『デーモントライヴ』におけるUnityとCRIの技術力が生み出した極上のサウンド演出
2013-04-16 22:36 投稿
●CRI・ミドルウェアのテクノロジーが『デーモトライヴ』に果たした大きな役割とは?
2013年4月15日~16日、東京都ベルサール汐留にて、ゲームエンジン“Unity”の技術カンファレンス“Unite Japan 2013”が開催された。ここでは、“『デーモントライヴ』にみるサウンドとムービーの活躍 ~ADX2とSofdec2で実現する圧縮&リッチ演出~”と題されたセッションの模様をお届けする。
▲『デーモントライヴ』で使われたCRI・ミドルウェア“ADX2 for Unity”と“Sofdef2 for Unity”。 |
▲CRI・ミドルウェアの櫻井敦史氏。 |
本セッションでは、まずCRI・ミドルウェア開発部の櫻井敦史氏が同社の概要を紹介。CRI・ミドルウェアはセガサターン向けオーディオミドルウェア“ADX”開発以来、映像・音声を専門に手がけてきた開発会社で、現在は大半の現行ゲーム機やスマートフォン向けに映像・音声ミドルウェアを提供。これまでに2500タイトル以上の採用実績を誇るという。『デーモントライヴ』で使われた“ADX2 for Unity”と“Sofdef2 for Unity”は、Windows/Mac/iOS/Androidに対応。ムービー演出を容易にし、テクスチャムービーに加えてアルファ値つきムービーを実現。サウンドは独自高圧縮コーデックでCPU負荷を低減しているという。
▲セガネットワークスの秋葉晴樹氏。 |
引き続き、『デーモントライヴ』のプログラムリーダーを務めたセガネットワークスの秋葉晴樹氏が、同作の概要を説明。リアルタイムストラテジーにジャンル分けされる『デーモントライヴ』は、海外で流行中のDOTA(Defense of the Ancients)型で、3G回線を使い最大3対3の対人戦を実現。6人のエージェント、30人のデーモン、無数のザコキャラが入り乱れて激しいバトルをくり広げるのが魅力だ。
直前に手がけたXbox 360用ホラーゲーム『Rise of Nightmare』でサウンド演出に気を遣ったという秋葉氏。『Rise of Nightmare』に続いて『デーモントライヴ』でもともに仕事をすることになったディレクターの上田氏と、「今回もサウンド面に注力したい」という話になり作業を進めていったが、Unity標準のサウンド機能では厳しい問題点が見えてきたという。
ひとつめのネックは、Unity標準のADPCM圧縮(サウンド)とMP3(BGM)の容量。ADPCMは圧縮率が悪く、圧縮による音質劣化が著しいという。『デーモントライヴ』では、海外市場で多数のユーザーが存在するiPod touch 第4世代を動作環境の最低ラインと設定したため、メモリによる制限はさらに厳しいものとなった。ふたつめは、アセットバンドル(※)によるシナリオの順次配信。これはプロジェクト開始当初から決定済みだったが、ここで「アセットバンドルではMP3のストリーミング再生不可」ということが判明したというのだ。
※アセットバンドル:特定のアセット群をひとつのファイルに固めて、アプリに含めない外部ファイルとして出力するというもの。
3つめがCPU負荷。『デーモントライヴ』では、最大6人の通信対戦やグラフィック演出などを相当がんばっていたため、CPU処理はすでに厳しい状態。そのため、サウンドに割ける負荷はほとんどなかったというが、最終的なパフォーマンスは後述する“ADX2”により「ADPCM標準とほぼ変わらない」レベルを確保。映像については、これも上田氏より「iPhoneで(ユーザーの)度肝を抜くようなムービーを使いたい」という話があり、後述の“Sofdec2”を採用。NGUIテクスチャ内へのムービー貼り込み、ムービー内での半透明使用を実現し、派手な映像演出を実現したという。
▲スタジオカリーブの杉山圭一氏。 |
『デーモントライヴ』のサウンドを担当したのは、スタジオカリーブの杉山圭一氏。プロジェクトへの参加はプロトタイプ以降で、当初のスペックはBGM10曲、SEが250種類以上というコンシューマ並のクオリティー。最終的にはBGMが18曲、SEは170種類と減ったが、声優さんのボイスが約500種類収録されることになった。全体では、非圧縮の状態で約400MBになり「これは埒があかない」ということで、“ADX2 for Unity”を使うことになったという。
