【UNITE JAPAN2014】GDC4部門ノミネート作品を生んだチーム志向型コミュニケーション方法

2014-04-09 13:48 投稿

チーム全体で考えるゲーム作り

Unity主催の公式カンファレンス“UNITE JAPAN2014”。ここでは、フリーランス池和田有輔氏のセッション“「Republique」チームへの参加から、海外のインディペンデントスタジオで過ごした日々の話”について届けする。

 

『Republique』は、iOSでリリースされたステルスサバイバルゲーム。カメラをハッキングし、ガードの監視を掻い潜り、ヒロインを救出することが目的となる。その完成度の高さはインディーズゲームのレベルを超えており、GDC2014でIMGA(The International Mobile Gaming Awards)でストーリー部門を受賞。計4部門にノミネートされ、これは史上最多のノミネート数だという。

ではなぜ池和田氏が『Republique』チームに参加することになったのか? 意外なことに、チームに参加するまで、池和田氏はゲーム開発の経験がほとんどなかったという。広告やウェブデザインの仕事を中心にフリーランスでずっと活動していたのだが、3年前の東日本大震災の影響で、進行中のプロジェクトや来ていた仕事が白紙になり、フリーになった初めて仕事がなくなったという。

そこで、何か新しいことをしようと思い、目を付けたのがUnity。当初はゲームを作るというよりも、モーショングラフィックに使うツールとして考えていたそうだが、ゲームジャムというイベントがあることを知り参加することに。そこで作った『ハラモン』が、『Republique』の開発会社であるComouflaj(カムフラージュ)のライアン・ペイトン氏の目にとまり、チームに参加することになった。

▲『ハラモン』は怪獣に宇宙飛行士を食べさせるというシュールな内容。

最初の仕事はUIのリデザイン。これは、いわば入団テストのようなものだったと池和田氏は語る。驚いたのは、作ったアートワークに対して、チーム全体からのアンケートが届いたこと。誰もが思ったこと、感じたことを書けるようにアンケートは匿名で行われ、その意見に必ずしも従う必要はないという。海外のゲーム会社というと、スタンドプレイなイメージだが、Comouflajではチーム全体で意見を出し合い考えることに重きを置いており、会社のロゴからお弁当の献立までアンケートで決めるそうだ。

 
▲上の画面が初期のUIで下の画面がリデザインしたUI。テストプレイの結果、ゲームの仕様が変わったため現在は使われていない。
▲アートアークを見たチームからのフィードバック。

なぜチーム志向なのか。それは「メンバーはゲームのアイデアを考えるパートナー」というComouflajを立ち上げたライアン氏の考えによるもの。みずからが考えたアイデアがゲームに反映されれば責任が生まれ、励みにもなるという。そして、もうひとつ、チーム志向型を可能にしているのが、少人数でプロジェクトを回せる少数精鋭部隊ゆえ。100人規模でゲーム制作を行うとなると、すべての要素に自身の考えを伝えることは難しい。Comouflajでは、ひとりのクリエイターが複数の役割を担っており、コミュニケーションが特定の人に留まらない。デザイナーどうし、プログラマーどうしという職種ごとのコミュニケーションではなく、チーム全体で意見交換を行う。また、従業員の経歴や国籍も多彩で、格闘技雑誌の元ライターやメジャーリーグの元2軍選手なども在籍している。

そうした環境では、さまざまな視点からの意見が求められ、池和田氏の場合はアーティストとして、技術者として、日本人としてどう思うかを聞かれたという。こうしたコミュニケーションは信頼関係を築く上で大いに役立ったと語る。その根底にあるのは、「自分たちで何でもやってみよう」という考え。バグフィックスすらも楽しんでしまおうと、バグ取り用のアチーブメントまで作ったそうだ。また、Comouflajがあるシアトルの周りにはゲームの開発会社が多く、別会社の開発者どうしの意見交換も盛んに行われており、ゲーム開発をするには非常にいい環境とのこと。

コミュニケーションと同じく、テストプレイを重要視しているのもComouflajの特徴。テストプレイの結果、イチから作り直すことが何度もあったという。テストプレイには自社だけでなく、他会社の開発者やKickstarterで支援した人も参加している。そうしたテストプレイの結果から生まれたUIが“アクション・アイコン”。テストプレイの最中に予期せぬ操作をするユーザーがおり、複雑な操作をタッチひとつでまとめるにはどうすればいいのか? を試行錯誤し、その答えとして導き出したのが、主人公が移動した後でアイコンを出すというアイデア。通常、画面をタッチした後にUIを出すというのは考えられないそうだが、これによりユーザーの混乱を劇的に回避することができるようになったとのこと。なお、アクション・アイコンはリリースの1週間前に急遽実装したため、池和田氏が作ったものではない。

『Republique』のエピソード2はほぼ完成しており、近日中には公開される予定。全5話の配信を予定しており、これからはもう少し早いペースでリリースしていくと語った。気になる日本語化については、もう少し時間がかかるとのこと。

Republique

メーカー
Camouflaj LLC
価格
500円[税込]
対応機種
iOS 7.0 以降。iPhone、iPad および iPod touch 対応。 iPhone 5 用に最適化済み

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