那須与一の弓と源氏に代々伝わる8つの鎧・源氏八領【しゃれこうべが語る元ネタの世界 第26回】
2020-04-15 12:00 投稿
ゲンジバンザイ!
はい! 今週も始まりましたよ“元ネタの世界”! ゲンジバンザイ!
今回はね! 某ファイナルなファンタジーシリーズでもおなじみの与一の弓なんかのお話をしようかとね! ゲンジバンザイ!
編集U「冒頭のボケを止めたと思ったら変な語尾がついてきたな……」
いやぁさすがに外に出なさすぎてネタが……、もとい!
ちょっと初めてのオンライン飲みってやつをやったらね、うっかり何も食べずに安酒をガバってしまったおかげで胃痛が止まらんくて……!
編集U「いろいろヒドい」
お酒は計画的に!!
ってなことはさておき、今回はファイナルなファンタジーにちょいちょい登場する与一の弓で有名な那須与一のエピソードをご紹介!
しかしそれだけってのも寂しいので、加えて彼が属していた源氏方に伝わる防具、いわば“源氏シリーズ”の元になってるかもな“源氏八領”についてご紹介していきますよ!
【目次】
・与一は余一で11男
・扇の的、前段
・平安の無理ゲー・扇の的
・源氏シリーズの元ネタ?
・次回は中国の伝説の双剣!
与一は余一で11男
まず扱いまするは、那須与一こと那須宗隆、あるいは那須資隆(すけたか)!
治承寿永の乱、いわゆる源平合戦で源義経が率いた軍で戦ったとされる武将でございます!
画像をお借りしている『乖離性MA』では義経(牛若丸)は登場していますが、与一は未登場!
でもメインで扱うのに画像がないと不便なのでね!
はい描いた!!
ちなみに与一という名ですが、余一、つまり10+1を表すそうで、11男であることを示す通称だとか!
編集U「時代が時代とは言えすごい人数だな……」
これが姉妹だったらシスターがプリンセスしちゃいそうですね!
編集U「そっちは12人だけどな!!」
さておき、10人もの兄がいたわけですが、与一とともに源氏方についていたのは10男の十郎こと為隆(ためたか)のみ!
ほかの長男~9男までは平氏方についていたそうな!
編集U「雑ゥー!!!」
HAHAHA! 気にしなさんな!
今回紹介するエピソード、いわゆる“扇の的”は古典の授業で扱われることもあって有名な与一ですが、じつは『平家物語』や『源平盛衰記』といった軍記もの、言ってみれば時代もの小説に登場しており、『吾妻鏡』などの史料には出てきていないとか!
編集U「ってことは架空の人物の可能性もあるわけか」
ですね~!
900年近く前の人物となると架空か実在かの差はもう誤差みたいな感じもしますが!
ってのはさておき、そんな与一の最大の見せ場である扇の的のくだりをご紹介~!
扇の的、前段
治承4年(1180年)~元暦2年(1185年)にかけて、じつに6年間にもわたる戦いとなった源平合戦!
そのなかで扇の的と呼ばれるエピソードがあった屋島の戦いは、1185年に戦いが決着する1ヵ月ほど前、クライマックスとなる壇ノ浦の戦いの直前!
いまで言う香川県の屋島に陣取った平家軍に対し、義経率いる源氏軍が大阪湾あたりにある渡辺津から攻め込んだ戦いであります!
義経は船頭が船を出すのを拒否するほどの嵐のなか、船頭を弓で脅して無理矢理海を渡り、海上戦を想定していた平家方に陸地から奇襲をかけたのでした!
ちなみにこの際、ふつうなら3日ほどかかるところを、4時間か6時間程度で渡り切ってみせたのだとか!
編集U「いや速すぎるだろ……!」
これより前の一ノ谷の戦いでは崖を馬に乗ったまま駆け下りて奇襲をかけるなど、義経はゲリラ戦法というかかなりブッ飛んだ攻めを得意としていたそうですからね!
編集U「敵にも味方にもしたくねぇな……」
しかし、自分を守って倒れた武将のために涙を流し、手厚く弔ったりもしており、「この殿のために命を失うことは、微塵も惜しくはない」と言われてたりと、味方からの支持は厚かったようですよ!
さておき、そんなこんなで奇襲をかけた義経軍でしたが、少数で攻め込んでいたのと、平家軍が船を出して海上に陣取ったこともあり、一気に決着をつけることはできませんでした!
そして日が暮れると、互いに攻めあぐねた両軍はいったん休戦状態に! ここでとうとう扇の的が出てくるわけです!
平安の無理ゲー・扇の的
両軍が戦いの手を止めると、立派な小舟が平家軍の船団から送り出され、浜から80~90メートルあたりの場所で横向きになって止まりました。
義経たちが不思議がって小舟を見ていると、小舟に乗った若い美女が紅一色に日の丸が描かれた扇を竿に挿し、浜の義経軍に向かって手招きし、この扇の的を射抜いてみせよと挑発します。
成功すれば士気もうなぎ登りでしょうが、外せば後代までの恥になるこの挑戦。義経は味方のなかから手練れを探します、が……。
編集U「まさかのたらい回し」
そして白羽の矢が立った与一はと言えば!
編集U「与一だけ拒否権がねぇ……」
『平家物語』だと与一が弓の名手として最初から指名されてるんですけどね! とは言えやはり確実に撃つ自信はなかったそうな!
