実写版『ミリオンアーサー』は歌あり、スナックあり(?)とぶっ飛んだ内容になっている模様!
スクエニプロデューサー安藤武博氏のブログ“スマゲ★革命”第十六回 「シリアルコード付き雑誌に、ぬくもりを!」
2012-04-09 20:19 投稿
●第十六回 「シリアルコード付き雑誌に、ぬくもりを!」
雑誌に添付されたコードを入力することで、ゲーム内で限定アイテムを手に入れることができる、いわゆる“シリアルコード付き雑誌”が、特にソーシャルゲーム業界においては全盛です。僕の記憶では『ファミ通Mobage』の創刊が、そのきっかけだったように記憶しています。いまでは、ゲーム系の出版社だけでなく様々なメディアから次々とこの手の雑誌が創刊されています。いったい何故なのでしょうか?
まず、端的に言ってしまえば“非常によく売れる“ことが挙げられると思います。ご存じのとおり出版業界全体で見ると、雑誌不況は特に深刻です。販売実績の減少率がどんどん前年よりも増えてきており、昔ほど売れなくなってきています。老舗雑誌だった『ぴあ』の廃刊などは象徴的事例になっていましたよね。スクエニも多くの漫画雑誌を擁する出版社でもありますから、この状況に立ち向かう現場スタッフの努力や苦労がよく見えてきます。場合によっては単行本で回収をして、雑誌自体は赤字ないしは損失覚悟で展開するケースもあり得ると聞きます。そんな中、“シリアルコード付き雑誌”は、非常に堅調に売上を伸ばしており、雑誌単体で利益が出るという奇跡的な展開を見せています。では、なぜこういうことになるのでしょう。
お分かりだと思いますが、それくらい添付のシリアルコードで手に入るアイテムに訴求力があるのです。レアアイテム欲しさに、書籍を購入するという流れです。考え方によっては、「ガチャガチャを複数回まわすよりも、600円で複数のタイトルのレアアイテムがついてくる雑誌の方が得だ」という見方があってもおかしくないですよね。実際、そういうことになってきています。また、手に取れる安心感が良いという声も聞きます。レアアイテムの入手自体は、最終的には手に取れないデジタルデータをゲットする非リアルな行為です。にも関わらず雑誌はネットで購入せずに、実際書店に足を運んで購入される方が多いという話を聞きます。おもしろいですよね。なぜなのか? この部分は掘り下げて、後述したいと思います。
では、たくさん創刊されている、その雑誌の中身はどうなっているのでしょうか? 誤解を恐れずに、大雑把にまとめてしまえば、いまのところ“ほとんどの雑誌の中身は一緒”に見えます。違うのは付録のレアアイテムくらいで、残りはソーシャルゲームの簡単な紹介や簡単な攻略というカタログ誌になっているケースが多いです。もちろん内容に関しては、ずいぶん様変わりをしてきつつありますが、こう考えてみたらどうでしょう。「その雑誌はシリアルコードが無くても、読みたいものになっているか?」 ほとんどが、シリアルコード欲しさに買うという極端な状況になるかと思います。
なぜ今回、このように雑誌を懸命に手掛けてられている人からすれば、その努力を問題視するようなことをわざわざ書いているのかといえば、逆に僕が雑誌のチカラを信じているからでもあります。前述の理論で行けば、“シリアルコードだけが載っている雑誌”や“シリアルコードだけのアプリ”を配信すれば済む話です。でも、そういったものが仮にあっても、おそらく今ほどの人には届かないでしょう。そう、シリアルコードは実際に“手に取れる本”についているからこそ意味があるのです。
僕はもともとパッケージのゲーム制作からはじめて、ここ6年ほどはダウンロード形式やクラウド形式などの、物理的に形が残らないゲームばかりを手掛けています。形がなくなったがゆえに、逆に強く心がけるようになったのは商品としての“手触り”です。ゲームとしての“手触り”の事も、もちろんありますが、ここで語るのはパッケージとしての“手触り”のことです。2000年に僕がはじめてプロデュースしたプレイステーション用ソフト『鈴木爆発』が出来上がったときの感動は、今でも忘れられません。CDケースにキャラメル包装が施された作品を、段ボールから1枚出して、手に取ったときの感覚。家電量販店のゲームコーナーに商品が平積みされて、それを手に取るお客様の姿を見たり、自分で手に取って表裏を繰り返し見たりする事のエキサイティングさ。形がなくなってしまっても、この感覚を残せないか? これをとても大事にするようになりました。
