コロプラの技術デモ作品『PRINCIPLES(プリンシプルズ)』がすごい!先行プレイで見えたコロプラの確かな技術力

2023-01-24 12:00 投稿

コロプラが見せたフォトリアルの技術力

コロプラが2023年1月24日にリリースをしたアプリ『PRINCIPLES(プリンシプルズ)』。

本作はいわゆるゲーム、というよりは技術デモ的な色の強い3Dアドベンチャーとなっている。

イメージとしてはプレイステーション5やXbox Series X|S向けに配信されていた、『マトリックス』の世界を体験できる『The Matrix Awakens: An Unreal Engine 5 Experience』が近いだろう。

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コロプラといえば、『白猫プロジェクト NEW WORLD’S』や『白猫GOLF』など、アニメ調のグラフィックを得意とするイメージだが、それとは裏腹に本作『プリンシプルズ』ではフォトリアルな世界が描かれている。

今回、本作を配信に先駆けてプレイすることができたので、開発陣へのQ&Aとともに作品の概要を紹介していく。

最適化の重要性を知らしめる一本

冒頭でも触れた通り、『プリンシプルズ』はフォトリアルで描かれる3Dアドベンチャー作品。

主人公は古代遺跡のような場所に迷い込み、そこで発見した謎の手甲の力を使って障害物を吹き飛ばしながら進んでいく。

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▲かなり力の入ったグラフィック表現に加え、歩くと足元のガレキを踏み分ける音がするなど、サウンド面も臨場感たっぷり。ただサウンドに関してはヘッドフォンなどのデバイスを使って体感したほうが、その凄さはわかりやすい。

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▲段差や穴などに近づくとアクションボタンが表示され、タップすることで先に進める。操作そのものよりはグラフィックや雰囲気を味わう作品だ。

手甲の力で木箱を破壊するシーンでは物理演算による処理が行われ、木箱が粉々に爆散。大量に積まれた箱が木片と化して飛び散る様はなかなかに爽快だ。

本作はライティングにとくに力を入れているとのことで、破壊する瞬間に発される光によって木箱の破片ひとつひとつが照らされるシーンもシンプルに見映えする。

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▲道なりに進んでいくと箱に収められた手甲が手に入る。いかにも力を秘めていそうな光りかたにもそそるものがある。

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▲道を塞ぐ木箱の山も木っ端みじんに吹き飛ばすことができる。

パッと見で要求スペックが高そうに見えるが、現在市場で利用されているほとんどの端末で動作するという。とは言えすべてが推奨端末になるわけではないが、最適化に最適化を重ねた結果、なんと推奨端末からは外れるもののiPhone 7でも動作することが確認されているとのこと。

今回の先行プレイでも実際にiPhone 7での動きを見せてもらったが、グラフィック設定が多少低くなるとは言え問題なく動作していたのは衝撃的だった。

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▲プレイ中は描画設定などを細かく変更でき、変更はリアルタイムに変更される。解像度をMAXにすると端末が出せる最高の解像度になるとのこと。

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▲同じ場面でHigh設定(1枚目)とLow設定(2枚目)を切り換えた状態。光や陰影といった表現の違いが大きく目につく。

手甲入手後も洞窟を進んでいくと、最後には少し開けた場所に出て巨大なゲートのようなものが出てきたところで“to be continued”の表示が出てきてゲームが終了する。

実際にこの続きが楽しめるのかどうかはまだ不明だが、なかなかに期待を膨らませてくれる演出だ。

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開発陣へのQ&A!

以下に、本作の開発を統括するプロジェクトリーダーの秋友覚氏(文中:秋友)とリードエフェクトを務めた丸野未奈氏(文中:丸野)に伺った本作に関するQ&Aを掲載していく。

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▲左から秋友氏、丸野氏。

――まずは本作を開発することになった経緯を教えてください。

秋友 現在コロプラでは技術ブランディングという、技術検証を行った結果を社内外に発表し、認知してもらおうという動きがあります。最新技術を組み込んだアプリを通じてコロプラの技術力を知っていただこう、というのがきっかけでした。

――今回『プリンシプルズ』を制作したことで、どのような成果が得られましたか?

