『ロードラ』200万DL記念企画 横山Pに古巣スクエニの安藤氏と浅野氏に会ってもらった結果
2014-01-22 17:00 投稿
3人のプロデューサーがとことん語り尽くした
『ROAD TO DRAGONS(ロード・トゥ・ドラゴン)』が、2014年1月10日時点で200万ダウンロードを突破したことは、こちらの記事でお伝えしたとおり。
そこでファミ通Appはその200万DLを祝して、本作のプロデューサーを務める横山栄介氏(※文中は横山)と、彼をよく知るゲームクリエイターとの鼎談を企画。参加していただいたのは、“スマゲ★革命”でお馴染みのスクウェア・エニックスの安藤武博(※文中は安藤)プロデューサーと、『ブレイブリーデフォルト』シリーズを手掛ける、同社の浅野智也(※文中は浅野)プロデューサーのおふたり。
横山氏が以前、スクウェア・エニックスに勤めていたこともあり、実現した今回の鼎談。『ロードラ』の話題から始まり、ゲーム作りの姿勢、そして業界の話など、ここでしか聞けないエピソードが満載です!
スクウェア・エニックス
第10ビジネス・ディビジョン
ディビジョンエグゼクティブ
プロデューサー
(左)安藤武博氏(あんどうたけひろ)
アクワイア
事業本部 プロデュース部
プロデューサー
(中央)横山栄介氏(よこやまえいすけ)
スクウェア・エニックス
第6ビジネス・ディビジョン
プロデューサー
(右)浅野智也氏(あさのともや)
とにかく怖い先輩と友だちのような先輩と
――今回は『ロードラ』200万DL記念企画なのですが、そもそもなぜ横山さんの鼎談相手が安藤さんと浅野さんなのか、ご存知のない方も大勢いると思います。そこで、まずは皆様の関係などをお聞きしたいのですが。
安藤 もともと旧エニックスの社員だったというのが、3人の共通点ですね。昔のエニックスは、とてもユニークなことに、新卒の学生をプロデューサーとして採用していたんですね。もちろん、入社してすぐにプロデュースできるタイトルはないので、最初は雑用がおもな仕事なんですが(笑)。3人の中だと、僕がいちばん先輩で、浅野が三つ下の代、そして浅野から二つ下の代が栄介になります。あ、昔みたいに栄介って呼んでいいよね?(笑)
横山 大丈夫です(笑)。
安藤 それでいまでも覚えているのが、僕は栄介の面接官で、彼にはゼロ点をつけたんです。いまだに面接官を続けていますが、これまでにゼロ点をつけたのは栄介だけですよ。
一同笑い
安藤 栄介の書類のコメント欄に、「絶対に入れんといてくれ」って書きましたからね(笑)。
――横山さんのどこがそんなによくなかったんですか?
安藤 当時はいけ好かない感じ全開でね。美大卒で、縁なしのメガネをかけていて、アートみたいなことをクールに語っていて……。その姿に、なんか腹立ったんですよ!(笑)。
でも僕だけゼロ点をつけているのに、ほかの人間はいい点をつけていて、栄介はつまるところ目立っていたんでしょうね。私の意に反して、最終的に栄介は見事採用されたわけですが、ゼロ点をつけた縁もあり、なんと会社はわざわざ栄介を僕のアシスタントにしたんですよ。「マジか!」と。だから最初は、栄介に対するイメージが最悪で!(笑)。当時はまだ俺も25、26歳で分別もなかったし、いまでは大人げなかったと反省しています。ごめんね☆
横山 僕は最初、安藤さんがとにかく怖かったですね(苦笑)。もちろん、安藤さんに嫌われているとは知らなかったんですが、嫌われているのを何となく感じていたのかもしれません。昔は厳しい人が多かったですし、初めて入社した会社だったので、「会社ってこういうもんなんだ」って思って働いていましたね。
――最初から社会人の過酷さを体験できたと(笑)。では、横山さんと浅野さんのご関係は?
