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『薄桜鬼』でおなじみ人気イラストレーターのカズキヨネ氏がセミナーに登壇、魅力的な男性キャラクター作りの裏側に迫る

2019-10-08 15:00 投稿

魅力的な“イケメン”とは

サイバーエージェントグループのひとつ、ジークレストが行う、女性向けゲームや女性向け作品に携わる開発者を対象としたセミナーイベント、“Girls Game MEETS”。

2019年9月3日、第6回となる同セミナーが行われ、『薄桜鬼』や『緋色の欠片』、『華鬼』、『ヤタガラス』など、人気作品のキャラクターデザインやイラスト制作を手がける人気イラストレーター・カズキヨネ氏がゲストとして登壇。パネルディスカッションとライブドローイングが行われた。

本記事では、“魅力的な男性キャラクターのつくりかた”をテーマに語られた、パネルディスカッションの内容をお届け。

パネルディスカッションではカズキ氏のほか、ジークレストが開発・運営を行う『夢王国と眠れる100人の王子様』(以下『夢100』)のアートディレクターを担当するぷらなりこ氏も登壇し、お互いの制作スタイルや好きな制作工程、さらには“フェチ”に関してなど、絵に関するさまざまなことをトーク。話に花を咲かせていた。

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▼これまでのGirls Game MEETS

得意不得意がありながら“プロ”のクオリティを出す

まずは、イラストの制作フローに関して。

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企業のアートディレクターを務めるぷらなりこ氏は、自身が担当する『夢100』の場合はキャラクタープランナーと世界観設計やキャラクターの衣装案をすり合わせ、最初にデザインをしっかり決めてからラフを描くのだという。その後素材やデッサンを整えるポーズラフを描き、清書して顔や装飾を描き込み、あとはなぞるだけの状態にする。そしてそれをなぞり線を起こし、着彩し、最後にレタッチをして終わりという流れとなる。

『夢100』の制作チームは役割が分担されてラインが敷かれているため、複数のイラストの制作が同時並行で行われているが、1イベントおおよそ1ヵ月半ほどで完成するとのこと。

一方カズキ氏の場合、フリーで活動を始めてからひとりで1枚のイラストを完成まで仕上げているため、「人に渡すことは考えなくて済むような工程になりました。人に渡すときはラフはしっかり線を起こして、バケツで塗れるように線をつなげたりしました」と語った。

「今はそういうことしなくても、『クリスタ(CLIP STUDIO)』なら大丈夫みたいですけども」と、『SAI』と『Photoshop』に加え、時代に遅れないように最近『クリスタ』を使い始めたといったように、自身の制作環境に関しても明かした。

そんなカズキ氏が得意な制作工程は構図を決めてラフを描くこと。逆に苦手なのは“塗り”の作業だという。

カズキ氏のイラストといえば、美しい塗りも特徴のひとつなだけに「塗りは全般、本当に苦手なんです」と強調するカズキ氏に、ぷらなりこ氏は驚きを隠せない様子を見せる。

「神絵師でも悩んでいると聞いてちょっと安心しましたが、苦手だからこそがんばってるということでしょうか」という質問に対し、カズキ氏は「そうですね。苦手だからこそプロっぽく見えるようにがんばっています」と答えた。

カズキ氏の中では、この“プロっぽく見える絵にする”ということは仕事の絵を描くにあたり、ひとつの基準になっているのだという。

「プロっぽさってどういうことでしょうか?」というぷらなりこ氏の質問に対して「そう言われてみるときちんと考えたことないんですけど……趣味ではないというか……なんかありません?」と逆に質問を返すカズキ氏。

ぷらなりこ氏は「洗練された印象を持たせるということでしょうか? わかるかもしれません」と答え、ふたりとも商業で描くイラストのクオリティに対して、自身の中で一定の基準がある様子を見せた。

カズキヨネ様

▲カズキヨネ氏によるイラスト。

一方ぷらなりこ氏は、自分でイラストを1枚仕上げる際にいちばん好きな制作過程に、“仕上げ”の作業を挙げた。

ライティングを設定して光や影を入れる作業が好きとのこと。カズキ氏とは逆に、構図を決めるのが苦手なため、ラフを練る作業があまり得意ではないのだとか。

カズキ氏は、そんなぷらなりこ氏の話を受け、「もしかして私たちいっしょに仕事したらちょうどいいのではないでしょうか?(笑)」と提案。ぷらなりこ氏は「確かに! でもカズキさんの塗りはとても綺麗なので、それを私がやるのはもったいないですよ(笑)」と謙遜を見せた。

