『サガ』シリーズに新展開!? 河津&市川両氏に特濃インタビュー!!

2013-08-15 14:30 投稿

『エンペラーズ サガ』(もうすぐ)1周年記念インタビュー

2013年9月18日に1周年を迎えるスクウェア・エニックスの『エンペラーズ サガ』。あと約1ヵ月で大きな節目となるタイミングで、本作のプロデューサーである市川雅統氏と、『サガ』シリーズの生みの親である”河津神”こと河津秋敏氏の両名に直撃インタビューを敢行。先日のイベントで、突然の主人公の死とともに皇位継承がおき、新たな局面を迎えた『エンペラーズ サガ』のこれまでと今後の展開、そして『サガ』シリーズの展望について話を聞いた。

 
▲右:『サガ』シリーズ総合プロデューサー、河津秋敏氏。左:『エンペラーズ サガ』プロデューサー、市川雅統氏

――『エンペラーズ サガ』の配信から1年近くになります。ひとりのプレイヤーとして見ていると、サービス開始からチャレンジャブルな試みも多く、楽しませていただきました。この約1年を振り返っていかがだったでしょう?

市川雅統氏(以下、市川) 本当にいろいろあった1年でした。過去の『サガ』シリーズを掘り下げる“ロマンシング サガ ZERO”というイベントで河津さんに本格的にシナリオ書いていただいたり、質問コーナー(※河津のエンサガクロペディア:皇帝全書。ユーザーから『サガ』シリーズに関する質問を募り、河津氏自身が回答するイベント)を設けてお客さまと河津さんをつなぐ場所にしたり……。1年前に考えていたものとはいい意味で全然別ものにはなりましたが、多くのお客様に楽しんでいただけるものになってきたという手応えは感じています

河津秋敏氏(以下、河津 ソーシャルゲームはスピード感が求められるので、バージョンアップも細かく回数を重ねないといけない。その反面、大規模な仕掛けというのはなかなかやりにくいんですが、それでも少しずつバージョンアップを行い、ユーザーさまの声を反映しながら変えてここまで来たという印象です。現在の形は、最初に考えていたものとは違うんですが、確実に完成度は上がってきていると思っています。

――具体的には、当初の想定とはどこが違ったのでしょう?


市川
 最初は『サガ』シリーズならではの”フリーシナリオ”を入れたいと思っていたんですが、まだ入っていません(苦笑)。一方で、まさか『サガ』シリーズ本編にまつわるストーリーを『エンペラーズ サガ』で語れるとは思わなかった。いまも、イベントを開催中にネットで話題になっているか検索してみると、ふつうのソーシャルゲームの感想じゃないんですよね(笑)。「え! こんなことになるのか!」とか、「この先どうっちゃうの!?」みたいな感想が多かったのが印象的でした。それだけストーリーを楽しんでいただけているんだなと。そういう意味で、河津さんに深く関わってもらえたのは本当に助かりました。質問コーナーには約1万件の質問が来たのですが、河津さんがすべて読んでいますし、答えもすべて河津さん自身に書いてもらっています。
――それだけでもすごい作業ですよね。


市川
 そうした生の声を受け止める機会ができたというのは、開発スタッフとしてもいい体験でした。1万人の質問の中には、僕が聞きたいこともすごくいっぱいありましたしね(笑)。質問コーナーだけではなくてお客さまの声や動きを見ながら中身を替えていけるのは、ソーシャルゲームの良さ。家庭用ゲームとはまったく違う、不思議な感覚で1年を過ごしました。

――たくさんのソーシャルゲームが出ている中で、『エンサガ』は質問コーナーや重厚なシナリオを盛り込むなど、進化の方向性がほかのゲームとは全然違う印象を受けました。


河津
 質問を受けるという企画は最初から考えていて、どこまで深く関わるかは決めていなかったのですが、皆さんの熱量を感じて「これはすべて自分でやるしかないな」という使命感にかられましたね。

市川 河津さんとはいつもは違う部署で席も離れているのですが、一時期僕たちが所属する特モバイル二部のフロアに席を置いていたことがあったんです。『エンサガ』や『拡散性ミリオンアーサー』の運営がどう動いているのかをチェックする目的だったようなのですが、周りにいる人間が「河津さんが来てるよ!」とか、「河津さん、ひとつ聞いていいですか?」みたいな感じで、みんなファンのような感覚で興奮していました。

