世界のゲームシーンをグリーがリードする!GREEイノベーション2012/田中良和社長インタビュー

2012-02-07 15:44 投稿

●家庭用とソーシャルの融合で新たな次元へ

グリーの勢いが止まらない。同社が運営しているソーシャル・ネットワーキング・サービス”GREE”は、約500社以上の会社が1250タイトル以上のソーシャルゲームを展開し、同プラットフォームの会員数はなんと2900万ユーザーを超えている。2011年は東京ゲームショウ初出展に加えて、TOKIOや福山雅治、EXILEのCM起用など、ゲーム業界のみならず、エンターテインメント業界全体を席巻した印象を与えた。そして2012年、国内で絶大な支持を集めるGREEが世界に打って出るという。今回、グリーの田中良和社長にその成長戦略について直撃した。聞き手は週刊ファミ通発行人・編集人の浜村弘一(週刊ファミ通2月9日号【2012年1月26日発売】で掲載した内容を、2012年2月2日の決算発表を受けて会員数などの数値を変更しています)。

▲グリー株式会社 代表取締役社長 "田中良和"氏

 

●グリー飛躍の動力源とは

浜村弘一(以下、浜村) 2011年のグリーは大飛躍の年だったと思います。振り返っていかがですか?

田中良和社長(以下、田中) 成長した背景にはいくつかの象徴的なイベントがありました。ひとつ目は東京ゲームショウへの出展です。初めての出展ということもあり、「本当に大丈夫なのか?」という不安はありました。ユーザーさんに対して至らない点はたくさんあったと思いますが、結果的に手応えを得ることができました。

浜村 家庭用ゲームが中心のイベントですので、アウェーな感覚で受け取られるかなと思っていたら、まったくそんな感じはありませんでしたよね。実際、グリーさんが出展した効果もあって、東京ゲームショウの入場者数は過去最高を記録したわけですし、何よりメディアの注目度が高かった。

田中 そう感じてもらえただけでも出展してよかったなと思っています。ふたつ目の象徴的なことは、CMですね。2011年後半からTOKIOさんや福山雅治さん、EXILEさんなどをゲームのプロモーションに起用してきました。ネームバリューがある方たちを起用することで、クルマ産業などと同じようなメジャー感を皆さんに感じてもらうことができたのではないかなと思っています。

浜村 テレビCMを見ていても勢いを感じましたよ。では、具体的に飛躍の要因をどのように分析されていますか?

田中 日本の登録ユーザー数は一昨年の約1000万から2900万へと大幅に増えました(2011年12月末時点)。しかし、もっとも大きかったことは、より使ってもらえるサービスになったということだと思います。会社的に言えば、ひとりあたりのARPU(売上)が増えたことになりますが、ゲーム的に言えば、ひとりのユーザーによりたくさん、深く遊んでもらえるようになった1年になったのかなと。

浜村 ほほう。一昨年までゲームを1本しか遊んでいなかった人が、あれもこれもと複数遊ぶようになったわけですね。

田中 それもありますし、1分遊んでいた人が10分遊ぶようになり、10分遊んでいた人が30分遊ぶようになったことが挙げられます。ユーザー数も増えつつ、ひとりあたりの遊ぶ時間も増えた。その相乗効果を生み出せたのが、成長につながったと思います。

浜村 プラットフォームとしての裾野の広がりを感じる事象ですね。

田中 自社タイトルが伸びていることで、ソーシャルゲームに伸びしろがまだあるということを開発パートナーに示すことができたのかなと。去年、「ソーシャルゲームの成長は頭打ちじゃないのか?」と言われることもありましたが……。

浜村 ぜんぜん違いましたよね。

田中 それどころか、いまも伸び続けています。昨年は、そういうことを開発パートナーに実績として示すことができたのが非常に大きかったなと思いますね。

 

●グリーのスマートフォン戦略

浜村 今後スマートフォンに移行するにあたって、ソーシャルゲームのグラフィックなどもよくなるんでしょうか?

田中 そうなると思います。最近では、ひとりあたりのARPUがフィーチャーフォンとスマートフォンでほぼ同じになってきましたし。

浜村 もうそういうレベルに?

田中 はい。ひとりあたりのARPUベースでは、端末に依存しなくなってきました。つまり、明日全員がスマートフォンに移行したとしても、売上的にはまったく問題ないレベルまで来たということになります。

浜村 一部では、スマートフォンではソーシャルゲームはうまくいかないのでは、という話もありましたが、まったく違ったと。

田中 違いましたね。そういう意味で、フィーチャーフォンではできなかったことがスマートフォンで実現できる土壌ができたと言えるかなと。これからが楽しみですね。

浜村 開発能力の高い大手ゲームメーカーはチャレンジしがいがある分野ですよね。グリーさん自体もスマートフォン向けに?

