【東京サンドボックス】インディーゲームの成功者である『クロッシーロード』開発者に聞くゲーム作りのイロハ

2017-05-13 17:06 投稿

前提条件を固めてゲーム作りを行う

2017年5月10日~14日に都内にて開催されているインディーゲームの複合イベント“TOKYO SANDBOX 2017(東京サンドボックス 2017)”。

このイベントは、ゲーム会社やゲーム新興企業と国際的な投資家やパブリッシャ―を結びつける目的で開催されており、5月10日からはさまざまなゲストスピーカーが登壇する“プッシュ”が開催されている。

3日目となった12日、“プッシュ”に世界中で人気のスマホアプリ『クロッシーロード』の開発者であるマット・ホール氏が登壇し、自身の経験を語った。

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ホール氏のこれまでを振り返る

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ホール氏はオーストラリアの田舎町出身で、現在42才。ゲームを作って33年、独立してからは9年が経ち、現在はもう少し大きな町に住んでいるという。ホール氏は自身のことを、「田舎育ちのくせにインドアだった」と言い、そのような性格のせいか、ゲームには早い段階から興味があったという。ただ、当時は手に入るゲームが少なかったため、遊ぼうと思ったら自分でゲームを作らなくてはならなかったそうだ。

当時のゲームは、小説家と同じように、ひとつの作品は、ひとりのクリエイターが作っていた。ホール氏が目指すのもそこだったという。

しかし、19才になり、ちょうどホール氏がゲーム作りのコツを覚えた時期にゲーム業界に大手が参入し、ゲームはもはやひとりでは作れないレベルになってしまい、ホール氏も企業で働くようになった。

2008年になって、そんなホール氏に待望の子どもが生まれた。多くの人であれば安定を求めるが、そのタイミングでホール氏はインディーで勝負しようと決意。個人でゲームを作りはじめたのだという。インディーといえば、PCゲームだと思っていたホール氏だったが、そのころから世に出始めたiPhoneを見て、モバイルゲームにも興味を持った。

ホール氏は、かなり早い段階でオーストラリアの国内でiPhoneアプリに手を出したクリエイターといえるだろう。

彼の開発したゲームのうち、7本がAppleのストアランキングで1位をとったことがあるという快挙を為している。

「だが、成功ばかりではない。開発費を下回ったり、作ったものの、出なかったものもある」という。

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もともと、ゲームを作りたいのはゲームが好きだからなのはもちろんだが、「2008年に家族が増えたから、養いたいと思うようになった」と語る氏。お金にならなければ作る意味がないと感じたという。

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『クロッシーロード』が出来るまで

ホール氏はゲームを作るとき、まず前提として“やるべきこと”と“やるべきでないこと”を決めるのだという。

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◆『クロッシーロード』の前提定義
1.広告動画による収入確保
2.人気作品を作る
3.6週間でゲームを作る

広告動画による収入確保

まず収入の確保だが、ホール氏はひとりのプレイヤーから多くの金額を払ってもらうような形にはしたくなかったのだという。

それより、すべてのプレイヤーから少額の収入を得る方法を考えたときに、人気アプリ『Disco Zoo(ディスコズー)』をプレイして、発想を得た。本作は、ゲームオーバーの際に広告動画を見ることで、コンティニューにつながる救済がとられるのだが、このようにして動画広告を、ゲームとうまく関連させるようなおもしろい取り入れかたができないか、と考えたという。

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人気作品を作る

この第2の前提条件は、『クロッシーロード』を二人三脚で作ってきた、Andy Sum氏との共通の希望でもあった、“広く受け入れられる作品を作りたい”という思いだ。

ここでは、人気アプリ『Flappy Bird(フラッピーバード)』が、SNSなどで話題になり大ヒットにつながったことを例を挙げ、“シェアする価値のあるゲームにすること”の重要性について語った。

キャラを見せられるようにしたり、スコアシステムを入れたり、それを簡単にシェアできるような仕組みを入れたのもそのためだという。

また、ホール氏は「これは僕とは違うクリエイターもいるとは思うが」と前置きをして、「明日も遊びたいと思わせることが大事」と語った。

日本のスマホアプリでもよく見る、6時間ごとに配られるギフトは、じつはホール氏が早い段階で取り入れていたものなのだ。

6週間でゲームを作る

最後の前提定義として、インディーというのはスピード勝負である、ということが語られた。じっさい『クロッシーロード』は6週間には収まらなかったが、かなり短期間で作られたゲームである。

それは、長らく時間をかけすぎると、Appleの規約が変わる可能性もあれば、ユーザーの興味が移り変わる可能性もある。そして、その間に考えていたものと同じ作品が出る可能性もある。

失敗するなら早い段階が良いし、失敗を恐れてはいけない、というのはホール氏の考えかただが、また同じように、成功に対する備えも必要だ、と語った。

 
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『クロッシーロード』もアップデートのタイミングで成功をしたというが、そもそもにスピード重視で作れるよう、量産しやすい形になっていたので、新しいステージやキャラなどの追加に即座に対応できたそうだ。

前提条件

前提条件をそろえて、いざゲームを作ろうとなったものの、まだポール氏は、具体的にはどんなゲームにしようか決めていなかったという。

そこで発想を得たのは、KONAMIの人気アーケードゲーム『フロッガー』。

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仕組みを取り入れながら、もっと現代風にし、前提で決めたような仕組みが取り入れ、満を持してリリースした。ゲームが大成功を収める中、ホール家には第二子が生まれ、また家族が増えた。「今度は家族といっしょに時間をかけて、思いのある仕事にがしたい」と締めた。

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ファミ通Appでは、講演後にホール氏に直接話を聞いてみた。インディーへの挑戦に関しては、「いろいろな考えかたがある。僕は自分が思ったものを作りたかったのでインディーと言う形になったが、最近はインディーでもチームを組んで企業のように作っている人も多い。それだけ、ゲームがより多くの人々に届いているということではないか」と語った。

制作するゲームのターゲットについて、「もちろんいろいろな考えかたがあるが、性別や年齢問わす、心地いいと思うようなゲームにしたかった」と回答。

本作がディズニーと協業し、『Disney クロッシーロード』が生まれることになったきっかけは、知り合いの紹介だという。

『クロッシーロード』がディズニーの協業案件として選ばれた理由について聞くと、「明確には分からないが、性別や年齢問わす遊べるところ、また、やりこみもできるが、あんまりプレイが上手でない人でもおもしろいと感じられるように作った。そこが評価されたのかもしれない」と答えた。

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ホール氏はディズニーだけでなく、『PAC-MAN 256』などの開発も手掛けている。「『パックマン』は昔から好きだったので、話が出たときはうれしかった」と言うホール氏。

そういった巨大なIPを扱うことには「もちろん監修などがあるので、ひとりで作るのとは違う大変さはある。でもいい経験にはなるので、これからもお話があればやりたい」と答え、積極的な姿勢を見せた。

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