アイルランド神話のクー・フーリンとゲイ・ボルグ【しゃれこうべが語る元ネタの世界 第6回】
2019-11-13 12:00 投稿
スピアーって、いいですよねぇ
槍……、横文字で言えばスピアー。スピアーにもいろいろありますね。
基本形としてはやはりコーナーで構えて振り返る相手に突進する型ですが、走り込む敵をその場で迎撃する設置型、飛んできた相手を打ち落とす対空型なんかもすごく好きですね、えぇ。
え? 何の話かって?
そりゃアンタ、スピアーったら肩から相手の腹部に突進をかますプロレス技に決まってるじゃあないですか!!
編集U「 知 ら ん わ 」
またひとつ知識が増えましたね!!むしポ○モンのほうも好きですけど!
ってぇことでこんにちは! “しゃれこうべが語る元ネタの世界”、今週も幕開けですよ!
さて、伝説の武器月間の第2回! 今回ご紹介するのはアイルランド神話に登場するゲイ・ボルグ!
昔からゲームでもよく登場したこちらについて語っていきまっしょい!
【目次】
・槍かはたまた槍投げか
・クー・フーリン、その名の由来
・クー・フーリン、恋に落ちる
・クー・フーリン、とぶ
・次回は北欧神話のミョルニル!
槍かはたまた槍投げか
伝説の槍として知名度グンバツなゲイ・ボルグ! 読みかたによってはゲイ・ボルガだったりガエ・ボルグだったりいろいろありますが!
まずは簡略プロフィールから!
アイルランド神話の登場する英雄のクー・フーリンが持っていたとされる槍、または槍を扱う技術。
槍を投げる、あるいは相手に突き刺すことによって槍から無数の矢じりが飛び出し、敵の軍団や相手に致命傷を負わせる。
プロフィールにも書いた通り、クー・フーリンはアイルランド神話に登場する代表的な英雄ですね! アイルランド神話を話のベースに取り入れた『乖離性MA』でもばっちり登場!
編集U「しかし“槍、または槍を扱う技術”ってのは……?」
これがですね、ゲイ・ボルグと言えば伝説の槍、というのは非常に有名な話ですが、そうではないとする説もあるんですよ!
それによれば、ゲイ・ボルグとはクー・フーリンが師匠のスカアハに教わった技術(あるいは魔法)のことで、足で槍を投げる技を指すんじゃないか、と!
編集U「足で槍投げってのはまた珍妙な……」
しかしそれでふつうの槍にトンデモ効果を付けられるとしたら、これ以上の秘儀はないってなものでしょう!
敵の軍団に槍を放てば、大型の爆弾から無数の小型爆弾が出てくるクラスター爆弾よろしく、空中で大量の矢じりが炸裂! これが敵軍に余さず致命傷をもたらし!
個人戦で相手に突き立てれば、相手の体内で槍先から矢じりが全方位に飛び出し、内部から相手の身体をぐちゃぐちゃにするという!
編集U「グロ兵器すぎでは」
切れ味がすごいとか投げたら必中とかは神話や伝説だとよくありますが、ここまで殺意むき出しのものは珍しいような気もしますね!
ちなみにそんなゲイ・ボルグ、もとは争う2体の巨大な海獣、そのなかで戦いに敗れたほうの骨から作られた、なんて話もありますよ!
編集U「ってことは、やっぱ技術じゃなくて槍なのか」
そこに関しては……、諸説あるってことで! なにせ神話の時代の話ですからね!
で、槍にせよ技術にせよ、ゲイ・ボルグは師匠のスカアハからクー・フーリンに与えられる訳ですよ!
せっかくなので今回は、クー・フーリンがスカアハに弟子入りするまでのくだりもご紹介しちゃいましょう!
