和製合成獣と三国をまたいだ妖狐!鵺&玉藻前【しゃれこうべが語る元ネタの世界 第30回】

2020-05-13 12:00 投稿

久しぶりの(無観客)試合!!

ちょォ~~っと皆さんご存知ですか!

先日行われた女子プロ団体・スターダムのオンライン会見にて! 5月末に無観客試合の収録を行う予定との発表が出ましたね!!

まだまだ観客を入れての大会はむずかしそうですが、配信があるだけでもありがてぇありがてぇ……。

ってことでもう30回目ですってよ、“元ネタの世界”!

「お前ももう30(回目)……、もうそろそろ落ち着いてはどうかね……」

と、天の声という名の編集方針が下ってきましてね! 今回からはテンション抑えめでお届けしますよ~。

さて、前回はギリシア神話の合成獣・キマイラをご紹介しましたが、今回は日本の合成獣とも言える妖怪・鵺(ぬえ)のお話をしようかと思います。

さらに、朝廷に入り込んで国を思いのままにしようとした妖狐・玉藻前(たまものまえ)についてもご紹介!

それでは、いざ~!

【目次】
・ぬ~え~
・鵺 in 『平家物語』
・妖狐・玉藻前
・殺生石、粉砕!
・次回もま~たまた怪物か!

ぬ~え~

まずは鵺ですが、こちらはゲームで敵として登場することもあって、ある程度はおなじみでしょうか?

河童や鎌鼬といったザ・妖怪な面々に比べるとマイナーな気もしますが、最近だとメジャーな部類に入りそうなイメージですね。

20200511_鵺_玉藻前 (1)

さてこの鵺、日本の合成獣と言ったように、複数の動物が融合したような姿と伝えられています。

曰く、頭は、身体は、手足は、尻尾は、と、豪華4種の融合体ですね。

尻尾が蛇なのは前回紹介したキマイラと共通ですし、手足が虎というのもキマイラの獅子ボディと近いものがありますよね~。

20200511_鵺_玉藻前 (2)

そんな鵺ですが、そもそも鵺という言葉は鳥、いわゆるトラツグミを指していたそうで、妖怪・鵺の鳴き声がこの鳥に似ていたとか。

元は鵺みたいな声の妖怪、だったのがいつの間にか鵺という名前で定着してしまったようなんですね~。

鳥の鳴き声にあまり不気味なイメージはないかもですが、トラツグミの鳴き声は「ヒョー」みたいなか細く高い声なんですよ。

ウグイスの「ホーホケキョ」の「ホー」の部分を、ちょいさみしい感じにしたような感じですね。

これが夜な夜な聞こえてくるとけっこう不気味だったのか、『古事記』や『万葉集』に詠まれている歌では凶兆を表す鳥として登場していたりもします。

そんなうっすら怖い雰囲気もあって、妖怪のイメージと結びついた、っぽいですね~。

妖怪としての鵺は『平家物語』にも登場していまして、今回はそのお話をご紹介していきたいと思います!

鵺 in 『平家物語』

それは、近衛天皇の御代(1142年~1155年ごろ)のこと。

いつの日からか、天皇の御所に毎夜黒雲の姿をした妖怪が現れ、あたりを多い尽くしては不気味な鳴き声を響かせるようになりました。

20200511_鵺_玉藻前 (3)

すっかり恐れをなした天皇でしたが、過去にも似たような事件があり、当時は源義家鳴弦の儀式を行ったことで解決したという話を思い出します。

【説明しよう! 鳴弦の儀式とは!】

読んで字のごとく、弓の弦を鳴らす儀式

矢をつがえずに弓を弦だけを引き、それを放った音によって邪気を祓うというもの。

そこで、天皇は源頼政に白羽の矢を立て、妖怪の討伐を命じます。

その後、再び黒雲が御所に現れると、頼政は蟇目(ひきめ)の儀式を行うべく鏑矢(かぶらや)を弓につがえ、引き絞りました。

【説明しよう! 蟇目の儀式&鏑矢とは!】

鏑矢とは、通常の矢と違って先端部分が三日月のような形をしており、さらに小さな穴が開いた矢で、放つことで音を立てるもの。

以前紹介した那須与一が船の上の扇を射る際にも使ったもので、基本的に儀式用の矢。これを放って邪気を祓うのが蟇目の儀式。

20200511_鵺_玉藻前 (4)

頼政は黒雲を見据え、引き絞った矢をひょうと射ます。

すると放たれた矢は黒雲に突き刺さり、やがて黒雲からどさりと何かが落ちてきました。

見れば、頭は猿、身体は狸、手足は虎、尻尾は蛇。そう、この妖怪こそ鵺だったのです。

20200511_鵺_玉藻前 (5)

鵺の死体は船に乗せられ、川に流されていきました。

やがてその死体は大阪市都島(みやこじま)、あるいは兵庫県芦屋に流れ着いたとされ、人々は鵺の祟りを恐れ、死体を祀る鵺塚を作ったそうです。

~ 幕 ~

と!

