【新作】ボクはいらない子? 身体的障害を背負う双子と家族の苦悩を描くアドベンチャー『Life Gallery』

おぞましくも悲しい双子の物語

体がつながった状態で生まれた双子。

手術を受けて切り離すことに成功はするのだが兄は単眼、弟は片腕とそれぞれに障害を抱えることになる。

本記事で紹介する『Life Gallery』は、身体の悩みに苦しむ兄弟と歪んだ愛憎を注ぐ両親の様子を50枚以上のイラストと多彩なパズルを通じて描くアドベンチャーゲーム。

なぜ生まれてきたのか

渦巻く少年たちの不安を解き放つための解を求め、目を背けたくなるような世界を隅々まで見渡していこう。

説明不要!! イラストから湧き出る独自の世界感

待望の我が子、これから訪れる数え切れない幸福の日々を思い描く両親。

しかし、そんな願いは思わぬカタチで生まれた双子によって打ち砕かれる。

そう受け取れる感情がヒシヒシと伝わる本作は、とても難しいテーマと真正面から向き合うハードな物語だ。

グロテスクなイラストで描かれるこの世界は、どうしてもおぞましくホラーゲームのように感じてしまうのだがそれは違う。

手術の末に単眼となった兄と片腕を失った弟。

それぞれの視点で描かれる全4章の物語はとても繊細で物悲しく、ふとした瞬間に感情移入してしまう描写にどんどん引き込まれていく。

また、突きつけられた現実に苦しむ両親とそこに漬け込む教団。

洗脳されていく大人たちの思惑に戸惑う子どもたちなど、独特なイラストからさまざまな状況がハッキリと感じ取ることができる。

とてもデリケートな問題を扱う本作を手放しで“おもしろい”といえない。

しかしこれは誰の身にも起こりうる事態であり、双子や両親の立場で“自分ならどうするだろう”と考えながら向き合うと、この世界の見えかたがどんどん広がっていくのだ。

指先に伝わる奇妙な手応えと心を揺さぶるBGM

単眼の少年が流す涙が輪を描く縄に変化し、その端をプレイヤーが指で引く。

何でそんなことをする必要があるのか。

指先に伝わる振動と戸惑いを感じながらゲームを進めていくと、特定のできないふたりの人物が首を吊っているシーンに切り換わる。

思わずドキッとすると同時に、それまで伝わっていた振動から“自分が手をかけた”という罪悪感に包まれる。

謎解きゲームと呼ぶには難易度が低いが、本作にはこの世界に意識を集中させる興味深い独特な仕掛けが散りばめられているのだ。

また、全編に渡って鳴り響く奇妙なBGMは登場人物たちの心を表現する記号のよう。

聞けば聞くほど不安な気持ちが増幅していき、ヘッドフォンで聴いていた筆者は耐えられずボリュームを下げてしまった。

先述した通り、本作は4章構成の物語。

怪しい教団が登場する第2章をきっかけに家族は最悪な状況に陥っていく。

少しでもこの世界観に興味が湧いたのであれば購入して損なし。

ぜひ、物語の結末を見届けてもらいたい!!

P.N.深津庵
※深津庵のTwitterはこちら