文化庁メディア芸術祭で『Ingress』が大賞受賞! ファミ通App推しタイトルも
2014-12-06 10:00 投稿
文化庁から認められたスマホゲーム
AndroidとiPhoneを問わず、スマートファンは日を追うごとに端末スペックが向上し、それに伴ってアプリ自体も日々進化を遂げてきた。ゲームを見てみても、よりアーティスティックでグラフィカルなゲームも続々と登場している。“家庭用ゲーム機並”とも言われるアップルの新グラフィック技術・Metalが発表され、スクエア・エニックスや米ディズニーなど計23社が参入を表明したりと、スマホゲームの可能性は未だ限界が見えない。
そんななかで先月28日、”第18回文化庁メディア芸術祭”の受賞作品が発表され、エンターテイメント部門において、最高賞である大賞に『Ingress』(米国・Googles’s Niantic Labs)が選出。現実世界とリンクした陣取りゲームとも言える本作は、そのコンセプトもさることながら、SF的なストーリー、スタイリッシュなグラフィック、抵抗勢力と覚醒者という現実世界にもつながる構図など、すべてが絶妙にあいまって、異色の世界観を構築している。
“ダイエットにも効果的”との声も。Ingressってどんなゲーム?
『Ingress』は、上記の通り、現実世界と密接にリンクしており、自分の足で“陣取り”していくことになるので、一部では“ダイエットに効果的”との声も上がっている。
ヨーロッパにおいて科学者が“ある神秘的なエネルギー”を発見。このエネルギーを人類にとってプラスととらえる者(=エンライテンド・覚醒者)、否定的にとらえる者(レジスタンス・抵抗勢力)の両陣営にわかれ、“ポータル”と呼ばれる場所へ足を運びポータル同士を結界のように布陣を張り(“リンク”という)、陣取り合戦を行うというのがゲームの設定だ。
なお、このポータルが、史上で著名な場所・オブジェなどが多いのがキモで、ポータルどうしがかなり離れている場合も多々。敵陣営のポータルを奪取(“レゾネーター”)することも可能で、このポータルの取り合いがかなり“アツい”。
“アプリ名は知ってるけど、なんだかややこしそう”と思っている人も多いだろうが、最低限の用語・ルールを知れば、その極限までシンプルで、しかし革新的で、それでいてやりこみ要素が満載の本作の魅力を理解できるのではないだろうか。気になる人は、何も考えずにとりあえずプレイしてみることをオススメする。
受賞で見せたスマホゲームのひとつの“成熟”
今回の受賞を受けて、『Ingress』の開発に携わったJohn Hanke氏は、自身の動画の中でつぎのように語っている。
——文化庁メディア芸術祭エンターテイメント部門大賞という名誉ある賞をイングレスにいただけたことを感謝している。『千と千尋の神隠し』、『ゼルダの伝説』、『AIBO(ソニー)』に、私たちも深いインスピレーションを受けてきた。芸術、テクノロジーなどを革新的に広げてきたものばかりだ。そうした偉業と同列に語られることを畏怖するとともに光栄に思っている。
——私たちのミッションは、インタラクティブなエンターテイメントの限界を、家から現実の世界へと押し広げていくというものだ。私たちは、テクノロジーの力で、公共芸術作品や歴史・文化、周囲にある想像力、見過ごされがちな場所などを、輝かせることができると信じている。もしかしたら、あらゆる宗教や民族、身分などの違いを超えて、ともに歩むことができるのではないかと信じている。
同氏のコメントの通り、『Ingress』のリリースから約2年が経ち、現在世界中でユーザー数は数百万人を突破。国境を超えた“陣取り合戦”が行われている。“ゲーム”という根本的な部分を見つめつつ、そこから革新的なものを生み出したことが、今回の受賞につながったのだろう。ゲームクリエイターで審査員をつとめた飯田和敏氏も授賞理由を以下のように語っている。
——この情報環境の中で「私たちはどこへ向かうのか?」を描くことが課題だった。これに対して『Ingress』は決定的なビジョンを示すことに成功している。
今後のゲームに期待されるひとつの側面として、従来のゲームの幅を超えたまた新しい意味での“ゲーム”というものがあるだろうし、その一端をになうのがスマホゲームといえるだろう。いずれにしても、『Ingress』のような芸術・テクノロジー両面で高いレベルで完成された作品がメディア芸術の賞を受けたことは、スマホゲームが一つの成熟を見せたと言うことができそうだ。
本作をふくめて、スマホゲームの今後に期待したい。
最後に、『Ingress』以外にも、受賞を逃したものの“審査委員会推薦作品”となったスマホゲームがある。ファミ通Appでも推していた『口先番長』と『Tengami』の2作品。以下に簡単なゲーム紹介と、ダウンロードリンクを記しておく。
審査委員会推薦作品『口先番長』
新感覚“しりとり格闘”ゲーム。ランダムに表示される25のひらがなを組み合わせ、その文字数に応じたダメージを与えバトルを繰り広げるという内容。元SCEで『torne(トルネ)』開発に携わった西沢学氏によるディレクションというだけあり、サウンドや操作感、派手なエフェクトなど、細かい点までかなり作りこまれており、思った以上にアツくなれた。とくに4文字以上の言葉を織り成して、それを相手にぶつけたとき爽快感は格別。“しりとり格闘”という一つのジャンルすらありそうなほどの完成度の高さは、プレイの価値ありだ。
審査委員会推薦作品『Tengami』
純和風の幻想的な風景を背景にさまざまな仕掛けを解いて進んでいくアドベンチャーゲーム。“飛び出す絵本”のページをめくるように立体的に場面が転換される様子もまた、本作の世界観に一役買っている。スタイリッシュな日本の魅せ方というものをかなり意識している印象で、どの場面を切り取ってみても“荘厳”“日本的”といった言葉が浮かぶ。むしろ日本人が知らない(もしくは忘れかけていた)日本の良さを再認識できるのが本作だ。
(斎藤えいこう)
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