世界的人気を誇る『Angry Birds』が日本で本格始動!その戦略に迫る

2014-10-24 16:15 投稿

360度のエンターテイメントを展開していく

スマートフォンゲームの世界的ヒット作『Angry Birds』の開発元Rovio Entertainment(以下、ロヴィオ)。グローバルな人気を博しながらも、日本での認知はいまひとつ伸び悩んでいる印象だ。そんなロヴィオが、日本にオフィスをかまえたのが2013年。日本のカントリーディレクターとして、新たに及川克己氏が就任し、日本市場獲得向けて本格的に動き出すという。そこで今回、及川氏に日本での『Angry Birds』戦略について、話を聞いた。

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▲Rovio Entertainment カントリーディレクター及川克己氏。
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▲『Angry Birds』グッズで埋め尽くされた日本オフィス。現在在籍しているのは及川氏を含めて3人。「大企業では味わえない忙しさ。やってる感がある(笑)」(及川氏)

――ロヴィオのカントリーディレクターに就任されたのはいつごろでしょうか?    

及川:(2014年)9月1日からですね。

――つい最近のことなのですね。ちなみに前職は何をされていたのでしょう?

及川:サムスン電子ジャパンにいました。おもに、GALAXYスマートフォンのマーケティングをしていましたね。海外ですと、冷蔵庫とかテレビとかいろいろあるのですが、日本の場合はほぼスマホでした。

――端末メーカーから移られたんですね。ロヴィオにはどういった経緯で?

及川:私自身が純粋にブランドのマーケティングが好きなんです。今までは大手で働いてきたのですが、去年50歳になり、スタートアップ的な企業で自分の経験を活かして、好きなゲームやエンタメコンテンツのブランディングに100%集中する仕事をしたくなったのが正直なところです。

――すごいチャレンジ精神ですね。私だったら絶対そのまま残ります(笑)。ロヴィオを選んだ決め手は何だったんですか?

及川:2008年に日本でもiPhone 3Gが出まして、ちょうどそのころから個人的に『Angry Birds』は遊んでいたんです。引っ張って飛ばすだけなのですが、意外と奥が深い(笑)。長く遊んでいる分、個人的な思い入れも強くて、日本市場で展開するときの成長の伸びしろを自分なりに考えたときに、貢献できるのではないかと思ったのがきっかけですね。

――私も遊んでいました。世界的なヒット作でしたからね。ただ、日本ではあまり定着しなかった印象です。

及川:おっしゃっていただいたように、日本では『Angry Birds』そのものの認知や興味が、他国に比べて若干低いと思います。ですが、逆に裏返しでいうとキャラクターブランドとして、まだまだ大きくなる伸びしろがあると思っています。そのために、日本のポップカルチャーの中にどんどん浸透させていきたいですね。日本独自でマンガやアニメ、アパレルなどの展開をしていきたいと思っています。

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▲iPhoneの黎明期から人気を誇る『Angry Birds』。昨年、フリートゥプレイ版がリリースされるなど、いまなお、市場に合った形で進化を続けている。

――世界的にヒットしているタイトルだけに、その可能性は十分に?

及川:あると思います。この前たまたま家の近くで、小学生の男の子が『Angry Birds』のバックパックを背負っているのを見て、嬉しくて泣きそうになりました(笑)。

――低年齢層にも受け入れられているということですね。

及川:そうなるとうれしいですね。これまでブランドマーケティングをやってきて、その経験の中で共通しているのは、ターゲットとなるお客さんに応じて、ブランドの個性を持った360度のタッチポイントを作ることが重要ということです。ゲームであったり、マンガであったり、アパレルであったり、おもちゃであったり、そういった体験を通して、『Angry Birds』=○○というようなお客さんごとの印象が積み重なり、定着していくものだと思っています。ただ、ゲームはゲーム、マンガはマンガでバラバラになるのではなく、それぞれで『Angry Birds』共通の世界観や驚きを伝えられる接着点は必要だと思っています。

――ということは、ゲーム単体ではなく、IPとして打ち出していくのですか?

及川:弊社はゲーム企業ではなく、エンターテイメント企業という位置づけにしています。『Angry Birds』はキャラクターブランドがあって、その周辺に映画やゲーム、ライセンシー事業がある形なんです。先ほどの“なぜロヴィオなのか”という質問に付け加えさせていただくと、『Angry Birds』が作るエンターテイメントに強く惹かれたから、というのがいちばんの理由ですね。

――そのエンターテイメントの中核になるのはゲームなのでしょうか?