クー・フーリン、その名の由来
昔々、アイルランドの神話の時代。クー・フーリンは太陽神ルーグ(あるいはルー)の子として生を受けます。
しかし、生まれたばかりの彼はまだその名をクー・フーリンとは言わず、元々はセタンタと呼ばれていました。
セタンタ少年は幼いころより優れた力を発揮し、ある日、クランという男の館で宴会が開かれたときに、いろいろあって館の番犬を殺してしまいます。
自慢の猛犬が死んでしまったことを嘆くクランにセタンタは詫び、「番犬の子が立派に育つまでは、自分がクランの番犬に代わりましょう」と申し出たのでした。
この事件をきっかけに、セタンタは名をクー・フーリン(クランの猛犬)と改めたのです。
編集U「番犬ェ……」
しかもセタンタ少年、素手でヤっちゃってますからね! 末恐ろしいなんてもんじゃあない!
ちなみにですが、クー・フーリンの名はクーが猛犬を指し、フーリンの部分が番犬の飼い主であるクランを意味します!
猫の妖精であるケット・シーに対する犬の妖精のクー・シーのクーと同じですね!
アイルランドでは猛犬は勇気と美を示す存在として考えられていたそうで、英雄の名前にクーやらクが付くことが多かったとか何とか!
そんなこんなで、未来の英雄はすくすくと成長し、セタンタ少年からクー・フーリン青年へ、そして立派な成人へと変わっていったのでした!
クー・フーリン、恋に落ちる
一人前の男として成長したクー・フーリンは幼少時代にも増して美しくなり、また高貴さを持ち合わせるようになりました。
彼を目にした女性は、うら若き乙女であろうと、すでに婚姻を交わした人妻であろうと、たちまち魂を抜かれてしまうほどです。
まわりの人々は、このままクー・フーリンが独り身でいては間違いが起こると考え、早いうちに結婚することを彼に勧めました。
何人もの花嫁候補に会ってもピンと来なかったクー・フーリンですが、あるとき、彼はルスカの地を治める領主・フォーガルの娘であるエウィル(あるいはエマア)に恋をします。
エウィルは美しく、綺麗な声を持ち、弁舌は爽やか、針仕事も上手く、優れた聡明さがあり、また比べるものがないほどの貞淑さを持ち合わせた女性でした。
彼女が何かの襲来かと驚くほどに怒涛の勢いでやってきたクー・フーリンは、すぐさまエウィルに求婚します。
編集U「行動力の化身か……!」
が、ここでエウィルは父親の許しがなくては結婚ができぬ、と答え、父親のフォーガルは娘を嫁に出す条件として、影の国に住むスカアハのもとで修業することを要求してきたのです!
スカアハへの弟子入りには困難が立ちはだかると言われ、フォーガル的にはワンチャンそこでクー・フーリンに消えてほしかったようですね!
ちなみにクー・フーリン、最初に求婚したタイミングで、エウィルの胸元を見ながらこんなコメントをしています!
編集U「爽やかなセクハラは止めろ」
しかしエウィルは冷静に「この平原に来る資格を持つのは、何百人という敵を殺すことのできる人でなければいけません。あなたにはまだその資格がないでしょう?」と返しているのです!
編集U「う~ん、これは聡明」
説によっては、そう言われたクー・フーリンが、みずから影の国での修業を思い立ったとも言われていますね!
そしてクー・フーリンは影の国へ!
クー・フーリン、とぶ
\オォ~ラロォードがぁ ひらかぁれた~/
編集U「それは“ダ○バイン とぶ”だろ!!!」
まぁそんな伝わるかわからんボケはさておき!
太陽神である父親の助けも借りつつ、深い森を越え、足を取られる沼地も越え、さまざまな困難を乗り越えた果てに、クー・フーリンは影の国の入り口へとたどり着きます。
しかし、この入り口こそが最大の難関でした。
影の国へといたる橋はあるものの、その上を渡ろうとした瞬間、はね橋よろしく橋が中央からせり上がり、上に立っている者をはね返してしまうのです。
クー・フーリンよりも先にその橋にたどり着いていた若者たち、そのうちのひとりであり、のちにクー・フーリンとともにスカアハの弟子となるフェルディアは彼を笑います。
「やめとけやめとけ、その橋はスカアハに教わる術がなくては飛び越えることはできないぞ」
編集U「スカアハのもとに行く橋なのに、スカアハの術がないと越えられないのか……」
設計ミスから生まれた進行不能バグみたいな状況ですね……!
