『刀剣乱舞 -ONLINE-』と『モンスターストライク』、ふたりのプロデューサーが見据えるゲームの未来とは?DMM GAMES×XFLAGスペシャルトークイベントリポート
2018-02-15 07:00 投稿
業界をリードする2社のスペシャルコラボトークイベント
2018年2月1日、東京・六本木のDMM GAMES オフィスにて、DMM GAMESとXFLAGによるトークイベント“【DMM GAMES×XFLAG】ゲームプロデューサーが描く、これから。”が開催された。本稿ではその内容をお届けする。
これはDMM.comグループの開催する勉強会イベント“DMM meetup”の一環として行われたもので、今回は“ゲームプロデューサー”をテーマとして、DMM GAMESとXFLAGのコラボにて開催された。
登壇者は『刀剣乱舞 -ONLINE-』や『FLOWER KNIGHT GIRL』を手掛けたDMM GAMESエグゼクティブプロデューサーの花澤雄太氏と、『モンスターストライク』(以下、『モンスト』)の全事業を統括している、株式会社ミクシィ取締役でXFLAG スタジオ モンスト事業本部長の多留幸祐氏。
DMM GAMESとXFLAGの現在
今回の討論会の主題は、“DMM GAMES × XFLAGのこれまでとこれから”。
ふたりの簡単な経歴紹介の後、最初のトークテーマとして、両社の現在の状況が語られた。
花澤氏が「どこの会社も言っていると思うが、今期は内製IP(原作)を作りたいと考えている」、「『PUBG』の大会を開催するなど、eスポーツにも力を入れていく」と語ると、多留氏がそれぞれに対して「いっしょです」と回答。
花澤氏はこれに加え、「アジアを中心とした国外との業務提携を含めて、市場を大きく見て展開していこうかなと考えている」とも語った。
一方の多留氏は、「『モンスト』をただのスマートフォンのゲームで終わらせないよう、もっと大きく育てていく。後はIPの立ち上げを、エンターテインメントコンテンツ全般でチャレンジしていきたい。アニメやリアルイベントも含めてみんなでワイワイ楽しめるコンテンツを拡充していく」と述べ、IPまわりの強化に力を注ぐ姿勢を見せた。
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新規ゲームができるまで
続くトークテーマは“新規案件を立ち上げるフローについて”。
この中で花澤氏はDMM GAMESでは「定例の役員会議があり、そこでプレゼンを行う。早ければ(リリース承認の決裁が降りるまでに)3分程度」と語り、多留氏を驚かせる場面も。
また、スピード決裁の理由を「役員が見たいのは実現性。誰がどの会社と協力して、誰が絵を描いて、いくらで、どこの市場に向かっていくのか、というところをチェックしたい。ゲームの内容に関してはプロデューサー次第で、途中のチェックがほとんど入らない」と語った。
対照的に、XFLAGでは最初に得られるのはα版の開発承認まで。その後β版の開発承認を経て、最後に改めてリリースの承認を得る必要があるという。
多留氏は「リリースした場合、運営する責任を果たすことになる。リソースは限られているので、“本当に大丈夫か”と迷った場合は出さない。作っていたのに世に出ていないゲームはいくつもあります」と、運営型のゲームならではの苦労を語った。
また、XFLAGの新規ゲームの立ち上げについては、「社内の誰でも企画を出せるようにしているが、おもしろければなんでもいい、というわけではない。マルチプレイのゲームしか作らないし、もっと言えば顔合わせマルチが中心となるゲーム以外は作らない。ソロプレイのゲームは絶対に却下されます」という。
これには、ビジネス上の戦略が存在しており、「ソロプレイのゲームを僕らよりうまく作る会社って、いっぱいあると思うんですよね。僕らが市場で勝つためには、『モンスト』が持ってるような魅力のコアを深掘って、横展開していくほうがいい。僕らが作るべきものはこの領域、という縛りがあることでプロジェクトが迷わず進んでいけると思ってます。僕らはフルスイングでホームランだけを狙っている」と語った。
これに対し、花澤氏からは「すでにナレッジ(知見)はかなり溜まっているのでは?」との質問が。
しかし多留氏は「『モンスト』のヒットにはいろいろな成功要素があり、なかなか再現するのは難しい。ただ、諦めてふつうにオンラインで遊べるゲームにしてしまうと、これまでのナレッジはなくなるし、闇雲に“おもしろいゲーム”を作ることになってしまう。もう1回ホームランを打つには10年かかるかもしれませんが、それでもずっと顔合わせてやるマルチプレイをコアとしたゲームに張り続けるほうが勝つ確率は高いのではないか、というのが我々の戦略です」と回答。XFLAGのアプリゲーム開発に対する指針を明確に示した。
ゲーム以外への展開は?
