ヴェルヴィーユ、メアリー・リード、アン・ボニー!海を駆けた女海賊たち【しゃれこうべが語る元ネタの世界 第45回】

2020-08-26 12:00 投稿

【悲報】8月そろそろ終わる

早いッ!!

ちょっと気を抜いたら年が明けてそうな勢いにビビりますが、10月あたりから欲しいソフトがモリモリなのでね! また濃密な時間が来る予感ですよ!

ひとまず10月の『黄泉ヲ裂ク華』、『グリードフォール』、『真・女神転生III ノクターン HDリマスター』あたりが楽しみですね!

なんて話はいいとして、今週も始まりますよ“元ネタの世界”!

今回扱うのは、意外と少なからずいたという女海賊! そのなかでも有名どころを3名もご紹介!

まずはジャンヌダルクの前に現れたジャンヌことジャンヌ・ド・ベルヴィル!

そしてアン・ボニーメアリー・リードのおふたりにも触れていきますよ!

【目次】
・復讐の女神・ヴェルヴィーユ
・貴婦人から海賊へ
・アン・ボニーとメアリー・リード
・女海賊の最期
・来月はアーサー王物語再び!

復讐の女神・ヴェルヴィーユ

ひとり目の女海賊は、ジャンヌ・ド・ベルヴィル。

画像をお借りしている『乖離性MA』だとヴェルヴィーユ表記なので、以後はこちらに合わせていきます。

20200825_女海賊 (1)

先週扱ったジャンヌダルクと同じく、百年戦争の時代のフランスに生まれたヴェルヴィーユですが、彼女は聖女でもなく祖国のために戦ったのでもなく、自身の復讐のために武器を取っており、復讐の女神とも呼ばれています。

フランス西方、ヴァンデ地方・ナントの領主の娘として生まれたヴェルヴィーユは国いちばんの美人と称され、親の決めた相手と結婚関係を結びますが、この相手は若くして亡くなってしまいます。

その後、第2の夫となる騎士と出会い、ふたりの息子を持つ幸せな家庭を築きました。……が、とある悲劇から彼女は復讐にその身を投じることとなるです。

貴婦人から海賊へ

百年戦争初期、騎士であったヴェルヴィーユの夫・オリヴィエはフランスのためにイギリス軍と戦います。彼はある戦いで捕虜になってしまったものの、無事解放され、祖国に帰ってくることができました。

しかし、家族が再会を喜んだのもつかの間、フランス国王のフィリップ6世にスパイ容疑をかけられオリヴィエは、裁判はおろか、証拠すらないままに断頭台にかけられ、その首は城門に晒されてしまいます。

これを機に、ヴェルヴィーユはフィリップ6世への強い憎悪を抱き、復讐にすべてをかけるようになります。

20200825_女海賊 (2)

私財を売り払って傭兵団を雇った彼女は、みずからも剣を取ってフランス軍の領地を荒らしまわります。

やがて同じくフランス国王を敵視するイギリス国王とも協力関係となり、“ヴァージャス(復讐)”の名を冠した旗艦を筆頭に、3隻の船を手にします。

こうして、ふたりの息子と傭兵団とともに、女海賊・ヴェルヴィーユがイギリス、フランス間に出現するようになったのです。

その猛威はすさまじく、彼女が出没するブルターニュ、ノルマンディー地方あたりの海峡では海上交通が不可能になったと言われるほどです。

20200825_女海賊 (3)

フランス側の被害は甚大で、フィリップ6世はローマ法王を通してイギリス国王に苦情を届けたます。が、ヴェルヴィーユを支援していたイギリス国王は聞く耳を持ちません。

ヴェルヴィーユは復讐という強い信念によって、フィリップ6世が派遣した討伐艦隊をすべて殲滅したとも伝えられています。しかし一方では、フランス艦隊に包囲され、息子ふたりと命からがらイギリスに逃れたという説もあります。

そちらの説では、何日もの漂流で息子のひとりが命を落とし、それを機にヴェルヴィーユは復讐を止めたとされています。

そしてヴェルヴィーユはイギリスの領主と結婚して余生を過ごし、生き延びた息子はフランスに戻り、フィリップ6世の子孫である国王に仕えて高い地位まで上りつめたといいます。

~ 完 ~

と!

復讐のために命を惜しまず戦った彼女の信念は敵味方を問わず強く心を震わせ、彼女は生きている当時から伝説的な存在だったそうです。

生き延びた息子がフランスに戻って活躍できたのも、フランス側ですら彼女にある種の敬意のようなものを抱いていたから、などとも言われていますね!

こうして強い信念のもとに動いた女性の伝説があったからこそ、その後のジャンヌダルクも民衆に受け入れられた、のかも……?

アン・ボニーとメアリー・リード

続きまして、なんと同じ船に乗っていたふたりの女海賊、アン・ボニーとメアリー・リードのお話です。

アンは『乖離性MA』に登場していないので、こちらは自作画像でヨロシャス!

