【夕刊】呪われた前髪

【担当者のヒトコト】

「前髪切らないと目が悪くなりますよ！　目が悪くなると、お勉強もできなくなってブスになるんですよ」
幼いころ、母親はそう言って、私の前髪を眉の上あたりでバッツンと切っていた。

ちょっと目にかかるぐらいの長さの前髪のほうが小学生の中ではオシャレだったのに、母親のせいでそれが毎回叶わず、こけしと化した私は「そんなはずないでしょ！　お母さんのウソツキ」と思っていた。だが、母親を嘘吐き扱いしたバチがあたったのか、いつしか私は前髪が目にかかると具合が悪くなる体質になってしまった。

視力が落ちたせいか、疲れ目を起こしやすくなり、仕事に集中できない。一日目を酷使した日には、ゲッソリとしてプラス20歳ぐらい老けた顔になり、ブスどころか怪物になる。

更には目が弱くなったせいか、刺激の強い色やまぶしい光を見たり、目の周りに違和感を覚えると、具合が悪くなる。こめかみのあたりに髪の毛がチョン、と当たるだけで私の体調不良センサーはピン！　と反応して悲鳴をあげる。視界に髪の毛が入ってくるなんてもってのほか。これぞまさに呪われた前髪……って、私の母親はいったいどんな魔力を持っているんだ。

そんな私は、常に前髪を短くしつつ、切る時間がなくて少しでも前髪が伸びてしまったときは、思いっきりデコ出しをすることになる。今まで私がこれらの髪型をオシャレでやっていると思っている人がいたら、それは大間違い！　オシャレでそういう髪型をしている人がいることは知っているが、残念ながら自分は似合っていない。そんなことは分かっているんだ！　私だって、前髪が目にかかるあたりでふわっと分かれていて、眉毛がちらっと見えるような前髪になりたい！　“愛されバングル”ってやつだろうか。(←多分違う)

先日美容院に行った時に美容師の方にその話をしたところ、「じゃあ、目にかからないように、でも“ぱっつん(前髪がそろっている様子)”にならないようにカットしてあげるよ」と言われて、切ってもらった。確かにそのときは目にもかからずに、“ぱっつん”にもならずに、いい感じに目の少し上あたりでふわっとカーブを描いてくれるオシャレ前髪になった。……が！　それから髪の毛を洗って乾かしたら、うまくふわっとならずに伸びた前髪が目に直撃し、二度とその前髪にはならなくなってしまった。まさに一夜の夢の如し。私は泣く泣く自分で前髪にハサミを入れ、こけしと化した。

おいおい美容師さんや、特殊な技術を使うのはやめてくれよ……と思ったけど、まず私にスタイリング力がないのが悪いんだよな。

ほんと、美容院でセットしてもらった髪形を形状記憶して、洗っても、そのまま乾かすだけでもとに戻る技術や商品を誰か開発してほしいよ。誰か、よろしく頼む！(さとるり)

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