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【ヒットの秘訣完全版】いいものをちゃんと買ってもらえる市場を作りたかった『ケイオスリングスオメガ』(『ケイオスリングス』)

2011-01-02 12:00 投稿

●iPhone業界の名物男登場!

発売中の書籍『ファミ通App iPhone&Android NO.001』の“2011年ベストゲーム109タイトル”のなかに、各ジャンルのヒットアプリの秘密を探る“ヒットの秘訣”というコーナーがある。じつはこれ、インタビュー内容のごく一部なのだ。掲載した部分以外にもいいところが多すぎて、これが日の目を見ないのはあまりにももったいない! というわけで、年末年始の特別企画として、担当編集がとくに印象に残ったインタビューをピックアップして、カット部分を含めた完全版を掲載しちゃいます。

――そもそもなぜオリジナルで勝負しようと思ったのでしょうか?

安藤 個人的にオリジナルを作るの好きだというところがまずいちばん大きいですね。じゃあそれはどうしてかと言うと、僕がスクウェア・エニックスに入るときに面接してくれた担当者が、現会長の福島だったんです。彼に「とにかく新しいものを作ってください」と言われて、それを約14年ほど忠実に守っているというわけです。最初はみんなそう思ってやってるはずなんですけど、いつの間にか守らなくなってしまう。まあ、いまとなっては僕に『ドラクエ』や『FF』を任せるとキケン、みたいな雰囲気ができてしまっているということもありますけど(笑)。

――そんなことはないでしょう(笑)。でも安藤さんと言うとオリジナルのイメージですね。

安藤 “オリジナルタイトルを作ること”と、“シリーズ作を守っていくこと”ってどちらがすごいとかそういう線引きはないと思っています。ただし、このふたつってノウハウとか作り方がまったく違うものですよね。それで、ゲーム作りをひとりで何百年も続けられるわけはないので、僕はオリジナルを作っていくほうを選んだということです。だから僕はある程度意図的にオリジナルを作り続けています。

――なるほど、今回はオリジナルでといったものではなく、自然な流れでそうなったと。とは言え、『ケイオス』はスクウェア・エニックスの得意なRPGです。RPG離れの風潮も見える中、『ケイオス』ではどんな工夫を行いましたか?

安藤 RPG離れということに関しては、正しいとも思うし、間違っているとも思っています。たしかにRPGを遊ばなくなった人のなかには、拘束時間が長いことを挙げる人が多いです。たしかに、長ければ長いほど、ボリュームがあればあるほどいいとして、ひとつのパッケージにそれを詰め込んでいた時代がありました。それが時代に合ってこなくなったのは事実だと思います。ただ、そうやって少し時代とズレてきただけで、RPGというもの自体はまだいくらでも楽しんでもらえるゲームジャンルだと思っています。たとえば最近発売されたプレイステーション・ポータブル用の『ファイナルファンタジー零式』もプレイ時間自体は長いゲームなんですけど、ああいう携帯型のゲーム機ですごいものを出してあげれば、ちゃんとお客さんに届いて受け入れられるんです。『ケイオスリングス』も立ち位置としては『零式』に近いものだと思っています。

――たしかに、携帯機、大ボリューム、ハイレベルなグラフィックと似たところはありますね。

安藤 長くプレイするものではありますけど、状況によって5分しか遊べないときでも物語がしっかり進行してやり直さなくてもすむように、オートセーブの機能を備えていたりすることは大事ですし、プレイする環境もさまざまですから、どこをタッチしても方向キーが出るようにもしました。ゲームの質やボリュームを落とさなくても、しっかりとしたサービスを提供してあげれば、いまでもRPGを遊んでもらえるんじゃないだろうかと過程していました。

――なるほど。たしかにかなり遊びやすかったですし、パッと見でスクウェア・エニックスらしさが伝わってきたので、日本では評価されるだろうなあと思いました。ただ本作は海外でもヒットしました。これに関してはどうでしょう?

安藤 これに関しては正直うれしいサプライズでした。『ケイオスリングス』って、まごうことなきピカピカの“JRPG”だと思っているんです。これに対して海外でRPGというと『フォールアウト』や『オブリビオン』といった、僕らからすると「RPGというよりFPSっぽい」イメージなんですよ。そういうなかで本格RPGですよと売り出してもそんなに響かないんじゃないかと予想してました。どうしてだろうっていろいろ考えてはみたんですが、ひとえに時期的な問題が大きかったんじゃないだろうかと思ってます。

――時期ですか。

安藤 いまとなっては似たゲームもいくつか出てきてると思うんですけど、当時あれほどしっかりと作られたRPGはありませんでした。つまりライバルがいなかった。特別海外でウケたいななと思ってやったことってなかったんですよ。もちろん人種の問題とか宗教的な問題とか、海外で敬遠されないように少しは意識しましたけど、基本的には日本の人がいいと思ってくれるRPGを作ろうと思ってやった結果、どちらでもウケてくれましたね。

――ではここで少し数字を教えてもらいたいんですが、現在のダウンロード数はどれくらいになりますか?

