レビュー
投稿日2020.06.14
前任者とともに触れ、感じる記憶の旅
不毛な星の新たな管理人になった名もなき少年。
前任の青年ギアードは星に残された人やモノの記憶へと少年を導き何かを託そうと歩み寄る。
本記事で紹介する『Shiki』は、フランス人飛行士であり小説家のアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリを代表する“星の王子さま”をオマージュした2.5次元の幻想アドベンチャー。
もとの世界を捨てた少年と去りゆく青年。
ふたりの不思議な旅を描く分岐なしのストレートな物語の始まりだ。
なお、本作は以前紹介した『或る孤独なひとり』を手掛けたクリエイターの最新作。ぜひ、そちらもチェックしてもらいたい。
ゲームの見どころ
●映画1本を観賞するような魅惑のストーリー
●サブイベントの先にあるおまけシーン
映画1本を観賞するような魅惑のストーリー
サン=テグジュペリの“星の王子さま”とは、サハラ砂漠に不時着した操縦士(ぼく)と小惑星から訪れた王子の出会いをきっかけに始まる不思議な物語。
不毛な星の管理人として現れた少年が操縦士なら前任のギアードが王子といったところだろうか。
ふたりの関係性は冒頭からどこか“星の王子さま”を感じさせる。
球体状の星は簡単に1周できてしまうほどの小さなフィールド。
永遠に終わりのこない閉塞的な世界でギアードはさまざまな依頼を少年に与える。
プレイヤーは画面中央のナビゲート機能を参考に、その目的地を目指し調査を遂行。不毛な星に訪れる季節を感じながら少年はギアードのことを知り、謎めいた記憶の断片がプレイヤーに開示されていくのだ。
本作は分岐やゲームオーバーのない1本道の世界。
平均2時間のプレイで誰もが結末を見届けることができる。
ゲームとしては物足りなさを感じるだろうが、このわずかな時間の中には想像を上回る独創的な世界と体験が凝縮されているので満足度は高い。
強いて言うなら淡々としてるので眠気が増してしまう点に要注意だ。
また、ヘビやキツネ、バラなど“星の王子さま”を感じさせるワードが多数存在するのも本作の見どころ。
どういった役割で登場するのか、もし“星の王子さま”を知らないという人は、本作をクリアーした後にでも原作をチェックしてほしい。
サブイベントの先にあるおまけシーン
本作の結末はひとつだが星に散りばめられた“あるもの”を集めていくとサブイベントが発生。
すべてを達成するとクリアー後に“おまけシーン”が追加される。
これは、誰もが同じ結末を迎える本作の中でゲーム性を感じられる数少ない要素。
どういったものがサブイベントのフラグになっているのかは、プレイヤー自身の手で探してもらいたい。
前後する時系列はしっかり会話を読んでいれば大丈夫。
一見、難しい物語に感じてしまうだろうが、とてもストレートなアプローチだと感じたぞ。
P.N.深津庵
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