【インタビュー(完全版)】『ファイナルファンタジーVII Gバイク』 いま明かされる開発秘話

2014-06-27 12:00 投稿

今後の『VII』の基準となる可能性を秘めた作品として開発!

E3 2014で発表された『ファイナルファンタジーVII Gバイク』(以下、『Gバイク』)。本作の開発を行うのは、スクウェア・エニックス(以下、SQEX)とサイバーコネクトツー(以下、CC2)だ。『Gバイク』は、2社がタッグを組んで立ち上げた一大プロジェクト。なぜ、この組み合わせが実現し、なぜ、“Gバイク”を選んだのか? そして、『FFVII』につきまとう、リメイクの真相は? 『Gバイク』の中核を担う、松山洋氏と北瀬佳範氏、間一朗氏へのインタビューで、その謎に迫る。

※本インタビューは、週刊ファミ通2014年6月26日号に掲載されたものの完全版です。

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間 一朗(写真左)

スクウェア・エニックス 第4ビジネス・ディビジョン ディビジョン・エグゼクティブ。『シアトリズム FF』シリーズや、『ピクトロジカ FF』などのモバイル系コンテンツを手掛ける。本作ではプロデューサーを務める。(文中は間)

松山 洋(写真中央)

サイバーコネクトツー代表取締役社長。クリエイターとして、『.hack』シリーズや、人気コミック『NARUTO-ナルト-』を原作とする高品質なキャラクターゲームを多数手掛ける。本作の開発におけるキーマン。(文中は松山)

北瀬佳範(写真右)

スクウェア・エニックス 第1ビジネス・ディビジョン ディビジョン・エグゼクティブ。多数の『FF』に携わり、『VII』ではディレクターを務めた。本作では、エグゼクティブプロデューサーとして全体を監修。(文中は北瀬)

なぜスクウェア・エニックスとサイバーコネクトツーが?

――なぜ松山さんがここにいらっしゃるのか、なぜ“Gバイク”なのかなど、いろいろとおうかがいしたいことはあるのですが……まずは、今回のプロジェクトが立ち上がった経緯からお聞かせください。

 弊社の作品で、『FFVII』関連のコラボレーションなどを行うと、すごく反響が大きいんですね。自分がプロデューサーを務めている『ピクトロジカ FF』や『シアトリズム FF』シリーズもそうで、『VII』は特別なものなんだと実感していました。そういった形で、原作のおもしろさの一部を切り出して、いまのお客様のニーズに応えるようなものをやりたいと思ったんです。それで、橋本と北瀬に相談しまして。

北瀬 話を聞いて、もともと『FFVII』のミニゲームはいろいろと趣向を凝らしていましたし、いまの時代でもいけると思いました。また、間はモバイル向けの『FF』関連のコンテンツの実績もあったので、『VII』の一部を切り出して預けても大丈夫だろうと。オリジナル版のメンバーとして、私と野村のほうでそういった判断を下しました。

――企画は、SQEXさん側から出たのですね。

 そうです。『VII』のどこを切り出すかについては、ゴールドソーサーを、というのは決まっていました。最初はスノーボードのつもりだったんですが、松山くんが「そこは、スノボじゃないだろ」と。スノボは、ストーリー上でも印象的でおもしろかったけれど、いまの技術で表現するクラウドがスノボで滑るのは、このコンテンツの1発目としては違うのではないかということでした。それで、Gバイクではどうかと提案してくれたんです。

――松山さんが、Gバイクを勧めたんですか。

松山 今日、赤裸々にしゃべっていいの? 間っち、やばかったら「ストップ」って言って!?

 (小声で)いや、オレもいつもは宣伝担当からストップかけられるほうだからさ……。

――おふたりは仲がいいんですね(笑)。

松山 じつは古くからの知り合いで、飲み友だちなんです。まず、そもそもの接点からお話したほうがいいですね。CC2は設立18周年を迎えて、ようやく19年目に入ったデベロッパー(開発会社)ですが、スクウェア(当時)さんとは設立時からつながりがありました。

――そうなんですか?