安藤 シリーズの累計になってしまうんですが、現在50万ダウンロードまできています。ペース的には100万ダウンロードというのも少し見えてきたかなと。

――そのうち日本の割合はどれくらいですか?

安藤 結構大きくて、全体の35~40%くらいが日本ですね。ほとんどのアプリで北米がいちばん割合が大きいんですが、やっぱりJRPGということで日本がいちばんになってます。

――『ケイオスリングス』と言えば値段設定も衝撃的でした。あの値段設定はすんなり決まりましたか? 

安藤 全然すんなり決まらなかったですね(笑)。もともと『ケイオスリングス』って3000円[税込]くらいで売ろうと思っていたタイトルなんです。配信までに僕と同じような考えの人がいて、しっかりした価格のタイトル配信されてそれが受け入れられるマーケットになっていればいいなと思っていたんですが、全然そうならずにむしろ価格帯は下がってきました(笑)。

――そうですね。アプリで高い値段なんてとんでもない、みたいな風潮はありました。

安藤 自分の作っているものと、そういう世間とのギャップに苦しめられたことはありました。すごくレベルの高いタイトルを安い値段で売るのもたしかに作戦としてはありなんですけど、逆に僕らはふんばっていかないといけないなという考えでした。しっかりしたものにはそれなりの価格をつけて、それを買ってもらえる市場を作りたかった。そうしないとよいものは絶対に作り続けられないんです。だから、これは高ければ高いほどたくさんお金を獲れるという考えでは決してないんです。

――たしかにそうです。常識的に考えて、たくさんのお金をかけて作ったものを115円[税込]で配信して利益はとれないですよね。

安藤 それでも社内的には意見は分かれました。かたや「安くしろ」、かたや「高いままいけ」ということになってきまして、当然プロデューサーとしての権限で決めることはできるんですが、それにしても僕自身決め手に欠けるところがあって悩みました。苦し紛れに前後編にわけてそれぞれ1000円[税込]で売るといったことも考えました。配信の1ヵ月まえですよ(笑)。「うまいこと考えた。もう本当にこれで行こう」と思っていたんですけど、最後にもう一回お客さん目線でプレイしてみたら、『ケイオス』は全部とおしてプレイしないとよさが伝わらないゲームだって思ったんです。分割したら前編だけしかプレイしない人は絶対に出てくる。やっぱりいちばん最初に出すものは“スゴいもの”でなければいけないと思い直しまして、やっぱり1本にまとめることにしました。

――でも価格問題はまだ片付いていないですよね。

安藤 そうです。そこからは2000円[税込]を巡る攻防ですよ(笑)。これも当然なかなか決着がつかなかったんですけど、ひとついい落としどころを見つけました。iTunes カードのもっとも安い価格が1500円[税込]だったんです。それで買えるものということにするのが理由付けとしていいのかなと。当時の価格帯で1200円[税込]というアプリがあったんですが、それとくらべても価格帯を一気にあげるものでもないですし、そこまで大きな拒否反応はないのではと思いました。それでも自分の中では3000円のものだったので、かなり思い切った値付けだったんですけど、本当にいまとなってはこの価格でよかったなと思います。

――そうですね。いまのマーケットを見ると本当に切り開いた感があります。ところで『ケイオスリングス』はボイスを追加するというかなり大きなアップデートを行いましたけど、配信から時間のたった段階でこういったことを行うのは非常に珍しいですよね。

安藤 なにかすればなにか返ってくるというのがサービスの本質だと思うんです。レビューの声に応え続けていたらものすごいヒットアプリになった、なんていう例もあります。だから、『ケイオス』はある程度売れたら必ずアップデートをしようという気持ちがありました。いちばんスムーズなのはシナリオの配信みたいなことかなと思ったんですけど、すでに続編の『オメガ』も作っている最中ということもあって、この段階でどちらもボリュームを増やすのはすごくバランスの悪いものになりそうだということで断念しました。

