マイナンバーからピザの出前まで生活インフラへと進化する『LINE』 5年先の構想が明らかに
2017-06-16 01:37 投稿
今年もやってきた“LINE CONFERENCE 2017”
2017年6月15日、LINEの事業戦略発表イベント“LINEカンファレンス 2017”が催された。このイベントはLINEのこれまでの業績を確認しつつ、今後のロードマップが発表される年次イベント。
“CLOSING THE DISTANCE”と題された今年のカンファレンスでは、今年の成果発表をはじめ、さまざまな新サービス、新製品の発表が行われた。
約3時間にも及ぶ発表会だったため、原稿も長大。ざっくりわかればいいという人は以下の箇条書きを参考に。
・LINEの機能強化(カメラ機能強化、ライブチャットの実装など)
・内閣府と連携し各種手続きの窓口機能を実装
・LINEショッピング開始、購入でポイント還元
・“出前館”との提携によるLINEデリマ発表
・『LINE LIVE』の機能を『LINE』内組み込み
・AI搭載のスマートスピーカー“WAVE”の発表
・ソニーモバイルコミュニケーションズ、ファミリーマートとのパートナーシップの発表
発表イベントの冒頭では、LINE CEOの出沢剛氏が登壇し「1年先のことはわからない、時代の流れに合わせて進めていきたいという思いでこれまでやってきたが、今回はこの先5年に向けての戦略をいくつか発表したいと思います」とコメント。
開始から会場を期待させ、会は幕を開けた。ここでは、そこで発表された新サービスなどの情報を中心にまとめてお届けしていこう。
多面的戦略が功を奏し、いまなお成長中
まず行われた発表は昨年の成果発表。スマートポータル化を目標としてマンガ、音楽、ライブストリーミング、ニュース配信など多面的な戦略を進めてきたLINEは、『LINE』アプリが月間利用者数(MAU)が1億7100万人を突破したことを発表。
前年比2000万人増という大きな成長の背景には、スマートポータル化の効果が大きいようだ。それを示すように、広告を除くデジタルコンテンツ販売では、クォーター比較で流通総額が47%もの成長を示している。
その中でも大きな成長をしめしているのが『LINEマンガ』だという。すでにこちらのマーケットは100億円以上の規模となっており、その度合いが伺える。なお、ミュージック、ニュースも成長は好調。
リリース直後にはネガティブな意見が多かったサービス“LINE PAY”も、570%という驚くべき成長を見せていることが判明。当時こそ不安の声が多かったが、これから本格的な到来が予想されるキャッシュレス、ウォレットレス時代を見越した先鋭的な戦略であったことがここで証明された。
『LINE』はもはやただのメッセンジャーアプリという枠組みを飛び出し、情報もエンタテインメントも包括した巨大なポータルとなりつつあることが確認できる。
『LINE』のインフラ化を目指して
LINEは今回のイベントで“コミュニケーションファースト”を軸とした新たな3つのビジョン“Connected”、“Videolized”、“AI”を発表。また、それに沿った新サービスの発表も行われた。
まず発表されたのは“Connected”というビジョンをテーマにした新サービスたち。“Connected”は、ただ個人と個人を結ぶのではなく、個人と企業、個人と行政をも結べる『LINE』のインフラ化を目指したビジョン。
『LINE』をインフラ化するうえで避けては通れないのが、『LINE』そのものの進化だ。現状でも個人と個人をつなぐツールとしてはもちろん、個人と企業を結ぶツールとしてもある程度機能はしている。
しかし、これをインフラと呼ぶにはまだ難しい。そこで提案されたのが『LINE』の新機能だ。
新機能のひとつめは、カメラ機能の強化。LINEは『SNOW』や『B612』などのようなエフェクト加工機能、フィルター加工機能を『LINE』のカメラに付加。これにより、手軽にカメラを使ったコミュニケーションが行えるようになる。
