KinKi Kidsを起用したCMでも話題の『神獄のヴァルハラゲート』を生み出したグラニに迫る!
2013-05-29 00:01 投稿
●新進気鋭のメーカー、グラニ
いま、グラニの勢いが止まらない。
2012年9月に設立されたばかりの同社だが、プラットフォーマーのグリーと戦略的提携を結ぶなど強力なパートナーシップを築き、2013年よりリリースを開始した第1弾タイトル『神獄のヴァルハラゲート』がGREEのランキングを席巻。KinKi Kidsを起用したCM展開も話題を呼び、登録者数65万人を超えたいまも躍進を続けている。いかにして、グラニはこのような成功に至ったのだろうか。
今回は、同社のキーマンである代表取締役社長兼エグゼグティブプロデューサーの谷 直史氏、取締役コーポレート本部長兼経営戦略担当の相川雄太氏のおふたりに、躍進の秘訣や今後の展望について話をうかがった。
▲谷氏(写真右)と相川氏(写真左)。
●グラニ設立のきっかけ
――世界中の起業家がうらやむような成功を現在進行形で収めているグラニですが、そもそもどのようなきっかけで会社を設立しようと考えたのでしょうか?
谷 直史氏(以下、谷) ソーシャルゲーム業界全体の風潮として、ひとつの作品にこだわらず、新しいゲームをつぎつぎと作って提供していく傾向があります。ですが、私はひとつのゲームにとことん注力して、そのゲームを好きでいてくれるファンの期待に応えながらいっしょになって大きくしていきたいと常々考えていました。そんな自分の理想を、信頼できるスタッフといっしょに作っていくにはどうしたらいいか? そう考えたとき、新しい会社を設立するという選択肢にいたりました。
――業界の風潮とは逆行する形の考えかただと思うのですが、それはいつごろから思われたのですか?
谷 私はもともと生粋のゲーマーで、とくにMMORPGをずっとプレイしてきました。MMORPGを深くプレイした経験のある人ならわかると思いますが、良質なオンラインゲームは本当に心の底からおもしろいものです。バージョンアップや仕様変更などに一喜一憂する、まさに廃人と呼ばれるくらい僕は没頭していました。ただ、それと同時に「こういう仕様や機能を追加すれば、もっとおもしろくなるのにもったいないなぁ。どうしてやらないんだろう。」といった思いも強かったです。そう考えているうちに、自分も運営する側にまわってやってみたい、自分ならもっとおもしろいゲームを創れるんじゃないかという思いが強くなっていき、ゲームのプロデューサーを目指して30歳のときに上京してきたのが、この業界に入ったきっかけなんですよ。ですから、そういった思いは業界に入ったときからずっと、胸に秘めていました。
――ちなみに、MMORPGではどんなゲームをプレイしてきたのですか?
谷 おもなところでは、『ファイナルファンタジーXI』と『信長の野望Online』ですね。とくにソーシャルゲームにも通じる、手軽さも魅力だった『信長の野望Online』は、いちばん長くプレイしてきたタイトルです。最近は『ドラゴンクエストX』もプレイしていますね。
――そうしてグラニを設立し、『神獄のヴァルハラゲート』で業界に参入することになるわけですが、GREEでリリースしたのはどういう理由があったのでしょうか?
谷 ひと言でまとめると、お互いの思惑が一致したからです。グラニはまったくのゼロからスタートした会社ですので、巨額の予算があるわけでも、誰もが注目するような知名度があるわけでもありません。プラットフォームを確定する前から先行して開発は進んでおり、いいコンテンツを作ったという自信はあったのですが、短期間で会社として飛躍するためには、いずれかのプラットフォーマーさんとがっちりと組むことが不可欠だと考えていました。そんな中、グリーさんもプラットフォームの起爆剤となるような、新たなパートナーを探していまして。もちろん、私たちはさまざまなプラットフォーマーさんと話し合いを進めていましたが、予算や今後の展開も含めた具体的なプランを提示していただいたのがグリーさんだったのです。なので、グリーさんと組んでゲームをリリースすることに決めました。
相川雄太氏(以下、相川) ほかのプラットフォーマーさんとの交渉の内容は会社全体でも共有していて、最終的にグリーさんと組むことに決めたのもメンバーの総意がありました。プロモーション面など、いい条件を提案していただいたこともありましたし、「ともに歩んでいきたい」という熱意も大きかったと思います。自分たちがベストを尽くして、気持ちよく仕事ができるパートナーとして選ばせていただきました。
――グリーさんとは、2013年3月に戦略的な業務提携を結ばれていますが、そのことによってどんな影響がありましたか?
