“家電の王様”はテレビからスマートフォンへ モバイル動画コンテンツのベテランがこれからのスマートフォンと動画を語る
2011-10-28 18:10 投稿
●通信速度は10年で4000倍に
2011年10月28日に秋葉原UDXで開催中の“東京国際アニメフェア2011秋”にてシンポジウム“〜スマートフォンが変える動画の世界〜”が行われた。ビデオマーケット代表取締役社長として長くモバイル動画コンテンツの世界に身を置いてきた高橋利樹氏が動画配信の現状と今後を語った。
高橋氏率いるビデオマーケットは、日本最大のモバイルVOD(ビデオ オン デマンド)サービスである“ビデオマーケット”を展開している。本サービスの最大の特徴が、同社独自の“プレミアムエンコード”だと高橋氏は言う。「携帯電話向け動画配信サービスは2007年から展開しましたが、もともと携帯電話の電波は不安定なものです。そういった状況の中でも、他社よりも高品質な映像と音声を提供できるのがこのプレミアムエンコードです。同じビットレートでも格段にキレイな映像を楽しむことができるのがアドバンテージです」(高橋)。現在“ビデオマーケット”マーケットで視聴できるラインアップは、スマートフォンで25000本、フィーチャーフォンでは40000本と非常に多数の作品数を誇っている。しかも、アニメや映画など以外に民放各社とも提携を結び、テレビドラマなども用意しているというから驚きだ。
そんな高橋氏が考えるスマートフォンとはなにを指すのか。「いまのところはiPhoneとAndroidの2大勢力と考えていいでしょう。Windows Phoneはまだ絶対数が足りず、マーケットとして計算できません」(高橋)。両社を比較する高橋氏からさまざまなデータが紹介されたが、とくに目を引いたのが両社のOSアップデート遍歴。一定のペースでアップデートを続けるiOSに対して、Android OSは「2009年から矢継ぎ早にアップデートしています。この成長力は目を見張るものがあります」と語る。▲余談だが、Android OSにはすべてコードネームがついており、これはこれまでお菓子の名前で統一されており、その頭文字はアルファベット順になっているとのこと。「つまりつぎのコードネームは“J”で始まるなんらかのお菓子の名前だと言われています」(高橋)。
スマートフォンの産業規模についても高橋氏は触れた。比較したのはなぜかテレビ。まったく違うものと思われる両者だが、現在統計上では世帯保有数がほぼ同じ数なのだ。曰く「どちらもひとり1台の時代なんです」(高橋)。さらに話を進める高橋氏。「家庭での保有数は同じでも、両者は購入サイクルが違います。テレビの買い替えサイクルが10年弱なのに対して、ケータイの買い替えは2〜3年に1回です。さらに、テレビの単価はどんどん下がって、ケータイに近づいてきています。これを10年規模で考えると、産業規模はスマートフォンが1.9倍も上回ります」(高橋)。いまや“家電の王様”はテレビからスマートフォンに移行したのだと高橋氏は言う。
実際に液晶テレビで“亀山ブランド”を標榜していたシャープも、いまは亀山工場でテレビ用の液晶パネルは生産しておらず、中・小型の液晶のみを作っているとのことだ。このように各メーカーがテレビからスマートフォンに注力していくことで、より進歩のスピードも早まるのではないかと高橋氏は語った。
話はいよいよ本題“スマートフォンと動画”について差し掛かる。現在のパーソナルユースはモバイルへ移行していると高橋氏は語る。スライドではグーグルのエリック・シュミット会長の言葉「グーグルの今年の有線課題は、一にも二にもモバイル分野」という言葉や、“ミクシーのモバイルのトラフィックは全体の86%を占める”を言った言葉を引用する。なぜそうなるのか、その理由を高橋氏は3つにまとめた。
ひとつは端末の性能向上。「NTTドコモの初の本格的なスマートフォン“エクスペリア”の発売から約1年超で発売された“ギャラクシーS II”はスペック上で約7倍の性能向上を果たしています」(高橋)。
ふたつめは通信環境の向上。「1999年の9.6kbpsという数値から、2011年にはNTTドコモの“クロッシィ”では37.5Mbpsまで速度が上がっています。これは単純な数字言うとなんと4000倍です。しかも速度はこのさき4G回線がスタートすればまだまだ上がります」(高橋)。そして3つめは大画面化と高精細化。「1.4インチから始まった携帯電話の画面はいまや4インチ超。さらに近年ではタブレット端末も登場して大画面化が進んでいます。またそれらの端末の多くが720PのHD画質での画素数を搭載しています」(高橋)。
これらの理由から、今後モバイル端末での動画視聴数はさらに増えると高橋氏は予測している。高橋氏はこのあともさまざまなデータを公開したが、とくに意外と思えたのが視聴時間帯のデータ。「このデータでわかることは、じつは動画は“すき間時間”にそれほど見られていないということです。みんな布団の中で見るんですよ」という。夜にリビングなどでテレビを観て、自室に戻ってからはケータイで動画、というのが最近のライフスタイルなのだそう。
最後に高橋氏は「スマートフォンの動画視聴をこれからどう考えていけばいいのか。ユーザーというのは、たとえば時間的な制約であったり、場所の制約であったり、そういういろんなストレスを嫌うものなんです。テレビの便利さや優位性はこれからもあり続けますが、テレビだけではフォローしきれない部分をスマートフォンが補完していけばいいなと思っています」と締めくくった。
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