田中 タイトルやジャンルによっては急激にスマートフォンに移行するものもあります。たとえば、スマートフォンで作ってからフィーチャーフォンで出したり、いっそのことスマートフォン専用タイトルを作ったり。

浜村 おお、専用タイトルも?

田中 出てきますよ。

浜村 ワールドワイドに考えると、ますます市場規模が大きくなりそうですね。一方で、現在日本のソーシャルゲームの主流は、”カードゲーム”と呼ばれるものが多い。同じようなジャンルが増えている印象がありますが、それに対してはどう思いますか?

田中 カードゲームはまだ発展の途上にあるジャンルで、これから発展するだろうなと。僕が子どものころも『スーパーマリオブラザーズ』が流行れば横スクロールアクションがいっぱい出て、『ストリートファイターⅡ』が流行れば格闘ゲームがたくさん出て……。

浜村 確かにそういう流れがありましたね。

田中 そういう流れが業界的に悪かったかというと、決してそんなことはありませんでした。同じジャンルでもいろいろなブランドが生まれて、ゲームファンを楽しませてくれました。家庭用ゲームも、いろいろなジャンルのブームの波があったからこそ成長してきたと思うので、ソーシャルゲームの分野においてもそれは同じことだと思います。

浜村 新しいタイトルやジャンルはひとつの文法みたいなものですからね。これからソーシャルゲームもいろいろな文法が加わって、より幅が広がっていきそうです。

田中 新しいゲームジャンルを生み出すことも、グリーの役目だとも思っています。新しいジャンルで裾野を広げて開発パートナーが参入しやすい土壌を作ることも、とても大きな仕事だと認識しています。

浜村 期待しています。では、GREEに参入している開発パートナーにはどのようなタイトルを期待していますか?

田中 いくつかに分かれると思うんですが、家庭用ゲームを作ってきた方たちにはより家庭用ゲームらしいものを、インターネットの分野から参入した方たちにはソーシャルな意味で革新的なものを期待したいです。そして、お互いから学びながら新しい次元のものを生み出していただきたいと思います。

浜村 ともに違う畑だからこそできるものもあるし、ほかの畑から学ぶこともあると。

田中 たとえば、大規模に、同時にたくさんの人が接続して遊ぶというゲームだけではなく、いっそのこと5人でしか遊べないサービス、という発想の逆転から生まれることもあると思います。インターネットらしいアイデア、家庭用ゲームらしいアイデア、それぞれが融合すると、僕らがいままでに考えつかなかったような、新しい次元のコンテンツが生まれるのではないでしょうか。

 

●グリーの真の意味での世界戦略

浜村 続いて、世界展開についてお聞きしたいと思います。昨年グローバルプラットフォーム戦略について発表されました。改めて、どういった戦略なのか教えてください。

田中 いままでのGREEは日本からしかアクセスできませんでしたが、全世界からアクセスできるようにした、というのが戦略の骨子になります。GREEと、昨年我々が買収したアメリカのソーシャルゲームプラットフォーム”OpenFeint”を統一し、GREEにゲームを出せば世界中の人に遊んでもらえる環境を作ろうと。このプラットフォームは、日本のGREEで2900万ユーザー、OpenFeintを合わせると約1億9000万ユーザーが使っている点がいちばんのポイントだと思っています。

浜村 すごい規模ですよね。

田中 みんなが使っているからおもしろいのがソーシャルゲーム。人がたくさんいることに意味があります。OpenFeintはまだ統一されていない部分もありますが、日本並のクオリティーに引き上げて、全世界の人に使ってもらえるものを作りたいですね。

浜村 海外でいちからプラットフォームを立ち上げるのではなく、OpenFeintという既存のプラットフォームを買収した。買収したときに「人を集めるのがいちばんたいへんだから」とコメントされていて、じつに見事な戦略だなと感心させられました。

田中 いろいろな会社がプラットフォームビジネスをやりたがっていると思ってはいるのですが、うまくいかない。言うのは簡単だけど、実現するのはどれだけ難しいビジネスなのかということだと思います。FacebookやTwitterなども、プログラム的に同じものを作ろうと思ったら、お金を使えば作れると思います。ただ、同じ人数を集めようと思ったらそれこそ何兆円あっても足りないのではないかなと。それは、本当の価値はプログラムなどではなくて、多くの人が使っていることだと指し示していると思います。

浜村 ソーシャルゲームの本質を捉えた戦略ですよね。ただ、ゲーム業界では、一部を除いて日本と海外では好まれるコンテンツが違うという問題があります。それについてはどう考えられていますか?