続いてのテーマは、“ゲーム以外への展開について”。
多留氏は実際の『モンスト』での展開を例に上げ、「ゲームをプレイした報酬がモンスターとかアイテムだけではなく、ゲームをプレイすることで“銀だこ”や“サーティワンアイスクリーム”といった生活の中でいいことがあるように持っていきたい」と語る。
さらに「“銀だこ”をもらえるクエストは難しいクエストではないけれど、遊ぶユーザー数がいちばん多い。このような要素を保っておくことが大事。復帰ユーザーに戻ってきてもらうきっかけにもなるような“みんなの興味が同じになるクエスト”を、ポイントポイントで絶対に設けています」とコメント。
また花澤氏は、『刀剣乱舞 -ONLINE-』の原作である『刀剣乱舞』から展開されている『舞台 刀剣乱舞』に言及。
「キャラクターたちが演劇を行う、2.5次元舞台というものがあります。はじめは演劇やミュージカル自体見たことがなかったんですが、実際目の当たりにするとクオリティもすごいし、お客さんの熱もすごい。これは大きくなっていく世界で、かつゲームとも相性がいい」と、メディアミックスのひとつの形として高く評価する。
さらに近年のゲーム製作について、「メディアミックスが当たり前になっていく中で、(これまでには必要がなかった)新しい知識が増えてきた。ゲームを作るのに、長年やってきた人がいれば足りるかというと、それだけでは足りない。新しい仕掛けに敏感に反応して、熱のある人の気持に耳を傾け、取り入れながら世界を広げていく流れになっている」と指摘。
「ゲームプロデューサーと言うよりは、エンターテインメントプロデューサーになっていかないと限界があるし、いつか置いていかれてしまうと思う」と、前線に立つ人間としての実感を語った。
海外展開、それぞれの方針
花澤氏は近年のゲーム文化について、現在では日本と海外、とくにアジア地域とのゲーム文化の垣根はほとんど存在しないレベルになっていると語る。
これからの海外展開について、「今後は日本と国外どちらをメインに作ろうか、と考えるのではなく、両方に受けるものを考えていく。機能のオミットをうまく使って出し分けたり、市場を日本だけで見ないようにしていかないといけない。広く見て広く作っていくのが現状の解決策」と述べた。
そんな花澤氏に対し、多留氏から「市場に対しての魅力はどのように感じていますか?」との質問が。
花澤氏はその圧倒的なゲーム人口を挙げ、「1日何人くらい遊んでいるんですかと聞くと、帰ってくる答えが1億5千万人。桁が違うんです。より広く遊んでもらえるのは作る側としては当然うれしい」と語った。
多留氏は、『モンスト』が北米から撤退した際の経験談として「顔合わせのマルチプレイで遊ぶには、北米大陸は広すぎる。では“オンラインにすれば良いじゃないか”といった意見もあるかもしれないが、それだと僕らのコンセプトがブレてしまう」とし、そのスタンスを「ローカライズはしてもカルチャライズはあまりせずにやっていく」と言う言葉で表現する。
その真意について、多留氏は「その国の文化に合わせていけよと思われることもあるかもしれないが、逆に言うとその国にその文化がなければ文化そのものを創れてしまう可能性がある。だから創るまでチャレンジし続けるだけですね。世の中に正解はいっぱいあるので、僕らはこういう戦いかたにこだわってやります」と、XFLAG独自の戦略を改めて強調した。
プロデューサーを目指す人に向けてのアドバイス
最後のトークテーマは、プロデューサーを目指す人に向けてのアドバイス。
花澤氏は「現場の人は方法や手段を先に置いて考えたりするが、プロデューサーはもっと上から見て、手段にこだわらず目的を叶えればいい。適材適所がいちばんのマネジメント」と述べる。
また多留氏は「僕がやっているのはビジョンやコンセプトを決める仕事。決められないままにいると堂々巡りになるので、プロデューサーは決断できる人であるべき。なおかつ誰よりもそれにコミットし、どう魅力付けをしていくか考えられる人が向いている」と語った。
現在のゲーム業界に置いてひときわの存在感を表す2社によるこのトークイベントには、ゲーム業界から数多くの出席者が集まっていた。
チャンスをつかんで成功を果たしたふたりの言葉は、果たして出席者にどのような影響を与えるのだろうか。これから先のゲーム業界に、良き影響が現れることを期待したい。
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