『#コンパス』、『武器よさらば』のキャラクターはこうして生まれた。3Dアートクリエイターが語る制作秘話
2018-03-01 16:00 投稿
3D表現はさまざまな壁を乗り越える工夫とともにある
グリーのアプリ開発スタジオ“Wright Flyer Studios”主催の業界関係者向けトークイベント“Flyers’ Lab”第4回が2018年2月26日に開催された。本記事にて、このイベントの模様をリポートしていく。
今回のトークテーマは“3Dアート”。NHN PlayArtの藤田大介氏、Wright Flyer Studiosのルイス パオリーノ氏と下田翔大氏が登壇し、3Dアートを手掛けるにあたっての各社の取り組み発表や座談会が行われた。
各社の取り組みについて
まずはNHN PlayArtの藤田大介氏が『#コンパス』の3Dアートづくりの取り組みとして“強豪に埋もれない新規性の高い3Dアート”を生み出すまでの流れを紹介した。
藤田氏のチームは独自性を引き出すために、既存コンテンツで多く使われている表現手法を避けるべく、まずは“やらないこと”を決め、そこから何をすべきかを策定していったという。
また、ことキャラクターデザインにおいては、シルエットを明確にしシンプルにまとめつつも、ユーザーから愛されるよう、コンセプトに沿ったカラーリングや設定、デザインなどを作り上げ、キャラクター背景にも凝った、“視認性の高いヒーロー作り”を目指したという。
続いてWright Flyer Studiosのルイス パオリーノ氏から『武器よさらば』、『釣り★スタVR』の2タイトルにおける3Dアート作成時の行程、および作成に使用したソフトウェアなど、より開発者向けに掘り下げた内容の紹介が行われた。
ものによってはジョイントと呼ばれる3Dアートの可動部分が3桁に及ぶものなども作られており、いずれも非常に繊細で細かい作業であることが伺えた。
3Dアートにおいても、やはりハードルは端末の性能差
取り組み紹介に続いて行われたのは、モデレーターに下田氏を迎えての座談会。
座談会、最初のテーマとして挙げられたのは、“スマホだから、VRだからこその3D表現について教えてください”というもの。
このテーマを受けて藤田氏は「『#コンパス』では、キャラクターを含むバトルに関連する部分を手厚く対応するため、それ以外の機能はシンプルにしました」と語る。
これにより、プレイヤーに見てもらいたい部分の表現を突出させることが出来るという。スマートフォンはコンシューマゲームと比較すると画面サイズが小さくなってしまうため、焦点を当てるべき箇所をちゃんと絞ることも重要だそうだ。
続いてルイス氏は「ローエンドのスマホ端末(2018年現在でiPhone 5Sよりも前に出た端末などが該当する)にどこまで対応させるのか。この問題はいつも我々の課題となります」と語り始めた。
この問題は、スマートフォンが成熟期を迎えてから、あらゆるシーンで語られてきた問題。規格が統一されているコンシューマゲームとは異なり、スマートフォンは個々がさまざまな端末を持ち、また同等スペックの端末であっても表現力が異なったりしているため、そのすべてに合わせてゲームを調整するのは不可能に近い。
藤田氏はこの問題を、グラフィックレベルを5段階に分けることでハイエンド端末からローエンド端末までを対応させたとのことだが、ルイス氏はまた違う方法でこの問題に向き合ったようだ。
ルイス氏「私たちは、私たちがやりたいことがやれるバージョンと、やりたいことは削られるが、ローエンドにも対応できるバージョンの2種類を用意することも検討する」
もちろんバージョンを2種類用意するとなると、コストは割高になるということを付け加えつつも、ルイス氏はそういった手法も選択肢としてはありだということを語ってくれた。
また、バージョンを分けるということについて氏は「まずはある程度のクオリティで作ったバージョンを用意しておき、そこに開発終盤で発生する、クオリティアップ作業が行える余地を残しておくという手法もあります」とノウハウも紹介してくれた。
3D表現は今後の表現手法の主力になるのか?
本会で用意された最後のトークテーマは“ゲームグラフィックの今後とは!? やはり3Dがゲームの主力になるか?”。
これに関して藤田氏は「3Dでないと出来ないことがある場合は、3Dが優位になると思いますが、ゲーム全体を通して見て、それが主力となるかとなると、そうではないと思います」とコメント。
曰く「2D、3Dというものは、それぞれ必要に応じて選択するべき選択肢でしかない」、「とくにスマートフォンゲームにおいては、運営することを含めて考えなければならないので、3Dが主力になるとは思わない」とのこと。
2D、3Dそれぞれのメリット、デメリットを熟知し、それを考慮した上で何を表現したいのか、そして運営でユーザーに何を提供したいのかによってそれは選択されるべきであり、主力どうこうという話は少しズレがあるという考えのようだ。
ルイス氏は藤田氏の話を頷きながら聞きつつも「ピクセル(ドット絵)はありだが、それ以外の手法を用いるなら3Dのほうが強いと思います」と、ひとつ私見を示してくれた。
ルイス氏は、自身がレトロゲーム好きであり、ドットイラスト表現を好いていると前置きをしつつも、一見すると3Dに見えなくもないハイクオリティなスプライトアニメーションを採用しているものを見ると「それならなぜ3Dにしないのか」と違和感を覚え、場合によっては気持ち悪さも感じてしまうという。
言葉こそ違うものの、これもまた“3Dには3Dの良さがあるので、それをあえて2Dという領域に引き込んで表現しようとする必要はない”、適材適所であるべきだという話なのだろう。
こうして話ひとしきり話を終えた後、座談会は質疑応答へと移った。
その中では「実装を諦めた箇所は?」という質問がなされ、これに対し藤田氏が「四足のキャラクターを実装したかったのですが、初期の実装やゲームデザインへの影響もあり、見送ることになりまして」と、悔しさを滲ませる場面も。
ただチームとしてはこれをまだ諦めていないようで、四足のキャラクター実装のために、いまもなお研究を続けていることを明かしてくれた。
また、同様の質問にルイス氏も「『武器よさらば』では、フェイシャルができなかったし、マップに環境インタラクションをもっと増やしたかったです」と、無念さを表情に浮かべながら過去を振り返る。
今後両名が作り上げるものがどのような作品になるのかは不明だが、今度こそやりたいことがすべて形になってくれることを願う。
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