こちらは今夏実装予定とのこと。あわせてスライドショー機能の追加が明らかに。複数の写真や動画をまとめて、BGMやエフェクトを付けたスライドショーを作成、共有する機能が追加されるとのことだが、こちらの実装時期は未定。
さらに、ライブチャット機能の実装もアナウンスされた。現在『LINE』にはビデオ通話は実装されているものの、こちらは双方向のビデオチャット。
今回紹介されたチャットライブ機能は、一方通行のビデオチャットで、トークルーム内の友達に対してライブ動画の配信が可能になるというものだ。これにより、とくに若年層の中でのコミュニケーションの形はさらに進化をすることが予想される。
『LINE』のチャットそのものが強化される“チャットアプリプラットフォーム”機能も年内に追加予定。こちらは、トークルームのメニューをカスタマイズできるというもの。
“インチャットアプリ”と呼ばれるものをインストールすることで、トークルーム内で友だちとイベントの日程を共有するカレンダーアプリを利用したり、ゲームをしたりといったことが可能になるという。
ポータルタブで各種情報がひとまとめに
LINEのインフラ化、ポータル化を進めるために取られたもうひとつの施策は“ポータルタブ”の実装。こちらは、2017年2月に新設されたニュースタブをポータルタブへとアップデートするというもの。
これまではこのタブボタンからニュース画面に飛ぶことができたが、これからはニュースだけでなく、天気予報や占い、電車の運行情報など、ユーザーひとりひとりの生活に合わせたパーソナル情報メニューが登場するようになる。
さらに、『LINE』のファミリーアプリとの連携も行え、このタブ内のメニューから、マンガ、音楽、動画などさまざまなコンテンツへ手軽にアクセスできるようになるとのこと。
ウォレットタブが新設、ショッピング利用に向けた強化
タブの変更はさらに進む。現在モアタブが設置されている箇所がウォレットタブに変更されるという。
ウォレットタブでは、“LINE Pay”での送金や決済、残高確認、ポイント確認などが可能に。オンライン・オフラインを問わず、『LINE』が商品購買・決済の入り口になることを目指して新設されるタブということもあり、内容もショッピングに特化したものとなっている。
個人と個人から“個人と企業”、“個人と行政”へ
“Connected”に関する発表の中で、LINEは行政と個人とを繋ぐ架け橋にもなれることをアピール。すでに渋谷区、福岡市、熊本市などは『LINE』を使った情報発信やサービスの案内などを行っているが、今回その規模が内閣府へと拡大する。
一時話題となった“マイナンバー”との連携に関する話だ。こちらに関しても今回詳細が発表された。
これまで行政手続きや申請をインターネット上で行おうとすると、マイナンバーカードと、マイナンバーカードに対応したカードリーダー、インターネット環境に接続されたPCが必要となり、さらに目的の申請を行うページを探すのが手間という難点があった。
それを『LINE』と内閣府が運営するマイナポータルとを連携させることで、手続きの手間を極力省こうというのが今回の試みだ。
具体的なシステムは、『LINE』上に特設された、マイナポータルのLINE公式アカウントとメッセージをやりとりすることで目的の申請ページが紹介され、そこからジャンプした先(マイナポータル)で電子申請をというもの。
まずは子育て関連サービスを皮切りに今秋から本格的なサービス提供が予定されているという。なお、こちらの発表には内閣府特命担当大臣(マイナンバー制度)の高市早苗氏が登場。
高市早苗氏は「今回ご縁がありましてラインとマイナポータルの連携をさせていただくことになりました。国内で6800万人もの人が利用している『LINE』でも申請ができるようになれば、マイナンバーはもっと身近なものになると期待しています」と延べ、今回の提携への期待感を表した。
『LINE』で買い物がより便利に!
