青龍、朱雀、白虎、玄武、そして麒麟!中国由来の霊獣5選【しゃれこうべが語る元ネタの世界 第40回】
2020-07-22 12:00 投稿
売れ行き爆速!
いや~、『ゴースト・オブ・ツシマ』、発売しましたね~、うんうん。いやもうね……。
売ってねぇ!!!
ダウンロードよりもパッケージ派なんですが、7軒ぐらい回っても全部品切れという……!(予約しろって話ですが)
仕方ないので、いまはゲームボーイアドバンスの『東京魔人學園 符咒封録』なるカードゲーを遊んでますよ! いや~おもしろい!!
それはさておき、始まりまするよ“元ネタの世界”!
今回扱うのは、青龍、朱雀、白虎、玄武、そして麒麟の5体、中国発祥の霊獣たちですね!
これらは最近のゲームとかでもバッチリおなじみでしょう!
んでは、いざいざ!
【目次】
・四霊獣と四神と五霊
・青龍
・朱雀
・白虎
・玄武
・麒麟
・次回は鬼の話、かも……?
四霊獣と四神と五霊
今回扱う5体はいずれも中国から日本に伝わって霊獣ですが、青龍、朱雀、白虎、玄武の4体が四神というくくりに対し、麒麟はもともと四霊獣という分類に入っておりました。
四霊獣とは、四霊獣はこの世の動物たちの長となる特別な霊獣4体、すなわち龍、鳳凰、麒麟、霊亀を指します。
世のなかには、魚のような鱗を持つ鱗虫、鳥のように羽を持つ羽虫、獣のように毛を持つ毛虫、甲殻類のように固い殻や甲羅を持つ甲虫、これらが各360種いるとされ、四霊獣はそれぞれの長であるとされています。
瑞獣(ずいじゅう:いいことの前兆とされる獣)である彼らは、戦乱のない平穏な時代にのみ現れるものと言われています。
一方、四神はこの世が5つの基本要素から成り立っているという陰陽五行説に対応した霊獣となります。
万物の基本となる要素は、木、火、土、金、水の5つ。木火土金水で“もっかどごんすい”と読ませることもあります。
これらの要素は色や季節や方角、色そして四神などにも対応しており、それぞれ対応は下記の通り!
要素 | 木 | 火 | 土 | 金 | 水 |
---|---|---|---|---|---|
季節 | 春 | 夏 | 土用 (※) | 秋 | 冬 |
方角 | 東 | 南 | 中央 | 西 | 北 |
色 | 青 | 赤 | 黄 | 白 | 黒 |
霊獣 | 青龍 | 朱雀 | 黄龍 (麒麟) | 白虎 | 玄武 |
余談ですが、この対応から各季節を表す言葉として、青春、朱夏、白秋、玄冬という言葉が出てきたそうな。
ただし、この青春にはいわゆる“青春時代”的な意味は元々なく、そういった使いかたがされるようになったのは、夏目漱石の小説『三四郎』がきっかけになっているとかなっていないとか! ナルホドナー。
さておき、四神に囲まれる形で配置されるのが黄龍ですが、これがのちに麒麟に置き換えられ、その後、四神と麒麟をまとめて五霊と呼ぶようになります。
四神に囲まれる麒麟のように、東方には青龍にあたる川の流れ、西方には白虎にあたる大道、南方には朱雀にあたる湖畔、北方には玄武にあたる丘陵、と四神に対応する地相で四方を囲えば、中央は四神相応の地となり、強力な霊的加護を得る……。
なんていう風水的な話もありますが、こちらは諸説あるそうな! 平安京やら江戸の街がこの風水術に基づいて作られた、なんてサブカル的にワクワクする話もあったりしますね!(これまた諸説あるようですが!)
と、霊獣たちをまとめてご紹介しましたが、今度は一体一体を見ていきましょう!
青龍
木の要素にあたり、東方を守護する青龍!
呼んで字のごとく、元ネタは青い身体の龍とされていますが、古代の彩色画などには頭が白かったり黄色かったりというパターンもあるらしく、頭に関しては青じゃなくてもいいようです。
青龍は赤龍と争うエピソードがあったので、こちらをチラッとご紹介!
中国の震旦に、とある漁師がいました。ある日、その漁師が海辺まで付きだした山に出ていると、海上に青龍と赤龍が出現し、お互いを食べようと争っていました。
漁師が見守るなか、形勢が悪くなった青龍は撤退してしまいます。翌日、再び同じ場所にやってくると、昨日と同様に2匹の龍が争い、やはり青龍が撤退しました。
3日目、やはり龍たちは争い、またも青龍が追いやられていました。しかしそこで漁師が弓を引いて赤龍を射ると、赤龍は海に沈んでいきました。
すると、青龍が一度海に潜り、ひとつの玉を咥えて現れると、漁師のいる海辺に吐き出して去っていったのでした。
漁師が玉を持ち帰ると、まるち打ち出の小槌のように、その玉から財宝が出現してきました。
こうして、その漁師はとても豊かになり、いい暮らしを送ったそうな。
~ めでたしめでたし ~
……青龍さん弱いのでは?
という素朴な疑問はさておき、青龍に限らず龍はよく玉を持っているイメージがありますが、その玉も今回のもののように特殊な効果を持っているのやも……?
ちなみに、かの聖徳太子が日本から中国に一瞬で飛んで一瞬で帰ってきたというエピソードがあるらしく、そのときに聖徳太子が乗ったのも青龍であるそうな!
恵みをくれたり爆速飛行機になったりと、実利的な部分でもありがたい存在ですね!