浅野 自分よりも上の代がみんな怖い先輩だったものですから、「先輩は怖いよね」って栄介に声をかけて、いっしょにコンビニ行ったりとか(笑)。
横山 仕事終わってから、『マリオテニス』でいっしょに始発まで遊んだりしましたよね。
安藤 あぁ。でも、あれは俺の『マリオテニス』なんですけどね。
一同笑い
安藤 まじめな話をすると、浅野はすごく現場の和といいますか、雰囲気を大事にするんです。僕から見ると、浅野から下の代はものすごく結束力が強いと思います。それこそ、課外活動もしっかりやっていて、みんなで徹夜で行列して公開初日のアニメ映画を観に行ったりとか。いまだに仲がいいんだよね?
浅野 そうですね。
横山 僕と浅野さんは同い歳なので、見てきたものも触れてきたものが近く、話が合うというものあります。
『ロードラ』から窺える横山氏っぽさ
――なるほど、皆さんの関係はよくわかりました。ではここからは、『ロードラ』の話をメインにお聞きしていきたいのですが、200万ダウンロードを達成されたとお聞きしていかがでしたか?
安藤 200万ダウンロードは、なかなか達成できないすごい数字だなと思います。しかも『ロードラ』は、ものすごく丁寧に運営されてきた印象があります。そもそも栄介はアクワイアさんに転職する前から、スマホのゲームを作りたいと公言していたので、リリースされたときはすごくうれしかったです。オリジナルのタイトルをずっと作ってきた僕のアシスタントだった栄介に、そのイズムを継承することができたのかなって。乱暴な教えかたでしたけど(笑)。
でも『ロードラ』がリリースされてすぐに、「コラボさせてください」とお願いしたら、断られたんですよ! 仕返しか!
一同笑い
横山 配信当時はバタバタしていて、コラボの準備を進める余裕がなかったものですから……(苦笑)。
――『ロードラ』をプレイされてみていかがでしたか?
安藤 栄介っぽいなと思ったのが、ユニットごとの世界観がとにかく深いところ。世界観などの作り込みは、スマホのゲームでは、まだあまり重要視されないところなんですが、ユニットの設定文を読んでいるだけでも楽しめるくらい作り込んでいるのは、コンシューマのゲームを作っていた人間の仕事だなと思いました。
浅野 自分の印象としては、いい意味でずっとランキングの100位くらいにいるタイトル。僕は妻がiPhoneのゲームを作っているので、ランキングをよく見たりするのですが、100位にいること、そして居続けることはすごく大変なことだと思います。
安藤 いまと去年の100位のタイトルだと、だいぶ意味合いが違いますからね。『ロードラ』は同じ順位だけど、着実に力をつけてきている証拠なんですよ。
浅野 あと、安藤さんも言われたとおり、スマホでゲームを作るんだといってアクワイアさんに転職したので、『ロードラ』がリリースされたときは純粋にうれしかったですし、栄介から「『ブレイブリー』とコラボさせてください」と言ってもらえたのもとてもうれしかったですね。
横山 コラボのお話は、浅野さんの家で飲んでいたときにお願いしたんですよね。
安藤 それを聞くと、ますますフラれた感じがするわー!(笑)。
横山 これからもいろいろやっていきたいですし、タイミングが合えばぜひ、よろしくお願いします(笑)。
『ロードラ』の発想はボードゲームから!?
――先ほどのお話で、安藤さんは横山さんにオリジナルを作る大切さを継承したとおしゃっていましたが、スクエニ時代にどういったものを受け継がれましたか?
横山 スクエニの最後の担当タイトルが『タクティクスオウガ 運命の輪』のプロデューサーでした。あのときは浅野さんのチームにいたのですが、浅野さんからは“理解、分解、再構築”と呼ばれる流行のものをタイトルに取り入れる方法を学びましたし、悩んだときなどはいまでも相談に乗ってもらっています。浅野さんは自分よりも物事を深く考えていますし、好きなものをキャッチするアンテナがすごいんですよ。
浅野 僕はゲーム以外のエンターテイメントコンテンツに対して、いいなと思ったものをどう吸収して、自分の作品にフィードバックするのか? そういったことをつね日頃意識しています。栄介は、僕のそういったところに注目してくれているのかなと思います。
――“理解、分解、再構築”という考えかたが、『ロードラ』の開発に活きたところはありますか?