田中 僕は比較的楽観的に考えています。もともとゲーム文化は日本から始まって、昔は欧米でも日本のゲームが受け入れられていた時代がありました。それにより各国でゲーム文化が発達し、よりローカルなものが受け入れられるようになってきたのかなと。

浜村 確かに。

田中 それに近い流れで、現在ソーシャルゲームは日本がいちばん発展している状況だと思います。この有利な時代に、しっかりとブランドを確立してユーザーを集めなければいけない。それも半年~1年のあいだで。それができないと、日本のものを移し換えただけのサービスでは通用しなくなりますから。楽観的とは言え、そうなる前に、改良を重ねなければいけないという危機感も感じています。簡単なことではないことはわかっていますが、この難題にチャレンジしたい。

浜村 ソーシャルゲームは出したら終わりではなく、出してからユーザーの好みに合わせて作り変えられる。これを世界各国でやれるのは大きいですよね。

田中 僕らは、日本ではゲームの中身を調整し続けることへの高いノウハウを持っています。それと同様に、世界各国でも調整をし続けなくてはならないと思っています。今後は日本と欧米ふたつの市場で作り変えればいい、というわけではなく、フランスとドイツの違いすらも考えてチューニングできるのかが問われる時代になるはずなので、いまのところ我々に一日の長があるかなと思います。

浜村 他に先んじるというのは、この時代ではどの分野でも重要ですものね。

田中 あとは、家庭用ゲーム機を買えなかったエリアへの進出も重要です。新興国への進出はビジネス的に、というよりも社会的なインパクトが大きいかなと。

浜村 欧米だけではない世界戦略。可能性は無限に広がりますね。

田中 ソーシャルゲームの革命は、ソーシャル化だけではなく、ダウンロードで販路が拡大していくという点にもあると思います。いつでも買えて、エリアを問わずゲームが始められて、10円でも遊べて……そういった販売手法という観点からも大きな革命かなと。家庭用ゲームを買ったことがない国の方たちにとっては、我々が思っている以上に革命的な販売手法と感じてもらえると思います。

浜村 そういう販売手法と大きなコミュニティーは、グリーさんならではの強みですね。

田中 最近感じるのは、ユーザーとともにソーシャルグラフ(人間関係の結びつき)があるのが大きな強みだということです。家庭用ゲームが完全にネットワークに対応していても、これだけのソーシャルグラフが張り巡らされるかというと、難しいと思います。なぜなら、朝から晩まで家庭用ゲーム機の前にはいられないという問題があるからです。それだと、どうしても友だちどうしの反応が遅くなってしまいます。ケータイやスマートフォンのようなモバイル端末だとその問題がないので、ソーシャルグラフがより張り巡らされたものになります。それこそがゲームの価値を上げるものであり、プラットフォームの重要な価値になるのだと思います。

浜村 お話を聞いていて、GREEが世界で成功する初めてのインターネットサービスになるという現実味がより増しました。

田中 成功して実例を示さなければ、なかなか信じてもらえませんからね(笑)。今年は、日本でもグローバルサービスが作れることを証明したい。なぜなら、ソーシャルゲームという産業は、日本という国にとってもいいサービスだなと思っているからなんです。

浜村 ほほう。と言いますと?

田中 こんなに日本に向いているビジネスはないのではないかと思っています。日本は島国ですので、どんな産業も石油や鉄鉱石を輸入したり、クルマを輸出するにしても輸送費がかかってしまいます。それが、ソーシャルゲームだと原材料が必要ないですし、輸出するにしても輸送費がかからない。

浜村 確かにおっしゃる通りですね。

田中 日本に向いている産業構造だからこそ、日本発のグリーがこの分野に力を入れて、グローバルで使ってもらえるものを作って日本で収益を上げ、より日本で雇用を生みながら、日本が世界にどんどんチャレンジできる1年にしたいなと思っています。

浜村 すばらしいですね。欧米だけでなく、アジア地域なども視野に入れると未曾有のエンターテインメント産業ができるかもしれない。そこに日本発の会社が先頭を切ってチャレンジする。じつに夢があって頼もしい。

田中 こういうチャンスは何度もあるわけではないので、グリーの社長ということは置いておいても、このチャンスを逃してはいけないのではないかなと純粋に思っています。

浜村 同じ業界の中に、そういう気概のある方がいるというのはじつにうれしいですね。

田中 いまのソーシャルゲーム産業と同じ規模の新しいビジネスをいまから生み出そうと思ったら、並大抵のことではないと思っています。ソーシャルゲーム業界は、任天堂さんなどがゲーム機を生み出してくれて、それを遊んでいた子どもたちがいて、濃密なゲーム体験をしているからこそ花咲いた産業なんだと。脈々と受け継がれてきた産業だからこそ、急成長を遂げることができたわけで、この受け継がれてきたリレーのバトンをつぎの世代に受け継ぐのも役目だと思っています。

浜村 頼もしい。最後にぜひ読者に向けてメッセージをお願いします。

田中 僕はゲームに育てられましたし、ゲームが大好きです。大好きなものがすばらしいものであるということを日本でもグローバルでもたくさんの人に理解してもらいたい。だからこそ、まだ「ソーシャルゲームなんて」と思っている人もぜひ遊んでもらいたいですね。

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