さて、弓矢を持ち、馬に乗った与一。扇が射程距離よりもやや外にあったので、馬に乗ったまま海に11メートルほど入っていきますが、それでもなお扇までは80メートル近い距離がありました。
北風が激しく吹き、高い波に小舟は揺られ、竿の先の扇も上がっては下がりと、不安定に揺らめきます。
浜に並ぶ源氏の騎兵、沖に浮かぶ平氏の船、いずれの者たちも目を見張って見物するなか、与一は目を閉じ、祈りを捧げました。
「南無八幡大菩薩、我が故郷・下野国の神・日光権現、宇都宮、那須の湯泉大明神、願わくばあの扇の真ん中を射させてくださいませ。
これを射損じようものなら、私は弓を折り、自害し、二度と人に顔を向けないつもりです。
もう一度私を本国へ向かわせようとお思いならば、この矢を外させなさるな」
祈りを終えて与一が目を開くと、風は弱まり、先ほどよりは扇も射抜きやすそうになってきました。
与一は鏑矢(かぶらや)をつがえ、弓を引き絞り、ひょうと放ちます。
矢は扇の要(扇下部の骨が交差する部分)の少し上を射抜き、空に舞い上がった扇は舞い散る紅葉のようにひらめき、波にのまれました。
与一の見事な技に、源氏方のみならず、沖の平氏方までもが大騒ぎです。
編集U「奇襲かけたかけられたの直後にしちゃ吞気な……」
当時の平氏は武士というよりも貴族色が強くなってきていた、みたいな話もありますが、ここのくだりを見ると確かにそんな感じありますよね~!
あまりのすばらしさに我慢ができなかったのか、扇を乗せていた船の中から50歳ほどの男が現れ、扇があった場所で舞い始めると、これを見た義経は口を開きます。
これに応えて与一が男の首を射抜き、男は海に沈みました。
平氏方は水を打ったように静まり返る一方で、源氏方は再び大盛り上がりとなったのでした。
~ 幕 ~
編集U「最後の容赦なさよ」
やはり武士の源氏、貴族の平氏、ってな感がありますね……!
ちなみに与一が使っていた弓ですが、とくに変わったものを使っていたとかではなく、当時としては一般的なものだったっぽいですね!
編集U「ゲームだとけっこう最強付近の弓なのにな~」
和弓は洋弓に比べてかなり大きいぶん、命中精度や射程距離では劣るものの、威力はかなり高いと言われているので、そこを汲んでの設定かもしれないですね~!
あとは単純に与一のすげーパワーが宿ってるとかですかね!
編集U「雑だけどまぁそういうのもありそうだな……!」
源氏シリーズの元ネタ?
ところで、ファイナルなファンタジーに出てくるアイテムと言えば、“源氏の小手”なんかの源氏シリーズも有名ですよね~!
やっぱ盗めるとか盗めないとk「その話は止めろ」
……ま、まぁさておきね!
『保元物語』なんかの軍記ものでは、源氏に代々伝わっていたという8つの鎧があったとされているんですよ! その総称は!
編集U「数えただけなのに名前がちょっと格好いいな……!」
その8つの鎧もそれぞれに名前がありまして、これもけっこうカッケー感あるんですよね~!
源氏の嫡男が初めて鎧を着る儀式、“着初め”に使われたという源太が産衣(うぶぎぬ)!
全身に八大龍王の飾りをあしらった八龍(はちりょう)!
盾を持つ必要がないほどの防御力を誇るとされる楯無(たてなし)!
源氏の棟梁のみが着ることを許された薄金(うすかね)!
牛1000頭の膝の皮を集めて作ったとされる膝丸(ひざまる)!
源頼朝の異母兄である朝長(ともなが)が着用したらしい沢瀉(おもだか)!
袖の段の数、あるいは兜の星の数などが12個だったとされる月数(つきかず)!
兜の星の数が360あったことに由来するかもしれない日数(ひかず)!
編集U「強そうなのもあるけど微妙そうなのも……」
八龍とか楯無はそのまんまゲームに出てきそうですよね~!
編集U「膝丸は呪われてそうな感じがすごい」
しかしこの源氏八領、現在は楯無が山梨県立博物館、甲府市の武田神社宝物館にレプリカが残る程度で、ほかの鎧は失われてしまったそうですね! ゲンジザンネン!
編集U「まぁそれはそれでロマンあるな……!」
次回は中国の伝説の双剣!
ってことで、今回は与一&源氏八領のお話でござんした!
『平家物語』とかは改めて読んでみてもおもしろいですし、検索すればネットでも簡単に読めますからね! 暇を持て余してる人とかは読んでみるのもよかですよ!
編集U「確かに現代語訳もけっこうゴロゴロあるもんな~」
さて次回ですが!
ギリシア神話、日本古典ときて、今度は中国の伝説に出てくる武器のお話でもしようかと!
ずばり、干将・莫邪(かんしょう・ばくや)の剣でございますね!
こちらもマンガなどではちょいちょい出てくるのでけっこう知名度は高いやも……?
元になった伝説もけっこうぶっ飛んでますので、乞~うご期待!
文/しゃれこうべ村田(@SRSWiterM)
参考文献
石ノ森章太郎(1991)『マンガ 日本の歴史 15 源平の内乱と鎌倉幕府の誕生』 中央公論社
川端洋之(2004)『源平京都 源義経と平家物語の人々』 光村推古書院
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