秋友 まず、フォトリアルな表現のノウハウを得られたことは大きいですね。我々はアニメ調のグラフィックスを用いることが多いのですが、リアル調の背景にアニメ調のキャラクターを配置するなど、表現の幅や選択肢が増えたのはいいことだと思います。

また、さまざまなDCC(デジタル・コンテンツ・クリエーション)ツールを活用できるよう、アーティストの制作環境をモダン化できたことも成果に挙げられます。

たとえば木のモデルを作るときにも、葉脈や葉っぱの数などをパラメーターとして数字で設定して簡単にデータが作れるなど、作業時間も短縮されています。

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――サウンドもかなり臨場感がありましたが、こちらはどのように作られたのでしょうか。

秋友 サウンドはミドルウェアの“Wwise”を使って、環境に合わせた反射音などを作っています。サウンド全体の品質も向上していますし、プログラムの工数も削減することができました。スマートフォンでは確認できる機会が限られますが、本作は最大で8チャンネルでの再生に対応しているんですよ。

と言っても、スマートフォンデバイスで8チャンネルのサウンドに対応しているものは非常に限られていますが(笑)。

――8チャンネルはすごいですね! 開発にはどの程度かかりましたか?

秋友 期間としては8か月程度ですね。あくまで雑談レベルで出た話ですが、没入感を生み出すという意味ではVRに対応させるのもおもしろそうだな、と思っています。

――プレイの最後に“to be continued”と出たのが気になりますが、続編が出るということでしょうか。

秋友 続編は、考えてはいます。技術検証したものをアプリ化してリリースする、という動きは今後もコンスタントに行っていきたいとは考えておりますが、詳細についてはまだ揉んでいる段階ですね。

――技術検証の結果はアプリ以外のかたちでも公開されているのでしょうか。

丸野 COLOPL Creatorsブログというかたちで、揺れものを表現するSpring Boneやエフェクトに用いるシェーダーなどに関する記事を公開しています。

単純な技術の話としてもそうですが、弊社で働くとしたらどんな環境で作業をするのか、といったことも知れるかと思います。

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【COLOPL Creatorsブログはこちら】

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――本作で行った新しい試みの中で、「とくにここに力が入っている」という点を挙げるとしたらどの部分になりますか?

秋友 キャラクター、エフェクト、背景、どのセクションのメンバーも一生懸命にやってくれたので、選ぶのが難しいところですね。本当に、フォトリアルの知見を得るために全員で必死になって取り組んだんですよ。

でもやっぱり、フォトリアルとは何かというのを考えると、いちばん大きかったのはライティングですかね。ライトによって背景やキャラクターがどんな影響を受けるか、というのは新しく挑んだ部分でした。

最初は陰影の調整が上手くいかなくて、キャラクターに意図しない影が落ちすぎて目の周りがクマだらけの怖い顔になったりもしました(笑)。

丸野 これまでに作っていたライティングでは、人工光の表現に制限があったので、どうしても太陽光を入れる絵作りが必要だったんです。今回はその制限がなくなったので、完全に人工光だけでの表現ができました。

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――フォトリアルとアニメ調とで、単純なグラフィックス以外ではどのような違いが出てきますか?

秋友 表現が変わると、モーションの付けかたも変わってきます。アニメ調、セルルックの場合は非現実的なモーションを付けても整合性が取れるような嘘をつけるのですが、フォトリアルではそうもいかないというのが大きいですね。

フォトリアルの場合、階段や床に対して脚が適切に曲がるようにしないといけなかったりするので、そのぶん工数も増えてきます。

――本作を作り上げたうえで、つぎなる課題となるものは出てきたのでしょうか?

秋友 キャラクターの動きについてはもっと作り込めると感じたので、そこをもっと調整したかったな、という思いはあります。

今後はキャラクターの動きやフェイシャル表現などにも力を入れていきたいですね。

――フォトリアルの表現というとUnreal Engineを用いる作品が多い印象ですが、本作はUnityで制作されたと伺っています。なぜUnityを選ばれたのでしょうか。

秋友 別のエンジンも検討はしたのですが、やはりこれまで開発環境としてUnityを選択してきたというのもあって、全スタッフが使い慣れていた環境でやりたかったというのが大きいですね。

Unityのカスタムや描画まわりの研究も進めていて、同じく1月24日に配信される『モンスターユニバース』で研究していた技術が本作につながったという部分もあります。

