2020年何かが起きる!?スポーツ庁とNianticがともに目指す“新時代のウォークライフ”
2019-07-30 23:03 投稿
日常的に歩く目的を与えた3つの認定アプリ
2019年7月11日、Nianticは『ポケモンGO』がスポーツ庁による“Sport in Life”の第1号認定を受けたことを発表。続く7月18日には『Ingress』や先日リリースされたばかりの『ハリー・ポッター:魔法同盟』も当プロジェクトのロゴが付与された。
このプロジェクトは、生活スタイルの一部にスポーツを取り入れることを奨励するもの。この理念に合致した取り組みを促進してきたNianticが3つのタイトルすべてで認定されたというわけだ。
本記事では2019年7月30日に行われたスポーツ庁の鈴木大地長官とNiantic日本法人社長(CEO)である村井説人との対談の様子をリポート。スポーツ庁とNianticが考える健康促進とその意味に迫っていく。
総移動距離230億キロを更新する新たな1歩
鈴木大地長官(以下、鈴木) まずはSport in Lifeプロジェクト認定企業第1号の証書をお渡しします。この度はありがとうございます。
村井説人(以下、村井) ありがとうございます。
鈴木 『ポケモンGO』のユーザーをはじめ、我々がふだんリーチできない層に御社のアプリを通じてスポーツの魅力をお伝えできる機会をいただけたことを感謝しています。
村井 我々も誇りに思います。また、これからも変わらず促進していきたいと考えています。そこでまず、我々の活動を長官に知っていただきたいのですが、長官は『ポケモンGO』など弊社のリアルワールドゲームをプレイされたことはありますか?
鈴木 今日インストールしたばかりなんです。というのも正直我々とは異なる世界のことでして、入りにくい印象が強かったんですよね。しかし、今回を期にどんどんチャレンジしていきたいなと考えていたところなんです。
村井 まさに、その“入りにくい”と感じさせるハードルをできるだけ下げたいと考えてきました。弊社の掲げる“Adventures on foot with others”とは、“ともに歩き冒険に出よう”という理念、ミッションです。
村井 このミッションに基づいて我々のサービスは展開してます。その中でも大きなプロダクトになっているのが、“その場にいても進行しないゲーム”であり、“幅広い層に受け入れてもらえるもの”なんです。我々は『Ingress』というものからスタートして『ポケモンGO』。そして最近では『ハリー・ポッター:魔法同盟』をリリースしました。これらはすべて同じミッション、プロダクトのもとに作られています。そこでよく我々が公表しているのが、230億キロメートルという数字です。これは3つのタイトルすべてのユーザーがこれまでに歩いた総距離なんです。
鈴木 地球何周分というよりも月まで何往復なのかという規模ですね。
村井 おっしゃるとおりです。太陽から冥王星までおおよその距離が50億キロメートルなので、それを考えればいかにすばらしい記録かがわかると思います。
鈴木 えぇ、すごいことですね!
村井 弊社のアプリを使って1歩でも外へ、少しでも太陽の光を感じてもらいたい。自分の住んでいる地域のすばらしさを再確認し、これまで気づかなかった歴史的なものに思いを馳せるきっかけを与えたいと考えてきました。たくさんではなくまず1歩、それだけでも大きなことなのですが、その1歩が230億キロメートルまで伸びていった。スポーツ庁が推奨している“1日8000歩”を凌駕する歩数を記録したわけです。
人々を動かし地域活性化につなげる試み
鈴木 村井さんから見ても230億キロメートルという記録は予想外だったわけですね。
村井 そうですね、ここまでの記録を打ち出すとは考えてもいませんでした。この“歩く”というアクションの先には“交流”があり、リアルワールドゲームを通じてそのきっかけが生まれる。さらに、その先には“商流”があり、多くのものが動いていくわけです。
鈴木 物が売れていくということですね。例えばどんなことが?
