ポケモンのスマホ向けゲームアプリ最新作『ポケモンコマスター』について直撃

2016-03-10 15:30 投稿

ポケモンと人工知能

“Googleが開発した囲碁を打つ人工知能(AI)“アルファ碁”が、世界トップレベルの実力を持つ韓国のプロ棋士に勝利”

昨日(2016年3月9日)、大きな話題となったニュースだ。

5番勝負の第1局はAIの勝利に終わり、残る対局にも注目が集まっている。

なぜこんな話を出したのかというと、ポケモン最新作となるスマートフォン向けゲームアプリが、まさにこのAIを核としたタイトルになっているというからだ。

▼初報
※ポケモンがスマホ向け最新作『ポケモンコマスター』を発表!

ここ数日のあいだにも、当ニュースのほか、大学新テストの採点にAI導入を検討するニュースが発表されるなど、いま何かと話題に上っているAI。

いったい『ポケモン』とAIを組み合わせてどんなゲームが?

開発を手掛けるポケモンとHEROZの4名に話を聞いた。

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▲左から、宇都宮崇人氏(ポケモン)、鈴木直樹氏(ポケモン)、林隆弘氏(HEROZ)、平岡拓也氏(HEROZ)。

きっかけは『将棋ウォーズ』

本題に移る前に、開発のHEROZについて簡単に説明しておきたい。同社は、AIを活用したインターネットサービスの企画、開発、運営を行っており、スマートフォン向けアプリ『将棋ウォーズ』を配信中。AIの分野では高い技術力を持つことで知られている。

そんなHEROZに、ポケモンからどんなアプローチがあったのだろうか。

宇都宮 僕が学生時代に将棋をやっていたのですが、以来もう20年近く離れていたんです。そんな折、ある友人から「『将棋ウォーズ』というアプリがあるからやってみろ」と。謳い文句には“1局6分”とあって、しかもAIを使うと自分の代わりにすごい手を指してくれるというもので。いやいや、将棋をナメるなよと(笑)、最初はそう思ったんです。

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▲ポケモン/専務執行役員 宇都宮崇人氏。数々の『ポケモン』作品に携わる。

しかし、『将棋ウォーズ』と出会った宇都宮氏は、これをキッカケに見事にドハマリ。すでに5000局以上指し込むほどAIを使った対局にのめり込んでいるそうだ。

宇都宮 AIの指す手が本当におもしろくて、これを使って『ポケモン』で何かできないかなと思ったんです。

こうしてその分野に長けたHEROZに相談を持ちかけたのだと言う。対する林氏はどう思ったのか。

 もう驚愕ですよ(笑)。何かの間違いじゃないのかなって。でも、『将棋ウォーズ』に込めた思いがすごく伝わったようでうれしくて、喜んでお話を伺いました。

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▲HEROS/代表取締役CEO 林隆弘氏。将棋好きから『将棋ウォーズ』を創出。以降、スマートフォン向けストラテジーゲームなども企画、開発している。

AIのすごさ

そうして、いまからおよそ2年前。『ポケモン』とAIを組み合わせた新たなゲーム『ポケモンコマスター』が動き出した。気になるのは肝心要のゲーム概要。

鈴木 ベースになっているのは、2007年に北米で発売した『ポケモントレーディングフィギュアゲーム』というアナログのボードゲームです。

2007年のファミ通.comの記事にちょうど作品を紹介していたのでリンクを入れておこう。

※『ポケモン』の新作ボードゲームがコミコンの会場でお披露目!

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▲対戦イメージ。あくまでもベースであり、当日実機で見せていただいたアプリ版とは仕様は異なりそうだ。

対戦は1対1。各々が数個ずつのポケモンフィギュア(コマ)を所持しており、それをマスに沿って相手陣地のゴールに向かって進めていく。盤上でポケモンが対峙するとバトルも発生し、これらを経て相手よりも先にゴールにたどり着けば勝利となる。

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▲公開されたコンセプトムービーからのシーン。フィギュアとなったポケモンが盤面上で躍動する。

鈴木 もともとかなり戦略的なゲームで1回の対戦が長いものでしたが、AIを使ってカジュアルで遊びやすいゲームに落とし込んでいます。

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▲ポケモン/開発本部マネージャー 鈴木直樹氏。ポケモンサイドでの開発を担う。

ここで疑問に思うのは、AIがコマを動かすならプレイヤーが関与する部分は? という点。

 AIとプレイヤーは協力関係というか、共闘すると言ったほうがいいでしょうか。ただし、デッキを揃える(どのコマで対戦に挑むか)のはプレイヤーしかできませんし、特定のアクションはプレイヤーの判断でしか使用できないようになっています。

