「ゲームとは何ぞや?」『モンスト』を生んだ岡本吉起氏が語るゲームの作り方と“95%の法則”

2017-06-17 16:37 投稿

次代のクリエイター必聴のトークセミナー

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▲ゲームクリエイター・岡本吉起氏。

著名なゲームクリエイターが登壇し、テーマに沿って講演、来場者とのトークを行う催し“Gm4u/Game for you”(以下、“Gm4u”)が、2017年6月16日にヒューマンアカデミー秋葉原校にて開催された。

本イベントは全10回を予定されており、初回となる今回は『ストリートファイターII』(以下、『ストII』)や『モンスターストライク』(以下、『モンスト』)など、数々のヒットタイトルを手掛けてきたクリエイター・岡本吉起氏が登壇。

“ゲームとは何ぞや?”をテーマに、岡本氏のゲームに対する考えや夢、そしてクリエイターとしての心構えが語られた。本稿では、その様子をリポートする。

なお、本イベントは全国13カ所の総合学園ヒューマンアカデミー校舎にてライブ中継され、事前登録をすれば生徒以外の方でも参加が可能。全国で150名程度の来場者があり、会場は賑わっていた。

【岡本吉起氏・プロフィール】
株式会社オカキチ代表取締役兼ゲームプロデューサー。愛媛県出身。『モンスト』には企画立案時から関わっており、現在も開発スタッフとして制作に参加。モブキャストと『キングダム 乱 -天下統一への道-』を鋭意制作中。

ゲームとは何か?

まず、来場した学生たちに“ゲームとは何ぞや?”という問いが投げかけられた。

学生たちからは、ゲームとはエンターテインメントである、遊びの何でも屋である、操作することである、など多様な意見が挙がる。

岡本氏は、それをそれぞれ正解であるとしながら、ゲームとは“一定の範囲内で通用するルールを持って、人が行動すること”であると語った。

ゲームは無限大ではなく箱庭であり、その箱庭のルールを作るのがクリエイターである。箱庭のルールがよければ、即ち人が集まる。

だから、箱庭に住んでくれる人(ユーザー)のことを最大限に考えて、不満がないようにルールを作る。

自身が作りたいゲームではなく、みんなが遊びたいゲームを作る必要があるのだ、と岡本氏はゲーム作りに対する姿勢を示した。

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▲モニター越しに秋葉原校以外の会場からも意見が挙がった。

ゲーム作りにおける“95%の法則”

岡本氏は、別のゲームのルールを完全にトレースしただけのゲームを作っても、それはゲームを作ったとは言えない、という考えも述べた。

その一方で、岡本氏自身も95%は市場にあるゲームのルールをトレースして使う、と語った。

それは、完全に真新しいルールを作るよりも、慣れ親しんだルールを採用するほうが、ユーザーのとっつきやすさにつながるため。

ルールの95%は普及しているゲームを模倣し、ユーザーがゲームに慣れるまでの手間を削減して、残りの5%で独自性を出せばいい、というのが岡本氏の考えかた“95%の法則”だ。

以上のことから、いかにユーザーライクな考えかたを持つか、いかにユーザビリティを高めることができるか、とゲーム作りに対して真摯に向き合う姿勢が岡本氏の根幹にあるのだと感じられた。

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▲『モンスト』では敢えてチュートリアルをなくし、チュートリアルなしで遊べるゲーム性を目指したと語る岡本氏。

着地点から逆算してゲームを創造する

続いて、話が進展して、トークテーマはゲームの作りかたに移行。

通常のゲーム作りの手順は、キャラクター、BGMなど、ゲームを構成するパーツを作り、それを積み上げて1本のゲームに仕上げていく。

しかし、岡本氏は、そのゲームを出すことで社会に与える影響を想定するところからゲーム作りをはじめると語った。

『ストII』を例に挙げると、ゲームが稼働した結果ゲームセンターが潤って盛り上がる、という目標を先に設定し、そこから逆算した結果、対戦格闘ゲームという形式に行き着いたとのこと。

