【CEDEC 2015】デザイナーならではの『ワールドトリガー』制作のこだわりとは?

2015-08-27 21:14 投稿

ガンバリオンのデザイナーが明かす『ワールドトリガー』制作事例

2015年8月26日から8月28日までの3日間、パシフィコ横浜で開催されるコンピュータエンターテインメント開発者向けカンファレンス“CEDEC 2015”。ファミ通Appではスマホ関連のセッションを中心にリポート!

福岡を拠点に、『ONE PIECE グランドバトル!』シリーズを始めとする家庭用ゲームの開発を手掛けているガンバリオン。同社が初めてモバイルゲームの開発に携わったのが、バンダイナムコエンターテインメントから配信中のアプリ『ワールドトリガー スマッシュボーダーズ』だ。

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『ワールドトリガー』はガンバリオンの自社エンジンを使って作られたという。CEDEC 2015では、同社の佐藤敢施氏(開発部 デザイナーリーダー)、小谷かおり氏(開発部 デザイナー)が、デザイナーの視点から制作事例やどのように開発を進めていったのかが、”ガンバリオン『ワールドトリガー スマッシュボーダーズ』メイキングストーリー ~Autodesk Mayaでモバイルゲーム開発にチャレンジ~”というセッションで語られた。

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▲(写真手前から)ガンバリオンの佐藤氏、小谷氏。

『ワールドトリガー』開発でデザイナーがやるべきことは?

「開発方針として、プログラマーの手を借りないデータ作りを」と、開発環境とデザイナーの制作作業事例について解説した佐藤氏。プログラマーには開発の環境を構築してもらい、それをベースにデザイナーがデータを作成。プランナーがそのデータをパラメーターといっしょに組み込んで完成させていくそうだ。そうして構築された環境の中で、デザイナーがやるべきことがいくつかあったという。

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では、そのデザイナーがやるべきこととは何だったのか? 本作は狙ってぶつけるスマッシュアクション&ターン制シミュレーションゲームだが、原作ものでもある。従って、”ゲームに合ったデザインの作成”、”原作のキャラクターらしさの表現と量産”が大前提だと佐藤氏。その上で「なるべく家庭用ゲーム並のクオリティーに近づけたかった」と加えた。

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また、キャラクターに着させられる衣装、モーションの補完性とバリエーションについても、「すべてのキャラクターがすべての武器、衣装、必殺技を使えるようにしたかった」(佐藤)ため、かなりの汎用性を求められたとも語った。

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▲自分の街を作ることもできる本作。街作りとバトルのふたつのパートで、それぞれ街を表現する必要もあった。

ここまでの解説を踏まえて、デザイナーが『ワールドトリガー』でやるべきことについて佐藤氏は、

・ゲームとしてのクオリティーを出しつつ量産できる体制の制作
・担当デザイナーが代わることも考慮したデータ作成方法と環境作り
・機種毎のスペックの違いや制限への対応と割り切り

とまとめた。

遊びの方向性やイメージを共有してから実作業へ

いざ実作業を開始するまえに、”量産に向けて準備”、”方向性のまとめ”、”スペックとビジュアルの検証”を行うと佐藤氏。ディレクターやプログラマーと話し合いしつつ、デザイナーが作業を行って見た目、リソースを決定していく。

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方向性については、まずゲームのイメージムービーを作成。ムービーをもとに遊びの方向性や操作感を確定させ、プロジェクト全体のイメージや指針が固まり、ムービーに沿ってプロジェクト全体が実作業へと動き出したそうだ。

魅力が伝わるキャラモデルのデザイン

原作ものである『ワールドトリガー』のアプリ化とあって、キャラクターデザインにはとくに力を入れた。

“悪い印象を与えないデザインと機能性”。質感をおさえたやわらかい雰囲気とアニメに寄せた明るい見た目と見やすさを意識。また、スマホの画面でもキャラの魅力が伝わるように原作やアニメより頭身を低くするなどの工夫を凝らし、「原作を知らない人でも手に取ってもらえる嫌味のないデザインを目指した」(佐藤)。

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頭身を低くすると言っても、原作での体格差を再現したい。しかし各キャラで細かな体格差を再現するのは大変だったため、頭のパーツの等倍をそのままにして、体の部分で大まかに大、中、小のパーツを作成して体格差を表現した。

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▲身長のほか、男女の体型差についても言及。女性は胸と腰にスケールを入れることで性別ごとの体型に対応させた。

また、各キャラクターの表情の変化について佐藤氏は「今後のことも考えて、多めに準備しました。表情のパターンは予備を含めて12種類」と語り、表情を簡単に確認できる表情用ツールを用意したことも明かした。

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▲武器(トリガー)のデザイン。本作の武器はすべて原作に登場する武器。デザイン自体は決まっているので、制作は数時間~1日でできるとのこと。
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▲敵(トリオン兵)のデザインについては、敵を狙ってふっとばすゲーム性を意識して、風船のような雰囲気を出したとか。

街作りやバトルの舞台となるステージモデルについては、「賑やかさや街らしさが表現できるように意識した」と佐藤氏。ひとつの画面上に複数のオブジェクトが並ぶことを考慮して、屋根が斜めになったり尖ったものにはならないようにデザインしたという。また、オブジェクトについては、バトル用のものを元に街作りパート用のオブジェクトを作った。

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▲自販機などの特徴的な部分は、デフォルメして強調している。

バトルの肝となるキャラクターのモーション・演出。そのデザインについて佐藤氏は、「ダミーモデルを用意し、キャラクター関係のモーションをすべてダミーモデル(衣装なども着せた状態)を使って作成した」とコメント。このダミーモデルでモーションを作成することで、「めり込みをある程度解消できた」(佐藤)という。

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バトルのモーションは30フレームで表現しつつ、小さい画面、さらに短い時間でもキャラクターの動きがわかるようにデザインしたのだとか。

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また、必殺技のカットイン、攻撃演出はできるだけ短い時間でいかにかっこよく見せられるかにこだわったほか、必殺技使用時のキャラクターの体格差を変化させたという。これは等倍で大きいキャラを縮小、小さいキャラを拡大しつつ、体格差を維持したまますべてのキャラクターで必殺技が使えるようにするためのアイデアだった。

必殺技や攻撃のエフェクトについては小谷氏が解説。「エフェクト面がいちばん制限が厳しかった」という小谷氏は、不透明のエフェクトをメインに使うなどして低コストに抑えつつ、スマホの画面でも見栄えが良く爽快感を表現できることを意識してデータを作り、「短い尺でも目に残りやすいエフェクトを目指した」(小谷)

ただ、不透明のエフェクトなどはポリゴンっぽさが気になってしまうため、エフェクトを発光させてポリゴンっぽさを緩和するなどの工夫を凝らしたことも明かされた。

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▲UIについても小谷氏から解説。仕様変更に柔軟に対応できることをコンセプトにデザインを心掛けつつ、ある程度システマチックにして、その後の調整がしやすくなる仕組みを作ったとのこと。

最後に佐藤氏が本セッションについて総括。最初に注力する箇所を絞ったうえで「やることはやる、やらなくていいことはやらなくていいようにする」(佐藤)ルールやマニュアルを決めることがポイントだとまとめた。

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※ガンバリオン公式サイトはこちら
※『ワールドトリガー スマッシュボーダーズ』公式サイトはこちら

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