【新作】主人公はストーカー！ 歪んだ愛が招く最悪の結末を償う男の物語 『償いの時計』

時間を操り運命を切り開く本格ミステリー

女性に向けた一方的な愛情から、ストーカー行為に至ってしまう主人公。

狂った愛は次第に抑えきれなくなり、ついに最愛の人の命をみずからの手で奪ってしまう。

こんなはずでは、殺すつもりは、と勝手な言い訳をくり返す男は謎の人物に呼び止められ、“償いの時計”という時間を操る不思議な装置を託される。

本記事で紹介する『償いの時間』は、最悪の結末を招いた主人公が自身の手で修復、女性の運命を変えていくミステリーゲームだ。

30分で完結する彼と彼女のマルチストーリー

最初はきっと純粋な片思いだったであろう男の想いが徐々に変化、女性に向けられる自己的な愛情が歪みだし、いつしかストーカー行為に及んでしまう。

冒頭で主人公である男が女性を殺害、自問自答するところからゲームが始まる。

どんな言葉を並べても彼の犯した行為は許されるものではなく、己を肯定してばかりの身勝手な男に、心の底から湧き出る怒りのやり場に困ってしまう。

そんな中、街を徘徊していた主人公を占い師らしき人物が呼び止め、時間を行き来できる“償いの時計”を託すのだ。

時計を手に入れ時間を巻き戻したことで透明人間になった主人公は、まさにこれから犯罪を犯そうとしている自分に遭遇。

女性の家に先回りして迫り来る危機を知らせようと奮闘する。

しかし、感情を抑えきれなくなっている男は激高し、女性の命を奪おうとあらゆる手段で襲い掛かってくるのだ。

無事、自宅に押しかけてきた男を回避するも、それだけで終わらないのが本作の見どころ。

自身の罪を償うため刑務所に収監、そこで待ち受けているさまざまな困難と向き合いながら、10年20年と長き時を歩みながら多くのことを学んでいく。

そもそも女性を救うのが目的なのに、どうして刑務所にいるのか疑問に感じる人もいるだろう。

その経緯とふたつの結末は予想もできない展開の連続、クリアーまでの時間が平均30分と短く感じるだろうけど、そこに詰め込まれたメッセージは何倍も大きく、考えさせられるはずだ。

時間を行き来して分岐するヒントを探し出す

償いの時計は時間を前後行き来するほか、時を止めているあいだに周囲のオブジェクトを操作、女性に迫る男を妨害することができる。

そこで重要になるのが、何でも動かしてしまうのではなく、あえて触れずに見送る勇気と先々を見越した場所に透明人間である自分を配置していく立ち回りだ。

操作できるオブジェクトは点滅しているのでわかりやすく何度でもリトライできるので、迷ったときは片っ端からタップ、時間を行き来しながら変化を確認するといい。

バッドエンドとトゥルーエンド、ふたつの結末をそう定義していいのかとても悩む本作。

どちらが好きかという選別も難しいので、できれば両方を見届けたうえで、償いとは何なのかをじっくり考えてもらいたい。

P.N.深津庵
※深津庵のTwitterはこちら

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