【新作】タイムリープの目的は自分の殺害!!運命に抗う男のノベルアドベンチャー『メビウスの心臓』

1時間で完結する怒涛の人生

刃を入念に突き刺す鈍い感触。全身に血しぶきを浴びた男はその手応えを感じ安堵する。

過去の自分を探して殺すことこそが唯一の使命。

それこそが望んだ結末だと語る男の真相を暴いていくのが本記事で紹介する『メビウスの心臓』というノベルゲーム。

全編テキストとBGMのみ、とてもシンプルなゲームに秘められているのは想像を絶する男女の生き様だ。

なぜ、自分殺しをするに至るのか。

タイムリープをくり返す男の結末を読み明かしていこう。

30年の時を戻り己を殺そうと企む男の物語

肉を貫き血に染まるプロローグ。30年前の自分を殺すことを使命と語る男はタイムマシンを開発、過去の世界にタイムリープする。

しかし、記憶は曖昧で目覚めも悪い。

それもそのはず、自分の肉体に魂を宿す予定が、どういうわけか彼女であるミコトに宿っていたのだ。

2019年10月21日午前5時50分、想定外ではあるがこうして本作最初のタイムリープが成功。不明な点が多いプロローグだがとても興味を掻き立てる展開だ。

本作最大の目的は主人公のシンが自身を殺すこと。それ以外の記憶が曖昧なシンはわずかな情報と明確な目標だけを頼りに行動を開始する。

当初、自身の肉体に魂を宿し自殺する手段を考えていたシンだが、彼女であるミコトの体ではそうもいかない。

どうやって過去の自分と接触するのか、ミコトの体を使って命を奪うのかなど、とくに序盤は予想のできない事態が多くて目が離せなかった。

失敗とタイムリープをくり返して少しずつ変化するシンの物語。ミコトとの出会いと自身の殺害を計画するに至る真相は、最後まで飽きることなく読み進めることができた。

中盤あたりでおおよその結末が予想でき、その通りになっていくのだが、それもプレイヤーが推理した事象が証明されていく解答パートのようで楽しかったぞ。

失敗をくり返し真実に迫る便利なスキップ機能

本作は約1時間で完結するノベルアドベンチャー。タイムリープをくり返すプロセスの中には同じシーンも多く、それを毎回読むのは面倒だ。

そこで用意されているのは既読の文章を視覚的に判別、スキップできる便利な機能である。

これは選択肢も同様、1度選んだものは青字で表示されるので周回プレイが苦手な人でもストレスなく楽しめるだろう。

ループから脱する糸口を掴んだそのとき、シンが何を願い困難に立ち向かっているのかが判明するのだがその行為に戸惑いが生まれる。

本作『メビウスの心臓』は、数学者アウグスト・フェルディナント・メビウス、または輪と呼ばれる図形を連想させるもの。

そこになぜ心臓という言葉を合わせているのか。

わずか1時間のプレイに凝縮された壮大な旅の結末は必見だ。

P.N.深津庵
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