『キャンディークラッシュ』のKingが提供する2D開発特化ゲームエンジン“Defold”とは?
2017-04-11 23:51 投稿
ゲームエンジンDefoldとは?
2017年4月11日、『キャンディークラッシュ』シリーズで知られるKingが、自社開発のゲームエンジン“Defold”に関する関係者向けブリーフィングを行った。
“Defold”は、2Dゲームの開発にフォーカスしたゲームエンジン。誰もが無料で利用できるだけでなく、どれだけ売り上げを上げてもロイヤリティを求められることがない、珍しいタイプのゲームエンジンだ。
ブリーフィングの進行を行った、Kingの執行役員兼プロダクトディレクターの大塚 純氏は、会の開催に際して「“Defold”は、これまで広く告知をしておらず、なにより皆さんが聞いたことのないようなゲームエンジンですので、こんなにお集まりいただいて光栄です」とコメント。
事実、アンリアルエンジンやUnityなどといったゲームエンジンの知名度は、ゲーム開発者でなくとも耳にしたことがあるほど浸透しているが、“Defold”の存在を認識している人は業界関係者でもあまりいないと思われる。
しかしこの“Defold”、知れば知るほど興味深く、そして高機能ですばらしいものなのだ。
ゲームエンジン“Defold”は、たった2名の開発者(Defold創業者)によって7年前にプロジェクトを始めとする開発がスタート。
両名は、「ゲーム作りをするために、ゲーム作りの環境作りをしなくてはならない期間を設ける必要がある」という当時のゲーム開発環境に納得できず、ゲームエンジン開発を発起。
その後、両名が立ち上げた会社はKingに買収され、ゲームエンジン“Defold”は昨年世に公開されたという経緯となっている。
ちなみに、Kingがこのゲームエンジンの開発を買収した背景に関して大塚氏は「一般的に、Kingという会社は壮大な一発屋と思われているでしょう。しかし、私たちは一発屋のままでいたくない、もっとゲーム業界にいたい、ゲーム業界に貢献したいという思いがあり、Defoldを買収し、完全無料で公開することを決意しました」と語る。
なお、完全無料にした理由は前述したもの以上に「みんなが使って成功してくれれば、それだけで私たちは幸せになれるから」という強い思いがあるという。
予想以上の高性能に驚き
ゲームエンジン“Defold”は、「とても小さいバンドルサイズで、ハイパフォーマンス、モバイル/デスクトップのクロスプラットフォーム対応を」という開発理念のもと開発されたエンジン。
開発当初こそ3D対応のゲームエンジンを目指して開発されていた時期もあったが、現在は2Dにフォーカスしたものになっている。
しかし、「軽量で、ハイパフォーマンスで、クロスプラットフォーム対応」のゲームエンジンというと、Unityという既存のビッグネームが思い出される。よって、これとの差別化はどう図られているのかは気になるところだろう。
この点について、Defold開発チームのデベロッパーリレーションズ/ディレクターのベンジャミン・グレイサー氏は「Unityは、言わば十徳ナイフのような万能なツールです。しかしDefoldはそれとは異なり、ある一点においては最強というものを目指して作られたゲームエンジンです」とコメント。
具体的には、モバイルやWeb(HTML5)環境で非常に軽い2Dゲームを作りたいというのなら、Defoldこそが最強なのだという。
それを示すように、King社製の人気タイトル『ブロッサム・ブラスト』は“Defold”を用いて作られたタイトル。
『ブロッサム・ブラスト』は、同じ色の花をつなげて消していくシンプルパズルゲーム。派手なエフェクトも多様されているが、本作は非常に軽妙な動作をするタイトルだ。
⇒『キャンディークラッシュ』のKingによる花咲くパズルゲーム『ブロッサム・ブラスト』に注目 |
このほかにも、“Defold”の軽い動作と開発しやすい環境に魅力を感じた世界中のインディーゲームメーカーたちがさまざまなタイトルをリリース。
その数は、“Defold”がリリースされてから約1年という短期間であるにも関わらず100本以上。“Defold”ユーザー数は3万ユーザー(法人含む)を超えるそうだ。