及川:中心がゲームというのは、必然的に念頭にありますので、そこは引き続きやっていきます。

――今後、日本向けの新作をリリースするなども考えられるのでしょうか?

及川:取り組みという意味では、日本だけではないですが、アジアで同時であったり、先行配信であったりというは考えています。

――実際に始動いているタイトルはあるのですか?

及川:ノーコメントでお願いします(笑)。ただ、私見ではありますが、引っ張って飛ばすスリングショットゲームとしての『Angry Birds』のDNAはありつつも、ゲーム内容やジャンルは進化や変化をしていくブランドだと思っています。すでにリリースしていますが、レースゲームの『Angry Birds Go!』であったり、RPGの『アングリーバードエピック』であったり、ジャンルを超えて、本当に日本市場に受けいれられるゲームが何なのか、積極的にトライしていきたいですね。

エピック
▲『アングリーバードエピック』は、『Angry Birds』の世界観は継承しつつ、新しいジャンルに挑戦したタイトル。キャラ育成や装備の要素など、RPG色が強い。

――及川さんが日本のカントリーディレクターに就任され、そうした新しいチャレンジをされる一方で、10月6日にロヴィオ本社の人員削減が発表されましたよね。ロヴィオ全体として、大きなターニングポイントを迎えているように思うのですが、その辺はいかがでしょうか?

及川:基本的に会社としての方針が変わるということはありませんが、変化という意味ではバックヤードのところですね。物事を起こすための組織が、より効率的に、より早く、マーケットのニーズに合う形で動いていけると思っています。

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▲「日本のポップカルチャーの中にどんどん浸透させて、もっとおもしろいブランドにしていきたい」と語る及川氏。そうした動きをスムーズに行えるようになったのも、組織改変による部分が大きい。

――具体的にどういうことでしょうか?

及川:ゲームで言えば、これまで平均的にグローバルでローンチしていましたが、さすがに単一的な戦略では、競争できない市場になってきています。これからは日本にフォーカスしたマーケティングを行い、それを施策に落としていくという一連の流れが、非常に効率的に行えるようになります。10月20日から実施させていただいている、ガンホーさんの『パズドラ』と『アングリーバードエピック』とのコラボも、その取り組みのひとつです。

――今後もコラボは精力的に行っていくのでしょうか?

及川:はい。お客さんの目線でおもしろいと思っているものに『Angry Birds』がコラボさせていただくことは、日本市場に合った形で、日本でのブランドを強めていくことに繋がると思っています。ですが、それだけではなく、弊社側も世界の目線で見ますと、20億以上のダウンロードであったり、グローバルな動きのアジリティであったりは、日本の企業さんが世界に進出されるときのチャンネルとして使っていただけると思います。言い方は悪いですが、バーター的なやり方も考えられますし、そういった取り組みは積極的にやっていきたいですよね。

――楽しみにしています。もうひとつ、ロヴィオとは別にロヴィオ・スターズというパブリッシュ事業もされていますよね。

ロヴィオ・スターズ名義でサードパーティのタイトルの配信事業をしています。最近ですと、iOS 8の“Metal”(※)に対応した『プランダーパイレーツ』をリリースしました。開発元のMidokiはイギリスの会社なのですが、例えばゲームを世界規模で展開したい場合、ロヴィオが持つグローバルの強みひとつである、アクティブユーザーやダウンロードの数を活かした、お手伝いができると思っています。

プランダーパイレーツ
▲『プランダーパイレーツ』は、新たな海域にくり出したり、他プレイヤーの島から略奪したりしながら、海賊島を育てていくリアルタイムストラテジー。

――では、最後に、これから『Angry Birds』というキャラクターブランドを日本で展開するにあたっての意気込みをお願いします。

ブランドを意識した戦略的なマーケティング、360度のエンターテイメントの2軸で展開していきます。アプリ単体の事業ではない点が、弊社の強みであると思っています。まだ伸ばし切れていない部分はありますが、そこにチャンスがあると思っていますので、ぜひ『Angry Birds』が作るエンターテイメントに期待してください。

※Appleの新しい3Dグラフィック描写技術。

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