冷徹な殺人鬼か儚く消える美女か!雪女伝説アレコレ【しゃれこうべが語る元ネタの世界 第18回】

2020-02-19 12:00 投稿

いっけな~い、(原稿が)遅刻遅刻ゥ~!

アタシ、しゃれこうべ! どこにでもいるふつうのライター!

本当は〇曜日に原稿提出なんだけど、4日で5回もプロレス行ってたら締切がヤバいでやんの!

でも花月の引退ロードだもん! 見逃す訳にはいかないよね!

編集U「 し ば く ぞ 」

……ハッ! アタシャいったい何を!

い、いやいや書きます書きます書いてます! 書いてますよォ~!

ってなことで極道入稿なのはさておき、今週も“元ネタの世界”でございます!

最近まだまだ冷え込みますよね~!

ってことで、今回紹介しまするは雪の夜に現れる雪女!

どメジャーもどメジャーな妖怪さんのお話にござい!

【目次】
・意外な別名もありまして
・小泉八雲の“雪女”
・中村晃の“雪女”
・次回は……、何だ!

意外な別名もありまして

読んで字のごとく、雪のなかに現れる女の妖、それが雪女!

20200218_雪女 (8)

どういう経緯で知ったかは覚えてないですけど、みんな知ってる感じしますよね~!

個人的にハッキリ覚えてるのは某地獄先生のゆきめぐらいですかね!

編集U「具体的な作品は挙げんでよろしい! まぁでも妖怪はだいたい何となくで知ってるイメージだが」

言われてみれば確かに!

この雪女、何気に古代日本だったり中国の書物とかには登場していないそうですが、中世に書かれた“雪鬼”という謡曲にはその原型が!

在原業平(ありわらのなりひら)に恋焦がれて日陰に消えた女が雪鬼となり、のちに旅の僧がこれを成仏させる、ってなお話だったそうで!

編集U「在原業平とか久しぶりに聞いたわ……」

そこじゃねぇよ!!!

さておき、雪女伝説は雪の降る地方に数多く存在し、その名前も雪女、雪女郎、はたまた雪降り婆なんぞとも!

編集U「急に老けた……」

伝説の内容もさまざまで、子どもに乳を飲ませてくれと尋ねた雪女を助ければ怪力を授かり、そうでなければ殺されるという物騒なもの、あるいは雪とともに訪れた女を親切にもてなすことで、黄金などの福を授かるものまで、けっこう幅広いですね!

20200218_雪女 (2)

そんな雪女のもっとも有名なお話と言えば、ギリシア生まれの小説化であるラフカディオ・ハーン、日本国籍を取得した後の名前で言えば小泉八雲の作品ですね!

ってことで、今回はその小泉八雲の雪女に加え、中村晃による別パターンの雪女をご紹介しますよ!

小泉八雲の“雪女”

昔々、武蔵の国(東京、埼玉あたり)に茂作(しげさく)と巳之吉(みのきち)というふたりの木こりが住んでおりました。

茂作はすでに老齢でしたが、巳之吉はまだ18歳と若く、ふたりは毎日のように10キロほど離れた森へ向かい、仕事をしていました。

ある寒い夕暮れ、茂作と巳之吉は山から帰る途中でひどい吹雪に遭い、近くにあった小屋の中へと逃げ込みます。

寒さに震えながら、いつの間にか眠ってしまった巳之吉がふと目を覚ますと、小屋には見知らぬ美しい女が立っていたのです。

20200218_雪女 (5)

白装束をまとった女は眠っている茂作の上にかがみ込み、ふー、ふー、と白い息を吹きかけています。

唖然とする巳之吉に女は突然近づき、顔が触れそうなほどの距離まで迫ってきました。女は口を開き、巳之吉に言います。

「お前のこともあの老人と同じ目に遭わせてやろうと思ったけれど、なんだかかわいそうになってきた。

まだ若いお前には悪さはしないが、私のことを誰にも話してはいけないよ。

もし約束を破ったら……」

20200218_雪女 (4)

\ デデンッ!! /

編集U「何なのこの人……」

と、告げた女は去っていき、フーフー吹かれた茂作はと言えば、寝ているあいだに死んでしまっていたのでした!

編集U「茂作ェ……」

命拾いした巳之吉はもとの暮らしに戻り、1年が経過!

再びの冬、巳之吉が仕事を終えて家に向かっていると、同じ道を行くひとりの娘に出会います。

江戸に向かうという娘の肌は雪のように白く、話す声は小鳥のさえずりのように心地よいものでした。

歩きながら言葉を交わすうちにふたりは打ち解け、お雪と名乗る娘は巳之吉の家に立ち寄ると、江戸に向かう予定を1日、2日と先延ばし、やがて巳之吉の妻となります。

編集U「急展開すぎねぇか……!」

色恋沙汰に尺が割けるか! ってことですよ!

そして巳之吉はちゃっかりお雪とのあいだに10人の子をもうけます!

編集U「子だくさんってレベルじゃねぇぞ……!」

時代を考えるとふつうやもですが! さておき!