セッションでは、実際のツール画面を用いて“ADX2 for Unity”の使用例を解説。BGM、SEとも、元の音質をキープしつつ、最終的な容量を16MB以下に収めることに成功。iPhoneの仕様だとできなかった、途中のループポイント指定も可能になり、「コンシューマタイトルを作るときのツールと同じ環境で作ることができました」という。さらに杉山氏は、「内情を話してしまうと」と前置きした上で、“ADX2 for Unity”を使おうと決まったのは開発終了の1~2ヵ月前だということを告白。「これは、秋葉さんのご協力で組み込むことができました」(杉山氏)とのことだ。iPhoneのゲームにありがちな音を出すタイミングのズレから生じる不快感も、“ADX2 for Unity”のスムーズな調整で解消できたという。
再び登壇した櫻井氏は、具遺体的な数値を用いてセッションを総括。バトルパートでは、最大36人程度のキャラクターが、攻撃、ダメージ、キャラボイスなどを発生。Unity標準では波形ファイルを個々に登録してコントロールするのが通例だが、“ADX2 for Unity”では、登録された波形ファイルそれぞれの設定をオーサリングツール上で行い、最後にバイナリファイルとしてパックしたものをUnityに読み込む。BGMのループやボイスのランダム再生といった設定もプログラム側ではなくデータ側で行なえるため、非常に利便性が高い。そのため、バトルパートの同時発音数(8音)も、プログラム側ではなく“ADX2 for Unity”側が優先度設定に基づき制御しているという。
“Sofdec2 for Unity”を用いた動画は、デーモンの召喚・合成、バトルパート移行、強力スキル発動といった各演出で用いられているという。なかでも「アクションゲームのバトルパートにアルファムービーを重ねたい」という要望は、CRI・ミドルウェアに話が持ち込まれた当初からの懸案だった。
アルファムービーは、アルファ合成と加算合成を一本の映像に織り込むというもので、デコード負荷は通常のアルファムービーと同等。冒頭で触れたとおりiPod touch 第4世代の動作を想定しているため、育成パートで使われる召喚ムービーは512×512、30fps、ビットレート4~6Mbpsの画質優先。バトルパートで使われるスキル発動ムービーは256×256、30fps、ビットレート2~3.5MbpsのメモリおよびCPU負荷優先となっている。
ちなみに、会場では「レアすぎてCRI・ミドルウェアのメンバーは誰も見たことがない」という一部デーモン専用の強力なスキル演出のムービーが上映された。櫻井氏によれば「うちではキャプチャーできなかったので、セガさんにお願いして特別に映像を準備してもらった」という。
▲アルファムービーのサンプル。CRI・ミドルウェアのメンバーは誰も見たことがないという激レアものだ。 |
セッションの最後には、2月にリリースされたばかりの個人及びインディーズ向けのサウンドミドルウェア“ADX2 LE”が紹介された。セット内容はサウンドオーサリングツールとUnityPro用プラグインで、個人とサークル(非法人)のほか、制限つきながら商用利用も可能とのこと。興味がある方は、この機会に試してみてはいかがだろうか。
▲無償で利用できるサウンドミドルウェア“ADX2 LE”。登録不要でダウンロードできる。 |
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※Unite Japan公式サイトはこちら
※CRI・ミドルウェアの公式サイトはこちら
※セガネットワークスの公式サイトはこちら
※スタジオカリーブの公式サイトではこちら
※『デーモントライヴ』公式サイトはこちら
デーモントライヴ
- メーカー
- セガネットワークス
- 配信日
- 配信中
- 価格
- 無料(アプリ内課金あり)
- 対応機種
- iPhone 4、iPhone 4S、iPhone 5、iPod touch (第4世代)、iPod touch (第5世代)、iPad 2 Wi-Fi、iPad 2 Wi-Fi + 3G、iPad (3rd generation)、iPad Wi-Fi + 4G、iPad (4th generation)、iPad Wi-Fi + Cellular (4th generation)、iPad mini、およびiPad mini Wi-Fi + Cellular に対応。 iOS 5.0 以降が必要 iPhone 5 用に最適化済み
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