ぷらなりこ

▲ぷらなりこ氏によるイラスト。

こだわりのフェチを入れながら、ビジネスとしてデザインも尊重

続いてはキャラクターデザインの方法に関して。

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カズキ氏は、「クライアントさんによって両極端なんですよね。身長、髪や瞳の色から洋服や装飾品に至るまで細かいキャラクター設定をいただける場合もあるんですが、“背が高い男性です”ぐらいしかない場合もあります」と答えた。

また、「そういえば最近、あまりにキャラにツノを生やしすぎてしまって、今回はツノを生やさないようにしてください、人間なので、と言われました(笑)」とカズキ氏自身のフェチとも言っていい、好きな“ツノ”をあらかじめ折るクライアントがいたエピソードを語った。

デザインを一からカズキ氏が決める場合は、「服は後から着せ替えればなんとでもなるので」とのことで、最初に顔の形や髪型、目と髪と肌の色と言った“首から上”を決めるのだという。

女性向けゲームをはじめとしたキャラクターが多い作品の場合、キャラクターたちの全体のバランスがよくわかるよう、デザインの段階では2頭身で描くというカズキ氏。完全な頭身で描くとなると、時間と手間……いわゆる制作コストがかかるため、一度決めると直しにくくなってしまうのだという。

限られた時間の中で最大限のパフォーマンスを発揮するための、プロならでは工夫だ。

ぷらなりこ氏はこの方法に「おもしろいですね! 初めて聞いたかもしれません」と感心しきり。

一方でぷらなりこ氏の場合は、キャラクターデザインを行う際は「フェチを取り入れるのが好きで」と語った。

「もちろんそのキャラらしさは出しつつも、腰のラインを見せたいからそこが魅力的に見える服を着てもらいますとか、袖はとりましょうとか、お母さんみたいに(笑)」とよりキャラが引き立つフェチをしっかり反映させつつも、「同時にパッとキャラを見たときにどういう印象を持つか、というユーザー感情も意識しています。キャラクターのイメージカラーってあると思うんですけど、例えば赤と青半々の配色で構成してしまうと、“あの赤いキャラ!”と言えなくなってしまい、そのキャラのブランディングが弱くなってしまう。きちんと赤いイメージのキャラは“赤”と認識してもらえるような色配分にすることは、気にしますね」と、企業に勤めるアートディレクターならではの観点で、注意していることを述べた。

司会者からの「フェチというか、魅力的に見せるためについいれちゃうデザインはありますか?」という質問に対し、カズキ氏は「やっぱりツノですかね……すいませんツノの話ばっかりで(笑)」とツノに対するこだわりを見せた。

ぷらなりこ氏は「私は手を大事にしています。個人的に女性向けの男性キャラのイラストは、顔のつぎに手が大事だと思っています」と自身の見解を述べた。男性向けの美少女イラストの場合は顔と胸が大事になってくるのに対して、女性向けのイケメンのイラストは手の仕草がキャラの魅力を引き立てるための、重要な要素だという。

その後はそれぞれのフェチの話に花が咲いた。カズキ氏の“ツノ萌え”の目覚めは『緋色の欠片』で鬼を扱った際に「頭から生えているのいいじゃん! 好き!」と思ったところから始まり、その後『薄桜鬼』で確固たるものになったという裏話も語られた。

また、カズキ氏はツノのほかには腕の筋肉も好きで、腕の筋肉がいちばん男性らしさを感じるところなのだという。

ぷらなりこ氏も「私も好きです! 男らしさが出る部位は骨と筋だと思っています」とカズキ氏に同意し、「骨ばらせるところは骨ばらせてメリハリをつけて筋肉の筋を入れます。でも女性向けだと筋肉と筋肉ががっつりセパレートしている描きかたはあまりウケがよくない傾向にあるので、境目は程よくぼかしたりしていますね」と工夫を凝らしていることを明かした。

カズキ氏も「私も昔、筋肉はここまでとらないと、と描いて出したイラストを“もっと削って”と言われたことがありますね。“でもそれじゃマッチョキャラじゃない!” なんてディレクターとケンカしました(笑)」と、両者とも自身のこだわりと、ビジネスとしての現実がかみ合わなかった時のエピソードも語った。

ターゲットに関してのリーチ

続いては作品によっての描き分けについて。

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カズキ氏の場合、塗りの雰囲気をタイトルごとに変えているという。たとえば和物や伝記と、学園モノやアイドルといった雰囲気の異なるタイトルに、同じ塗りは適応できないと述べるカズキ氏。世界観やジャンルに合った塗りを提案したり、オーダーをもらったりして進めていくという。

「どうなると“和”っぽくなるのでしょうか?」という司会者の質問に対して、カズキ氏は「テクスチャをつけると一気に和っぽくなります。和紙っぽいテクスチャを貼ります」と答えた。