朱雀
火の要素にあたり、南方を守護する朱雀!
朱雀は四霊獣の鳳凰と同等の存在であるとされ、天にある鳳凰は朱雀である、というような説明もされています。
なお、鳳凰は鳳が雄、凰が雌という風にも言われており、鳳凰という名前もある種ひとつの分類を指しているっぽいですね!
鳳凰は麒麟と同等の瑞獣であり、生きた虫を食べず、生きた草を踏まず、瑞獣の例に漏れず天下泰平の時代にのみ現れる存在とされています。
古代中国にあった何本もの管で構成された簘(しょう)という楽器は、演奏することで高貴な鳥を集めることができるとされましたが、鳳凰を集めるのは容易ではなく、一度だけでなく9回も演奏しなければならなかったとか何とか!
朱雀、鳳凰の姿と言えば複数の尾羽を持つ赤い鳥というのが定番ですが、江戸時代に編纂された百科事典の『和漢三才図会』によれば、けっこうなキメラっぷりだとされています。
背丈は4、5尺(約120~150センチ)、身体の前は鴻(こう)、後ろは麟(りん)、アゴは燕、クチバシは鶏、首は蛇、尾は魚、(中略)背は亀、そして羽は5色、と!
身体の後ろが麒麟だったり首が蛇だったり尾が魚だったり背中が亀だったりと、わりと鳥からはかけ離れた姿になっているのでは、という感じが否めませんね……!
これがのちに変化し、現代の中国では尾が孔雀になるなど、いわゆる朱雀のイメージに近い姿になったとか何とか!
白虎
金の要素にあたり、西方を守護する白虎!
ほかが龍だったりキメラだったりするのに対し、白虎は白いという以外はわりとふつうの虎っぽいビジュアルです。
ただし、ライオンのいない中国では虎自体が特殊な存在とされており、神話に登場する虎も少なくはなかったそうな!
仙人に仕えた虎は特別な仙術を心得ているらしく、日本から高麗に渡った鞍作得志(くらつくりのとくし)という男は虎から術を学び、それによって枯れ果てた山に青々とした草木を茂らせることや、黄色い土を白い水に変えることができたと言われています。
さらに、虎からもらった不思議な針を使えば、治らない病はないというほどのチートぶりだったそうです。
しかし、やがて鞍作得志が帰国しようとすると、そのことを察知した高麗の人間に毒殺されてしまったのだとか何とか!
このように特別視されている虎ですが、白虎はその虎が500歳を超えることで変化すると言われており、まさに特別中の特別な存在だったようですね~。
玄武
水の要素にあたり、北方を守護する玄武!
一見するとただの亀ですが尻尾が蛇になっており、こちらも朱雀と同じくキメラです。
なお、青龍、朱雀、白虎とほかには生き物を表す言葉が入っていますが、玄武は亀の甲羅を持っていて防御に長けている、という意味で武の字がついているそうな!(玄は黒の意味)
さまざまな神話で亀が世界を支えるというイメージがあるように、中国神話でも、人間を創生した女媧(じょか)は天が落ちそうになった際に、巨大な亀の4本の脚でそれを支えたとされています。
また、遥か東方には天の川や世界のあらゆる河川が流れ落ちる底なしの谷があるとされ、そこにある5つの山を支えているのは15匹の亀なんだとか。
亀が甲羅を背負っている姿、それが大地を背負っていることを連想させるのでは、なんて解釈もありますが、言われてみれば確かにって感じですよね~。
麒麟
土の要素にあたり、中央を守護する麒麟!
朱雀(鳳凰)と同じく非常に仁徳が高く、生きた虫を殺すことも、生きた草を踏むこともないとされており、RPGとかだと知性的なキャラクターとして登場することもある、ような……?(個人的には『サガ フロンティア』に登場する麒麟がまさにそんなイメージですね!)
麒麟の鳴き声は当時使われていた音階にピッタリ一致し、麒麟の歩いた跡は正確な円になり、麒麟が左右に曲がる際はきっちり直角に曲がる、などとも言われています。
また、某ビールなんかでもおなじみな獣の姿の麒麟には角が生えていますが、麒麟の角は先端が丸く描かれることが多く、これはほかの生き物を傷つけないためだとされています。
なお、麒麟は龍と馬が混ざったようなイメージもありますが、実際には龍と牛が交わってできたのが麒麟であり、龍と馬から生まれたものは龍馬と言うそうです。
麒麟と龍馬の姿は似ているものの、麒麟は一本角、龍馬は二本角、麒麟は牛の蹄、龍馬は馬の蹄と、細かい部分での差があると言われていますね!
麒麟は仁徳の高さから孔子と関係があるともされており、孔子の誕生前に母親のもとに麒麟がやってきたとも言われています。
むしろ麒麟と並べられるほどの存在として見られている孔子がすごい気もしますが!
次回は鬼の話、かも……?
ってことで、今回は四神と麒麟の五霊をご紹介でしたよ!
陰陽五行説の要素はゲームでも属性で使われることが多いですし、そのぶん五霊やら黄龍やらが登場することもそれなりに多い印象がありますよね~。
んでは次回ですが、わりと和風ものが続いたということで、今度は鬼のお話でもしようかと!
日本に伝わるさまざま鬼伝説、そこからどれをチョイスするのか! 完全に未定ですが!
したらば、おさらば! 『符咒封録』で遊びまっせェ~~!!
文/しゃれこうべ村田(@SRSWiterM)
参考文献
島田勇雄(1987)『和漢三才図会 6』東洋文庫.
草野巧・戸部民生(1994)『日本妖怪博物館』新紀元社.
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