松山 この業界で、私のことを自分の部下だと思っている方がふたりいて(笑)、そのひとりはバンダイナムコゲームス副社長の鵜之澤伸さん。もうひとりがSQEXのディビジョン・エグゼクティブ、橋本真司さん。橋本さんには当時から、定期的にお会いしていたんです。この10年くらいは、橋本さんが博多にいらっしゃると呼び出されて、「バンダイナムコゲームスさん以外とも仕事しようよ。『FF』好きじゃん」と言われ続けてきたんですよ。それで、「たとえば『VII』とか『VIII』とかさ」という話が出たときに、食い気味に「『VII』を!」と(笑)。それと時を同じくして……『グラップラー刃牙』のニトログリセリンの話でも出てきますけどね、“シンクロニシティ”とも言うべきことが起こりまして。この件とは関係なく、インディーズゼロの鈴井(匡伸)君と、世界でいちばん普及しているゲーム機はスマートフォンだという話をしていたんです。スマホで、本当にたくさんの人がゲームをしているよね、と。

――橋本さんのお話と、鈴井さんのお話がシンクロしたと。

松山 ええ。しかも、橋本さんが「哲(野村哲也氏のこと)がさ、外の会社と組んでやるならサイバーコネクトツーがいいって」とか言うんです。「絶対うそだ!」と信じませんでしたけど(笑)。E3など、業界の方が集まる場で野村さんとお会いすることもありましたが、ご本人の表情を見ていても、まるでそんな気配はなかったから、「橋本さん、盛ってるな」としか思いませんでしたね。それで、あるとき呼ばれて行ったら……橋本さんと間っちだけでなく、北瀬さん、それから野村さんもいて。

 そのとき集まったのがコアメンバーで、だいたい1年前のことです。そこから、スノボではなくGバイクとして開発が始まりました。

北瀬 ちなみにこれまでも、社内だけでは制作が難しいタイトルを外の会社さんとやるのなら、という話を野村とすることがありましたが、そのときは、必ずファーストチョイスとしてCC2さんのお名前があがっていましたよ。

松山 えっ、本当ですか!?

北瀬 うちはRPGをメインに作ってきた会社で、アクションはRPGほどには得意ではないというのがある。CC2さんはアクションが得意で、とくに演出がうまいというのが理由です。

――松山さんも『FF』がお好きということで、相思相愛だったんですね。松山さんは“愛”でゲームを作られるじゃないですか。とくに“『VII』だから”やりたかった、というのはあるんですか?

松山 はい、『VII』が大好きです! いちばん好きな『FF』です! 『VII』ってオリジナル版が出てから、コンピレーション作品などの広がりがあって、時間の経過とともにお客さんの中でもイメージが、いわば“『VII』像”が変わってきている。とくに『アドベントチルドレン』(以下、『AC』)の最先端のグラフィックを使った美麗なイメージが強いのではないかと。

――確かに、そうかもしれません。

松山 そもそも私は、とっくにSQEXさんは『VII』のリメイクにとりかかっているものだと思っていたんです。それで橋本さんに「『VII』をやるとはいっても、社内で動いてるものがあるでしょう」と聞いたら、「ないよ」と。だったらほかの人にはやらせたくない、うちでやりたい! と強く思いました。世界中が『VII』を待っているわけです。いまのテクノロジーで、一部ですが『VII』を表現して、たくさんの方に遊んでもらう。そんな機会があるならぜひやりたいと。

北瀬 松山さんにリメイクについて最初に聞かれたのは、2005年に発表したデモ映像のときでしたね。「本編をリメイクするために制作したのでは?」と聞かれて。「いや、作ってないですよ」とお答えした記憶があります。

松山 だって、あんなすごいものを作ったら、リメイクすると思うでしょう。じつは動いていて、結果的になくなった、ということならまだ納得いくんですけど……いまだに謎、解けてない!

北瀬 純粋に技術的なデモのためで、リメイクの話はまったくなかったですよ(笑)。

 気持ちイイくらいなかったすな(笑)。

松山 本当? そのために人もお金も時間もかけたの? どうなってんの!?(笑)

▲2005年のE3にて、プレイステーション3用の技術デモとして発表された、『FFVII』のオープニングムービーの一部。世界中で大きな反響を引き起こした。

『Gバイク』の内容とその後!?

――ゲームの内容についてですが、グラフィック以外では、オリジナル版とどういったところが同じ、あるいは異なっているのでしょうか。

松山 コース上でチェイスして、敵を蹴散らしながら進んでボスを倒す、という流れはオリジナル版と同じですが、ジャンプ、スライディング、地上を走っているときの攻撃、空中での攻撃、魔法、リミットブレイクなど、『VII』にあった要素はひと通り入れつつ、新たな要素も取り入れた“現代版のGバイク”になっています。今回はミニゲームという枠ではないので、がっつり遊べますよ。

 自分から松山くんにお願いしたのは、原作がそうだったように、“チェイスがおもしろい”ものにしてほしいということです。自分には、レースは“かけっこ”で、チェイスは“追いかけっこ”というイメージがあって、チェイスをやってくれと。原作にはありませんでしたが、障害物をジャンプやスライディングで避けたりしながら走っていく感覚が、とても気持ちいいものになっています。育成要素もありますので、クラウドがマテリアの組み合わせや強化で強くなることで、タイムが早くなったり、より多くの敵を倒せるようになったりもします。

松山 アクションは、『AC』のハイウェイでのバイクチェイスも参考にしていますね。あのシーンであったように、クラウドがけっこうバイクから飛ぶんですよ。そういうエッセンスを取り入れています。

――構造としてはコースクリア―型で、それを何度も遊ぶ形ですか?