――ファンにとっては“神”ですからね(笑)。気持ちがわかります。


市川
 僕もそうなりました(笑)。みんなが質問しにきたり、色紙にサインをお願いしたり。そういう光景を見て、お客さまも同じ気持ちなんじゃないかなと気づいたんです。それが質問コーナーを企画したきっかけ。最初は僕も河津さんもそれほどたくさんの質問が来るとは思っていませんでした。家庭用ゲームでは“クリエーターのファン”という概念もふつうですが、ソーシャルゲームのユーザーさんでそこまで濃いファンの方はあまりいらっしゃらないかなと。質問を送るとゴールドガチャチケットがもらえるオマケもあったので、適当な質問はある程度来るとは思っていましたが、「あ」とか「い」とか適当なものではなく、みっちり書かれた質問が1万通ですからね。本当にびっくりするとともに『サガ』シリーズのファンの熱量を感じました

――うれしい誤算ですね(笑)。


河津
 回答するよりも、全部読むほうが大変でしたね(笑)。

市川 ざっと見た感じだと、3~4割はシリーズの続編や移植の質問。残りのうち、2割が『エンサガ』についての意見や要望。そして残る4~5割は、過去作の細かい現象や設定に関する質問です。とくに「なんでチェーンソーでラスボスを一撃で倒せるんですか?」という質問が多かったですね(笑)。

――初代『魔界塔士Sa・Ga』ですね(笑)。しかもそれをちゃんと河津さんが答えられている。読み物としても、斬新でおもしろかったです。


市川
 スクウェア・エニックスだから、『エンサガ』だからこそできたことだし、もちろん河津さんがいたからできたことなのは言うまでもありません。『サガ』シリーズは歴史などの背景の設定が細かいところまで用意されているので、読んでいるだけでおもしろいですよね。
――河津さんは過去の設定の質問に答える際には、過去の資料を参照しているのですか?


河津
 そうですね。ただ、調べないとわからないこともいっぱいあるし、資料が残ってないものもあるのでなかなか大変でした。でも、今はネットでいろんなことを調べられるので、自分の持っているデータとつき合わせるために多少参考にさせてもらいました。もちろん、こちらがあやふやなのは答えられないので、そこらへんは外しています。

――河津さんの答えを踏まえて、さらにネットで盛り上がっている方もいらっしゃいますね。


市川
 これまでの『サガ』シリーズは、オンラインになっていなかった。だから、『サガ』ファンが集まって何かをする機会というのは、これまで少なかった。『エンサガ』でそういう場所を作れて、こちらからいろいろなことを発信できるようになったことは、本当によかったと思います。もちろん、今後も細かい設定を出していくことは続けていきたいですね。
――イベントと絡めていかないといけないので大変ですね。


河津
 たとえば“ZERO”だと、『エンサガ』全体のストーリーの流れをベースに、内容を検討しています。過去のシリーズの話は原則的に変えられないので、『エンサガ』のストーリーをユーザーさまのニーズや意見を聞きながら微調整していきました。多くのソーシャルゲームの場合、パラメータの調整やカード、イベントの追加などでゲームを変えていくと思うんですが、『エンサガ』についてはリアルタイムでストーリーに手を入れ、それをベースにゲーム内容を変えています。そういうところに力を入れているのが『エンサガ』の特徴で、そこはユーザーさまにも伝わっているかなと思います。

――ユーザーの動向を見ながら物語や内容が変わっていくというところで、大きな枠の中で考えるとそれ自体がフリーシナリオみたいですね。


市川
 “週刊エンペラーズ サガ”みたいな状況になっていて、ちょっと社内で作業量が大変すぎて問題にもなっています(笑)。シナリオを書ける人間もそんなにいないのに、すぐに次のシナリオをアップしないといけないんです。当然、河津さんも見ていただいて、設定があるものは監修もしていただいています。でも、ZEROシリーズになると河津さんにしか書けないですし、現場は毎回慌てています。
――開発会社のオルトプラスさんとは、リリース初期は意見がぶつかることも多かったと伺いましたが、いまではこなれてきた感じでしょうか?


市川
 慣れてはきましたが意見を戦わせることはいまも続いています。そのスタンスはあまり変わってないですね(笑)。でも、オルトプラスさんだからできることや、オルトプラスさんのすごいところもわかってきました。だから、喧嘩とかそういうわけではなく、お互いに「いかにユーザーさまに満足してもらえるか」という方向に向かっている感じはします。チーム全員が売り上げや人気、いろいろな角度でお客さまに満足してもらえるかを考えて全力を尽くしています。だからこそ、意見がぶつかるわけです。オルトプラスさんからは「シナリオはあまりウリにならないから、もっと萌えカード出したほうがいい」というようなことも実際に言われていた時期が一番初期にはありました。ただ、ZEROシリーズや質問コーナーを入れる意味も今はしっかり理解してくれていますし、いい関係が築けていると思います。

――なるほど。ちなみに、いま河津さんが暖めている企画とかはあったりするんですか?