ふたりが出会ってからいくつもの年月が流れましたが、お雪はなおも白く若々しい姿のままです。

彼女が針仕事をしている姿を見ながら、巳之吉はつい、あの吹雪の夜のことを話してしまいます。

「昔、お前とよく似た娘に会ったことがあってな。茂作のじいさんはそのときに死んでしまったんだが……」

編集U「巳之吉、アウトー」

と思うじゃないです?

ところがどっこい!

「巳之吉よ、お前が会った娘というのは私だ。

誰にも話してはならないと言っただろう。しかし、子どもたちのことを思えば、お前の命を取りはすまい。

だがもし、もしお前があの子たちを悲しませたら、そのときこそ私は……」

20200218_雪女 (6)

\ デデンッ!! /

編集U「もう生存フラグだろそれ」

そしてお雪は霧のように消えてしまった……、ってなお話でございますよ!

てっきり最後はDEAD ENDだと思っていたんですが、まさかの生存ルートでしたね!

さて、おつぎは似ているようでちょいと違うパターンの雪女をば!

中村晃の“雪女”

昔々、あるところに吉太郎という、名の知れた豪商の若者がおりました。

吉太郎は旅籠屋の娘・きぬを読めに迎え、昼も夜も幸せな暮らしを送っておりました。

編集U「夜も(意味深)」

止めんか!!!

しかしある日、きぬは水あたりに苦しみ、生死の境をさまよいます。

吉太郎はどうにかきぬの具合がよくなるようにと、雪の降るなか井戸から水を汲んで水行をしますが、濡れた身体を吹雪に吹かれ、意識を失ってしまいました。

編集U「そりゃ吹雪のなかで水浴びたらな」

「お気がつかれましたか」

その声に吉太郎が目を覚ますと、目の前には長い黒髪に真っ白な衣を着た、この世の者とは思えない美しさの女がいました。

女は言います。

「貴方様はいま、大きな別れ道に立たされておいでです。

きぬ様のお命をお助けしたいのでしょう。そのためには条件があります」

「条件とは何だ」

「それは、貴方様がきぬ様の代わりに死ぬことです」

20200218_雪女 (7)

\ デデンッ!! /

編集U「何回引っ張んだよ!!!」

HAHAHA! 2度あることは3度っていいますし~?

さておき!

死はさすがに恐ろしく、返事をためらう吉太郎に、女は第2の選択肢を提示しました。

それは、吉太郎がこの女と結婚するというものです。しかし、そうしたならば、もう二度ときぬには会えぬという言うのです。

苦悶した吉太郎は、ついに答えました。

「もういい、私を殺してくれ。私さえ死ねばそれでいいだろう」

その言葉に女は一瞬悲しそうな表情を見せ、静かに告げました。

「貴方様のお心はしかと見届けました。お望みは私の名にかけて叶えられましょう。

私の名は雪女。私の名を二度と口にしてくださいますな」

20200218_雪女 (3)

編集U「意外に素直~」

女の姿はかき消すように見えなくなり、呆然とするなか、吉太郎の意識は薄れていきました。

吉太郎が再び意識を取り戻し、自分がまだ生きていることに気づくと、彼は濡れた身体も拭かずにきぬのもとへ駆けていきます。

障子を開けるとともに妻の名を大声で呼ぶと、それまで寝たきりだったきぬは「はい」と返事をして、不思議そうにほほ笑むのでした。

~ 終幕 ~

編集U「雪女いい人(?)やん……」

こっちだとうっかり喋ってしまうこともなく、単純にハッピーエンドなんですよね~!

気を失った吉太郎の意識のなかにだけ出てきた感もあって、こっちの雪女のほうが雪の精っぽさはあるような……?

次回は……、何だ!

ってェことで! 今回は雪女のお話でございましたよ!

いまでもガチ雪国の寒さはシャレにならんでしょうし、何なら東京でも外より部屋の中が寒くてヤバいですが、昔の時代となればガチで生死に関わる問題!

そりゃ雪にちなんだ妖怪のひとつやふたつ生まれるってなもんですよね~!

編集U「最後は消えていなくなる、ってのも雪ならでは感あるな」

確かに~!

さて、次回でございますが! んま~2月は妖精、妖精、妖怪ときましたのでね!

来週も妖怪話としゃれこみましょうか!

何の妖怪かって? そいつぁ次回を読んでのお楽しみ!!

編集U「何も考えてねぇなこいつ……」

そいつぁどうですかね! 考えてないけど!!

編集U「 考 え と け ?」

HAHAHA!  つねに考えているのはリングのことばかり!

というか来週は! いよいよ!! 2月24日で花月が引退でございますよ!!

あぁ、早すぎる……! しかし最後までこの目で見届けなければ!!

ってことでアタシャまた大阪までひとっ飛び! バスで!!

編集U「締切は守れんだろうな」

できらぁ!!

したら、またッ!!

文/しゃれこうべ村田(@SRSWiterM

参考文献

志村有弘(2011)『日本ミステリアス 妖怪・怪奇・妖人事典』 勉誠出版.

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