また、メアリー・リードは『乖離性MA』だとメアリ表記なので、こちらもそれに合わせていきます。

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んでは、まずはアンの生い立ちからどぞどぞ!

アイルランド生まれのアン・ボニーは、弁護士の父のもとに生まれましたが、彼女は父と女中との不倫で生まれた子でした。

不倫が発覚した後、アンと彼女の母とを連れてアメリカのカロライナに移住した父親は、農場主となって成功を収めます。

ベッドに引き込もうとした相手を病院送りにするなど、若いころから強気な性格だったアンは、やがて父に無断で若い船乗りと結婚し、激怒した父に勘当されることとなります。

こうして家を離れたアンは、夫ともに海賊のメッカであるニュー・プロヴィデンス島を訪れ、そこで悪名高い海賊のジョン・ラカムと出会います。

結婚してもなお奔放な性格だったアンは、夫よりもラカムとともにいることを選び、男装の女海賊として海に出ます。

20200825_女海賊 (5)

船長のラカム以外は彼女が女性であることに気づかないほどの勇敢さを見せたアンでしたが、その後もやはり奔放なところは変わりません。

ある日、アンは船員のひとり、ハンサムな細身の少年に恋をすると、物陰で彼に寄り添い、「じつは私は女なんだ」と正体を明かします。

しかし、少年は喜ぶでもなく恥ずかしがるのでもなく、ただ困惑し、やがて気まずそうに口を開きました。

「……私も女なんです」

そう、アンが目をつけた少年は、女海賊・メアリの男装姿だったのです。

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マンガのような展開に驚きですが、ここでいったんメアリの生い立ちも見ていきましょう!

女海賊の最期

幼くして父と兄を亡くし、父方の祖母から養育費をもらうために男として育てられたメアリは、やがて家を出て男装姿で傭兵として生計を立てるようになります。

とある騎兵連隊で出会った青年に恋をした彼女は、自分が女であること、そして相手に想いを寄せていることを告白します。

青年はこれを受け入れて彼女と結婚、居酒屋を営むこととなったメアリは、多くの将校から祝福され、幸せな日々を手に入れました。

しかしそれからわずか1年後に夫はこの世を去り、居酒屋の経営も上手くいかなくなってしまいます。

メアリは再び男装姿で傭兵業を再開しますが、ある日海を渡る際に海賊船に捕らえられて海賊となり、その後ラカムの海賊団に吸収されました。そして、アンと出会ったのです。

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お互いの正体を知った女海賊ふたりは無二の親友となり、海賊としての暮らしを謳歌します。

その後、ラカムたちが襲った船に乗っていた船員のひとりに恋をしたメアリは、この青年に正体を明かし、新たな恋人を得るのでした。

ある日別の海賊と口論をした青年は、決闘で問題を解決することとなります。が、問題は相手の海賊が明らかにこの青年よりも強かったことです。

恋人の身を案じたメアリは、青年が約束した決闘の前の日にこの海賊に決闘を挑み、相手を完膚なきまでに叩きのめして恋人の身を守ったと言われています。

20200825_女海賊 (8)

しかし海賊の多くがそうなるように、やがてアンとメアリは捕えられ、裁判にかけられることになります。

「夫となった船員とともに海賊を辞めるつもりだった」と語るメアリには情状酌量の余地もありましたが、とある男が聞いたという彼女の発言が問題になります。

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これにより、裁判所も彼女を救うことはできなくなってしまいます。

やがてアンとメアリに死刑宣告が下されますが、けっきょくのところ、この刑が執行されることはありませんでした。

当時彼女たちは赤子を身ごもっており、出産まで刑は延期されたのです。

しかしメアリは獄中で病に倒れ、アンは父親が裁判所の人間とつながりがあったのか、幾度となく刑が延期され、そのままいつの間にか姿を消してしまいます

こうして、カリブ海を荒らして回ったふたりの女海賊は歴史から姿を消したのでした。

~ 完 ~

来月はアーサー王物語再び!

ってことで、今回は女海賊3本立てでした!

復讐鬼のヴェルヴィーユ、アウトローなアン、奇妙な運命に踊らされたメアリと、三者三様な生き様でしたね~!

さて次回、というか9月はアーサー王物語の騎士たちのお話を再びしていこうかと!

これまでもちょいちょい扱ってきましたが、まだまだエピソードは尽きませんよ~!

したらば、また来週! 余談ですけど『カニノケンカ』を買うか非常に迷っております!!

【“元ネタの世界”まとめはこちら】

文/しゃれこうべ村田(@SRSWiterM

参考文献

竹下節子(1997)『ジャンヌ・ダルク 超異端の聖女』講談社現代新書.
稲葉義明・砂糖俊之・青木行裕(2003)『Truth In Fantasy 59 剣の乙女』新紀元社.

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