スクエニプロデューサー安藤武博氏のブログ“スマゲ★革命”第八回 「iPhoneとAndroid」
2012-02-13 11:17 投稿
●第八回 「iPhoneとAndroid」
先週、各種まとめサイトに“スクエニが『リベリオンオーバードライブ』なる商標を登録これは神ゲーの予感”なる記事が載っていましたが、それを登録したのは俺だ俺だ俺だ俺だ俺だー!(c)タカ&トシ
すでにネタバレもしているようですが、これのことでした。
実は、これとは違う別の“何か”も用意しています。ここでも発表しようと思いますが、なかなか面白い試みを考えています。神ゲーではないのでハードル低めでご期待ください。※ヒント:音楽
さて、今日は“iPhoneとAndroid”について書きます。去る2010年末に行われたAppBank主催の忘年会での事。参加者であるiPhoneアプリ開発の雄たちに「ぶっちゃけAndroidどうよ?」なる質問が。その時、九割の意見は、僕も含めて「無いわー」でした。iPhone大好きの集まりでしたから当然ですけどね。それから1年とちょっと。いま現在はどうなっているのでしょうか?
「無いわー」と言いながらも、その時点で端末の数がすごく増えることは分かっていました。当時iPhoneを販売しているのはソフトバンクだけでしたし、キャリアのシェアから言っても今後、圧倒的になるな・・・と言うのは明白でした。店頭ではガラケーからガラケーへの買い換えにすごいお金がかかるようになり、スマホに買い換えると安いという“ほぼスマホ1択”の様相。まずは、とにかくやってみよう!ということで、創ってみましたAndroid版『ケイオスリングス』。2011年12月からAndroid端末向けポータルサイト『SQUARE ENIX MARKET』で国内限定配信しています。現在ではauとNTTドコモの対応Android端末で遊ぶことができます。
で、どうだったか。『ケイオス』はiPhoneからの移植でしたが、“思った通り”大変でした。まずは端末の選定が大変。iPhoneは機種が3G、3GSと4、4Sくらいしか無いですが、Android端末はめちゃくちゃ数がある。『ケイオス』はスマホアプリの中でも3Dもボイスもバリバリのハイブローなコンテンツですから、動かない端末が結構ある。いかにも動きそうで実は3Dの描画が苦手な人気機種もあったりする。より多くの人に遊んでいただきたいのは、やまやまでしたが断腸の思いで下記の2ポイントから対応機種を絞りました。
その1“GPU”。簡単にいえば携帯に入っている部品の中で“画像処理”を担当する頭脳です。コイツの性能がある一定以上無いと3Dがバリバリ動かないので、それぞれの端末を調べて選別をしました。具体的にはまず、iPhone4と同じくらいのGPUが無いとダメなのでこれを調べました。結果、“PowerVR SGX 540”ないしは“Adreno205”以上の性能があるGPUを搭載した端末を対象にしました。マニアックですみません。ちなみに、どうやって調べたかというと、コンビニで売っていた『Andoroidケータイ徹底分析。買うならこの1台!』みたいな本を買ってきて調べました。一般の人にはあまり関係のない情報なので公式HPにも載っていない事があるんですよね。
その2は“OS”。OSのバージョンが2.2から2.3に変わったことによって、表現できるゲームの幅が広がりました。またマニアックになっちゃうので細かい話はやめますが、2.2だと『ケイオス』を動かすのは厳しいという判断でした。先のGPUとあわせて対象外の端末で試しに動かしてみたところ、実際に「すごく重い、カクカクする。」のがわかったので外しました。巷間、出回っている端末にはまだまだOS2.2のものも多いので、期待して『ケイオス』をストアで買おうと思ったら、実は対応していない事がわかった・・・orz というケースも多かったと思います。ご期待にそえずにすみませんでした。“SQUARE ENIX MARKET”では2.2に対応しているアプリもありますが、いまのところ対応OSの差が、売上にそのまま出ている感じがあります。
さらにAndoroidが厄介なのは、“その1”と“その2”をクリアしていても、まだ“動かない端末”があるという事ですね。ガラケーからスマホになってOSが統一され、端末ごとの動作確認が楽になるかも・・・なんてのは予想通り幻想でしたわ。ガラケーと同じように、端末が発売されるたびに日々チェックしとります。その点iPhoneは機種が少ないし、シンプルで良い。言い換えれば“ハード”と“OS”、加えて“流通販売”が同じ会社からトータルで出されるというのは、お客様にも創る側にも本当にわかりやすい。Androidにはどうしようもない事かもしれませんが、本当にそうなんでしょうか?