『ストII』の開発当時、ゲームセンターが潤うための手段は、開発メンバーによって以下のようにさまざま考案された。

×単純に1プレイ110円に値段を上げる
→客が離れる

×高難度化により1プレイの時間を短くして、客の回転率を上げる
→初心者がとっつきにくくなり、人が離れる

×大型筐体でハイクオリティなゲームを作り、1プレイ500円にする
→筐体が高く、ゲームセンター側が取り入れられない

多人数プレイ可能にして同時に遊べる客数を増やす
→協力プレイゲームが登場して成功するも、1プレイが長くなり回転率が落ちる

対戦型のゲームにする
→負けた人のプレイ時間は短く、且つ、腕を磨くために繰り返しプレイされる

このようにまずは着地点を決めて、それを達成する手段を逆算する。そうして対戦格闘ゲームの『ストII』は生まれたのだ。

同様に『モンスト』も、カップルや友達が同じ画面で協力プレイして、コミュニケーションの機会が増えるという着地点を想定して作られている。

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▲岡本氏自身が携わったタイトルを例に、具体的な話も語られた。

つぎの世代の子どもたちのために

『モンスト』を開発していたメンバーは安月給だったが、ヒットを確信しながら作っていたし、本当に作りたいゲームに携われることに夢を持っていたと言う岡本氏。

『モンスト』の大ヒットを受けて変化したいまの夢は、つぎの世代の子どもたちが、日本に生まれてよかったと思える社会を作ることだと岡本氏は語る。

戦後、岡本氏の上の世代がいまの日本を築き上げたように、岡本氏もつぎの世代の子どもたちのために活動を行っているのだ。

その活動の一環として『モンスト』の売上の一部は、こども食堂(※)などに寄付されていることも明かされた。

ゲームクリエイターとして、ゲームを通して社会に貢献すること。未来のクリエイターに伝えたいメッセージが、ここにあったのではないだろうか。

※こども食堂……貧困で満足に食事を摂れない子どもたちのために食事を提供する施設のこと。

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▲岡本氏は、自分が幸せになったら、つぎはほかの人を幸せにしたいと語る。

質問コーナー

セミナーの後半は、ライブ中継でつながっている全国の会場の学生から、岡本氏に対して質問が行われた。

ときに鋭い質問もあったが、岡本氏はそれに対して実直に回答。その一部を抜粋して紹介する。

Q.これから若いクリエイターに何が求められますか?

岡本氏 新鮮なアイデア。若い切り口で発言してほしい。それに加えて、おもしろいアイデアを上手に伝える能力も求められる。プレゼンテーションを聞いておもしろい、PVや資料を見ておもしろい、ゲームを遊んでおもしろい、くり返しプレイしておもしろい。これが売れるゲームの4つの条件。

Q.ゲームを作るのは非常に大変なのに、なぜやり遂げられるのですか?

岡本氏 絶対に無理な場合は、やり遂げなくていい。作っても自分たちのためにならない、商品として価値がないゲームの場合、作らなくていい。ヒット作の数でクリエイターは評価されるので、売れないタイトルに長く関わるのは自分のためにならない。

Q.人をまとめるときに気をつけていることは?

岡本氏 チームをまとめるために必要なのは、ガス抜きや不満の解消。日本人は不満に敏感だから、いいところを伸ばすよりも、悪いところを潰すことに気をつけている。

Q.もし、モチベーションが下がったときはどうしていますか

岡本氏 長期的なモチベーションは、3食ご飯が食いたい→人並みの生活をしたい→人が羨む生活をしたい→社会貢献したい、と徐々に上がっていき、下がったことはない。短期的なモチベーションで言えば、下がるときはある。そういうときは、長期の運営、リリースの数年後の姿をイメージすればモチベーションを保てる。

Q.一部には、ソーシャルゲームは日本のガンだ、そのせいでコンシューマーゲームが売れない、などと言っている人もいます。それに対して、どう思われますか?

岡本氏 ソーシャルゲームは、本来ゲームにかけていい金額を大きく超えている。それで、コンシューマーゲーム業界の売上を食っている部分はあると思う。だから、その意見は一部正しい。でも、コンシューマーゲームは、手に取ってプレイするまでの手軽さでソーシャルゲームに負けているだけだと思っているから、その意見の半分は間違いだと思う。

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▲小粋なジョークを飛ばし、会場の爆笑を誘う岡本氏。質問も活発に行われ、終始和やかなムードでセミナーは幕を閉じた。

全国の来場者とトークを楽しみながら、ゲームへの思いを語った岡本氏。ゲームを介して社会貢献をすることが夢だと話す岡本氏の姿は、次代のクリエイターたちの目にはどう映っただろうか。

本イベント“Gm4u”は、今後も著名なクリエイターを招いて定期的に開催予定。ゲームクリエイターを目指す人は、ぜひとも参加して話を聞いてほしい。

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