ゲームエンジン『Unity 5』がリリース! ゲーム体験はどう変わる?
2015-03-06 19:52 投稿
Unity 5が持つ力を覗いてみよう
スマートフォンコンテンツからコンシューマゲームまで、幅広い活躍を見せるゲームエンジンUnityの最新モデル、Unity 5がリリースされた。ここでは、Unity 5によりユーザー体験がどう変わるのか? そしてどう変わる可能性があるのかを考察しながら、Unity 5のスゴさを確認していこう。
Unity 5のグラフィック処理能力はどうスゴイ?
まず、Unityとは前述の通り万能ともいえる能力を有したゲームエンジンだ。そしてゲームエンジンとは、ゲームが行う内部処理を行うプログラムの総称である。ゲームエンジンが優秀であるか否かによって、ゲームの処理速度に変化が出ることはもちろん、開発者たちが開発しやすいかどうかという点にまでも関係してくる。つまり、ゲームエンジンとはゲーム開発からゲームプレイにまで絶対に欠かすことのできない、中枢となるシステムなのだ。
メジャーなゲームエンジンには、Valveが開発したSource Engine(代表作『Left 4 Dead』シリーズ、『Portal』シリーズ等)、カプコンが開発したMT Framework(代表作『バイオハザード6』、『戦国BASARA3』等)、Epic Gamesが開発したUnreal Engineシリーズ(代表作『Gears of War』シリーズ、『DmCデビルメイクライ』等)が挙げられる。Unityも、その中の代表といえる一角を担っているゲームエンジン。ちなみにUnityの代表作には『ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君(iOS/Android版)』、『Escape Plan(PS Vita)』などがある。
と、まずはゲームエンジンについて簡単に抑えたところで、ここからが本題。Unity 5はどうスゴいのか? その要点をひとつずつ確認していこう。
Unity 5はすごいグラフィックを簡単に描ける
Unity 5で進化した機能の代表的なものは、グラフィック処理に関するものたちだろう。厳密にいうと物理ベースシェーダーや、ライティングなどといったものになるが、小難しい用語を使ってもわかりにくいと思うし、筆者自身もいろいろツライので、かみ砕いて話をしていこう。
きわめてザックリ言うと、すごいグラフィックがすごい簡単に描けるようになったということ。
これではあまりにザックリしすぎなので、少し詳しい話をしてみよう。今回Unity 5で特別強化されたのは、物体の質感と光の動きを処理する部分。現実世界では、物体をパッと見ただけで「これは金属」、「これはプラスチック」、「これは布」と判別できるが、これはその物体の素材により、光の反射具合がそれぞれ異なっているためにできる芸当なのだ。じつは、ゲームエンジンでもすでにこういった光の反射具合を調整する機能は開発されている。しかし、それでもモノによっては「この剣の装飾って金属で出来てるのかな? それとも木? まさかプラスチックってことはないよな? ってことはやっぱり金属か。こっちのコップは陶器……、いや金属……?」みたいな感じになっているものがある。まぁそこまで細かく見ている人はあまりいないだろうが、光の反射具合によって物体の質感を表現するというのは、意外と難しいことなのだ。
Unity 5はその質感の表現をこれまでのシリーズより、リアルに再現する技術を実装している。しかしこうなると気になる点が出てくる。「そんなリアルに再現できるとなったら、作り手側の作業が増えて大変なんじゃないの? 細かい設定とか調整とかさ。最近ゲームの開発費が高騰してなかなか新作が出ない状況が続いてるのに、手間増やしてどうすんだよ」というものだ。
心配することなかれ、Unity 5はその辺の調整を自動で行ってくれるという。具体的には、物体の素材を指定して、光があたる角度、光の色、光の強さを指定するだけで、あとはUnityがすべて計算して質感や影の角度、形、色を整えてくれるというのだ。ちなみに、今回のUnity 5がライブラリしている素材はかなりの量になるそうで、「およそゲームに登場する95%」のものがライブラリとして実装されているとのこと。もはや光の調整に頭を抱えることはなくなるのだ。
ちなみに、数年前からオシャレさんたちに人気の間接照明。これをゲーム内で再現するのはなかなかに面倒。なぜかというと、その空間には環境光と照明の光、そして間接照明の光という、色も強さも角度も違う3種の光が存在することになるからだ。Unity 5を使えば、この辺の計算も勝手にやってくれるという。
ラフな説明が一段落したところで、Unity 5が作り出すグラフィックを確認してみよう。
百聞は一見にしかず。進化したUnityのグラフィック性能をその目で確認してほしい。
どうだろう? PCゲームでの質感はもはや言うことがないレベルにまで進化しており、スマートフォンゲームにおいても「これスマホゲーなの?」と思わせるほどハイクオリティなものが確認できたと思う。
つまり、Unity 5のグラフィック面での進化は、ユーザーにはより高品質なプレイ体験を、そして作り手側には少ない作業で高い品質を出せるというメリットを与えることになるのだ。
物理エンジンも進化! よりリアルな世界が動き出す
ゲームエンジンというとまず着目される点、物理エンジンもUnity 5では強化されている。物理エンジンとは「こういう物体にこういう力を加えたら、それがどう動くか」というものを計算する機能のこと。昔のゲームを思い浮かべてみると、この物理エンジンの進化というものにはめざましいものがある。レースゲームを例にして考えてみよう。
昔のレースゲームというと、地面の上をヌルッとすべる車の形をした謎の箱が、コースをすべり抜けていくといったものだった。しかし、最近のレースゲームはタイヤが回転し、アスファルトとの間に摩擦が生まれ、グググッとドリフトを決めて車が走るようになっている。これほどの差が生まれるまで、物理エンジンというものは進化を遂げてきたのだが、Unity 5ではそこもさらに進化。なんと、タイヤと路面の摩擦が再現されるだけでなく、タイヤからサスペンションにかかる力によって変化する車の挙動までが再現できるという。
これがどれだけスゴイことかというと、あとは空気抵抗と温度さえ再現できれば、リアルとさほど変わらない環境が、ゲーム内に存在するようになるということ。まぁ、空気抵抗の計算はまだどんな業界でも完璧に計算することは難しいようなので、現時点でそこを要求するのは無茶な話だ。
ともあれ、Unity 5は物理エンジンという面でもしっかりと進化を遂げているのだ。
また、このほかにも音楽面やサービス面でも進化をしているという。サポート面関してはかなり充実したものになっており、個人クリエイターがよりゲームを作りやすく、そしてより収益を上げやすいように拡充されている。さらにさらに、iOS 8から実装された、Appleの新しい3Dグラフィック描写システム“Metal”にも対応。“Metal”の動作が保証されたiOS 8搭載端末においては、これまで以上にハイクオリティなゲームを、サクサク動作させられるようになるという。
ゲーム開発会社にはもちろん、個人クリエイターにも優しいUnity 5の登場により、ユーザーはこれまで以上にたくさんの、そしてハイクオリティなゲームを楽しめるようになるだろう。
ふたつのモデルがリリース
今回リリースされるUnity 5にはプロ開発者、企業向けのモデル『Unity 5 Professional Edition』(月額75ドル)と、総収益、総予算が10万ドル以下のチーム、および個人クリエイターが無料で利用できるモデル『Unity 5 Personal Edition』の2モデルがリリースされる。なお、無料のバージョンでも前述している機能は利用できるとのことなので、「ちょっとゲーム作ってみたいな」と思っている人はダウンロードしてみてはいかがだろうか?
機能などのより詳しい情報は、Unity 5公式ホームページを参照してほしい。
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