機械が人間の目を手に入れた!Googleの新技術Project tangoとは?
2016-05-23 14:25 投稿
VR世界と現実世界との壁がさらに薄く低く
2014年にその存在が発表され、以降Mobile World Congressなどでもデモが披露されてきたGoogleの新技術Project tango。現地時間2016年5月18日~5月20日、米・サンフランシスコで開催されたGoogle I/Oでも、Project tangoについて複数のセッションが行われた。
Project tangoとは、モバイル端末に人間と同じ空間認識能力を与えようと始まったプロジェクト。もちろん、公表された仕様もそれに準ずるものとなっている。とは言っても、何が何だか分からないという人もいることだろう。なので、まずはどういった技術を使って、どういった機能を目指したプロジェクトなのかを紹介しよう。
Project tangoで生まれた技術をざっくり述べると、つぎのようになる。RGB/IRカメラ、広角魚眼レンズ、赤外線を使って、カメラが捕らえた範囲内の映像を3次元的にマッピング。また、6軸ジャイロセンサーによるモーショントラッキングにより、端末の移動を観測して、その動きを記憶。この情報をアプリ側に出力して、アプリ側が情報を応用するというものだ。
簡単にまとめると、
・通常ならば、機械はカメラで撮影された映像・画像を、ディスプレイで見るような平面としてしか認識・記憶できない。が、Project tangoの技術を用いたスゴイカメラは、まるで人間の目のように、物との距離やその輪郭を正確に立体として認識し、記憶できる
・このスゴイカメラ(Project tangoのシステムを搭載した端末)は、自身が移動したこともちゃんと認識・記憶できる
・立体的な地図を作りながら、自分がその地図の中をどう移動しているのかをデータとして記憶。そのデータをアプリに渡すことで、アプリがそのデータをもとにいろいろなことをしてくれるかも!?
とまぁ、このような感じだ。
つまり先述した通り、“モバイル端末に人間と同じ目、同じ空間認識能力、同じ空間記憶力を持たせ、そうして作られたデータをゲームとかに活かしましょう”というのが、このProject tangoなのである。
現実世界とVR世界の差がさらに縮まる
では、端末が人間と同じ空間把握能力を持ったところで、どのようなことができるようになるのか、考えてみよう。
この技術はAR(拡張現実)に準ずるもの。これまで、ARとして画面内にオブジェクトを配置するには、地面や机の上にARマーカーと呼ばれる「ここにオブジェクトを表示すれば、矛盾なく表示されますよ」という目印を設置しなければいけなかった。
しかし、Project tangoの技術を使えば、目印(ARマーカー)を置かずとも、端末が“ここが地面、あそこは壁、ここには段差が”と把握できるので、ARマーカーなしでオブジェクト配置ができるようになる。
それだけではない。空間が正確に認識でき、なおかつARマーカーなしでも画面内にオブジェクトやキャラクターを配置できるとなると、たとえば“本を並べて床にコースを作り、そのコース内で仮想の車を走らせてレースさせる”といったことも可能になる。
また、Project tangoを実装した端末同士は、その端末同士で位置情報などを共有できるシステムも持っている。これも利用して、Project tango搭載デバイスで仮想のボールをキャッチするシステムを作れば、狭い部屋の中でも安全にキャッチボールができるかもしれないし、もしかしたらそこから発展させてリアルサイズでの野球もできるかもしれない。
まぁ、さすがにリアルサイズでの野球は、通信範囲や操作性、外部入力ツールの必要性などがネックになって実現は難しいかもしれないし、そもそも外に出るならふつうに野球をすればいいので存在意義はあまりないのだが……。
ともかく、機械が映像を捕らえるだけで、人間のように空間を把握、記憶できるようになることは大きな進歩。これからどのようなコンテンツが生まれてくるのか楽しみだ。
ちなみに、PCメーカーとして有名なLenovoは、このProject tangoを搭載したスマートフォンを開発し、2016年夏のリリースも決定しているという。詳細は続報を待とう。
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