「時代がそうなっていた」スマホ版『剣と魔法のログレス』ヒットの背景

2015-06-18 12:00 投稿

マーベラス×Aiming スペシャル対談

2013年12月にスマートフォン向けのオンラインRPGとしてリリースされ、現在はアプリストアのセールスランキング上位に名を挙げる『剣と魔法のログレス いにしえの女神』(以下、『ログレス』)。本作の魅力や人気はどこにあるのか? 成功の立役者となるふたりに話を聞いた。
(聞き手:ファミ通App編集部編集長 目黒輔)

※本記事内容は、2015年6月11日発売の週刊ファミ通に掲載されたものです。

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マーベラス代表取締役副社長 執行役員 COO
青木利則氏(左)
(あおきとしのり)
セガを経て2001年に現マーベラス入社。2012年に副社長に就任。デジタルコンテンツ事業部の管掌役員として活躍。

Aiming代表取締役CEO
椎葉忠志氏(右)
(しいばただし)
数々のオンラインゲーム事業を成功させた経歴を持ち、ONE-UPでは代表取締役社長に就任。2011年にAimingを設立。

スマホ版『ログレス』ヒットの要因は何か

──『ログレス』がリリースされた時期は、まさに基本プレイ無料のネイティブアプリ()が盛り上がりを見せてきたころでした。そのときに『ログレス』以外で無料で楽しめるオンラインRPGを手掛けたゲームメーカーさんはいなかったと思います。

※ 端末にダウンロードして遊ぶタイプのアプリケーション。Webブラウザで遊ぶ“ブラウザアプリ”よりも高画質のゲームが作れるのが特徴。

 

椎葉 いないですよ。ひとりもいませんでしたね(笑)。

── なぜそこに行き着いたのか、いちばん注目しているのでぜひ教えてください。

椎葉 そもそも、「スマートフォンでリッチなコンテンツが当たる時代が来る」という理由で設立したのがAimingです。そこで、我々のタイトルの中で、スマートフォン版を作るのに確実性が高いものをイメージしたところ、ブラウザゲームとして成功していた『剣と魔法のログレス』が浮かびました。そのことを青木さんに相談したところ、それまでスマートフォンアプリに興味を示していなかったのに、そのときは「やる!」と言っていただいて(笑)。

── それはなぜですか?

青木 当時、売上が月で億を超えているタイトルは数本で、ネイティブアプリのマーケットは儲からないというイメージがまだまだありました。でも、頭ひとつ抜け出ていた『パズル&ドラゴンズ』を遊んだところ、おもしろくて可能性があると感じたんです。そのタイミングで、椎葉さんから本作の話を聞いたので、もう「やるやる!」と即決でしたね(笑)。

── とは言え、当時はカードバトルを使ったソーシャルゲームをネイティブアプリに改良するのが主流で、『パズル&ドラゴンズ』のヒット後でも、オンラインゲームのブームはまだ来ないと踏んでいたメーカーさんが多かったと思います。そんななかで、オンラインRPGのゲームを手掛けるのに、抵抗はなかったのでしょうか。

青木 それが、まったくなかったんです。

椎葉 Aimingは、そもそもそういったゲームを作るために立ち上げましたし、開発期間は何年も掛かりますが、市場が伸びているときに出すには、がんばって作るしかないんです。

── 何が当たるか予見できていた?

椎葉 それは、正直わからないです。でも、自信はありましたし、インターネットに繋がる端末であれば、絶対にオンラインゲームがヒットするという方針は変わっていません。当たるタイミングがいつか来るのであれば、先に作っておこうという気持ちです。でも、そのときに青木さんがなぜオーケーしたのかは知りません(笑)。

── ブラウザ版をそのまま移植するという考えはなかったですか。

椎葉 スマートフォン向けに最適化する必要がありましたので、それは考えていませんでした。

青木 スマートフォンに向けた作りがすばらしかったんです。スマートフォンのゲームは、最初の触り心地が本当に大事なのですが、『ログレス』のデキは別格でした。

── そして、いざリリースされて確信したと。

青木 ユーザー数が少しずつ拡大していくのを見て実感しましたが、その前に新入社員にプレイしてもらったときのレポート内容でも、これは絶対にいけると思っていました。『ログレス』は、スマートフォンで本格的なゲームをプレイしたことがない人にも受け入れられるオンラインRPGであると、そのときに感じていました。

── 2Dへのこだわりはあるのでしょうか。

椎葉 じつは、それほどありません。スマートフォンのスペックがまだ低かった時期に3Dで表現するのはたいへんですし、『ログレス』は、ブラウザ版の素材を活かしたかったので、2D以外の選択はありませんでした。でも、あれだけ細かく動かすのには、けっこうな技術が必要なんですよね。

── バトルシステムなど、今後のスマートフォン向けRPGのスタンダートになるような要素を採用されているように思います。

椎葉 いまのバトルシステムに決まったのは、サービス開始の1ヵ月前です。もともとはコマンド選択方式で、もっとシビアに戦う形でした。しかも、スマートフォンの操作に適していませんでした。そこで、コンシューマーゲームを参考にして、新たに作り直したんです。我々は、プラットフォームがスマートフォンでも家庭用でもまったく気にせず、本当にいいゲームがあれば、それをどうおもしろく自分たちなりにアレンジしていくか、ということを考えながらゲームを作っているんです。

── あのバトルの仕組みは、コンシューマーゲームを知っていないと思い浮かばないと感じました。青木さんは、最初に触られたときにどう感じましたか?

