スマホ向けゲーム、海外進出での勝ちかたとは【GREE Platform Summer Conference 2011】

2011-08-06 00:44 投稿




●主要ゲームメーカーがパネルディスカッションを実施

 2011年8月5日、都内で“GREE Platform Summer Conference 2011”が開催された。パネルディスカッション“世界で戦うコンテンツ”では、コンシューマーに加えてスマートフォン向けゲームでも業界を牽引している主要メーカーが集い、いかにして日本発のスマートフォン用コンテンツを世界に広げていくのか? というテーマで現状の分析および展望を行った。



 登壇したのはセガ モバイルニューメディア事業部MNM2部長の岩城農氏、コーエーテクモゲームス 常務執行役員ネットワーク事業部副事業部長の藤重和博氏、コナミデジタルエンタテインメント 執行役員の上原和彦氏、カプコン CS開発統括大阪制作部MC制作室室長の手塚武氏。これにエンターブレイン代表取締社長の浜村弘一氏がモデレーターとして加わった。

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セガ 岩城氏

コーエーテクモゲームス 藤重氏

コナミデジタルエンタテインメント 上原氏

カプコン 手塚氏

 まず議題となったのは、海外進出の難しさについて。今回登壇した方々はいまでこそスマートフォンを始めとしたケータイ向け事業を中心に取り組んでいるが、かつてはコンシューマーの分野で海外市場と向き合ってきた。その当時の経験からそれぞれが意見を述べた。

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 セガはかつてプラットフォーマーとして、また『ソニック』シリーズを擁するソフトメーカーとして海外で大きな成功を収めたが、現状はと言うと、プラットフォーム事業は撤退し、『ソニック』シリーズはかつてほどの人気はないという状態。プラットフォームはともかくとして、『ソニック』シリーズが下降気味になってしまったのはなぜか? 浜村氏は「日本のゲームが海外で売れていた時代とは、2Dのキャラクターが売れていたころだったのでは」と分析し、岩城氏も「3Dのグラフィックに移行する流れで苦戦している」とこれに同意する。一方で、岩城氏によれば2Dのキャラクターが海外でウケるという状況はいまも変わっていないそうで、事実スマートフォン向けに発売した2Dのシリーズ最新作、『ソニック・ザ・ヘッジホッグ4』は好調な売れ行きを記録。なので、『ソニック』シリーズに関しては「3Dにすることは必須条件ではないのかもしれない」という。とは言え、海外で成功するためには2Dの『ソニック』ばかり作っていればイイというわけではもちろんない。岩城氏はセガの海外市場への取り組みとして、“地産地商”を紹介。これは読んで字のごとく現地で作って、現地で商売するというものだ。「クリエイティブの輸出を否定する気はないが」と前置きをしたうえで岩城氏は、「現地の傾向を顧みずに作ると失敗につながることが多い」と結論づけた。



 コーエーテクモゲームスはご存知の通り、コーエーとテクモが2010年4月に合併して誕生したメーカー。旧コーエー系のシリーズとしては『信長の野望』、『三國志』という日本およびアジア圏に強いタイトルがあり、旧テクモ系では『ニンジャガイデン』、『デッド オア アライブ』という欧米で高い人気を誇るシリーズを擁している。つまり、国内外それぞれに適したブランドを持っているというわけで、藤重氏も海外で成功するためのヒントは「身近なところにある」と語る。それを踏まえたうえで同氏が考える、日本のタイトルが海外で苦戦する理由として挙げたのは、概ねセガの岩城氏と同じもの。つまり、現地の文化をわかっていない、というものだ。「ちゃんと文化を理解してキャッチアップしないと、いくらいいものを作っても売れない」と岩城氏。「ローカライズではなく、カルチャライズ。それをしなければ日本と同じように受け入れられることは難しい」と持論を展開した。



 さて、ここでの議題は海外進出の難しさについだが、KONAMIの上原氏は「我々としては難しいと思っていない」と言い切る。その理由について多くを語る必要はないだろう。『ウイニングイレブン』(海外では『Pro Evolution Soccer』)、『メタルギア ソリッド』、『サイレントヒル』シリーズなど、海外でも一級のブランドとして知られるタイトルを複数輩出しているからだ。それに加えて『遊戯王カード』というカードゲームの分野でもKONAMIは成功を収めているそうだ。では、その成功のキモとはなんなのか? 上原氏の答えは非常にシンプルで「テーマの組み合わせ、選びかた」というもの。「そこで受け入れられているテーマを素直にやればいい」ということだ。



 KONAMIと同じく海外展開において確かな実績を収めているカプコン。「我々は元々アーケードをやっていたので、グローバルに販売するというスタンスが“DNAみたいにあるのかもしれない”」と手塚氏は、海外が同社にとって極めて自然な選択であることを強調する。また、海外でヒットしている自社のタイトルを省みたうえで、キーとなっているのは映画のイメージであると分析した。つまり「ハリウッド映画は全世界で観られているが、邦画だとそうはいかない」ということだ。また、海外の人が遊ぶうえで文化を理解しなければいけない、というのはここまででくり返し述べられてきたことだが、手塚氏はそれに加えて「やった瞬間にエキサイト」できる作品がヒットするという例も挙げる。日本では記録的ヒットを記録した『モンスターハンター』シリーズが北米ではそれほど奮わなかったのは、“やった瞬間にエキサイト”できないゲーム性も要因であったと説明した。