横山 スクエニ時代は、浅野さんの代の人や同期たちと、徹夜でボードゲームやアナログゲームをよく遊んでいたんです。『人狼』とか、本当に何度も遊んでましたね。その中で、『カルカソンヌ』(ドイツ発祥の人気のボードゲーム)という、自分がとくに好きなゲームがありまして。『カルカソンヌ』は、パネルをつなげることで世界が広がっていき、そこで自分の城や街道、領地を獲得していくゲームなんですが、これに限らず、みんなとゲームで遊びまくった経験は、『ロードラ』だけでなく、自分のゲーム作りのひとつの根っこにはなっていると思います。
ボードゲームって、端的に魅力や楽しさを伝えられないと、プレイを楽しむ前にルールを理解することに必死になったり、そもそも遊んでくれなかったり(笑)。そうならないようにするためには、“何がおもしろいか”というところを自分で理解、分析して、相手にわかりやすく楽しく伝える必要があるんです。
――ボードゲームをやりまくった経験も活きていると。
横山 この行為はボードゲームに限ったことではありません。自分がおもしろいと思ったものを浅野さんや先輩プロデューサーたちに説明していた経験や、その逆パターンで説明されていた経験は、相手に伝えるという行為が多いプロデューサーという仕事の中で訓練になっていたと思います。
『ロードラ』がサービスインして、浅野さんに「何を考えてこうなったの?」と聞かれたとき、「自分が好きなダンジョンRPGのおもしろさのエッセンスをスマホで表現したいな……って考えていたときに、甥っ子と木のレールをつなぐおもちゃで遊んでいて。そのことと、みんなで遊びまくった『カルカソンヌ』が重なって」って答えたら、「なるほど」って即答でした(笑)。
ゲーム開発はチームで行うことが多いですが、共通体験がある人どうしだと、ゲームコンセプトや世界観、システムの説明をするにしても、話が早い場合が多いので、コミュニケーションも大事だと思います。
安藤 ボードゲームを主催していた人間は渡辺範明というんですが、ボードゲームが好きすぎてボードゲーム屋になっちゃいましたからね。
じつは彼、『パズドラ』を作った山本さん(山本大介氏。ガンホー・オンライン・エンターテイメントのプロデューサー)とものすごく仲がよくて、僕は彼の肝煎りもあって山本さんと親しくなったんですよ。そういった縁から、その後もいろいろな人がつながっていき、弊社で『パズドラ』のアーケードゲームを作ることになったりと、年々会社を越えた共闘関係が強くなっているように思いますね。
横山 『ロードラ』の企画が立ち上がったのが、2012年の4月~5月くらいのときでしたが、ちょうどその当時、安藤さんから食事のお誘いをいただいて。安藤さんと山本さんの3人で食事をして、「僕も、完全新規オリジナルのスマホのゲームを作ります!!」って話したのを覚えています。
安藤 そのとき、ウイスキーを飲みながら「ウイスキーの名前を使ったRPGを作りたい」って言ったら、山本さんが「その案いただきます」って(笑)。『パズドラ』にウイスキーの名前のモンスターが登場したんです。そのころから会社の垣根もないし、スピード感もあるなって。いろいろなところで、いろいろなところとコラボレーションしているというもの、普通の感じになってきました。
スマホゲーとコンシューマーゲーの共通点と相違点
――スマホのゲームが流行り出して、コンシューマーのほうで影響を受けたことはありますか?
浅野 スマホのゲームからトレンドをいただくことが多いですね。『ブレイブリーデフォルト』のコアコンセプトは、“みんなで遊ぶひとり用RPG”で、ひとりで遊んでいるんだけど、隣りに誰かいるような、誰かとつながっているような感じにしています。
安藤 無料のゲームを作っていて強く思うのは、パッケージで販売して、エンディングがあるゲームもなくなってはいけないということ。5000円、6000円で買ってきたゲームと、無料で始めたゲームはお客さんの臨みかたも大きく違います。僕らが開発している無料のゲームは、暇つぶしの要素も強いのですが、それだけだとゲーム屋としては正直さみしい。そこでゲームっぽい要素も入れて、拘束力のない暇つぶし体験をしてもらっています。
浅野 暇つぶしでも遊べるように作っているからこそ、ルールの説明がほとんどなくても楽しめちゃう。スマホのゲームのすごいところですよね。コンシューマーのゲームを作るときにものすごく参考にしています。
安藤 たしかに、スマホのゲームを作るようになって、マニュアル(説明書)を作るステップが丸ごとなくなりましたよね。スマホのゲームは直接的に触ってもらえるかどうかが重要になってくるので、そういう意味ではアーケードのゲームに近いのかもしれません。
――スマホでゲームを作るときにコンシューマーのことを意識して作られますか?
