プラットフォームに頼らないゲーム作りを目指す韓国大手NHNエンターテインメントの戦略
2015-01-28 12:00 投稿
韓国のスマホゲームメーカーがいま熱い!
韓国ゲーム市場は2014年度で約10兆フォン(約1兆円)に達すると言われている。そのうち、モバイルゲームのシェアは2012年度が一桁だったのに対し、2013年度は23.9%と急成長を遂げ、2014年度も引き続き成長曲線を描くと予想される(韓国ゲーム産業省調べ)。韓国国内のモバイルゲーム市場は、カカオトークのプラットフォーム“カカオゲーム”に乗ったタイトルが、数、売上げともに圧倒的に強い。最近のラインナッ プを見ると、カジュアルゲームよりもゲーム性に富んだミドルコアのタイトルが多く、ゲームユーザーも成熟している印象を受ける。ちなみに、『カカオトーク』とはメッセンジャーアプリ。カカオトークのプラットフォーム“カカオゲーム”で配信することで、カカオトークでつながっている友だち同士でスコアを競ったり、協力したりできる。日本で言う『LINE』とLINE GAMEのような関係だ。
その一方、タイトル単独でランキングに入るのは難しく、国外のマーケットにチャンスを求めるメーカーは少なくない。また、2016年以降、飽和化した韓国モバイルゲーム市場の成長が徐々に鈍化するという予測もある(韓国ゲーム産業省調べ)。
そうした背景の中、韓国国内でのパブリッシュは進めるが、収益の最大化を狙うなら、グローバル展開は当然の選択と言える。そのゲームの輸出先としてもっとも多いのが、日本と中国なのだ。
韓国のゲーム企業大手NHNエンターテインメントもそのひとつ。2013年8月にNHNコーポレーションがネイバーとゲーム事業を分社化してできたNHNエンターテインメントは、韓国のシリコンバレーと呼ばれる板橋テクノバレーに拠点を置き、日本市場へ本格的に参入するための準備を進めている。
板橋テクノバレーは韓国中央政府及び京畿道主導でR&D部門を持つIT企業を中心に、土地を格安で誘致してグローバルレベルでの技術研究・発展を促しており、大手、スタートアップ企業を含め、1000社を超える企業が存在している。そのため、技術レベルも高く、ハイクオリティなタイトルを作り出す土壌が整っている。
昨年末にNHNエンターテインメントから配信された3DアクションRPG『The Soul【三国志RPG】』を見ても、開発力の高さは見て取れるはず。
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CEOが語るグローバルワンビルド戦略とは?
そんな同社が、日本市場を含めて世界進出を狙う施策として打ち出したのが、グローバルワンビルド戦略。NHNエンターテインメント CEOのチョン・ウジン氏は、韓国のスマートフォンゲーム市場について「韓国市場は小さい。韓国ではカカオトークのゲームがモバイルゲーム市場の大多数を占めているが、カカオトークがいい、悪いという話ではなく、プラットフォームに頼ったゲーム性には限界がある」と現状を振り返る。そんな韓国の状況を打開したのが、世界的なヒット作であるSupercellの『クラッシュ・オブ・クラン』だ。
チョン・ウジン氏は、「グローバルワンビルド戦略にはふたつの要素がある。ひとつはカジュアルなプレイヤーやゲーマー、また国が違っていても、誰もが文化的な抵抗やハードルを感じることなく楽しめるコンテンツを作ること。それをもっとも体言しているのがSupercellだ」と説明。実際に韓国でも『クラッシュ・オブ・クラン』がトップセール1位を維持しており、PCオンラインゲームを土壌として育ったコアユーザーから、カカオゲームを遊んでいたカジュアルユーザーまで、幅広いユーザーから支持を集めている。これはプラットフォームの力に頼らずとも、タイトルの力で市場を席巻できることを意味している。
同社では去年からカカオトークへ提供するタイトル数を絞り、プラットフォームの力に頼らない、ゲーム性の高いタイトルを生み出す開発力をつけるために、社内の開発部隊をスタジオとして子会社化。独立採算制にし、各スタジオが責任を持って、グローバルに通用するアプリを開発できる環境を整えた。チョン・ウジン氏は「グローバルでの成功事例がない中で、グローバルなアプリ開発へシフトするようにスタジオを説得するのが大変だった」と振り返る。
世界を狙うゲーム作り
グローバルワンビルド戦略におけるふたつ目のポイントは、「各国のローカルマーケット別にユーザーの抵抗感がない運営、プロモーションを行うこと」。しかし、「我々はまだひとつ目の段階だ」と述べ、その実現のために、ゲーム開発の手法にも大きな変化があったと説明する。韓国の通信環境や課金のための決済環境は世界トップレベル。そのため、国内のリリースタイトルはフルスペックで制作していたが、グローバルワンビルド戦略を取ってからは、データパケットを減らして、劣悪な通信環境でも円滑にプレイできるようにくり返しテストを行っているという。また、これまではカカオトークでつながった友だちと遊ぶことを想定してゲームシステムを設計していたが、知らない誰かとゲームを楽しめるようにシステムを作り直すのは大きな変化だったそうだ。
