。そのぶん、初めてこのシリーズを手に取る人にも、とっつきやすくなっているのではないでしょうか。

▲りりすは、いかにも”くされ縁の幼なじみ”っぽい、明るく、ちょっと押しの強い少女に見える。昔は、こうではなかった気もするのだが……。	▲智紗は、控えめで内気な”守ってあげたい”タイプの女の子。そんな娘が勇気を出して告白してきたとあっては無碍にしづらい。

本作は、学園祭を目前に控えた主人公、塚本志雄が、幼なじみの少女”遠峯りりす”の親友である”箱崎智紗”から告白され、その返事を学園祭の後夜祭まで待ってもらう……というシチュエーションから物語が始まります。
基本的には画面下部に表示されるメッセージをタップして読み進めていく、ノベルタイプの恋愛ゲームではオーソドックスなスタイル。もちろん、随所で選択肢が現れた場合は、いずれを選択するかによってのちのストーリーに影響を与えます。

▲なかには、どちらが好印象を与えるのか迷う選択肢も。ありのままがいいのか、変化を認めるべきか……？

ヒロインは、前述のふたりに、3年生の先輩で生徒会長の”嘉神川クロエ”、偶然知り合った少女小説家の”鈴代黎音”、文化祭実行委員の後輩”春日結乃”の3人を加えた合計5人。

▲クロエは地元の名士の娘で、フランス人の血を引く文武両道の美少女とあって、主人公を含めた全校生徒の憧れの的。	▲道端で空腹で倒れていたところを主人公とりりすに拾われる黎音。美人だが性格は大雑把で豪快な女性。	▲澄空学園に転校してきたばかりの結乃は真面目な性格で、クロエや主人公たちを後輩として慕ってくれる。

しかも、智紗とは｢とりあえず後夜祭までのお試し期間｣ということで”仮恋人”という関係になっており、いっしょに登下校したり、休日にデートし たりと、甘酸っぱいメモリーを重ねることに。｢リア充爆発しろ！｣と言いたいところですが、逆に考えると、智紗以外の4人を選んだときは、後夜祭でキッチ リ彼女を振らないといけないワケで、ここらヘンのきびしさが、やっぱり『メモリーズオフ』なのだと痛感させられます。

それ以外の部分でも、かなりキチンとした背景が主人公を含めた各キャラに設定されていて、ヒロインのルートに入ったからと言って、｢キャッキャウフフ｣ していればよいわけでないのも確か。とくに、りりすと智紗に関しては、もともと親友どうしであり、かつ主人公の過去も絡めた複雑な経緯があってひと筋縄で はいきません。後夜祭でのグッドエンド後も、ヒロイン視点での前日談や｢第2章｣とでも言うべき”その後”のシナリオが用意されているあたり、やはりメイ ンヒロインは、このふたりと考えるべきなのでしょう。

とは言え、どのヒロインもハッピーエンドを迎えれば、キチンと主人公とラブラブした日々を迎えることができます(当たり前のことのように聞こえるかもし れませんが、過去作ではホントいろいろあったんです！)。恋愛面だけでなく、学園生活もしっかり描写してあるので、”学園コメディ”的な雰囲気を楽しみた い方も、ぜひプレイしてみてはいかがでしょう？（キッシー嵐山）

▲個人的には、平野綾がおどおど控えめな智紗を、後藤邑子が颯爽とした先輩のクロエを演じている点が、『涼宮ハルヒ』を知っているとおもしろかったり。

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