ただ、リリースされたゲームタイトルの本数に関しては「“Defold”にはユーザートラッキング機能もなく、これを使ってゲーム開発をしてもロゴを出さなくていいという仕様にしているので、具体的にどれだけのタイトルが“Defold”を使っているのかはわかりません」とのこと。
開発環境も優れたものへと進化中
“Defold”の強みは動作の軽さだけではない。開発環境も優れたものとなっている。
推奨開発言語はLuaだが、ネイティブ エクステンションを導入することによりC、C++、obj C、Javaにも対応するとのこと。
この汎用性の高さも突出している部分だが、最大の魅力はビルドのスピード。ブリーフィングではシンプルなシューティングゲームが一瞬でビルドされる様が披露された。アセットの数やエフェクトから見ても、通常ならばもう少し時間がかかるものと予想されたが、ビルドは文字通り、一瞬で行われたのだ。
また、クロスプラットフォーム対応を目指したということもあり、こちらの機能もすぐれている。
最近ではAndroid、iOS、Windowsとプラットフォームの多様化が進み、クロスプラットフォーム対応が必然的に求められる時代となった。しかし、クロスプラットフォーム対応はひとつの手間。
だが、“Defold”はボタンひとつで対応プラットフォームを切り換えられるほか、ひとつのベースコードで各プラットフォーム向けへのビルドが完了してしまうという。
ここでの特筆事項はHTML5、ブラウザ向けへのビルドもボタンひとつで完了するという点。この汎用性の高さが魅力的に映ったのか、会場ではこの点に関する質問も多く投げかけられた。
ちなみにこのHTML5へのビルドだが、こちらのビルド速度も驚き。数十秒はかかるであろうと予想されたが、実際にかかった時間は5秒ほどだった。
また、プログラムのアップデートが簡単に行える機能があったり、開発者どうしで相談できる専用コミュニティが用意されているほか、Amazon Web Service専用のメニューも存在していたりと、“Defold”の使用環境はとにかく至れり尽くせりな環境になってきている。
さらに、インディーメーカーが抱えるいちばんのハードルでもある「開発したものを、一般利用者に認知してもらう」ことへのサポートとして、Kingがリリースしているゲームタイトル内で1000万インプレッションもの広告を出稿するというイベントも開催される。
こちらのイベントは、以下の応募要項が設けられているが、それでも参加のハードルは極めて低い。
【応募要項】
1. モバイルアプリであること
2. “Defold”で開発されたアプリであること
3. 2000インストールを達成していること
4. 翌日継続率が20%を超えていること
5. ストアのレビュー平均が3.5を超えていること
上記の応募要項を満たしたコンテンツの中から抽選で選ばれた4タイトルに、2018年中に1000万インプレッションの広告無料出稿権が与えられるという。
こちらのキャンペーンの詳細はのちほど大々的に告知されるとのことなので、気になる人はアナウンスをチェックしておくといいだろう。
ベンジャミン氏は、“Defold”について「気に入ってもらえれば使ってほしいし、気に入らないなら使わなくてもいい。気に入ってもらえたのならというスタンスを大事にしていますし、なにより無料で使えるエンジンとなっているので、とりあえず使ってみてほしいです」とコメント。
併せて「なるべく多くの人に使ってもらいたいという気持ちもあるので、要望を始めとするフィードバックがあったら、積極的に発信してほしい。私たちは、その声に応え続けていくつもりです」とも語り、ブリーフィングは幕を閉じた。
“Defold”は、まだまだ発展途中のゲームエンジンではあるが、先行きが気になるソフトウェア。また、Kingの新しい試みが、インディーゲームメーカー、個人開発者にどれだけの光を与えることになるのかもまだ見えていないが、今後の発展に期待したい。
⇒『キャンディークラッシュ』のKingによる花咲くパズルゲーム『ブロッサム・ブラスト』に注目 |
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