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 コンシューマーにおける海外市場への取り組み、現状を把握したところで、いよいよ本題であるスマートフォン向けタイトルの海外展開に入る。まず浜村氏は各社のスマートフォン向けタイトルにおける実績を確認。セガは『龍が如くモバイル for GREE』で、コーエーテクモゲームスは『100万人の〜』シリーズで、コンシューマーとの連動を行い、それぞれ好評を博している。一方KONAMIは『ドラゴンコレクション』、『プロ野球ドリームナイン』で、カプコンは『スマーフ・ヴィレッジ』、『ゾンビカフェ』といったオリジナルタイトルを展開し、売れ行きも好調だ。いずれにせよ、各メーカーとも成功していると言っていいだろう。またここでは、スマートフォン向けタイトルの開発について、各社の特徴や展望なども語られた。セガでは『龍が如くモバイル for GREE』のようにコンシューマーの有力タイトルのソーシャル化を強化する考えがあり、コーエーテクモゲームスも同様に『信長の野望』、『三國志』という有力シリーズをスマートフォンでも注力することを検討しているという。KONAMIの上原氏は特徴的なスマートフォンタイトルの開発現場を紹介。同社では『プロ野球ドリームナイン』なら“パワプロプロダクション”の面々が手掛けるなど、対象となるコンテンツに強いチームが動く体制になっているというのだ。もちろんスマートフォン専門の開発チームもあるが、そこにはアーケード開発のメンバーもいるし、コンシューマー開発のメンバーもいるといった具合で、上原氏いわく「新しい、おもしろいことを考えよう」ということで集まったもの。カプコンの手塚氏は「あえてカプコンではなく、子会社を設立するのもあり」という大胆な考えを示す。これは「会社としての色合いが出てしまう」ことを避け、「いろいろなユーザーに遊んでもらいたい」という考えに寄るものだという。



 さまざまな展望、施策を持ってスマートフォンでのゲーム開発に臨んでいる各社だが、ここで浜村氏は今回のテーマの核心とも言える質問を投げ掛けた。ずばり、日本のスマートフォン向けタイトルは海外で成功するか? というものだ。カプコンの手塚氏は「そのままでは難しい」と回答。「現地に滞在して文化を肌で感じて、チューニングする必要があるのでは」と冒頭で述べた“ローカライズではなく、カルチャライズ”の必要性を改めて説いた。



 一方KONAMIの上原氏は「たぶんいけると思う」と前向きだ。その理由は、「いま日本で盛り上がっているスマートフォン向けソーシャルゲームの世界は、海外の人はまだ見たことがない」という点に寄る。とは言え、そのままでは難しいという点は手塚氏と共通しており、日本と同様の状況を作り出すには通信環境の整備が進むことが必要であるとした。スマートフォン向けのソーシャルに可能性を感じているのはセガの岩城氏も同じで、それに加えてパラメーターの微調整といった部分では日本のソレのほうが細かく行われていると主張。「本質的におもしろいものはうける」とこちらもまたかなり前向きな回答となった。



 しかし、コーエーテクモゲームスの藤重氏は岩城氏の意見とは正反対のものに。同氏の考えでは、地域によるチューニングは「最低限必要なもの」ものであり、たとえば韓国ではゲームがおもしろいどうこう以前に“流行っているものと操作性が違うから”という理由だけで遊ばれないこともあるという。また通信環境についても、日本は恵まれていると説明。「海外でもパケ放題のようなものがなければ売れない。ユーザーがお金を通信料ではなく、コンテンツに払ってもらうようにする工夫は必要」と手塚氏の意見を補完するとともに、課題が多いことを示した。とは言え、藤重氏は世界での成功については「いけると思うし、いけるようにしないといけない」と、決意とも覚悟とも取れる力強い意見を発していた。そのほか海外で成功するために必要な要素として、各社が共通して挙げていたのはグラフィックについて。多くの人はご存知だろうが、海外ではリアル系のキャラクターが人気を集める傾向があり、日本で多く見られるアニメテイストのキャラクターはリアル系に比べて支持を得にくいという実情がある。ここに関してはもっと文化を学ぶ必要があるという意見が挙がる一方で、カプコンの手塚氏は「最近は海外でも日本人がなじみやすいデザインが増えていきている。世界的な嗜好が似てきているのかもしれません」という分析を行っていた。

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 “日本のスマートフォン向けタイトルは海外で成功するか?”という問いへの答えをまとめると“条件付きでYES”と言ったところになるだろう。そして、その条件のひとつとして見えてきたのが環境の整備だ。そこで、最後の問いとして浜村氏は、スマートフォン向けサービスのプラットフォーマーとして業界を牽引するGREEへ期待すること、について各社に聞いた。



 KONAMIの上原氏は先日GREEが買収した北米の、スマートフォン向けソーシャルゲームプラットフォーム“オープンフェイント”での展開に期待すると語り、セガの岩城氏は「いまシリコンバレーでもモバイル、ソーシャルはバブルだが、そこで売り抜けるのではなく、地に足をつけて売っていってほしい」とコメント。「モノを作るときは、モノ作りに専念したい」と開発者の視点から語ったコーエーテクモゲームスの藤重氏は、「環境作りを作り手が考えなくても展開できるよう、マーケティング情報や現地の事情をコンサルティングするだけで、一歩踏み出そうと思える人がいる」と、改めて環境の充実を訴える。また、カプコンの手塚氏も「日本と海外のユーザーグラフをしっかりと公開してほしい」とモノ作りに専念できる状況を求めた。



 スマートフォン向けゲームが、近年急激な成長を遂げているのは誰もが認めるところだ。そして、それに携わる人々の多くはすでに日本という枠を飛び越え、海外に視線を向けている。彼らの思いを実現するうえでGREEが行うべきことは非常に多い。今回のセッションではその行うべきこととは何なのかが、より具体的に浮かび上がった印象だった。




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