村井 歩くことで靴がすり減っていけば新しいものが欲しくなる。最近だと暑くなってきたことで飲料や食料を求め、人々に動きができていく。我々のところにお金が落ちてくることはないのですが、地域経済や観光などに大きな影響を与えていけると考えています。実際、地方自治体とさまざまな取り組みもしてきました。宮城県石巻市から始まり、神奈川県横浜市で開催したイベントでは200万人が、鳥取県の鳥取砂丘には100万人のユーザーが訪れてくれました。
鈴木 ゲームといえば部屋にこもってトイレと食事以外は出てこない。私にはどこかそういった先入観があり、スポーツとは真逆に位置するものだと思っていました。相容れない層ではないかと感じる部分もあり、IOC(国際オリンピック委員会)の中でも「画面(ゲーム)がスポーツの機会を奪っている」なんて考える人もいるくらいなんです。しかし、こうして外に出ることを前提としたゲームもある。御社のゲームには多様性を感じましたし、1歩でも外に出てもらう“まさにスポーツの第1歩”だと実感しています。
村井 我々はこのいわゆるゲームを“リアルワールドゲーム”と呼んでいます。そこで1つ長官に質問なのですがご趣味はなんでしょうか?
鈴木 いろいろありますが趣味と実益を兼ねたジョギングやスイミング。またウォーキングとやはりスポーツが中心ですね。
村井 我々が提供しているものを従来のゲームという枠に括られてしまうことを残念に感じています。また、そうではないと伝え認識してもらうこともチャレンジだと考えています。さきほど長官がおっしゃっていたジョギングを他の方が聞けば、「いいご趣味ですね」と受け取ると思います。そこで私が「趣味は『ポケモンGO』です」と答えると、多くの方は私をゲーマーだと認識する。
鈴木 なるほど。
村井 しかし、我々が提供しているのは歩くことにゲーム性を乗せたスポーツの概念にとても近いものだと感じています。野球やテニスなど多くのスポーツには一定のルールがあり、コンペティションのもとに戦っていますよね。ここにゲーム性が乗っかることで個々が切磋琢磨して実力を磨いていく。『Ingress』や『ポケモンGO』、『ハリー・ポッター:魔法同盟』は“歩く”というゲーム性を乗せたスポーツであり、将来「私の趣味は『ポケモンGO』です」と胸を張って言っていただける意味をつけたい。今回認定していただいた“Sport in Life”とそのロゴは、我々にとってとても価値のあるものであり、3つのアプリをプレイするユーザーにとっても大きな意義になるだろうと感じています。
鈴木 スポーツも本来は遊びから始まっています。競技ともなればとてもストイックな世界ですが、その中にはたくさんの楽しみがある。最近ではスポーツの幅も広がりを見せていまして、若者に興味を持ってもらうための方法、エンターテイメント性を追求しなければ今後の発展はないだろうとも話し合いがされています。じつは庁内にもゲームをプレイする人が多いんです。大変申し訳ないのですが、それに対して“子どもみたいなことしちゃって”と考えていたんですけど、今日から私もこれ(『ポケモンGO』)を使って歩きますね。
今後の展開を聞いてみた
この対談の最後に質問する時間が与えられた。
そこで筆者は、2020年に控えた東京オリンピックやそれに関連してスポーツ庁とNianticで何かイベントの計画がないのかと質問。鈴木長官はいろいろなコラボが考えられるとした上で、2020年の東京オリンピックが数週間の国際競技で終わってはいけないと想いを明かした。
スポーツを通じて体を動かす楽しみを再確認すること、Nianticが提供するリアルワールドゲームを通じてできることが必ずある。
歩くことが前提だが小走りすることで何か新しい体験、運動につながっていくといったスポーツ庁ならではの提案もおもしろそうだと語ってくれた。
また、村井氏は153以上の国と地域でサービスを展開していること。その強みを活かし、日本に多くの国の方が訪れるであろう2020年を狙って、日本の魅力をたくさん知ってもらう手伝いができないか模索していることを明かした。
2020年の東京オリンピックは大きな話題性がある一方、すべての競技を追いかける人は少ない。
その空いた時間を使って日本を散歩、それが大きな冒険になれば最高の思い出になることだろう。
今後、“Sport in Life”の認定を受けたNianticがどんなアクションを起こすのか。
1プレイヤーの視点から見れば多くの課題があるわけだが、ぜひ、そうしたものの改善と合わせて“よりよい体験”ができることを期待している。
P.N.深津庵
※深津庵のTwitterはこちら
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