安藤 僕はめちゃくちゃ考えますよ。もともとコンシューマーのゲームを開発していたので、コンシューマーでも遊んでほしいなって思いますしね。やっぱり、専用のゲーム機をわざわざ購入して遊んでくれる人たちは、ゲームへの愛が強いんです。僕らはゲーム屋なので、ゲームのことをつねに思ってくれている人のことは忘れられないというか、きちんと考えたいなと思っています。
横山 僕はコンシューマーを意識したというよりは、コンシューマーのタイトルしか作ってこなかったので、コンシューマーの考えかたで作ったというか。当時流行っていたカードゲームをどうやれば作れるかもわからなかったですし、どうやれば利益が出せるのかもわからなったので、それなら自分がやってきたことをやったほうがいいと思ったんです。先ほど、安藤さん、山本さんと食事をしたことをお話しましたが、そのとき安藤さんから「スマホだからとか考えないで、自分がいままで作ってきたゲームを作るつもりで思いっきりバットを振っていけ!」とアドバイスをいただきました。その考えかたは、間違っていなかったと思っています。
安藤 スマホゲーム開発のあるあるネタなんですが、コンシューマーのゲームクリエイターがスマホのゲームを作ると、無意識に手を抜いてしまうという傾向があったんですね。フルスイングしておもしろさの追求やUIのデザインをすればいいのですが、「スマホでゲームをする人ってそんなにゴリゴリやらないでしょ」って判断しがち、ということがよくありました。当てにいくぐらいで作っちゃう人が多いんですが、当然ながらフルスイングしないとダメなんです。
――それで横山さんも、フルスイングしたわけですね。
横山 そうですね。当時はキャラクターのカードゲームが主流でしたが、コンシューマーだとキャラクターが動くのは当たりまえじゃないですか。スマホのゲームだって、自分の感覚的には動いていてほしいんです。カードどうしがぶつかり合って戦うというのも、ひとつの表現方法ではありますが、僕はずっとコンシューマーを開発してきたので、可能なら、やっぱりちゃんと動いたほうがいいと考えました。
それに、キャラクターを生み出してしまった以上は、このキャラクターはどういう意思を持ってこの世界にいるのか、何をしているのかといった設定は、RPGを作っていた人間なら普通に考えると思うんです。だから『ロードラ』も、そうあるべきだと考えて開発しました。
安藤 ただ、フルスイングしすぎたら、開発期間が長くなって、その間に旬が変わるという事件も起き始めているんですよ(苦笑)。だから理想の形は、「飛車角落ちで将棋を指す」ことだと思っていて、『ロードラ』はそれが非常にうまくできています。
たとえば、ユニットのデザインはバリエーション豊富ですが、ちゃんと量産しやすいように作られています。しかも、同じ頭身のユニットが同じ方向を向いているというのは、コレクションしたいという意欲を刺激するんですね。おもしろいものをいかに作りやすい形にするかが、まさに重要になってくると思います。
横山 安藤さんがおっしゃる「おもしろいものをより速く」というのは、僕もとても大事だと思っています。これには、ディレクターや開発スタッフとの相互理解や努力と工夫が必要不可欠です。場合によっては割り切りさえも。たとえば『ロードラ』のユニットを豪華なポリゴンで着せ替えできるように作っていたら、タイミングが重要なアイデアや、季節が絡むキャラクターを思いついても実装に時間がかかり、タイミングを逃してしまうかもしれません。しかも、お客さんに受けない可能性もあります。
一例だと、ダイオウイカが話題になったときは、すぐにチームに説明して、ダイオウイカ型の大型ボスを時期を外さずに実装できました。
安藤 栄介や浅野は、お客さんに届くストーリーやキャラクターをちゃんと作っているのもすごいと思います。いいストーリーやキャラクターは、スマホであってもコンシューマーであってもきちんと伝わるし、逆にそれがないとRPGを作る意味が大きく失われてしまうと思います。ゲームのシステムを邪魔せずに、10年、20年経っても忘れられない物語を入れ込むのは、非常にレベルが高いことですが。