――いきなりボイス追加が決まったというわけではなかったんですね。

安藤 そんななかで「あとから声が追加されたらおもしろいよね」という声があがったんです。あとはずっといっしょにやっていたプロデューサーから、「『ケイオスリングス』ってきっとコンシューマーのゲームみたいな感じになっていくから、途中でムービーやボイスが追加されるのは全然悪いことじゃないよ。日本の人がすごく支持してくれているものだから、ふつうのRPGとしてもコンシューマーに負けないものにしていなかないといけない」と言った言葉ももらったんです。それに、ボイスのなかったゲームが突然フルボイスになっちゃうなんて、これまでのゲームにはなかったことじゃないですか。いちばん最初にいちばんすごいことをやるのがいちばん目立つしおもしろいんですよ。そのほうが「iPhoneアプリすげえ!」って思ってくれますよね。それで作品の世界観を壊さずに、ということになると必然的にメンバーは著名な方ばかりになってしまうんですよね。

――声が入ると一気にゲームが生き生きとしますよね。

安藤 全然変わりましたね。キャラクターに命が吹き込まれるのがすごくよかったですし、僕の中でもスマートフォンのゲームの基準にもなりました。声が入るって意外とイイなと(笑)。それでしっかりと動くのも確認できましたし、お金はかかりましたけど、かかった費用以上に得るものは大きかったですよ。あとはチャレンジだなと思ったのは容量の問題ですね。これまで280メガぐらいだったものが700メガくらいにあがってしまうわけです。僕は大きいデータのアプリをダウンロードするのをストレスに感じてしまうので、そのあたりはどうかなと心配していたんですけど、これも結果としてほとんど不満の声がなかったんです。これで自分の中で、容量の問題が一歩前進したなあと感じましたね。

――アップデートは基本的にはすでにダウンロードしている人向けのサービスですけど、ダウンロード数の伸びはありましたか?

安藤 もちろんありました。めざましく変わったというわけではないですけど、なにもしないのとは全然ちがいます。僕は鳥人間コンテストみたいだなーと思っていて、最終的には着水しちゃうんですけど、途中で必死にこぐかどうかで、その着水までのカーブはまったくちがうものになります。継続して続けることで安定にも繋がります。

――安定ですか。

安藤 たとえばあたらしいiPhoneが出たりすると、「iPhoneでおもしろいRPGってなに?」とかそういう話が出てくるじゃないですか。そのときに「それなら『ケイオスリングス』でしょ」と言っていただけることが多い。こういうのを聞くともう『ケイオス』は安定ゾーンに入ったのかなと思ってます。

――さすがにもうアップデートはないですか?

安藤 いまのところ予定はないです。でもなにか機会があれば、というのはいつも考えてまして、ひとつやりたいなと思うこともあるんですよ。アルトとギャリックというキャラクターがいまして、このふたりってキャラクターデザインの直良(なおら)には「主人公になってもおかしくないビジュアルで」と依頼したキャラクターなんですが、開始5分で死んでしまうんです(笑)。声優もギャリックは三木眞一郎さんで、アルトは瀬戸麻沙美さんと非常に豪華なんです。なのでこのふたりの物語はちょっとやりたいなと思ってます。『オメガ』では少しあるんですけど、『ケイオスリングス』のほうでもやれたらなあと思ってます。

――では『2』の配信はどうでしょう?2011年も終わりに近づいていますが……(笑)。

安藤 2011年中に出したかったんですが、残念ながら2012年になってしまいそうです……。これは制作の遅れというよりは、日々すごいものが出てきている中で、やっぱり僕らは『ケイオスリングス』も『ケイオスリングス オメガ』も超えていかなくちゃいけない。そのために少し時間がかかっています。まあ、『オメガ』の配信から1年たたないうちには配信したいと思います。『オメガ』のときにもこんなこと言ってましたけど(笑)。いまの段階で、とおしで遊べるくらいにはなっていますので、ご安心ください。

――では最後に、まだプレイしていない人に向けて

安藤 iPhoneやiPod touchを買って、ゲームがやりたい、RPGがやりたいと思ったらはっきり言って選択肢はふたつしかありません! 『ケイオスリングス』か『FF III』のどちらかをやっていれば間違いないです。少し高いかなと感じるかもしれませんが、プレイすれば必ず買ってよかったなと思っていただけるはずです。

【ケイオスリングス オメガ】
メーカー:スクウェア・エニックス
配信日:配信中
価格:1300円[税込]
対応機種:iPhone/iPod touch、iPad互換 iOS 3.0以降が必要

(C)2011 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved. CHARACTER DESIGN: Yusuke Naora Developed by Media.Vision Inc.

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