そこで出てくるのがAndroidアプリの売り場問題。これもまだまだiTunes Storeに比べるとわかりにくい。大きくわけるとふたつわかりにくい。“(a)いっぱいあってわかりにくい”。“(b)どこにあるのかわかりにくい”。(a)に関しては、逆にいっぱいあるのが魅力にもなりますから、それぞれのストアが個性を出してお客さまにとって良いお店を作ればいいです。そのうち「これを買うならこれ」とか、「いまはここで買うといい」みたいな感じで、大型家電量販店のように、まとまって行くかもしれません。
Googleが運営しているAndroidマーケットに関しては以前に比べるとだいぶキチンとまとまってきたように感じますが、海賊版やそれに見せかけた不正アプリ・詐欺アプリといったワイルド&カオスな問題も未だにトピックになっています。そこから切り分ける意味でも僕達は『SQUARE ENIX MARKET』をオープンして、皆さんが安心してアプリを買えるようにしたというのもあります。ワイルド&カオスなAndroidマーケットですが、なんだかんだいってもヒットアプリになると“売り切り型”、“基本無料+都度課金型”関わらずiTunes Storeでのヒットアプリの5分の1くらいの売上規模はもうあるようです。これは、これからもどんどん伸びていくでしょうね。
次に(b) どこにあるのかわかりにくい問題。は端末ごとの問題や、根本的な導線の構造問題もありますね。Androidケータイを買ってもAndroidマーケットにはすぐアクセスできますが、“SQUARE ENIX MARKET”までは、なかなか簡単に辿りつけないなどの問題です。ではAndroidマーケットにまとめて置いてしまえばいいかといえば、前述の通りちょっとワイルド&カオスなので、現場の感覚だけで言うとiTunes Storeほどの安心感はまだ無いです。どんどん良いコンテンツが売られれば安心感にもつながるので、我々が協力できることも大きいと思います。いずれにせよお客さまにとって良質なコンテンツが求めやすくなっていけば良いです。
結局iPhoneとAndroidの両方で『ケイオスリングス』を遊んでみると、どっちもおもしろく遊べます。Andoroid版は裸眼3Dにも対応していますし、iPhoneよりスペックの高い端末で遊ぶと、それはそれは美麗です。ただ、Andoroidは売り場や端末の多さといった“わかりにくさ”の積み重ねがあり、僕から、そしてお客様からなんだか”まだ遠い”感じがします。あくまで個人的な感覚の話ですが、“近づける”何かをしなければ。つまり、何もしないよって事ではなくてAndroid応援モードです。安藤はこれからもiPhoneとAndroid両方でアプリを創ります。基本的にこれから出すゲームは、どちらでも動くものばかりです。
iPhoneとAndroid。どっちもいいんだけど、iPhoneは最初から「LOVE!」。Androidは、「LIKE!」・・・限りなく「LOVE」に近い(by鮎川まどか)って感じです。
つづく
■追伸
僕と一緒にスマゲでナンバーワンを取りたい人、募集しています。
安藤武博 スクウェア・エニックスのゲームプロデューサーにして、同社のスマートフォンアプリ制作の中核を担う人物。早くからスマートフォン事業に携わってきたことから、アプリに対してはすでに確固たる理論を構築している。それでいて、つねに新たなステージへのチャレンジを忘れないスマートフォン業界の革命児。 |
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