「Appleは好きだけど、ビジネスとしてはAndroidです」 ソーシャルゲームのスペシャリスト、グリー伊野氏がスマホソーシャルゲームを語る【CEDEC 2011】

2011-09-07 20:47 投稿




●App Storeを席巻する“フリートゥプレイ”ゲームたち

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2011年9月6日〜8日の3日間、神奈川県のパシフィコ横浜・国際会議センターにて、ゲーム開発者の技術交流などを目的としたCEDEC(コンピュータエンターテインメントデベロッパーズカンファレンス) 2011が開催されている。


 ここでは9月7日に行われたセッション“グリーにおけるスマートフォン向けソーシャルゲームの創り方”の模様をお届けしたい。登壇者はグリーの開発本部 ソーシャルプラットフォーム統括部の伊野友紀氏と、アドビシステムズのアンディ・ホール氏のふたり。


 まずは現状のマーケットの確認から。伊野氏が考える現在ビジネスができるマーケットは、ブラウザ、iOS、Androidの3つ。そのなかで伊野氏はまずApp Storeに注目。スライドに映し出されたのは、App Storeランキングのトップセールスカテゴリー。『シュタインズ・ゲート』や『ファイナルファンタジー タクティクス』、『バイオハザード4』など家庭用版でも人気のタイトルが並ぶなか、伊野氏が青く囲ったタイトルたちはすべてソーシャルゲーム。しかも、“フリートゥプレイ”と呼ばれる基本プレイ料金が無料でアイテム課金のタイトルが約半数を占めている。「これが現在のスマホアプリ市場のトレンドです。しかも、これはゴールドラッシュと呼ばれたApp Store初期の盛り上がりよりもさらに大きな可能性を秘めています」(伊野)。

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 と、App Storeの可能性について語る伊野氏だったが、ここで話はAndroidへ。「こう言っておいてなんですが、グリーとしてはAndroidを重視しています。社長の田中もTwitterでつぶやいていますが、Appleは好きだけど、ビジネスとしてはAndroidです」と。そして業界内にある懸念点のひとつ「Androidはビジネスになるのか? 海賊版問題は大丈夫なのか?」という点に対しては「現状、成立しています。少なくともフリートゥプレイがメインの自社タイトルにおいては問題としていません」と説明した。

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 それでは具体的に“GREEにおけるスマホ戦略”とはどういうものか。グリーのスタンスは、多くのお客さんにサービスを届けるために、多くのプラットフォームに多彩な技術で参入するというもの。そのスタンスに則って、同社は国内のSNSサービスとしては最速で、Webアプリ、iOSアプリ、Androidアプリのフルラインアップをそろえてきている。そして同社がここ最近力を入れているのが“ハイブリッドアプリ”と呼ばれる形式のアプリだ。これは、「簡単に言うと、従来のブラウザゲームをアプリでつつんだものです。社内では“ガワだけアプリ”なんて風にも呼ばれています(笑)」(伊野) と、少しくだけた説明を行った伊野氏だったが、実際はブラウザゲームとしては更新の手軽さ、アプリとしてはプッシュ通知機能、電話帳へのアクセスなどの多機能性と、両者のメリットをうまく合致させた新しいタイプのアプリと言っていい。

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 このハイブリッドアプリが生まれた経緯は、わずかの偶然(担当者がたまたま手が空いていた)と、実験的な意思(App Storeの導線のチェック)が組み合わさったものであったが、ここで得たノウハウを積み上げたことで、同社は自社タイトルの『探検ドリランド』でApp Storeランキングの1位を獲得するに至ったのだ。


 この『探検ドリランド』を例に挙げ、「ソーシャルゲームでいちばん重要なことは、“集客”、“活性化”、“収益化”の3つです。そしてグリーのプラットフォームは、この3つを効果的にアプリに盛り込めるように作られています」と話を進めた伊野氏。『探検ドリランド』でも、“招待して友だちを増やす”、“仮想通貨の提供”など、いわゆる“ソーシャルゲームに必要な施策”を愚直に展開していったという。ゲームに関するもう少し踏み込んだ話も聞きたかったのだが、「それに関しては明日のセッションで、べつの人間がしてくれますので、どうかそちらをお楽しみに」(伊野)とのことだ。

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 そしてここからは伊野氏からバトンタッチしてアドビシステムズのアンディ・ホール氏が登壇。アドビとゲームの結びつきがいまいち理解できないまま話は始まったが、アンディ氏が紹介したのはアドビが提供する“Adobe AIR”。このツールを使えば、従来のFlashを“AIR”という形式にしてさまざまなデバイスで動作させることができる。もちろんiOS端末でも、だ。これについてアンディ氏は「なぜこういうものができたかというと、Flashはどうやら“i”ではじまるデバイスに嫌われているみたいなので……(笑)」とその開発秘話(?)を語ってくれた。


 アンディ氏は壇上で実際の開発環境上でデモンストレーションを実施。ヤモリの画像がなまめかしく動く様子、そのコンテンツをタブレット端末に簡単に書き出せることを見せつつ「“AIR”はFlashで長年培ってきた技術があるから、単純なテキストや動画だけでなく、GPSや加速度センサーなどさまざまなサービスに対応できます。デバイスによってそれを自由に取捨選択することができるんです」(アンディ)と“AIR”のフレキシブルさを説明した。

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 ここでふたたび伊野氏が登壇。この“AIR”に関して、「グリーもAIRプラットフォームの対応を検討しています。ですからいまのうちからゲームを作っていただけると、いいタイミングでサポートできるかと思います」とバックアップ体制を明言した。



 最後は今後の展開について。今後グリーはネイティブアプリへの取り組みを強化していくとしながらも、そのなかでソーシャル性をさらに高める努力をしていきたいと語った。「グリーは集客の仕組みなどをよりいっそう強化していきます。だからメーカーの皆さんはおもしろいゲームを作ることに注力してください。それと、アドビさんのように協力してくれる会社さんはいつでも募集しています。もちろん個人としてグリーに入って貢献したいという人でも結構です。いっしょに業界を盛り上げていきましょう」と締めくくった。

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