ぷらなりこ氏はそれに対し、「『薄桜鬼』が出たあと、カズキさんの塗りが流行ったのを覚えています。あとテクスチャをかける人も増えましたよね」と、一世を風靡した『薄桜鬼』のカズキの氏イラストに思いを馳せる様子を見せた。

一方で、“洋”のほうについて問われると、「ハイライトの入れかたをこだわりました。色は原色に近く、ハイライトを入れてパキッとさせる感じですかね」と答えるカズキ氏。以前洋風のタイトルを担当した時は西洋絵画を参考にて、厚塗りにしたエピソードも語った。

ぷらなりこ氏は「最近のトレンドの塗りが、またちょっと厚塗りっぽくなってきたなって思いますね。美麗系ほどではないんですけどその手前ぐらいの」と今の流行の塗りについて触れるとともに、「カズキさんはつねに流行の最先端に合わせてアップデートしていらっしゃいますよね。そこがすごいなあって思います」とコメントすると、カズキ氏は「できるだけ古くならないように心掛けてはいるんですけど、年齢とともに感覚が古くなるので、最近では“古いのもいいんじゃないかな”って思っています」と答えた。

「古いのが逆に新しいという感じ方もありますしね」というカズキ氏に対し、「そうですね。タピオカと同じですね」とぷらなりこ氏が分かりやすく例えるものの、しかしながらその後、ふたりともタピオカを飲んだことが無いという事実が明らかとなり、会場の参加者の笑いを誘うこととなった。

インプットは日常の中に

続いてアウトプットのために必須となるインプットに関して。

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カズキ氏は、電車に乗るときに人の足元を見るのが癖なのだと言う。

自身を“シワ”フェチであると述べるカズキ氏は、サラリーマンのシャツやスラックスのたわみ、女性のスカートのドレープといった“シワ”をチェックし、じっくりと見てしまうのだと言う。

「写真に撮ると犯罪になるので、脳裏に焼き付けます(笑) このシワは本当にいいなって」とカズキ氏。

ぷらなりこ氏もそれに対し、「スラックスのシワ、本当にいいですよね」と大きく共感し、「シワフェチの方がいたら、ぜひサラリーマンの足元を見てください」とセミナーに訪れたその場の受講者にアドバイスをした。

続いてぷらなりこ氏が、「私は革靴も好きです。形もかっこよくて、つま先がちょっと上がってるのがいいんですよ」と言うと、カズキ氏も「わかります!」と同意したうえで、「電車に座っているときによく対面に座っているサラリーマンの足元を見るんですけど、男性の紳士靴って前から描くの難しいですよね。見て分かるのになんで描けないんですかね」と悩みを吐露。

ぷらなりこ氏も「あれは難しい。いつも苦戦します」と同意し、ふたりは同じ絵に従事する仕事ならではの悩みを共有していた。

ぷらなりこ氏のインプットの方法は、Pinterestをフル活用しているという。「Pinterestがないと生きていけないぐらい」と言うぷらなりこ氏に対し、カズキ氏も「Pinterestは便利ですよね。創作意欲を刺激してくれる写真がたくさんあるし、私はモデルさんのウォーキングの写真を見ています」とPinterestを使用していることを明かした。衣装やかっこいい立ちかたなどの参考にしているという。

自身が好きな工程としてあげたライティングに関する研究のために、ぷらなりこ氏は、そのほかのインプットの方法として、映像作品で光の入りかたが綺麗なものをストックしたり、コスプレイヤーの写真も参考にしているという。「クオリティの高いコスプレ写真はライティングにも気合いが入っているものが多いしポージングもかっこいいので、Twitterで見かけたら保存しちゃいますね」と語った。

最後の質問のイラストの練習方法に関しては、「そもそも神絵師は練習をするんですか?」という司会者の質問に対して、カズキ氏は「昔から仕事の現場で叩き上げてもらったので、今は練習のために描くことはほとんどしていないかもしれません」と回答した。

ぷらなりこ氏も「私もまったく同じで、仕事でいざ必要に迫られたら勉強をするという感じですかね。描くとなったら描かなければならないので、そこからはリテイクをくり返しながら仕上げていきます。背景ももともとは描けなくて、カードイラストの原画をやっていたときに描かなくてはならなくなったのですが、最初はやっぱり難しくて。パースが分からず先輩に泣きついて、教えてもらいながら描きましたね」とエピソードを語った。

「数をこなすとできるようになるんですよね。練習しているという感じではないのですが、仕事が、練習の場にもなっているのかもしれません」とコメントした。

パネルディスカッションは以上となり、その後はカズキヨネ氏によるライブドローイングと交流会が行われ、参加者たちは夜遅くまで楽しんでいた。

ジークレストは、今後もこのようなセミナーを開き、女性向けゲーム業界の発展を目的とした取り組みを行っていく予定だという。

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