谷 関係を公式の形にしたことによって方向性が明確になり、社内のモチベーションも格段に向上したと思います。また、ほかの企業さんにとっても、グリーさんと協力していくという弊社の立ち位置が明らかになったことで、対外的に接しやすくなったのではないでしょうか。
●『神獄のヴァルハラゲート』の魅力と今後
――そしてリリースされた『神獄のヴァルハラゲート』は、新規参入タイトルとしては異例とも言えるヒットを記録しています。開発側から見て、このゲームはどういったところに特徴があると考えていますか?
谷 『神獄のヴァルハラゲート』は、“聖戦”という名のチームバトルをメインに据えた作品です。自分が過去に手掛けてきた作品も含め、これまでチームバトルをテーマにした作品のほとんどは、前置きが長すぎて肝心のチームバトルができる段階までたどり着けなかったり、チームバトル以外にやることがなくて飽きられてしまうなど、もったいないところがありました。現状まだまだ理想には程遠いですが、その過去の反省点を活かして、成長要素などの楽しめる要素を増やしたりしています。また、具体的なシステムだけでなく、随所にちょっとした工夫を盛り込んでいるのが特徴ですね。ナビキャラなどに細かい演出をたくさん入れたりとか、“おもしろそうなことしか説明しない”とか。
――「説明しない」とまで言い切るのは大胆ですね(笑)。 確かにわかりきっていることを説明されても……というユーザーは多いと思います。
谷 まずはおもしろいと思ってもらうことが重要で、そこからどんどん楽しみかたを広げてもらえれば、と思っています。もっとも、このやりかたはこれまでになかったわけではなく、家庭用ゲームでは当たり前のように行われてきたものだったりします。
相川 これまでの枠組みに捕らわれず、ユーザーさんが最大限にゲームを楽しめるように、家庭用ゲームを始めとしたさまざまな業界のいいところを柔軟に現在進行形で取り入れていけるのが、最大の特徴と言えるかもしれません。
――今後『神獄のヴァルハラゲート』に取り入れてみたい要素はありますか?
谷 MMORPGではおなじみの、“生産”やユーザーどうしの“商売”のようなシステムを取り入れてみたいと考えています。ただ、解決しなければならない問題は多いですね。画面の大きさに制約があるので、1画面にあまりたくさんの情報を表示できなかったり、演出面での難しさがどうしても発生してしまいますから。それから、ソーシャルゲームはゲーム内通貨やアイテムを大量にプレゼントすることで“お手軽感”を演出している部分があるのですが、そのことが経済に大きな影響を与えてしまうため、バランスを取るのが難しくなってしまうんですよ。現実でも金融緩和でお金を大量に市場に流したら、円安になったり物価が上昇したりしますよね。それがゲームでも起こると考えていただければイメージしやすいかなと。
――そう考えると、とてつもなくたいへんな作業だというのがわかります(笑)。ほかにも、これから行われるイベントなどで考えているものはありますか?
谷 すでに着手を初めていますが、チーム対巨大モンスターとのリアルタイム形式のバトルです。ケータイはPCとは異なり、ユーザー側からアクションを起こさないと、敵がアクションできないという技術的な問題があるのです。非同期というやつですね。そこを、演出などを工夫することでいかに感じさせないかを考えつつ、さらにただ攻撃していくだけではなく攻略的な要素も入れて、プレイできる構想を練っています。
相川 新しいシステムについては、ただ時間をかければできる、というものではありません。いつ何を実現する、と約束することは難しいのですが、つねに何らかのアイデアを企画してその実現に向けて動いていますよ。
●話題のCMについて
――2013年5月から、KinKi Kidsを起用したCMを放送されていますが、ユーザーや業界内での反応はいかがでしたか?
谷 KinKi Kidsを起用した大きな理由のひとつとして、“メジャー感を出したかった”というものがあります。また、CMと同時にシステムの改善を含めてゲーム全体を大きくブラッシュアップしました。中長期的な効果はまだこれからですが、現在までですでにユーザー数も増えましたし、ゲームの継続率、とくに聖戦への参加率は大きく上がりました。業界内では、CMの内容にも反応はありましたが、それ以上に「どうやってCMを流したの?」と言われることが多かったですね。CMを打つにはけっこうな費用がかかるのはもちろん、広告代理店を始め多くの関係者との交渉など、さまざまなステップが必要ですから。
――CMは当初から計画していたのですか?