ちなみにですが、フェルディアも『乖離性MA』に登場していたりします!
大人しくスカアハの助言を待つべきだ、とするフェルディアたちに構わず、クー・フーリンは橋に挑みます。
橋にはね飛ばされてはフェルディアたちに笑われていましたが、何度目かの挑戦で、全力疾走したクー・フーリンはついに橋を突破するのでした。
編集U「まさかのゴリ押し」
気合と根性があれば何とでもなるもんですね!!
このパワープレイにはスカアハも驚いたようで、クー・フーリンを称えると、キッチリみっちり修業をつけてあげることにしたのです!
編集U「『ベ○ト・キッド』ネタとか伝わんのか」
HAHAHA! 名作ですから皆さんご存知でしょうよ!
ちなみに、フェルディアも何とか橋を突破し、クー・フーリンの同期としてともに修業をしたようですね!
フェルディアとクー・フーリンはいわば兄弟弟子として仲良くやっていくのですが、その結末はなかなか悲劇的……! が、こちらはまた別の機会に語らせてもらいましょう!
めでたく弟子入りを果たしたクー・フーリン! 1年と1日をかけてスカアハの魔法をすべて伝授され、ゲイ・ボルグの使いかたもこのときに教わったのでした!
“使いかたを教わった”というのがまた、ゲイ・ボルグが武器なのか技なのか判定しにくいところですが!
編集U「んま~確かに、どっちとも取れるな……!」
ちなみに、最終的には数々の謀略にはめらた上に倒れるクー・フーリンですが、何気に彼を殺すのに使われたのも彼の槍、おそらくはゲイ・ボルグだったりしますね!
編集U「あ~それな、俺も某コラムで見たことあるわ。そう、確かタイトルは……」
それ前に書いてた『乖離性MA』コラムやんけェ!!
気が向いたら皆さんも読んでみてくださいな!
それはいいとして、クー・フーリンのエピソードはまだまだありますし、幸いにして関連人物が『乖離性MA』にも多く登場している、つまり画像があるので、そのうちまたお話しますか!
ってなことで、今回のゲイ・ボルグ話はここまで!!
次回は北欧神話のミョルニル!
はい! そんなこんなでのゲイ・ボルグ回でございました!
久しぶりにアイルランド神話を読み返したんですけどね! いやーやっぱおもしろい!!
スカアハのもとで修業していた際にクー・フーリンが戦ったエピソードもなかなかにパンチの効いたエピソードなので、また機会を見て語りたいところですよ!
さて次回ですが、おつぎは北欧神話に登場する雷神・トールが持つチートハンマーことミョルニルのお話をしましょう!
個人的にはゲイ・ボルグに負けないレベルで有名なイメージもあるミョルニル、その性能やら製造工程やらをご紹介、ってなもんですよ!
ところで、このコラムが公開されるのが11月13日、そしてその翌日14日は画像を使わせていただいている『乖離性MA』の5周年記念日! こいつぁめでてェや!
5周年記念キャンペーンでいろいろやっているそうなのでね! そちらもチェックしてみてはいかがッ!
編集U「珍しくまともに宣伝するじゃねぇか。それでいいんだそれで」
んでね! さらにその翌日、11月15日はと言いますれば!!
スターダムで開催中のタッグリーグ戦がいよいよ最終戦! 終点は名古屋場所でございますよ!!
すでに指定席は完売! こいつもまためでてェや!!
編集U「その宣伝はしなくていいんだよ!!!」
しかし立見席はまだまだ予約受付中ってことなのでね! 近辺の方は! ぜひ!!
しからば、ごめんッ!!
文/しゃれこうべ村田(@SRSWiterM)
参考文献
八住利雄編(1929)『世界神話伝説体系40 アイルランドの神話伝説(1)』 名著普及委員会
マイヤー,ベンハルト(2001)『ケルト事典』(平島直一郎訳) 創元社
幻想世界武器・防具協会(2009)『[決定版]英雄達の武器・防具 FILE』 学習研究社.
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