【Androidおすすめアプリ】閉鎖空間で起きる惨劇の恐怖を描いたサウンドノベル『LOOP THE LOOP飽食の館』
2011-08-31 23:26 投稿
●いずことも知れぬ不思議な館に迷い込んだ12人は……
大まかに分類するなら、本作は“館物”あるいは“クローズドサークル物”と呼ばれるタイプのストーリーを描いたアドベンチャーゲームだ。家庭用ゲームに詳しい人なら、『弟切草』や『かまいたちの夜』などに代表されるサウンドノベルを想起してもらえば、おおよそ近いだろう。
主人公の荒川零弥(あらかわ・れみ)は、ごく普通の高校2年生。のんべんだらりと毎日を過ごし、母親に「もっと勉強しなさい」と叱られる、退屈な日常をくり返していたのだが、とあるキッカケから謎の館に迷い込む。
そこには、すでに“先客”が11人いて、零弥を12人目の仲間として暖かく迎えてくれる。
望むだけでたいていの“物”が手に入るこの館で、零弥はのびのびと日々を過ごし、「こんな毎日も悪くない」と思い始めるのだが、突然、思いがけない悲劇が発生し……といった内容だ。
前半の平和な日常が一転し、後半は胃が痛くなるような緊張感に満ちたサスペンス系のノリになるので、そういうタイプの物語が好きな人にオススメだ。
▲館に来て初めて出会う男、冴木麗。大企業の若き社長であり、一週間前に失踪したとニュースで話題になっていた彼が、なぜここに!? |
▲騒々しくも明るく楽しい日々。これからもこんな毎日が続くと、主人公は信じていたのだが……。 |
●ミステリーと言うより人の心の脆さを描いたサスペンスホラー
冒頭でサウンドノベルの草分け的タイトル2作を例に挙げたが、本作はまさにそのふたつを足して2で割ったようなテイストの作品と言ってよいだろう。ストーリー類型としてしては、閉鎖空間で起こる殺人事件というミステリーの体裁をとりつつ、舞台設定の根幹には“現実にあるとは思えない不可思議な館”という『弟切草』に通じるものがある。
ただし、それらと決定的に違うのは、物語の分岐が少ないところ。選択肢が登場する場面自体が少ないのに加えて、後半にいくつかあるデッドエンドへの分岐以外は大きくストーリーが変わることはなく、ひとつの結末へと収束していく。このあたりは、近年ヒットした『ひぐらしのなく頃に』あたりにむしろ近いかもしれない。
▲明るく平穏な毎日が一転、恐怖と疑念に満ちた時間に……という落差も、『ひぐらし』などと共通する、わかりやすい手法だろう。 |
ストーリーそのものは、基本的に主人公の少年の視点で進み、地の文もすべて彼のモノローグなので、比較的読みやすい反面、勘のいい(あるいは先読みする)読者にとっては、主人公の拙い言動や心境にやや違和感を覚えるかもしれない(逆に考えれば、ごく当たり前の少年が、殺人事件に遭遇して平常心を保てるほうが異常とも言えるのだが)。
実際、詳細は伏せるが、この話の基本となる“トリック”自体はそれほど突飛なものではない。『ホームズ』、『ルパン』などの古典以外は、いくつか有名どころを流し読みした程度の知識の私でも、ゲームを進めつつそのトリック自体については思い至ったくらいだ(犯人の動機や方法については、さすがに外れたが)。
そもそも、“望むものがたいてい手に入る”という設定からして、“ノックスの十戒”をはじめとするミステリーの手法にケンカを売っているのだ。
では、本作の見どころは何なのかと言うと、個人的には“極限状況における人間心理”ではないかと思う。小さな衝突はありながらも、うまくいっていた──そのように見えた12人の“家族”。しかし、ひとつの事件からその輪が崩壊し、疑心暗鬼に陥っていく様子。暗躍する殺人者。各人が内に秘めた思惑。そして、それでも消えない“絆”……そういったものを、ごく普通の少年の視点から、作者は描きたかったのではないだろうか?
その観点から見ると、本作は非常に巧くその任を全うしていると言えるだろう。
▲プレイ中、何度「○○さん、アカン、それ、死亡フラグや!」と叫んだことか。そして、その予想は裏切られなかった……。 |
■基本操作
本作は、画面全体にグラフィックが表示され、下3分の1程度のスペースにメッセージが表示されるとスタイルをとっている。画面をタップすることでメッセージを読み進めることができるが、オートモードや一度読んだ場面のスキップ機能なども備わっている。
プレイ中は、いつでもメニューボタンでメニューを呼び出すことができ、セーブ&ロードや各種設定などはここで行うことができる。セーブデータは40個まで作ることができるので、すべての選択肢でセーブすることも可能だ。また、バックログ(読み返し)も、メニュー画面から行うことができる。
▲前半から中盤にかけての選択肢は、ストーリーを左右するというより、登場人物の側面を掘り下げるだめのもの。できればセーブして両方の選択を見ておこう。 |
▲一度エンディングを迎えると、好きな章から始めることができるようになる。 |
【LOOP THE LOOP飽食の館】
メーカー:sweet ampoule
配信日:配信中
価格:無料
対応機種:Android 2.2 以上
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