相川 じつは『神獄のヴァルハラゲート』がヒットしたらCMを打つことをグリーさんと話していました。見事順調な立ち上がりを見せ、ユーザーから多くの支持を集めることができたのでCMが実現できました。
谷 私たちがグリーさんとパートナーになることを決めたのも、「この時期にこのくらい売れていたら、こういうことをしましょう」と、あらかじめ1年くらいのスパンで経営企画のシミュレーションをいっしょに行い、お互いにとっていい結果を得られるような具体的な協業の予定を立てていました。
――なるほど。そうすると、すでに今後第2、第3のプロモーションの計画も立てられたりしているのでしょうか?
谷 それは今後のお楽しみということにしておいていただければ(笑)。個人的には、『神獄のヴァルハラゲート』のガチャのナビゲーションキャラクターが、見た目も性格もすごく個性的で気に入っていているので、UFOキャッチャーの商品にしたり、会社のマスコット的な存在として売り出していけたら……と考えています。ゆくゆくは某RPGの“スライム”のようにできたら最高ですね!
相川 あくまで個人的な願望ということでお願いします(笑)。と言いつつも、本気の部分もあって、できることなら狙っていきたいですね。
●グラニのポリシーと今後の展望
――『神獄のヴァルハラゲート』の大ヒットで、会社としても規模を拡張されているかと思うのですが、現在社員数はどのくらいでしょうか?
相川 現在(2013年5月中旬時点)は33名です。設立当初から比べると約3倍になりました。
――人材が増えたことで、さらなる事業に手を伸ばしたりも、考えたりされていますか?
谷 勝算があればチャレンジしてみたいと思いますが、まずは『神獄のヴァルハラゲート』のプレイヤー、それからグラニのファンを増やしていきたいですね。「グラニのゲームだからプレイしてみよう」と思ってもらえるくらい、グラニを安心してもらえるブランドにすることが目標です。
――新しいことに挑戦するときも、やはりグリーさんとの協業を決めたときのように具体的な計画を練ってから、と言うことなのでしょうか?
谷 私は、現実的な数字を目標として立て、それを実現するための具体的な方法論を構築してから行動を起こす、というポリシーを持っています。シミュレーションできないことはやらないんですよ。
相川 もちろん、そのシミュレーションの結果には絶対の自信を持っていて、だからこそその実現のために全員が全力を尽くし、結果として成功してきたわけです。
谷 もともと経営スタイルとして、ベンチャー企業で成功を収めた人によくある、とにかく高い目標を立てて、その実現に向けて努力することで数字を上げていく……というやりかたはあまり好きではないんですよね。カードゲームでたとえるなら、デッキ構成からいろいろシミュレーションをして、それをきっちり実現して勝利する。みたいなことが好きなんです(笑)。
――第2弾タイトルのリリースについては、どのように考えられていますか?
谷 会社としても、『神獄のヴァルハラゲート』を含めて2本まではやりたいと考えています。1本だけだとどうしても対象となるユーザーさんも偏ってしまいますし、できるだけ多くの人にグラニを知ってもらいたいですから。それから、“一発屋”だと思われたくない、という思いもあります(笑)。
相川 口だけではなくしっかりと実行できるよう、準備はしっかり整えていきたいと思っています。
――最後に、会社として、そして個人としての今後の目標を教えてください。
谷 さきほども言いましたが、会社としては「グラニのゲームだからプレイしてみたい」というユーザーさんを増やしたいと考えています。かつ、そういったユーザーさんを裏切らないようなゲームを作っていきたいですね。
相川 変化の激しい業界ですし、今後も何が起こるかわからない部分もありますが、それらを乗り切って長く続く企業にしたいなと。すぐに会社を売って経営から遠ざかるということはせずに、自分たちが主体となって長く続けていきたいと考えています。
谷 個人としては、とにかく気持ちよく日々を過ごしたいです。本当にゲームが大好きで、絶対に裏切らない仲間たちとともに「こういうゲームを作ったら楽しいよね」と毎日意見を出し合いながら、楽しくゲームを作っていくのが理想です。『神獄のヴァルハラゲート』はそうやって作った作品ですが、今後も同じような気持ちで作品を作りたいと思っています。
神獄のヴァルハラゲート
- メーカー
- グラニ
- 価格
- アイテム課金制
- 対応機種
- スマートフォン
- コピーライト
- (C) 2013 Grani, Inc. All rights reserved.
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