河津
 ZEROは『ロマサガ3』と初代『ロマサガ』でやったので、今度は順当に『ロマサガ2』をやります。七英雄回りの話が中心になるでしょうが、それ以外にもほかのエピソードを掘り起こせたらいいなと思っています。
――楽しみです。


市川
 『エンサガ』の場合はシナリオを追加するとお客さまが明らかに増えるんですが、ほかのソーシャルゲームだとむしろジャマになることのほうが多いと思います。『エンサガ』のシナリオは、初めての人でも何となくわかるように書かれていて、原作を知らない人でもZEROでは「何かすごいことが起こっているのでは?」と思っていただけていると思っています。いまは主人公が死ぬ話が動いているんですが、Twitterなどの反応を見ていると、「じつはこのゲームってお話がすごいんじゃないか?」というようなコメントを見ることが多くなりました。シナリオで盛り上がってくれるのは、本当にうれしいですね。
――かなり重厚な物語が展開されていますが、『エンサガ』という枠を超えて、新シナリオをベースにした単独のゲーム化をしてもらえませんか?(笑)


河津
 『エンサガ』のストーリーやキャラクターのリソースが積み上がってきているので、確かにやろうと思えばできますね。


市川
 そういうことも考えたいんですが、とにかく目の前の『エンサガ』に全力投球と言いますか、チーム全体苦闘しながら作っている状況です(笑)。ただ、せっかくのシナリオはイベント期間中に1回しか見られないことがちょっと気になっていますね。
――いまから始めたプレイヤーは見られないわけですしね。


市川
 僕自身もくり返し見たいですよ。でも、それをどういう方法でやるのかは、慎重に考えています。


河津
 ソーシャルゲームは、そのときに遊んでいないと見られないものが多い。そういうものだと言ってしまえばそれまでですが、季節柄のログインイラストなども含めて、僕としてももう1回見たいものは多いですね。だから、何らかの形でそういうものを展開するようにはしたいですね。

――本編もありますし、ZEROもありますし、『サガ』シリーズだけでいろんなことができそうですね。


市川
 結局は『エンサガ』の現状も、ファンの方々の反応を見ながらできた流れなんですよ。成功もあれば失敗もありました。そういった経験を踏まえて、いまの『エンサガ』があります。お客さまの声こそが『エンサガ』の今後を決める道しるべなんだと思っています。質問コーナーに寄せられた熱い1万人の声というのは、何物にも代えがたいものだとスタッフ一同認識しています。
――単なる登録者数1万とは全然違う重み。


河津
 ソーシャルゲームでは、気軽にひまつぶしで遊ぶユーザー像を勝手に思い浮かべがちですけど、決してそういうわけではないと思うんです。本格的に遊びたい人もたくさんいることを、『エンサガ』を通じて実感できました。確かにビジネスで見ると入りやすさが重要だし、きちんとつなぎとめるように作らないとすぐに止められてしまうということはもちろんあります。でも、そうした遊びやすさと、楽しむことに真剣に向き合うことは、相反することではないんですよね。コンシューマの据置機でテレビに向かっている人も、ケータイで遊んでいる人も同じようにゲームに向き合っている。そこは強く感じましたね。
――これまでの約1年を振り返ってもらいましたが、これからの1年はどんなことをやりたいですか?


市川
 9月でちょうど1周年なので、そこで何かアップデートを考えています。レイド戦とかはありますけど、現在は基本的にひとり遊びのゲーム。『エンサガ』の中にファン同士が集まって語らえるような場所があったらいいなと思ってます。
――河津さんはいかがですか? しつこいですが、過去の『サガ』シリーズやシリーズの新作をネイティブアプリで出すなど、ファンは相当期待していると思います。


河津
 ありがとうございます。来年12月は『サガ』シリーズ25周年という節目なので、それに向けて“何か“をやる予定にはしています。それこそ、『エンサガ』をきっかけにして『サガ』シリーズ全体を盛り上げていきたいとは考えています。

エンペラーズ サガ

メーカー
スクウェア・エニックス
配信日
配信中
価格
アイテム課金制
対応機種
フィーチャーフォン、スマートフォン
備考
アクセスは下記より
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