松山 そうですね。プレイ時間そのものは短時間で、くり返し遊びたくなるような仕掛けを入れていきます。

 コースは、ミッドガルのハイウェイ以外にもたくさんあります。『Gバイク』の中で、『VII』のあらゆる要素を感じ取れるように、コースやキャラクターをご用意していこうかと。キャラクターについては、どういう出しかたにするか、これから決めていくところですけどね。あらゆる部分で、『VII』のファンの方々が期待されるところに応えていきたいです。

――それは『Gバイク』の中でという意味ですか? それとも、『Gバイク』に限らず?

 えー……『Gバイク』の話です。

北瀬 『Gバイク』に限らないんじゃないの?

 それを北瀬さんが言っちゃあダメでしょう!(笑)。でも確かに、今回のタイトルでは、世界でいちばん売れているスマートフォンというハードで、『VII』の関連作をフリー・トゥ・プレイで提供していくわけです。従来のファンはもちろん、新しいユーザーの方にもおもしろいと言っていただければ、恐らくこの先があるだろう……ということで、北瀬が同席しているわけですが(笑)。

――なるほど(笑)。では、『Gバイク』の後に、スノボを含めたゴールドソーサーのほかのミニゲームがリファインされるなんてことも……。

 先ほど、“このコンテンツの1発目”と言ってしまったので、2発目以降もあるんでしょうね(笑)。恐らく彼も、想定していると思います。

松山 もちろん。スマホのタイトルは運営も含めて生ものなので、お客さんの反応を見つつ判断していきたいです。

――先が楽しみです。ただ、フリー・トゥ・プレイ系のゲームは、いかにユーザーのモチベーションを保つかが大事で、そこがたいへんなところですよね。

 『Gバイク』においては、単純なものですと、マテリアや武器、バイクの種類が増えていくというのがあります。同じ武器でも、マテリアの穴の開きかたが違ったりしますし、バイクを載り換えればスピードや耐久値が変わります。そのほかにも、楽曲や世界観といった、原作準拠の要素をできるだけ拾ってきて、このタイトルに詰め込んで、長く遊べるものにしたいなと。

――課金はどういった形態に?

松山 最初に、「ガチャはやめよう」と決めました。また、育成については、NやRなど、レアリティーが書かれたカードをくり返し合成するタイプでもありません。いままでのスマホのゲームとは違うアプローチにしますよ!

今後の『VII』の基準

――開発は、どのような態勢で行われているのですか?

 弊社側は、北瀬と野村、自分を含めたマネージメント系の人間と、企画が数人。あとはすべて、運営も含めてCC2さんにお願いしています。でも、社内でやっているのと感覚が変わらないんですよね。なんでだろね?

松山 上が橋本さんだからじゃない?(笑)。北瀬さんや間っちのチームと仕事をするのは初めてですが、仲間として同じ立場で作ることができている、というのはあるかもしれません。目線が同じで、違うことは違うと言えるし、納得いくまで議論ができる。ぶっちゃけ何度も作り直してるしね!!

 アリガトウゴザイマース(笑)。鈴井くんのところもそうなんですが、自家発電型というか、自分たちでおもしろくしていける開発会社なので、お付き合いできているのかなと。上がってきたものを見ると、「好きじゃなかったらこんな風にはできないな」と思えるんですよね。作り手のそういう想いは、絶対にお客さんに届きますから。

松山 うちでやるからには、レスポンスのいい気持ちいいアクション、それとド派手でかっちょいい、イケてる演出。そこは期待してもらいたいです。北瀬さんにも野村さんにも、きっちり監修していただいていますし、とくに、どこからどこまでがクラウドで、ここから先へいくとクラウドじゃない、という部分……表情、なかでも口もとは、何度も見ていただいています。

北瀬 クオリティーという面では、ステージクリア―したときの演出などは、さすがだなと思っています。うちとはまた違ったリズム感があって、すごくいいなと。テンポ感が気持ちいいというか。そういった意味では、初期にそういったものが上がってきたので、安心できたというのもありますね。

――一丸となって開発されている雰囲気が伝わってきます。モデルのデータなどを、SQEXさんから提供されていたりもするのでしょうか。

松山 『AC』も『クライシス コア』も、作るうえで参考になるデータはひと通りいただいています。私は、『FFVII』という作品は、『XIV』まで出ているナンバリングの中でもとくに特別な存在で、もはや“RPG”であるとか『FF』という枠を超えた“『VII』というキャラクターゲーム”だと思っているんです。ゲーム性がよければそれでいい、というのはダメで、キャラクターが好きな人に愛される作品にする、というのはつねづねチームに言っています。それが、私が『FFVII』という大好きなIPをお預かりするにあたって、勝手ながら決めているコンセプト、根っ子の部分です。

――キャラクターを大事にする、というのは具体的に、どういった部分でしょうか。イベントなどストーリーの部分ですか? それとも演出の面ですか?