▼コロプラ新作『モンスターユニバース』のプレイリポートはこちら

――Unityでここまでの表現ができるというのは正直驚きです。

秋友 Unity Technologies Japanの方に本作を見ていただく機会があったのですが、そのときも「ここまでのことができるのか」とおっしゃっていただけました。まだまだ課題もたくさんあるのですが、今後もがんばっていきたいですね。

フォトリアルの表現を始めたからといってこれまでのアニメ調の表現を止めるわけではなく、ゲームに合った表現を模索する際の選択肢が増えた、というイメージですね。

――ライティングでとくに苦労したのはどんなところでしょうか。

丸野 木箱を破壊する瞬間にも演出としてライトを焚いて、そのライトが壊れた木箱や煙にも当たるんですけど、煙のライティングには苦労しました。秋友さんに「煙って何色ですか?」って聞いたりしつつ、いろいろな試行錯誤を重ねましたね(笑)。

話をするなかでだんだん水蒸気がどうの、みたいな話になってきて、これまでの感覚的なものづくりとは違う、物理計算を使ってのアプロ―チができたので、大変でしたけど興味深く作業ができました。

秋友 物の質感によって光の反射も変わってくるので、たとえば金属ひとつ取っても金属、卑金属、貴金属とあって、それぞれ太陽光に影響をどう受けるかを調べたりもしました。

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――陰影などのバランスを取るのもむずかしかったのではないでしょうか。

秋友 コントラストの調整にはかなり苦労しました。HDR対応の調整で明るくしたら白飛びしてしまったり、暗くしたら今度はほとんど見えなくなったりしてしまって、陰影の部分にはかなり気を使いましたね。

――今回得られた知見で、すでに別の作品に活かされているものはありますか?

秋友 先ほど少し話に上がったSpring Boneは、『白猫GOLF』にも組み込まれています。それ以外にも、開発中のタイトルでさまざまな機能を取り入れています。

『モンスターユニバース』で試していたものをこちらに持ってきて、あらためて検証を進めたうえで全体展開をしていく、という流れも多いですね。

――秋友さんはテクノロジー推進本部の技術研究部部長という役職に就かれていますが、こちらの部署はいわゆる技術系の総合ハブのようなものになっているのでしょうか。

秋友 そうですね。私の上司であり『モンスターユニバース』のプロジェクトリーダーでもある池田のスタンスとして、何かを作ろうとなったときに必要な技術を検証するのではなく、あらかじめさまざまな技術を検証し、引き出しを増やしておくという考えがあります。『プリンシプルズ』もその結果として生まれたものですね。

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丸野 『プリンシプルズ』で使っているエフェクトの技術は、検証自体は2021年の12月末くらいからそれぞれ個別でスタートしていました。年明けくらいからアプリ化の話が出てきて、それに伴って軽量化などの本格的な実装も進みました。

アプリ化ということで配信に向けて不具合を修正しながら製品化することができたので、検証としてもより精度の高い結果が得られたと思います。

――いまおっしゃられたような、アプリ化したからこそ得られたメリットはほかにもありますか?

秋友 最初は本当に技術デモとしてスタートしていたので、最悪、間に合わなかったら動画として音は後から乗せるかたちでもいいんじゃないか、みたいな話もあったんです。ただ、それって最初から撤退していますよね。なので、アプリ化は退路を断つ意味もあったんです。

実際に動き始めるとみんな乗り気で、開発終盤にiPadで動作しないとなったときにも、そこで切り捨てるのではなく、最終的に開発に還元するならタブレットでも動くようにしないと、とやり切ることができました。いい薬になりましたね(笑)。

2022年の夏ごろに今回扱う技術に強いアーティストの方が入社されて、その方の助力やアドバイスを受けて、自分たちで技術面を理解したうえで作り上げることができたのもよかったです。

短時間で堪能できる技術力

『プリンシプルズ』のプレイボリュームは10~20分程度とかなりコンパクト。

しかしスマートフォンでこのレベルのグラフィックがスムーズに動く、という驚きを体験するには十分だろう。

ゲーム制作に興味がある人はもちろん、スマートフォンでどれだけリアルな描写が描けるか気になる人も要チェックだ。

※画像は開発中のものも含みます

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