そんな同社が、世界的なヒット作を生み出すために最重要視しているのが日本市場。チョン・ウジン氏は、「日本市場の規模も重要だが、コンソールゲームを遊んで育った土壌がある日本は、ゲームのおもしろさについていちばん敏感。日本で認めてもらえるうようなタイトルであれば、グローバルでも成功できると確信している」と日本のゲームユーザーへの信頼は厚い。
「2015年上半期に世界1000万ダウンロードのタイトルを複数作品生む」と目標を掲げるチョン・ウジン氏。その実現の第一歩として、2015年に日本でリリースを予定しているのは6タイトル。うち2タイトルについては詳細はまだ明かされていないが、ほか4タイトルについて紹介していこう。
Crusaders Quest
日本でもドット絵のタイトルは人気だが、韓国でもそれは同じ。本作は、ドット絵のかわいらしいキャラクターでパーティを編成し、150以上のスキルを組み合わせて敵を撃破していく、自動横スクロール型のアクションRPG。ストーリーも用意されており、堕落し、その力を失った女神を救うために奔走する。
最大の特徴は、画面下にあるスキルブロック。キャラクターごとにスキルブロックが設定されており、バトルではそれをタップすることで発動できる。同じスキルブロックを3個組み合わせると、強力な必殺技が発動。ブロックが3個そろうまで溜めることもできれば、ひとつで次々と使うこともできる。状況よって手数で攻めるか、一撃の威力で勝負するかといった戦略を直感的に味わえるのが醍醐味だ。
また、女神を救出すれば、一発逆転の女神スキルが開放され、さらに戦略性がアップ! 200体以上のキャラクターとスキルを組み合わせ、すべての女神を救おう! 日本配信は4月~6月の第一四半期予定。
Idol Dream:Girls
K-POPの女性グループを題材にしたシミュレーションゲームで、少女時代、miss A、Sistarなど、K-POPを代表する30以上のガールズグループのメンバーが実写で登場することがウリ。プレイヤーは新米プロデューサーとなって自分だけのガールズグループを作り、コンサートやサイン会など、さまざまなミッションを通じて、最高のガールズグループへと育て上げていく。
実写であること活かし、レアリティの高いカードはアニメーションを取り入れたリッチな作りとなっており、コレクション性が高い。また、実際のアーティストの活動をゲーム内に反映したり、日本国内での実施は不明だが、ゲーム内の結果が、ゲーム外でのプロモーションに影響するなど、ゲームとリアルを連動させてシステムも特徴になっている。
日本配信は第一四半期予定。
Drift Girls
本作は、現地の説明をそのまま引用すると“よい車とお金でヒロインとデートするゲーム”。なんだそのリアル過ぎる内容は! っと突っ込みたいところだが、開発者に話を聞いくと、「かっこいいクルマに乗って、美女とデートしたい!」という願望を叶えられるタイトルとのこと(意味は同じw)。看護師、車のエンジニア、レースクイーン、野球ファンなどさまざまなタイプの女性が登場。日本サービス前から、天使と悪魔の顔を同時に持つ女子高生“ヒカル”(天使と悪魔ってどんな娘?w)など、日本市場を意識したタイトルになっている。
おもしろいのは女の子の高感度でクルマの性能がアップすること。女の子それぞれにストーリーが用意されており、デートを重ねて高感度を高めれば、それだけクルマもパワーアップ! より手強い相手と勝負できるようになる。レースシーンは、ワンタップで迫力のデッドヒートをくり広げられるようになっており、レースやアクションが苦手な人でも安心。お気に入りの美女を横に乗せ、自慢の愛車でストリートを爆走しよう。日本配信は第一四半期予定。
WooparooSaga
韓国でカカオトークのゲームプラットフォーム“カカオゲーム”としてリリースされたディフェンスゲーム。ウパルと呼ばれるキャラクターを強化、進化させて自分だけのデッキを編成し、殲滅、破壊、無限対戦、PvPなど、さまざまなモードにチャレンジしていく。
目を惹くのがキャラクターのグラフィック。一見3Dに見えるが、じつは2.5Dで描かれており、非常に立体的で躍動感あるキャラクターがコレクター心をくすぐる。バトルは一般的なディフェンスゲームで、キャラクターごとにタンクやヒーラー、アタッカーなど役割があり、ステージや戦う相手に合ったデッキ編成が攻略のカギ。最大で敵と味方それぞれ100体以上がぶつかり合う大規模なバトルも行えるとのことだ。ちなみに、本作は2014年 カカオゲーム大賞も受賞したほど、韓国で人気の作品。日本配信は第一四半期予定。
The Soul 【三国志RPG】
- ジャンル
- RPG
- メーカー
- NHNエンターテインメント
- 対応機種
- iPhone、Android
- コピーライト
- (c) NHN Entertainment Corp. & Developed by mSeed Inc. All Rights Reserved.
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