青木 爽快ですよね。そのひと言に尽きます。プレイしていて気持ちがいいし、シンプルでわかりやすい。短い時間で限られた操作しかできないことを考えられて作られていると思いました。

── スマートフォン版『ログレス』を運営されて、ブラウザ版とのユーザー層の違いは感じますか?

椎葉 ブラウザ版とはぜんぜん違いますが、いわゆるスマートフォンユーザーの一般的な集まりかただとは思います。

青木 おかげさまでダウンロード数が600万を超えて、パッケージ版で換算すると、どんなビッグタイトルも到達していない未知の領域です。そう考えると、コンシューマーのRPGをプレイされていない方もたくさんいらっしゃいますし、若年層や中高年層などの幅広いユーザーがいます。その点で、コンシューマーゲームのユーザー層との違いを感じます。

──『ログレス』で新たな体験をしてる人たちが多いということですね。

青木 ほとんどの人がそうでしょうね。

椎葉 流行っているらしいとか、おもしろそうだとか、たまたまプレイしてみた人が、気が付いたらドハマりしていたパターンは、わりと多いみたいです(笑)。

── 常時接続者数は増えていますか。

青木 増えていますね。とくにテレビCMを放送した時期は如実に増えます。

椎葉 いちばん大事なアクティブ数ですが、こちらもリリースから1年数ヵ月いまだに止まっていません。

青木 今年のゴールデンウィークで過去最高を記録しましたからね。

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キーマンが見据える今後の新作タイトル

── 今回の『ログレス』の成功を経験したことで、両社の今後の新作に対する意識は変わりましたか?

椎葉 Aimingとしては、いまよりもさらにオンラインRPGに注力しようと思っています。完全なオンラインRPGを作るのはたいへんですが、どのゲームもオンライン色を強くする方向にシフトしています。とくに重要視しているのがチャットです。『ログレス』は縦画面にして画面の3分の1をチャットに使えるようにしました。じつは、これが大きな強みなんです。

──いままでは横画面のゲームも多かったですよね?

椎葉 そうですね。「横持ちは、ゲームをしているのがほかの人にわかるからイヤだ」という意見もありますが、そういうことはまったく気にしていません。おもしろければなんでもプレイしてもらえると思っています。でも、縦持ちにするとチャットができる。このためだけに、今後の作品も縦持ちにするべきだなと思いました。

青木 うちは逆に、オンラインRPGは『ログレス』1点集中で十分なので、同系タイトルはいまのところ手掛けるつもりはありません。

椎葉 マーベラスさんは、タイトルの目利きとか予見とか、プロデュースの会社だな、と感じるんですよね。ディズニーの牧場ゲーム(※スマホ向け農園系アプリ『ディズニー マジックキャッスル ドリーム・アイランド』)とか、「絶対当たるじゃん!」というところを突いてくる(笑)。

青木 いろいろな人に「やられた!」って言われましたよ(笑)。

椎葉 どのタイトルも、「これ失敗しないでしょ」と思いますね(笑)。

── そういうめぐり合わせも大事なのでは(笑)。

椎葉 そうですね。タイミングと運はやはりあります。『ブラウザ三国志』のときも、ソーシャルゲームの時代が来るとは思っていないで作っていたら、時代がそうなっていた(笑)。

──それでは、最後にファミ通読者にひと言お願いします。

青木 『ログレス』とはべつですが、プレイステーション Vitaのユーザー向けに『ハイスクールD×D NEW FIGHT』というタイトルをぜひおすすめしたいです。もともとはソーシャルゲームのタイトルで、“おっぱいたっぷり夢いっぱいRPG”という、スマホでは絶対にできなかった形に最適化して配信しています。ほかにも当社の看板タイトル、人気シリーズ、コンセプトが尖った新規オリジナルタイトルなど、未発表のコンシューマータイトルも仕込んでいます。「コンシューマーも全力です!」と、これだけは言っておきたいです。

椎葉 我々は、コンシューマーゲームもいろいろ勉強しているし、正直言うとゲーマーの集まりです。ふだんからたくさんのゲームを生活の一部としてプレイするスタッフが集まり、スマートフォン向けのゲームを作っている。簡単なカードソーシャルゲームしかなかったころとは違い、いまはスマートフォン自体がもはやゲーム機として超一流のデバイスになりつつあります。スマートフォンゲームにも期待してほしいですし、ぜひ『ログレス』もプレイしてみてほしいです。

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剣と魔法のログレス いにしえの女神

メーカー
マーベラス
配信日
配信中
価格
無料(アプリ内課金あり)
対応機種
Android / iOS

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