例えば『ケイオスリングス』では、イラストレーターの直良に手掛けてもらうメインアートがそのままパッケージなっても良いように仕上げてもらっています。パッケージゲームのメディアに関しての本丸とも言える週刊ファミ通の本誌に、見開きの広告を入れたりするのは告知効果もねらっていますが、どちらかといえば、紙にアートが刷られることによる“手触り”のリアリティが欲しいためだったりします。要するに、「これってパッケージゲームなの?」と思ってもらえる感じが欲しいのです。おそらくiPodに表示されるアルバムアートの“Cover Flow”も同じような目的をもっていると思われます。スマゲであっても、希望するお客様には別途ゲームのパッケージをお届けするサービスがあってもいいなと考えたりします。ファミコンカセットの箱みたいに仕上げて、名刺入れやiPhoneケースにしたら、前述の“手触り”がダウンロードゲームに蘇りそうな気がします。頭脳労働をした後に体を動かすと無条件にすっきりするように、これは人間がバランスをとるために行う、本能的な働きなのかもしれませんね。
話を戻すと、“シリアルコード付き雑誌”における“手触り”とはそもそも紙であること。つまり、アナログな雑誌である時点で、すごく価値があるのです。ゲーム屋として、今後も各雑誌の存在は全面に応援していきたいと思っています。全部デジタル化されるとつまらないし、困ります。ただし、そのためには“シリアルコード以外にも誌面の内容を充実”してほしいと思います。僕が小学生のころ、ビックリマンチョコでシールだけ取ってチョコを捨てる事件が多発しましたが、ロッテは決してチョコのクオリティを落としませんでした。本当に美味しかった。今後も主役はアイテムになるかもしれない。けれども、もっともっと果敢に挑んでいってほしいです。いや、絶対に読み物のチカラが勝つはず。先週の週刊ファミ通、僕は『パルテナの鏡』のARおドール欲しさに手にしましたが、読み物としても毎週楽しみにしていますからね。そう、単純に読み物として“おもしろい”ものが読みたいのです。特に携帯電話のゲームにフォーカスして、もっともっと読みたいのです。もっと創り手に踏み込んだ記事でもいいし、企画攻略記事でもいいし、インタビュー、対談etc……どんどんやってほしい。
そういう意味では、お世話になっているからではないですが、『ファミ通App iPhone&Android NO.002』は読み物としてもすごく充実していますね。編集者の志をとても感じます。でも、もっともっと“おもしろく”していきましょう!……ってこの話、シリアルのところをKPI(※“KPI”の詳細はこちら)に置き換えると、まるっとソーシャルゲームに当てはまりますね。いずれにせよ、やはりエンターテイメントはとにかく“圧倒的におもしろく”ないとダメなのです。おもしろさに関しての命題は永遠回帰であります。それではまた来週。
■追伸
お待たせしました。本日から、『拡散性ミリオンアーサー』がスタートしました! あくまでスタートだと思っていますので、どしどし遊んで、ご意見くださいね。どんどん面白くしていきますよ。
[関連記事]
※『拡散性ミリオンアーサー』豪華スタッフが結集したオンラインカードバトルがついに配信
つづく
安藤武博 スクウェア・エニックスのゲームプロデューサーにして、同社のスマートフォンアプリ制作の中核を担う人物。早くからスマートフォン事業に携わってきたことから、アプリに対してはすでに確固たる理論を構築している。それでいて、つねに新たなステージへのチャレンジを忘れないスマートフォン業界の革命児。 |
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