横山 お話は、押しつける形じゃいけないと思って考えていますね。遊んでくれた方が好きになって、自然と読み進めてもらえるようになっているのが理想です。
安藤 そうそう。ストーリーや設定は、入り口のハードルが低くて、結果奥深いほど、ゲームのデザインが優れている証拠だと思う。『拡散性ミリオンアーサー』は、プロデューサーの岩野の思い切った決断で外にストーリーを置きましたが、興味のある人や好きな人はちゃんと楽しめるようになっています。『ロードラ』も楽しみたい人が楽しめる作りになっているので、デザインとして優れていると思います。
横山 ハードルの下げかたもクリエイターの性格が出ますよね。僕はわりとまじめにかっちり考えますが、岩野くんはアニメやライトノベルが好きなので、『拡散性ミリオンアーサー』の掛け合いにうまく取り入れていますし、浅野さんはちゃんとしたテーマを入れつつもコミカルな要素を入れていたり。このあいだ浅野さんとお話したとき、『リーガルハイ』を例に出されて教えてくれましたが、「コメディタッチでハードルを下げて、そこにテーマ性を加えて、ゲームを足すと『ブレイブリーデフォルト』の目指すところになる」と言われて、なるほどなって。
浅野 おふたりは、終わりのないゲームを作られていますが、僕が作っているコンシューマーはオープニングがあってエンディングもあります。20時間、30時間と向き合ってプレイしていただくものなので、ストーリーのなかで何を語るのかはつねに考えています。
――遊んでいる層は、コンシューマーとスマホでやはり違うのでしょうか?
安藤 プレイステーション Vitaで『拡散性ミリオンアーサー』をリリースしたとき、「初めて『拡散性ミリオンアーサー』を遊びました」という声を非常に多くいただきました。僕らが思っている以上に、生粋のゲーマーで、かつスマホのゲームもやっているという人は、まだ少ないんじゃないかと思います。
浅野 僕は逆に、『ロードラ』とコラボをしたときに、ツイッターなどを見ていると、「両方大好きなゲームなので、すごくうれしいです」という声をよく見かけたんです。アンケートをとったわけではないので、正式な数はわかりませんが。栄介は手ごたえとしてどうだった?
横山 ありましたね。両方やっているという方の声も、自分が想像していた以上でした。ただ、スマホは据え置き機との両立はしやすいと思うんですが、ニンテンドー3DSのような携帯機だと、プレイするシチュエーションが似てくるので、時間の奪い合いになってしまうのかもしれません。
安藤 あと、スマホは基本的にコントローラーを使えないというのも、ゲームファンからするとネックになるよね。とくにアクション性の強いゲームは、コントローラーの押しこみの幅なども含めて評価されるので。僕らとしてはその垣根をなくしていきたいですが、ニンテンドー3DS向けにちゃんと作られたゲームは、ニンテンドー3DSでプレイするからおもしろいわけです。スマホはどんなゲームでも動くからといって、何でもかんでも作るというのは、ちょっと無理があるなって最近は思うようになりました。
浅野 じつは『ブレイブリーデフォルト』はガラケーを意識して、片手(十字キー)だけで遊べるように設計したんです。発売したころにはスマホのタッチが主流になってしまっていましたが(苦笑)。
横山 でも、片手で遊べるのはいいですよね。持ち歩けるハードや端末であれば、いろいろなシチュエーションに対応できますし。『ロードラ』は開発中に、左利きのスタッフにもテストプレイしてもらったりしていました。
安藤 スマホの場合も、片手で遊べるように設計するしね。以前は横持ちか、縦持ちかの議論もありましたが、最近はスマホ本体が軽量化されてきたので、どちらでもいいんじゃないかって流れになっていますね。
――スマホでアクションゲームを作るなら、横山さんならどうしますか?