当然、コマを動かす手もすべてAIが担うわけではない。加えて林氏が言ったのが、

 AIが動かした手を見ているだけでも、こんな手があるんだとか新しい遊びかたを提案してくれたりとか、そういった学習や発見があると思います。

こうしたゲームの場合、どうしてもルールを覚えなければならない敷居の高さや、勝てないことによる離脱が問題視されるのだと言う。

平岡 AIの動きを見ているだけでも、だいたいのルールやどんな手を打てば勝てるようになるかがわかってくると思うんです。そうするとだんだん自分で動かしたくなってきて、そうして少しずつでも楽しさを見つけてもらいたいなと。

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▲HEROS/AIエンジニア 平岡拓也氏。オープンソースで最強の将棋AI“Aprey”開発者。2015年電王戦FINALに出場。

とにかく、AIが打つ手は絶対。プロ棋士に勝つほどの知能を持っているのだから、僕ら一般人が考えるよりも何十手も先を読んだ手を放ってくれる。しかし、やはり開発の苦労も多かったようだ。

平岡 このゲームの場合、将棋とは違って、たくさんのフィギュア(コマ)が存在しますし、それぞれが能力を持っていたり、バトルにルーレットの要素が入っていたりと、かなり苦労はしました。

 一般的なゲームのAIは状況に応じて反射的に動いているだけであることも多いですが、『ポケモンコマスター』のAIはきちんと先まで考えてくれているというのが、AIがくり出す動きをから伝わると思います。AIはこれからもまだまだ賢くなりますので、いつまでもパートナーとして頼りになる存在だと思います。

積み重なる対戦のデータをもとに、さらに賢く、さらに強くなっていく。AIは今後も果てしなく進化を続けていくということか。

間口は広く

ここまでの話で察しの通り、『ポケモンコマスター』は子どもたちも大好きな『ポケモン』を題材にしている一方で、かなり戦略的で頭を使うゲーム。ターゲット層についてはどうなのか?

宇都宮 あまり低年齢層向けに商品を作ろうという考えかたはしていませんが、子どもにも触ってもらえるような間口の広さは用意したいなとは思っています。ただ、文字にルビを振るかどうかでいうと、振らないという判断になりました。

なるほどと思わされたのは、この話の中で出た『ポケモンカードゲーム』やそもそも『ポケモン』自体が十分戦略的で奥深いということ。そう考えると、AIありきの『ポケモンコマスター』は、むしろ間口が広いとも取れるのかもしれない。

鈴木 「このポケモンで戦いたい!」という欲求はきちんと満たせるような仕組みになっていて、その組み合わせやチームを考えるのもおもしろいと思います。

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配信は2016年春

気になる配信時期は、2016年春。当面は国内のみのサービスを予定しているそう。世界的に人気のコンテンツで、かつ1対1の対人戦もあるゲーム。eスポーツでの展開も考えているのだろうか。

宇都宮 『ポケモン』って競技が好きなんですよね。このゲームもそうなんですけど、狙ったわけではないですが、向いているなとは思っています。

 対戦ではデッキ構築や打つ手以外にも、すごくセンスが問われるんですよね。だから、見て楽しむのにも適しているとは思いますね。

聞くと、対戦の中にはある程度のランダム性が含まれている要素もある模様。また、デッキの強弱やプレイングの差はあれど、どのポケモンフィギュアにもそれなりの使いどころが設定されているとのこと。

最後に、各人に本作についてひと言いただいた。

平岡 AIに携わったのでまずはそこを見ていただきたいですが、見ているだけで楽しいバトルになっているので、ぜひ遊んでみてください。

 難しく思わずに、とにかく多くの方に触っていただきたいです。AIとの共闘ってこんなに楽しいんだと、そして、このゲームを通じてポケモンの新しい魅力を伝えられたらうれしいですね。

鈴木 見た目も遊びも従来の『ポケモン』と少し違う新しさが出ているゲームです。それを下支えする技術がすごいものになっているので、ぜひそこに驚いてほしいなと思います。

宇都宮 AIがすごく助けてくれるので、『将棋ウォーズ』にある“すごすぎる自分に驚かないでください”というフレーズがぴったりというか。そういった体験をしていただけるとうれしいかなと思います。

強い者が勝つ世界でありながら、予想だにしなかったAIの一手、さらにランダムの要素も絡む対戦。これを聞いてワクワクしないファンはいないはず。

すでに発表されている位置情報を使った『ポケモンGO』、そしてAIを使った『ポケモンコマスター』。新しいテクノロジーと『ポケモン』の融合が、これまでになかった局面をもたらしそうだ。

(文・サネシゲ)

▼初報
※ポケモンがスマホ向け最新作『ポケモンコマスター』を発表!

ポケモンコマスター

ジャンル
ボードゲーム
メーカー
ポケモン
配信日
2016年春
価格
基本プレイ無料(※ゲーム内課金あり)
対応機種
iOS/Android ※端末やOSのバージョンによってはプレイできない場合あります

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