ちなみにですがこの鵺、その正体は体長150センチぐらいあるレッサーパンダだったんじゃないか、なんて説もあるそうですよ。

さすがにそんなサイズだったらそりゃ妖怪扱いにもなりますね……!

ちなみに鵺の正体、というか同一の存在だったのでは、と言われている妖怪に雷獣というのもいます。

こちらは雷とともに落ちてくる妖怪とされており、その鋭い爪で近くの人間に傷を負わせたそうな。

その体長は60センチほどで、姿は子犬アライグマのようだったとか……?

雷獣の正体は当時まだ名前が付けられていなかったハクビシンなのでは、という説もありまして、やっぱり狸の類の動物が元になっている感じがしますね~。

妖狐・玉藻前

さて、続いては玉藻前!

こちらはメジャーもメジャーな妖狐ですよね~。

いわゆる九尾の狐だったのでは、ってな話が一般的ですが、二尾の狐だった説もあったりします。

20200511_鵺_玉藻前 (6)

玉藻前は美女に化け、天竺や中国でも王たちを篭絡したと言われており、続いてやってきた日本でも朝廷に手を伸ばした訳であります。

中国で篭絡した王については、以前紹介した幽王のこと、つまり玉藻前=褒姒(ホウジ)だとも言われているとかなんとか。

20200511_鵺_玉藻前 (7)

さて、玉藻の前は鳥羽上皇の寵姫になっていたとされておりまして、登場したのは1154年の春、鳥羽上皇が御年52歳のときのことだそうな。

鳥羽上皇の崩御は1156年だそうなので、人生の大終盤で美女とウフフできたってことですね~。うらやま……、いやいや何でも!

ちなみにですが、当時はまだ玉藻前ではなく、化粧前(けしょうのまえ)、あるいは藻女(みくずめ)と名乗っていたそうです。

20200511_鵺_玉藻前 (8)

玉藻前という名前は鳥羽上皇が付けたとされており、その由来譚はこんな感じ!

ある日、鳥羽上皇と家臣たち、藻女が同じ部屋にいたときに、嵐の風に吹かれ、室内の灯火が消えてしまいました。

あたりは真っ暗になってしまいますが、そのとき藻女の身体が朝日のような輝きを放ったのです。

家臣たちが何事かと怪しむなか、鳥羽上皇はその様子に見とれてしまいます。

「おお、この娘は才覚に優れるだけでなく、前世でよほどの善行を重ねたに違いない!」

上皇ェ……。

って感じですが、この輝きからの連想からか、彼女には宝石などを示す“玉”の字が。藻女の名から“藻”の字が。

そして尊敬の意を添える“前”の字が合わさり……。

20200511_鵺_玉藻前 (9)

という名前になっていたという訳ですね! そしてその後は……?

殺生石、粉砕!

玉藻前を溺愛して上機嫌な鳥羽上皇でしたが、それとは裏腹に体調は悪化の一途をたどります。

医者たちが様子を見にやってきましたが、原因は少しもわかりません。それもそのはず、じつは玉藻前が鳥羽上皇の精気を奪っていたのです。

やがて、原因が不明ならば妖の仕業に違いないということで、問題を解決するべく陰陽師の阿部泰成が呼び出されます。

玉藻前は泰成に正体を見破られ、朝廷を去って那須野の地まで逃げ出しました。が、彼女を追って派遣された討伐隊によって討ち取られ、那須野にて命を落としたのです。

20200511_鵺_玉藻前 (10)

その後、曹洞宗の高僧・源翁(げんのう)和尚が那須野を訪れます。

歩いていると、道の外れに苔むした大きな岩があるのが見えました。

さぞいわれのある岩であろう、と和尚が思っていると、そこに美しい娘が通りかかります。

和尚が娘に岩のことを尋ねると、娘は答えました。

「それは、触れた人間や鳥、畜生の命を奪う殺生石(せっしょうせき)でございます。

かつて朝廷に歯向かった妖・玉藻の前、その執念が石と化したのです」

話を聞いた和尚は、殺生石に花を手向け、焼香をあげ、説法を行います。

すると、殺生石は粉々に砕け散りました。和尚の説法により、玉藻前は成仏したのです。

ふと和尚が気づくと、あたりには先ほどの娘の姿がありません。そう、彼女もまた玉藻前の亡霊であり、玉藻前が成仏したことで娘も消えたのでした。

~ 完 ~

次回もま~たまた怪物か!

ってことで、今回は日本の妖怪をダブルでお届けしましたよ!

個人的には玉藻前のほうがメジャーな気もしますが、意外と鵺も負けてなかったり、ですかね~。

次回のネタはまたまた怪物系、今度は西洋のものになる、かも……?

「ふわっとしてるうえに幅広すぎひん?」

なんて天の声が聞こえますが、構うこたァーない!

幅が広いってのはこう、可能性が広いってことだから! きっとそう!!

というわけで、次回もお楽しみにィ~!

文/しゃれこうべ村田(@SRSWiterM

参考文献

小松和彦(1995)『日本妖怪異聞録』 小学館
村上健司編(2000)『妖怪事典』 毎日新聞社.
小松和彦編(2009)『図解雑学 日本の妖怪』 ナツメ社.

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