横山 どうですかね。僕はいま、スマホでアクションゲームをあまり作りたいと思わないので(苦笑)。ただ、アクションRPGだった『ブラッド オブ バハムート』を、いまスマホでリリースしたら、もっとうまくできると思いますし、スマホという端末とマッチさせることができるゲームだと思います。
自分のゲームと自社のゲームと元同僚のゲームと
――続いて、最近ハマったゲームをお聞きしたいです。
横山 最近も『ロードラ』をずっと(笑)。
一同笑い
浅野 でも、自分が作ったゲームにそれだけハマれるのはすごいことだと思います。
横山 もともと「自分がおもしろいと思うゲームを作りたい」という気質なので、『ロードラ』に限らず、自分が作ったゲームは発売後にもやり込んで遊ぶんですけど、『ロードラ』はサービスインしてからずっと毎日遊んでいますね。
PCだと、もう1年以上前になるかもしれませんが、ダンジョンRPGの『Legend of Grimrock』が最高でした。自分は英語がさっぱり解らないので、カミさんに翻訳してもらいつつ、自分が操作メイン、カミさんが謎解きメインという感じで全クリしました。スマホですと『リバーシクエスト』にもハマりました。あまりアップデートがないゲームですが……。
安藤 あぁ、『リバーシクエスト』はよくできているよね。世界観も硬派だし、栄介が好きそうだなぁ。ただ、プロのクリエイターが土日とか空いている日に作っているゲームだと聞いたことがあるし、なかなかアップデートできないんじゃないのかな。
横山 キャラクターデザインから、ゲームの仕組みから、UIから、編成といった何から何まで、ゲームをわかっている人じゃないとできないだろうって作りなんですよね。
浅野 僕はこの年末は『ドラッグオンドラグーン3』をプレイしました(笑)。
横山 いいね、スクエニ社員っぽくて(笑)。去年いちばんハマったゲームは?
浅野 ニンテンドー3DSで配信している『魔女と勇者』ですね。ダウンロードタイトルで、勇者を操作して石になった魔女をモンスターから守るんですが、すごくおもしろくて。iPhoneのアプリにもあったので、そちらもプレイしてみたんですが、正直十字キーってやっぱりいいなって思いました(笑)。
横山 安藤さんは何にハマっているんですか?
安藤 僕はいま、『三国志ロワイヤル』をずっと。ディー・エヌ・エーに転職した元同僚から遊んでくれってメールが来るので。最初は「また三国志?」と思って初めてみたんだけど、いまどきの三国志ものにしては珍しく、硬派な作りでけっこうよくできていて、本当におもしろい! 全体のランキングで、トップ10を目指すくらい課金しています(笑)。コンシューマーのゲームも去年いろいろと遊んだけど、いちばんおもしろいゲーム体験ができたのは『TOMB RAIDER』かな。いまどきのゲームデザインとしてとてもよかった。
作りたいゲーム、求められるゲーム
――最後になりますが、これからどういったものを作っていきたいですか?
安藤 浅野はスマホのゲームは作るの?
浅野 興味はあります。でも現実問題で手が空かないでしょうね……。いまは『ブレイブリーセカンド』を開発していますが、お客さんの顔がある程度見えているところで、いかに満足していただけるか、サービスできるか考えて、フルスイングをしたいと思います。スピードももちろん重要ですが、いいものにしないといけないという気持ちのほうが強いです。
横山 僕は、まずは『ロードラ』ですね。まだまだ、開発チームのみんなもやりたいことがたくさんありますし、僕もあります。1年以上サービスが続き、200万DLを突破できたのも、ファンの皆さんの応援があってこそで、本当に感謝しています。これからもプレイヤーの皆さんにも楽しんでいただけるように、アップデートを続けていきたいです。
その他には、コンソールベースで、完全新規のダンジョンRPGを作ってみたいですね。『ロードラ』の経験を活かして、コンソールでもフリーミアムの可能性にチャレンジできればと思います。
安藤 ダンジョンRPGか。自分が好きなジャンルに挑むのはいいね。
横山 ダンジョンRPGは、自分も含めて好きな人はすごく好きなのですが、そうでない人には、なかなかおもしろさが理解されにくいジャンルでもありますね。浅野さんにもプレイしてもらおうと、オススメのタイトルを送ったりしているんですが、日本で流行らないのはどうしてですかね……?