松山 おもに演出ですね。

 『FF』は、キャラクターやシナリオの魅力、ミニゲームなど、“全部乗せ”というイメージがあります。でも、今回のタイトルで、そういう部分まで含めてしまうと、散漫になってしまいます。なので、チェイスをやるなかで、リッチな演出によって『VII』のキャラクターたちの魅力に触れられる、というイメージですね。触っていただければ、「ちゃんと『VII』だね」と思っていただけるはずですよ。

――早くファンの方々の反応が見たいですね。そして『Gバイク』の後は、『FFVII スノーボ-ド』を? それともほかのミニゲームに?

 松山くん、もしつぎがあるとしたら何やりたい?

松山 このままだと、野村さんが言ってるように潜水艦かバスケだよ(笑)。

 潜水艦だとクラウド見えないし、等身あがったクラウドがバスケする姿も絵が浮かばないんだよなぁ。……いろいろな角度から検討します、ということで(笑)。

――そのうち、観覧車のイベントが起こったり、クラウドが女装したりするのでしょうか(笑)。

 それは、どこまでやったら北瀬に怒られるかというラインを探るところからですね(苦笑)。

北瀬 ファンの皆さんが、どこまで求めるかによります(笑)。ぜひ、ゴールドソーサーというくくりのなかで、いろいろと広がっていってほしいですね。

――ちなみに、お目付け役の北瀬さんとしては、『Gバイク』は、どのような位置づけの作品ととらえているのでしょうか。

北瀬 そうですね、先程松山さんがおっしゃられたように、『VII』はユーザーの皆さんの中でもイメージが広がっているので、もし『VII』関連をやるとしたらどんなものになるのか、『Gバイク』はそのクオリティーの基準になるタイトルだと思っています。この先に何かが続くとしたら、起点となる作品ですので、その意味でクオリティー面を私と野村が直接見ている、という側面もあります。いまはもう、だいぶ形になっているので、お任せしていますけどね。

――今後の『VII』の起点となる作品、ですか。『FFVII』本編のリメイクの可能性は?

北瀬 どうでしょうね?(笑)。『Gバイク』で松山さんのほうで基準を作っていただいて、地ならしが終わったら満を持して作ろうかな……ということになるかもしれません(笑)。クオリティーラインとしても、お客さんの盛り上がりとしても、わりとこの作品にかかっていると思いますよ。期待しています。

松山 ……いやー……うれしいですね(苦笑)。

――最後に重大なお話がありましたね(笑)。それでは、配信時期やいまの状況について、お聞かせください。

松山 少し前になりますが、SQEXさんの内部に比較的新設のゲーム審査部門があって、そちらに『Gバイク』を提出したんです。結果は、もうボコボコで! 根本から挙動の細部まで、大量の評価をいただきました。「大人はヘコまないと思ってる!? ヘコむからねふつうに!!」と思ったけど(笑)、ありがたかったですね。そこで浮き彫りになった問題を順番に詰めていって、クオリティーもだいぶ上がり、現在は2014年秋の配信へ向けて最終的な仕様を固めているところです。今日はいらっしゃらないですけれど、野村さんもしっかりといっしょにやっていただいているプロジェクトで、今回用に新しいコスチュームを描いてもらったりもしています。ぜひ、楽しみにしてほしいですね。

▲いつも通りにポーズを取ろうとした松山氏だが、橋本氏に止められているらしく(?)、一瞬のみキメてすぐに断念。
▲そこへちょうど橋本氏が通り掛かったので、記念撮影してみた。

※『ファイナルファンタジーVII Gバイク』公式サイトはこちら

ファイナルファンタジーVII Gバイク

ジャンル
アクション
メーカー
スクウェア・エニックス
配信日
2014年秋配信予定
価格
基本無料
対応機種
iPhone、Android
備考
プロデューサー:間一朗、エグゼクティブプロデューサー:北瀬佳範、クリエイティブプロデューサー・キャラクターデザイン:野村哲也、開発:サイバーコネクトツー

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