現在、すでに多くの企業が『LINE』を活用していることは周知の事実だろう。今回発表された新サービス“コマースゲートウェイ事業”では、ユーザーと企業・ブランドをより強くつなげていくというもの。それも、オンライン上での繋がりだけでなく、オフラインの店舗との繋がりも強化するべく作られたサービスだそうだ。
コマースゲートウェイ事業として紹介されたひとつ目のサービスは、“LINEショッピング”。これは発表イベントが行われている段階で開始されたサービス。
オンラインショッピングモールとしても機能するが、『LINE』内に会員カードを保持でき、それが実際の店舗でも使用できる。なので、オンラインでもオフラインでも役立つショッピングツールとして働くことが期待される。
また、貯まったポイントは“LINE Pay”やスタンプ購入で利用できるLINEコインと交換もできる。これは『LINE』のサービスならではの特徴と言えるだろう。
もうひとつのサービスは“LINEデリマ”。こちらはオンライン出前注文サービス“出前館”との提携によって実現した、デリバリーサービス。
“出前館”に加盟する全国約1万5000店舗のフードデリバリーサービスが、『LINE』を通じて利用できるようになるというもの。
また、これはあくまでもフェイズ1のサービスであり、フェイズ2では『LINE』で注文をしテイクアウトするというサービスも追加される見通しとのこと。
さらに本サービスは最終的には生鮮食品、家庭用品、医薬品のデリバリーにも着目しており、今後の発展が期待される。
時代は動画コミュニケーション時代へ
ここからは、3つの軸のうちのひとつ“Videolized”について紹介していく。
“Videolized”とは、コミュニケーションにおける動画にフォーカスしたビジョン。インターネット上のコンテンツは、通信やデバイスの進化により、その内容がテキストから画像へ、画像から動画へと、よりリッチなものに変遷をしてきた。そして、動画でのコミュニケーションがメジャーになるに連れ、若年層では動画も立派なコミュニケーションツールとして利用され始めているとのこと。
それを示すように、LINEが展開する写真アプリ『SNOW』、『B612』、動画サービス『LINE LIVE』、『LINE TV』はとくに10代女性からの支持が強く、堅調に成長を続けてきたサービスだという。
この結果をもとに、LINEはこれまで独立アプリであった『LINE LIVE』アプリのプレイヤーを『LINE』に組み込むことを決定。これにより、『LINE』内で当該ライブストリーミングを視聴できるようになり、手軽にサービスを利用できるようになる。
それだけでなく、『LINE LIVE』プレイヤーはポータルタブとも連携し、ポータルタブ内でオススメのライブ紹介なども行われるようになるそうだ。
手軽に利用できるようになると広告収入も得やすくなる。これを利用して、同社はインライブ広告も開始するという。
また、ここで始めるインライブ広告事業を通じて、配信者にLINEポイントを還元するサービスも行っていくという。すでに配信者には特典として、配信結果に応じたLINEポイントの付与サービスが行われているが、このシステムを強化。エコシステムの循環がさらに拡大するように図っていくという。
『LINE』初ハードウェアはスマートスピーカー
3つの軸、最後のひとつは“AI”。
PCからスマートフォンへの大変革期に生まれた『LINE』。そのスマートフォン市場もすでに成熟期に入りかけ、次の大変革期の入り口も見えてきているのがIT業界の現状だ。
LINEはそこから、ポストスマートフォンになるものはAIと予測。すでにそこに向けて舵を切り、機械学習に関する実証的な開発・研究を行っているという。その成果第一弾として、このたび発表されたのがクラウドAIプラットフォーム“Clova”だ。
“Clova”は先にスペインで行われたモバイル端末の見本市“World Mobile Congress 2017”でも発表されたものだが、今回はそのAIシステムだけでなく、“Clova ”を実装したスマートスピーカー“WAVE”が発表された。
スマートスピーカーとは、AIにより管理されるスピーカーで、音声認識機能やAIの学習機能によりさまざまな機能を持ったマルチデバイス。
Appleもこのスマートスピーカーの開発には着手しており、先日行われたAppleの開発者向けカンファレンスでは、同社初のスマートスピーカーとなる“HomePod”を発表している。
発表こそ前後してしまったが、LINEが発表した“WAVE”もスマートスピーカーのひとつ。音声で操作して音楽を流せるというだけでなく、『LINE』メッセージ読み上げ機能、カレンダー機能やTo-Do管理、天気予報案内やメモ機能までもが実装されているという。