浅野 ストイックすぎるからじゃないかな。あと、僕はやっぱりお話を期待しちゃうので、ダンジョンRPGをプレイしていると、自分は何でこんな険しいダンジョンにいるんだろうって思えてきちゃって(苦笑)。
一同笑い
安藤 硬派すぎるんだよね。ただ、ダンジョンRPGでもフリーミアムでサービスするならありだと思う。フリーミアムでも、熱心に遊んでくれる人が2万いたら商売として成立するから。ダンジョンRPGもそれぐらいのファンは絶対いると思うので、フリーミアムにすることで、埋もれていたジャンルが復活するんじゃないかな。
それからスマホは、空前絶後のレッドオーシャン(競争の激しい既存市場のこと)になってしまったので、新しいゲームを作っても目立たないし、ほかのタイトルに勝つのも難しい。もしかしたら、新しいゲームを作るよりも、『ロードラ』のように丁寧なサービスを続けて、お客さんを大切に運営するのもひとつの方法かもしれないね。俺は作るけどね!
浅野 定期的にお客さんとコミュニケーションをとっていくことも大事ですよね。
横山 『ブレイブリーデフォルト』では、お客さんとよくコミュニケーションをとられていますよね。
安藤 正月にハワイに行ったんだけど、『ブレイブリーデフォルト』はハワイのゲームショップでも、すごくプッシュされていたよ。
浅野 ありがたいです。
横山 以前は海外の壁みたいなことも話題になっていましたが、いまはちゃんと作ったものは海外でもちゃんと評価してもらえますよね。逆に日本人も、海外のメーカーが作ったゲームがおもしろければプレイしますし。
安藤 ローカライズが意味をなさなくなってきたというのはあるよね。現地の人にとって不快な文化を解除するカルチャライズがしっかりされていれば受け入れてもらえるので、いい時代になったなと。とくに韓国、台湾、中国、シンガポールあたりはカルチャライズの必要もほとんどないですからね。キャラクターやストーリー、世界観に対しては、日本人とほぼ同じ目利きで見てくれる。アメリカもおおらかになってきたかな。
浅野 『ブレイブリーデフォルト』は、法律の問題でキャラクターの肌の露出は修正しました。現地のファンには、落胆されちゃいましたけど(苦笑)。あと、スマホが流通しているのもいいですね。
安藤 スマホがゲーム機のかわりをしてくれているのは、コンシューマーのクリエイターからするとうらやましいかもね。東アジアで『拡散性ミリオンアーサー』のサービスを始めたときは、日本のスクエニが展開しているサービスを正規でリアルタイムに受けること自体が新しく、喜ばれました。スマホによって、海外の垣根はどんどんなくなっていると思います。
横山 『ロードラ』も、世界の人たちにも遊んでもらえるように、どんどん届けていきたいです。
――海外での展開も含めて、今後のゲーム業界の発展を楽しみにしております。本日はお忙しいなか、ありがとうございました!
一同 ありがとうございました。
『ロードラ』とは? 本作は、道を切り拓きドラゴンを倒すパネルアクションRPG。パネルを選んで道づくり&バトルを行うのが最大の特徴となっている。さらに、個性豊かなユニットを集めて、自分だけのパーティーを作りあげる楽しみもあるぞ。自慢のパーティーで、ステージの奥に待つドラゴンに挑むのだ。 |
ROAD TO DRAGONS(ロード・トゥ・ドラゴン)
- ジャンル
- RPG
- メーカー
- アクワイア
- 配信日
- 配信中
- 価格
- 無料(アプリ内課金あり)
- 対応機種
- iOS 5.0以降、Android 2.3以降
- コピーライト
- (C)2012-2014 ACQUIRE Corp. All Rights Reserved.
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