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さらに、単体としての動作だけでなく“WAVE”はほかの電子機器に作用する機能ホームコントロールも実装されているとのこと。具体的には、赤外線を使ったリモコンで動作するマシンのオン/オフが操作できるというのだ。
この機能は現段階で、すでに2000ブランド以上のものに対応しており、これひとつで部屋を丸々管理することも可能だという。
“WAVE”の中核機能である音楽再生機能は、音楽配信サービス“LINE MUSIC”と連携しており、そこで提供されている約4000万曲の楽曲を試聴できるようになっているという。なお、このデバイスは開発段階ではあるものの、すでに製品版の発売が決定しており、今秋には一般的なリリースがなされるという。
また、正式版に先駆けて、機能をしぼった先行版のリリースも決定。こちらは製品版がリリースされるまで音楽再生機能のみに機能が絞られるが、リリース予定が夏となっており、いち早くスマートスピーカーを味わってみたいという人はこちらを購入してみるといいだろう。
価格は、正式版が1万5000円。先行版が1万円となり、先行版は正式版のリリースタイミングでファームウェアアップデートが入り、正式版と同じ機能が解放されるという。
最先端技術が詰まったスマートスピーカーでこの価格は破格とも言えるもの。『LINE』との連携が行える端末なので、アクセスもAndroid、iOS、PC問わずに行えるのも大きな魅力と言えるだろう。
なお、LINEはこのほかにも、キャラクターをモチーフとしたスマートスピーカー“CHAMP”も開発しており、こちらは今冬リリースの予定だという。ちなみにこちらのスピーカーは“WAVE”とは異なり、持ち歩きが出来るという点がポイントとなるようだ。
さらに、ディスプレイを搭載したスマートスピーカー(スマートディスプレイ)“FACE”も発表。こちらの詳細は明らかになっていないが、生活を大きく変える可能性を秘めたデバイスであることは間違いないだろう。
AI関連で各種業務提携も発進!
AI分野にも進出したLINE。発表イベントではさらに、AIに関してパートナーシップを締結した旨も発表された。
まず発表されたのがソニーモバイルコミュニケーションズ。こちらとは、同社が“World Mobile Congress”でコンセプト展示したイヤフォン“Xperia スマートプロダクト”との連携。
続いて発表されたのはヤマハ“ボーカロイド”とのパートナーシップ。こちらでは“Clova”を使った自動作曲技術などを研究していくという。
新たなパートナーとなるのは、それだけではない。自動車メーカー“トヨタ”もそのひとつ。トヨタは現在、車載機器とスマートフォンアプリを連動させる規格“SDL”の活用を模索しており、それがこのたびLINEとのパートナーシップ締結に至った次第だという。
登壇したトヨタの専務役員 友山茂樹氏はこれについて「SDLとClovaが連携すれば、スマートフォン画面を見ずにメッセージの読み上げ・返信ができるようになります。我々にとって車中でスマートフォンを安全に使うにはという課題がありましたので、Clovaを使って安全なシステムが作れればと思います」とコメント。
会場で流された“Clova”のPVには、スマートスピーカー“CHAMP”を利用したカーナビゲーションシステムの利用と思われるシーンも挿入されており、今後の展開が期待される。
AI“Clova”によりショッピングも未来へ
最後に発表されたのはコンビニエンスストア“ファミリーマート”との業務提携。
こちらでは、何かの商品と“Clova”の連携ではなく、店舗そのものと“Clova”の連携が示唆された。会場で流されたコンセプトムービーでは、“Clova”がユーザーの情報を読み取り、それをもとに商品を案内したり、商品の補充などが行われたりする様子が描かれていた。
登壇したファミリーマートの代表取締役社長 澤田貴司氏は「我々のコンビニエンスストアでは、現在1万8000人もの人が一生懸命働いています。私は彼らが笑顔で働けるように、そしてそこから笑顔で働ける社会を作るために貢献したいと思い、このたびの業務提携に賛同した次第です」とコメント。
未来のコンビニエンスストアがどうなっていくのかはまだ未知だが、コンセプトムービーのような世界が来たら、きっと買い物はもっと楽しくなることだろう。こちらも、今後の展開に期待していきたい。
以上が今回行われた発表イベント“LINEカンファレンス 2017”で発表された新サービス等のまとめとなる。気になる情報がいくつも出てきたが、そのどれもが未来を感じさせるものであったことが、今回最大の特徴と言えるだろう。
『LINE』が今後どこまで躍進を続けていくのか、目が離せない。
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